■男女それぞれの老いと性 http://sankei.jp.msn.com/west/west_life/news/120918/wlf12091808000000-n1.htm
女性は、閉経の前後の更年期には心身がもろくなるが、更年期を超えた60代には生涯で最も丈夫になる。閉経後の女性がまだまだ艶やかな魅力をもつのは、身体の、特にお尻に性エネルギーが蓄えられているからだという。お尻が小さくしぼんでいる女性は、艶の枯れるのも早い。
一方、男性の性的老化は女性の場合よりも個人差が大きく、30代でも性的に引退する人もいれば、90代でも現役の人もいる。また、「頭ではエロチックなことを考えられるけれど、身体が反応しなくなった」という人もいれば、「もう頭でも考えられない」という人もいる。
しかも、性的能力は男性の中では、生きる張り合いと不可分な重要事のようだ。老い、そして性的な老いとは、身体のどのような変化なのだろうか。
性的機能でも「要」となる5つの腰椎
人は腰から老いると言われる。それをとらえるために、腰椎の働きをみてみよう。5つの骨からなる腰椎は、まさに身体の動きの中心であり、心身の機能の要だ。
一番上の第1腰椎は腕や肩の上げ下ろしなども含めた、身体の全ての上下運動の時に動いている。次の第2腰椎は身体の左右運動の時に動く。第3腰椎は身体をねじる運動で、第4腰椎はしゃがんだり立ちあがったりする骨盤の開閉運動で動く。脚を前に出すなど全ての前後運動で動くのは、第5腰椎である。
注意深くひとつひとつの腰椎に触れながらいろいろな動作をしてみると、動作によって動く骨が違うことがわかるだろう。腰痛の時も、異常を起こした腰椎と、痛みの出る動きとにつながりがあることが納得できるだろう。
5つの腰椎のそれぞれは、心身の特定の機能とも関わっている。第1腰椎は頭脳の働き、第2腰椎は消化器、第3腰椎は泌尿器、第4腰椎は生殖器、第5腰椎は呼吸器の働きと特に関連が強い。
また5つの腰椎はそれぞれ、特定の性の機能とも関わりが深い。第1腰椎は性的なことを頭で考える機能、第2腰椎は性的な刺激を受けて性的な行動をとろうと考える機能、第3腰椎はセックスを中心とした広い意味での性的な行動の機能、第4腰椎は女性の受胎能力や男性の精液の量などの生殖能力そのもの、第5腰椎は深い余韻として性に快感を感じる機能と、特に関わるととらえられている。
以上は、整体指導者の野口晴哉(はるちか)氏が創始した野口整体の微細な身体観察にもとづいた、経験的知見の蓄積による。
腰椎のひとつひとつの骨は、背骨の他の部分もそうだが、個別に弾力をもって動くものだ。特定の腰椎の可動性が悪くなると、特定の動作が鈍くなり、特定の心身の機能も、特定の性的な機能も衰える。これが老化なのである。
頭ではエロチックなことを考えられるが、身体が反応しないのは第3腰椎が弾力を失った状態で、頭でも考えられないのは、第3腰椎だけでなく第1も弾力を失った状態である。弾力を失うと、その骨が出っ張ったまま戻らなかったり、下がったまま上がらなかったりすることもある。
性的行動の機能の衰えは、第3、第4腰椎の弾力がなくなり、第3が下がって第4とくっついた状態で起きるのだ。第3腰椎とは、腰椎のカーブの一番中に入ったところの骨で、心身の要である腰椎のさらに中心である。要の要といえるこれが弾力をなくして下がることが、性的老化では起きている。
幼児体形でしかも早老な人…85歳でも若々しい人も
腰椎がそのようになると、骨盤や脚にも大きな変化が起きる。骨盤は、はつらつとして意欲的な人は上がっていて、意気消沈するとガサッと下がってしまうものだが、第3腰椎が下がって第4とくっつくと、骨盤も下がってしまう。私たちは人の後ろ姿を見てなんとなく元気がないとか、老いを感じることがあるが、そういう時、その人の骨盤は下がった状態だと言ってよいだろう。
骨盤が下がると生殖器は萎縮し、お尻が垂れる。腸も下痢などはしにくく、便秘がちになり毒素をためやすくなる。肌のシミもできやすくなる。生殖器と膝は直結しているので、こうなると膝が冷えて、痛んだり水がたまったりもする。
現代は、若い世代で腰椎の可動性が全般的に悪い人が多くなっている。大人の身体に成熟しない幼児体形でありながら、第3腰椎が下がった早老状態の人もいる。このことから、暦年齢と腰椎の弾力はあまり関係ないことがわかるだろう。
生活の仕方によっては逆に、年をとっても弾力を保ち続けることも可能だ。85歳か90歳までは第3腰椎が下がらずに生きることができるという。
心身の弾力保ち豊かな性を
腰椎の可動性が少なくなることは、身体運動や身体機能の低下につながるだけではない。
腰が硬くて、頭で考えても行動に移しにくくなると、動けないので次第に思考も鈍重になりがちだ。また、思ったときにすぐ動ければ、思いと現実にずれがないので生きていて快適だが、動けないとどこか不快感がつのり、動けないことに理屈をつけたり、若く活動的な人を非難したりもしかねない。腰が硬くなるとまた、新しいものを受け入れにくく頑固になりがちでもある。柔軟に検討してから決断する力も、集中力も低下しがちになる。
この逆も成り立つ。理屈を言わないで考えたらさっと行動に移すようにし、新しいものごとを受け入れる柔軟さをもち、優柔不断でなく決断をし、夢中になれるものに集中して生きることで、意外なようだが、腰椎の弾力性は高められ若返るのだ。
前屈と後屈、左右両側へのねじり運動を、ゆっくり息を吐きながら行うのも、腰椎の弾力性を回復するのに確実に役立つ。すべて身体はこわばっているところを緩めると、弾力を回復し、若さを回復するものだ。
次に、特に第3腰椎の弾力性を高める方法をご紹介したい。これは2人で行うとよいが、うつぶせになった人のお尻を、もう1人が「逆ハの字」の形にした両手で、第3腰椎に向かって軽く押し上げながら気を注いで愉気(ゆき)をする。これは若い人がやっても効果がある。私は女子学生たちとも、ヒップアップとバストアップにも効くといってこれを行うが、じわっと心地よさが広がり何かが活性化される実感を、みんな口々に言ってくれる。
また、生殖器と直結する膝に、手を当ててじっと愉気することも非常にいい。冷えた膝が温まると共に、下腹部も息づくのが感じられるだろう。そして肛門を締めてその弾力性を高めることも、腰椎すべての弾力を取り戻すことにつながる。
高齢期の性。それは、その人がそれまで養ってきた感性や人間関係が問われもするが、独自の豊かさと充足の可能性があるものだと思う。弾力性のある心身を保って、性の豊かさを生涯追求し続けられるとよいと思う。