内分泌代謝内科 備忘録

保存期腎不全では RAS 阻害薬を続けるべきか?

進行した慢性腎臓病患者における RAS 阻害
NEJM 2022; 387: 2021-2032
 
背景
ACEI や ARB などの RAS 阻害薬は軽度から中等度の慢性腎臓病の進行を遅らせる。一方、一部の研究からは進行した慢性腎臓病では RAS 阻害薬を中止すると eGFR が増加するあるいは低下が遅れると報告されている。
 
方法
デザイン: 多施設非盲検ランダム化比較試験
対象: eGFR <30 mL/min/1.73 m2 の慢性腎臓病患者
介入: RAS 阻害薬 (ACEI or ARB) の中止 v.s. 継続
アウトカム: 3年後の eGFR (腎代替療法が開始された場合は除外)
 
結果
3年後の時点で 411名を解析対象とした。RAS 阻害薬中止群では eGFR 12.6±0.7 mL/min/1.73 m2、継続群では eGFR 13.3±0.6 mL/min/1.73 m2 であり、有意差はなかった (差 -0.7, 95%信頼区間: -2.5~1.0, P = 0.42)。
 
終末期腎不全または腎代替療法の開始は中止群のうち 128名 (62%) で起こり、継続群の 115名 (56%) で起こった (ハザード比: 1.28, 95%信頼区間: 0.99-1.65) 。有害事象の頻度は中止群と継続群で同程度だった (心血管イベント 108 v.s. 88, 死亡 20 v.s. 22)。
 
結論
進行した慢性腎臓病患者で RAS 阻害薬を中止した場合、継続した場合と比較して eGFR の長期的な低下の程度に有意な差を認めない。
 
備考
·本試験の尿蛋白の平均値は 1.018 g/gCre であり、>2.655 g/gCre の尿蛋白が多い慢性腎臓病患者には当てはまらない可能性がある。
·RAS 中止群の方が終末期腎不全に至った人の数が少し多かったので、より大規模な試験では RAS 阻害薬継続の利益を示せる可能性もある。
 
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2210639
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