内分泌代謝内科 備忘録

減量手術と薬物療法

New England Journal of Medicine の教育動画
減量手術と薬物療法
 
減量手術が行われるようになってからおよそ 10年が経つ。よく行われる術式はスリーブ胃切除と胃バイパス術である。
 
減量手術の適応となるのは、BMI >35 kg/m2 で肥満と関連する合併症 (2型糖尿病、高血圧症、脂質異常症、睡眠時無呼吸症候群)を認めることである。BMI は肥満を見つけるには有用な指標だが、肥満の重症度の指標ではない。手術の適応を決めるためには、合併症がいくつあるかを考慮する必要がある。
 
減量手術の禁忌としてはコントロールされていない精神疾患、摂食障害、薬物依存がある。また重度の凝固異常や重度の心不全、重度の肝疾患など手術一般に禁忌とされるものも含まれる。
 
減量手術の合併症としては、逆流性食道炎、慢性的な嘔気·嘔吐、特定の食物が食べられなくなる、減量の失敗あるいは体重の増加、骨密度低下·骨折がある。
 
鉄とビタミンは減量手術後にしばしば欠乏する。手術後は定期的に鉄とビタミンを確認し、欠乏があれば補充することが重要である。
 
BMI 27-30 kg/m2 で肥満に関連する合併症 (2型糖尿病、高血圧症、脂質異常症、睡眠時無呼吸症候群) をともなう場合は薬物療法の適応となる (米国の場合)。
 
米国食品医薬品局が肥満治療薬として承認しているのは (日本では承認されていない)、オルリスタット、フェンテルミン、フェンテルミン-トピラマート、ブプルピオン、リラグルチド、セマグルチドの6薬剤である。
 
薬物療法は 5-10%減量効果がある。今までの肥満治療薬は重度の副作用をともなうことが多かったが、最近になって状況は変わりつつある。新しい肥満治療薬は腸から分泌され満腹感を制御するホルモンのはたらきに基づいている。
 
たとえば、GIP 受容体と GLP-1 受容体の作動薬であるチルゼパチドの効果と安全性を検討した SURMOUNT-1 試験では、最大用量の 15 mg で平均 22.5%の減量を達成した。
 
また、GLP-1 受容体作動薬であるセマグルチドの効果と安全性を検討した STEP1 試験では 15%の減量を達成した。
 
体重以外に血圧も低下し、中性脂肪は著明に低下した。
 
GLP-1 受容体作動薬の禁忌としては甲状腺髄様癌、MEN-2 がある。また膵炎および胆嚢疾患、特に胆石症がある場合は注意が必要である。GLP-1 受容体作動薬を開始する前に胆石症の治療を行うべきである。
 
GLP-1 受容体作動薬の副作用としては消化器症状 (嘔気·嘔吐、下痢、便秘) がある。消化器症状のほとんどは増量中に起こる。消化器症状の出現を抑えるためにはゆっくりと増量すると良い。
 
https://youtu.be/jJg5empy-5A
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