前回、演劇や映画の世界で嫌われているという「外連味」について述べた。しかし、「作られたもの」の多くは「外連味」にあふれている。所詮は「作られたもの」だから「外連味」にあふれている、のは当然なのかもしれない。
かつて、一時は私も「日本人は欧米人に比べ、顔の作りが扁平なので、演技はおのずとオーバーアクションになりがち」と思っていた。また、日本には歌舞伎の「隈取り」という特殊な化粧法があり、ど派手な「見えを切る」という演技手法もある。その流れが演劇界が嫌ってやまない「外連味」を醸し出しているとしたら事態は複雑だ。それに最近は原作・原案不足のためアニメ・劇画の実写版が幅を利かせている。アニメ・劇画に登場する人物たちは決まって「大げさな振り」を披露する。それに慣れた役者や演出家が「外連味」のある演技を「熱演」として評価している場合がある。なので「好演」だけでとどめることができず「熱演」の域まで行ってしまうのだろう。
テレビや映画の出演も、舞台出身者を重用する傾向が見られる。今まで述べてきたいろんな要素から、日本人は「臭い芝居」が好きなんだろうと思う。今ネットでたたかれている「わいせつ」役者も映画・コマーシャル・テレビと引っ張りだこ「だった」。私は「臭すぎて」嫌いだったが……。
俳優・女優を「銀幕のスター」と称していた時代があった。そのころの俳優・女優は「スター」だった。「スター」とは星。星には手が届かない。タレントが「隣のミヨちゃん」
的な存在になってから、彼らが安っぽくなったような気がする。今は俳優・女優の名前の前に「ベテラン俳優・超ベテラン・大物女優」など、修飾語が付くようになった。「名前だけだと通用しない」世界なのか。「外連味」のない「普通の演技」は所詮日本では無理なのだろうか。
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