会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(以下「整備法」という。)第53条は、非常にマイナながら、非常に影響の大きな条文である。
第53条 旧株式会社がこの法律の施行の際現に旧商法特例法第1条の2第2項に規定する小会社(以下「旧小会社」という。)である場合又は第66条第1項後段に規定する株式会社が旧商法特例法の適用があるとするならば旧小会社に該当する場合における新株式会社の定款には、会社法第389条第1項の規定による定めがあるものとみなす。
要件の中で重要なのは「小会社」である。
そもそも「旧商法特例法」が、現在では非常に検索しにくい法律である。
「旧商法特例法」の定義は、整備法第48条にあり、「株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律」のことである。
旧商法特例法は、現在市販されている一般的な六法には、掲載されていない。
第1条の2第2項 この法律において「小会社」とは、資本の額が1億円以下の株式会社(前項第2号に該当するものを除く。)をいう。
ちなみに「前項第2号に該当するもの」とは「最終の貸借対照表の負債の部に計上した金額の合計額が200億円以上であること」である。
さて、簡単にまとめると、整備法施行時=会社法施行時より前から存在している株式会社で、資本金1億円以下の会社は、整備法第53条にいう「小会社」である。
次に、効果であるが、会社法第389条第1項の規定による定款の定めがあるものとみなされる。
会社法第389条第1項 公開会社でない株式会社(監査役会設置会社及び会計監査人設置会社を除く。)は、第381条第1項の規定にかかわらず、その監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨を定款で定めることができる。
つまり、旧小会社は、定款に監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定めがあるものとみなされる。
すなわち、旧小会社は、「監査役設置会社」(会社法第2条第9号)に該当しない。
ここまでくると、その影響の大きさが見えてくる。
たとえば、監査役設置会社の場合、株主は、裁判所の許可を得て、取締役会議事録の閲覧・謄写を請求することができるのに対し、監査役設置会社に該当しなければ、株主は、営業時間内いつでも閲覧・謄写請求をすることができる(会社法371条第3項、第2項。なお、同条第6項。)。
また、監査役設置会社に該当しないと会社法第386条が適用されず、たとえば株主代表訴訟の提訴請求の宛先は原則通り代表取締役となる。
このように広い範囲に影響を及ぼす条文であるにもかかわらず、旧商法特例法は通常の六法に掲載されておらず、整備法における「旧商法特例法」を定義する整備法第48条も、六法によっては省略されている。
このことから、この条文の影響の大きさを自覚している法曹関係者は、あまり多くないと思われる。
実をいえば、この条文に関して、私自身も適用を失念したことがあるし、この条文の適用を失念して取締役会議事録の閲覧謄写の許可決定をした裁判官にも遭遇したことがある。
つまり、法曹関係者が往々にして陥りやすい落とし穴であり、このような落とし穴を掘った立法関係者は、意地が悪いかうかつだったかどちらかであるといえる。
では、どこに問題があるのだろうか。
第一に、このように影響重大な条文を、会社法本体に規定していない点が問題である。
監査役設置会社になるかならないかは、会社法において完結させるべきである。
第二に、そもそも資本金1億円以下と1億円超とで、ここまで大きな会社法適用上の差異を設けることに合理性があるか、という問題がある。
資本の額と監査役の権限を連動させることに合理性はなく、整備法第53条の要件には疑問がある。
第53条 旧株式会社がこの法律の施行の際現に旧商法特例法第1条の2第2項に規定する小会社(以下「旧小会社」という。)である場合又は第66条第1項後段に規定する株式会社が旧商法特例法の適用があるとするならば旧小会社に該当する場合における新株式会社の定款には、会社法第389条第1項の規定による定めがあるものとみなす。
要件の中で重要なのは「小会社」である。
そもそも「旧商法特例法」が、現在では非常に検索しにくい法律である。
「旧商法特例法」の定義は、整備法第48条にあり、「株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律」のことである。
旧商法特例法は、現在市販されている一般的な六法には、掲載されていない。
第1条の2第2項 この法律において「小会社」とは、資本の額が1億円以下の株式会社(前項第2号に該当するものを除く。)をいう。
ちなみに「前項第2号に該当するもの」とは「最終の貸借対照表の負債の部に計上した金額の合計額が200億円以上であること」である。
さて、簡単にまとめると、整備法施行時=会社法施行時より前から存在している株式会社で、資本金1億円以下の会社は、整備法第53条にいう「小会社」である。
次に、効果であるが、会社法第389条第1項の規定による定款の定めがあるものとみなされる。
会社法第389条第1項 公開会社でない株式会社(監査役会設置会社及び会計監査人設置会社を除く。)は、第381条第1項の規定にかかわらず、その監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨を定款で定めることができる。
つまり、旧小会社は、定款に監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定めがあるものとみなされる。
すなわち、旧小会社は、「監査役設置会社」(会社法第2条第9号)に該当しない。
ここまでくると、その影響の大きさが見えてくる。
たとえば、監査役設置会社の場合、株主は、裁判所の許可を得て、取締役会議事録の閲覧・謄写を請求することができるのに対し、監査役設置会社に該当しなければ、株主は、営業時間内いつでも閲覧・謄写請求をすることができる(会社法371条第3項、第2項。なお、同条第6項。)。
また、監査役設置会社に該当しないと会社法第386条が適用されず、たとえば株主代表訴訟の提訴請求の宛先は原則通り代表取締役となる。
このように広い範囲に影響を及ぼす条文であるにもかかわらず、旧商法特例法は通常の六法に掲載されておらず、整備法における「旧商法特例法」を定義する整備法第48条も、六法によっては省略されている。
このことから、この条文の影響の大きさを自覚している法曹関係者は、あまり多くないと思われる。
実をいえば、この条文に関して、私自身も適用を失念したことがあるし、この条文の適用を失念して取締役会議事録の閲覧謄写の許可決定をした裁判官にも遭遇したことがある。
つまり、法曹関係者が往々にして陥りやすい落とし穴であり、このような落とし穴を掘った立法関係者は、意地が悪いかうかつだったかどちらかであるといえる。
では、どこに問題があるのだろうか。
第一に、このように影響重大な条文を、会社法本体に規定していない点が問題である。
監査役設置会社になるかならないかは、会社法において完結させるべきである。
第二に、そもそも資本金1億円以下と1億円超とで、ここまで大きな会社法適用上の差異を設けることに合理性があるか、という問題がある。
資本の額と監査役の権限を連動させることに合理性はなく、整備法第53条の要件には疑問がある。