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 「氷河期世代の長男は一生働かない」40歳・不肖の息子の人生を背負う親の莫大な代償

2021-07-26 15:30:00 | 日記

下記の記事はプレジデントオンラインからの借用(コピー)です  記事はテキストに変換していますから画像は出ません

就職氷河期世代の男性(40)はこれまで一度も働いたことがない。半ばひきこもり状態であることを、実家で同居する年金暮らしの父親(73)からたびたび叱責され、関係は悪い。父親がファイナンシャルプランナーに家計相談すると、一定の資産があるおかげで、両親が他界後、長男が80代になっても赤字転落は免れることがわかった。それにより父親の不安や焦りは軽減されたものの、“一生無職”を貫く長男の老後のために身代わりで払う代償の大きさとは――。
就職氷河期世代の40歳男性、努力はしたが働かないまま今に至る
私(ファイナンシャルプランナー)の事務所は東京にありますが、面談による相談だけでなく、郵送での相談も受け付けています。地方にお住まいの方も東京に来ることなく相談できるようにと始めましたが、コロナ禍で面談を避けるために利用する人も増えました。
今回ご紹介するのは、5年ほど前の相談ですので、新型コロナとは関係ありませんが、郵送でのご相談の申込みでした。
【家族構成】
・父親:73歳(年金生活)年金額198万円
・母親:70歳(年金生活)年金額85万円
・長男:40歳(無職)
________________________________
【資産】
・預貯金:約3500万円
・自宅:戸建て持ち家
________________________________
【家計】
・収入 年283万円(夫婦年金合計)
・支出 年252万円
(内訳)
生活費 年210万円(月17万5000円)
住居費 年30万円
保険料 年12万円
73歳父「社会復帰をさせ、自立した生活ができるようにしたい」
ご相談を申し込んできたのは父親(73)です。子供は息子(40)ひとりですが、ひきこもり状態で仕事をしていません。大学卒業時は就職氷河期で、就職が決まらないまま卒業を迎えてしまいました。資格取得を目指したものの、なかなか試験に合格できず、就職もしないままに時間だけが経過し、ますます就職が難しくなってしまいました。
親は、長男が仕事をするようにと、いろいろと手を打ちましたが、うまくいきませんでした。結局、一度も働いたことがありません。特に父親は仕事をしない長男をたびたび叱責しましたが、本人はかえって心を閉ざしてしまい、ひきこもり状態になってしまったそうです。
今では親子の会話もほとんどありません。
手紙の文面では、「なんとか社会復帰をさせ、自立した生活ができるようにしたい」と、父親の心境がつづられていました。
生涯にわたって“働けない”ことを前提にシミュレーションを作成
郵送でのご相談の場合は、こちらから「質問シート」という記入用紙を送ります。そこに家計の状況や保有資産額、家族の状況などを記載してもらい、返送してもらいます。私は、いただいた情報を分析し、将来の家計状況をシミュレーションします。将来の状況が厳しいと予想されれば、改善策を提案します。
一般の家計相談の場合は、ご相談者夫婦が、80歳、90歳になるぐらいまでを分析しますが、働けない子どものご家族からの相談では、子どもが80歳、90歳になるまでを分析していきます。
子供の年齢によっては、かなり長い分析となり、誤差が小さくないのですが、現状から将来の状況を把握していただくことが目的です。
親が健在なうちは、働かない子どもがいても、それほど問題はありません。特に介護費用がかさばらなければ、親の年金で当面の生活費は賄えます。しかし、親が亡くなった後は、貯蓄を取り崩しながらの生活になります(親は、平均的な年齢で亡くなるものとして計算します)。
本人の平均寿命ぐらいまで貯蓄が維持できるようであれば、ひと安心です。ひきこもりの子は支出が少ないことも多く、けっして無理な話ではありません。
逆に、早期に貯蓄が枯渇し、資金不足となる場合は、何らかの対応策を検討します。自宅の売却を行ったり、兄弟姉妹で遺産の配分を考慮してもらったりすることもあります。
子どもが少しでも収入を得られれば、本人の老後の状況はかなり改善されます。しかし、基本は子どもが生涯にわたって“働けない”ということを前提にシミュレーションを作成します。もちろん、働けるようになればそれに越したことはないのですが、シミュレーションではあえて悪い状況が続くものとして、対応策を考えておきたいものです。
長男が40年後に80代になっても赤字転落せず、貯蓄が維持できる
今回も、「質問シート」に記入していただいた情報を基に分析をし、現在の状況が続いた場合での長男の将来の家計状況のシミュレーションを作成しました(父親は87歳で他界、90歳で他界、長男ひとり暮らしの際の支出は月16万4000円という想定)。
この家族の場合は、親がある程度の金融資産(貯金3500万円)と自宅(戸建て持ち家)を保有しており、さらに、ひとりっ子ですべての財産を相続することができたため、長男が40年後に80代になっても貯蓄が維持できそうでした(長男が85歳時の親の貯金残高は約900万円)。本人が浪費家でなかったことも幸いしたようです。現状、家族3人の基本生活費(食費や光熱水費、日用品費など)は月17万5000円で、長男のための特別大きなコストはないようです。
父親からの電話「困るよ。これでは息子に見せられない」
私はご提案資料に書きました。
「現状では、ご長男の老後まで貯蓄が維持できそうで、親亡き後もそれほど心配はありません。ただし今後、支出が増えてしまうと資金不足となることもありますので、くれぐれも油断は禁物です」
こちらから送ったご提案資料が届いたころ、父親から電話がかかってきました。
「困るよ。これでは息子に見せられない」
父親は、今のままだと将来は厳しい状況になることを見せて、本人に危機感を持たせたいと考えていたようです。それまでも「このままでは将来生きていけない」と、長男の奮起を促す叱責を繰り返しており、私の家計診断もその材料としたかったようです。そのために私にシミュレーションの作成を依頼したのに、届いた結果が「今のままで問題ない」では怒るのも無理からぬことです。
確かにこのままの状態が続けば、親亡き後、長男は親が築いた貯蓄を取り崩しながら生活していくことになってしまいます。
しかし、長男は収入を得られないものの、浪費家ではなく、支出は多くありません。「自立した生活」とは言えないまでも、比較的「堅実な生活」であり、ひきこもりの子どもの中では、比較的良いケースだと言えるでしょう。ささやかな生活を維持していけば、生活保護などの公的支援を受けずに、生涯を送ることは十分に可能です。
「お金が不足すれば働くわけではない、安心させてあげてください」
「お金が不足すれば働くようになる、というものでもありません。このままでも心配ないと、まずは安心させてあげてください」
私は言いました。父親の返事の声からは、怪訝そうな顔を浮かべている様子が想像できました。
このあたりは、郵送での相談の至らない点かもしれません。面談でのご相談であれば、いろいろと話ができますので、十分なコミュニケーションが取れます。ご相談に来られたご家族も、こちらの意図を汲み取ってくれます。その点、郵送だけのやり取りでは気持ちの問題など、お互いに把握が難しい部分があります。
その時のご相談はそれで終わりましたが、数年後に父親からまた連絡をもらいました。それによると、提案書を受け取った時は納得できなかったけれども、「働かなくても生きていくことはできる」とわかり、親としても焦らなくなったそうです。無理に働くことを勧めなくなり、就職の話はしなくなりました。
すると徐々に、親子で会話が増え、コミュニケーションが取れるようになってきたそうです。まだまだ社会復帰ができたと言える状況ではありませんが、以前と比べると、家の中がギスギスすることなく、雰囲気が良くなってきたと、明るい声で報告してくれました。
子どもが50歳前後になると、親の心境にも変化が生じてくるケースが少なくありません。「子どもが立ち直ることを諦める」とも言えますが、「子どもの現状を受け入れる」ということでもあります。
すると親子の関係が、それまでの敵対関係ではなくなり、打ち解けた関係に変わってくるというのです。子どもにとっても、親が自分の現状を受け入れてくれてこそ、心を開こうという気になるのではないでしょうか。
村井 英一ファイナンシャルプランナー


難病で終わったはずの人生を救ったのは、弟の腸内細菌だった

2021-07-26 13:30:00 | 日記

下記の記事は朝日新聞Reライフからの借用(コピー)です


大腸にすむ腸内細菌は、検査法の飛躍的な進歩などにより、私たちの健康増進に役立つさまざまな働きが明らかになってきました。最新の治療例や、医療現場の動向などをリポートする「大腸最前線」。その1回目は、難病の潰瘍(かいよう)性大腸炎を「便移植療法」で乗り越えた、神奈川県在住で公認会計士の片山武蔵さん(35)の体験談を紹介します。

 あれは29歳の時でした。突然、食中毒のような症状に襲われたのです。原因不明の急性腸炎で、吐き気や下痢が収まっても、腹痛や体調不良が続き、出勤することもできなくなりました。
 色々な病院で診てもらって1カ月後ぐらいで、ようやく潰瘍性大腸炎と診断されました。
 潰瘍性大腸炎は、国の指定難病です。その原因は解明されておらず、「治す方法はない」とも言われました。一度発症すると完治するのが難しい病気なのです。一般的な治療は、免疫抑制剤を飲むこと。5年ほど前は、体の免疫系の暴走が原因ではないかと、考えられていたのです。
一時は「人生終わった」とも
 でも私は、免疫抑制剤を服用することを拒みました。というのも、当時の主治医の話では、免疫抑制剤はだんだん効かなくなり、そうなるともっと強い薬に替えなければならなくなる。その繰り返しが一生続くのではたまりません。免疫抑制剤に頼るのは、もう他に選択肢がなくなった、最後の手段にしたいと考えたのです。
 それで、免疫抑制剤以外に治療法はないか、本を読んだりして必死で探しました。東洋医学の漢方やおきゅう、民間療法も試してみました。でも、やはり効果はありませんでした。
潰瘍性大腸炎と闘っていたころを振り返る、公認会計士の片山武蔵さん (撮影)村上宗一郎
 その間にも症状は進んでゆきます 。何がつらいかと言えば、おなかはすくのに食事ができないこと。荒れて血だらけになった腸内に、塩を塗りこんだような激痛に襲われるので、固形物が食べられないのです。それで、プロテインの粉のような、水に溶いて飲む栄養剤をとるのですが、これがまずくて閉口しました。腹痛は24時間続くので、眠ってもすぐ目覚めてしまいます。食べていないのでトイレにかけこんでも、血の混じった粘液しか出てきません。そんなこんなで半月ほどで15キロ以上も体重が落ち、最後には文字どおり骨と皮になってしまいました。
 そんな調子では仕事にもなりませんので、勤めていた外資系の大手会計事務所も辞めました。実家に戻り、ぼうぜんと日々を送る中で、公認会計士の仕事も、将来の結婚も諦めなければならないのかと、人生が終わったような気持ちでしたね。
腸内細菌に注目 臨床研究に参加
 一方で私は、治らない病気だという事実が受け入れられませんでした。それで医学書だけでなく健康や人生に関する本などにあたって読みあさりました。
 そんな折に、テレビで腸内細菌についての特集番組を見たのです。そこでは、がんや糖尿病、アレルギーといった病気や、肥満、老化の原因などに腸内細菌が関係していることが紹介されていました。また、抗生剤の投与によって腸内フローラのバランスが崩れ、ある細菌が異常に増殖することで腸内に炎症などを起こす偽膜性大腸炎についても触れていて、米国では、健康な人の腸内細菌を移植する便移植療法が行われ、効果を上げつつあることも知りました。
 調べると、国内でも便移植療法の臨床研究が行われていることがわかり、わらにもすがる思いで、順天堂大の石川大准教授のもとを訪ね、相談しました。発症から1年後の2015年3月のことです。診察の結果はかなりの重症で、石川先生から治療内容について詳しくお話を聞き、納得して臨床研究に参加することを決断しました。
 翌月から、2週間にわたって3種類の抗菌薬を服用しつづけました。いったん腸内細菌を極限まで減らし、無菌状態に近い環境までリセットするためだと聞きました。それが済めば、いよいよ移植です。手術は4月22日に行われました。
 石川先生の話だと、現在は、誰の腸内細菌を移植するのが有効か、色々調べて最適なマッチングを探すのだそうですが、5年前は、まだ研究開始間もなくであり、安全性の面から健康な家族の便を使う方式になっていました。なので私は、弟に便の提供を頼みました。体質的に、彼が一番自分に近いのではないかと考えたのです。
 便移植療法というのは、酸素に触れない環境下で、便を生理食塩水と混ぜ合わせ、そこから抽出した腸内細菌溶液を、内視鏡を使って私の腸内に移植するというものです。
抗菌薬併用便移植療法の概念図(提供:順天堂大学消化器内科学講座 石川大准教授)
劇的な効果実感 体重も元に
 手術が始まってから約2時間して麻酔から目が覚めると、明らかな体調の変化を感じました。その日の夕食は出された病院食を完食でき、それだけでは足りないと感じたぐらいで、その変化は「治った」と思えるほど劇的な感じでした。逆に言えば、術前の体調がそれほどひどかったということなのかもしれません。
 あれほど悩まされていた腹痛がなくなり、ずっと下痢だったのが普通の便が出るようになりました。毎日、3食おいしく食べることができるようになり、2カ月ほどで体重も戻って、今では65キロぐらいあります。
 私は便移植療法のおかげで潰瘍性大腸炎の症状が劇的に改善されたのですが、同じ治療を受けた全員に効果が出るとは限りません。石川先生によると、臨床研究を受けた170人のうち7割近くの人で効果が確認できたのだそうです。私がうまくいったのは、弟の腸内細菌との相性が良かったのか、あるいは私があえて免疫抑制剤を使わなかったため、免疫力が落ちていなかったのではないか、などと想像しています。
 潰瘍性大腸炎の研究は、依然として道半ばで、原因の解明も決定的な治療法もいまだ分かっていない状況です。でも、便移植療法を経験した私は、腸内細菌の異常が原因で、その改善こそが治療のカギになると信じています。
 便移植を受けてから5年。いつか再発するかもしれないという不安は、今も抱えています。現在は、新型コロナウイルス感染拡大により便移植療法の臨床研究の新規受付は一時中断中とのことですが、同じ病気に悩む皆さんが誰でも受けられる治療法として認められる日が、早く来ることを願っています。今も私は、石川先生の元に3カ月おきに通い、定期的に腸内環境などをチェックしてもらっています。私は定期健康診断のつもりで受診を続けているのですが、この間の私の検査データが、今後の研究にもいかされることを願っています。(談)
片山 武蔵(かたやま・むさし)
公認会計士
1984年、神奈川県生まれ。大学卒業後、外資系の会計事務所で勤務するが、潰瘍(かいよう)性大腸炎の発症により退職。


眞子さまのご結婚問題 小室佳代さんの「告白」で強固になった膠着状態

2021-07-26 11:00:00 | 日記

下記はNEWSポストセブンオンラインからの借用(コピー)です

日本中が注目する秋篠宮家長女・眞子さまの結婚問題の進展に影響を与えかねない“事件”の発生に、皇室関係者が頭を抱えている。眞子さまの婚約内定者である小室圭さんの母・佳代さんが、6月22日発売の『週刊文春WOMAN』に登場。小室さんについて語る一方、眞子さまとのプライベートなやり取りも明らかにしたのだ。本来ならば、皇族方とのやり取りを許可なしに公にすることはあり得ない。宮内庁関係者も、
「もし眞子さまが小室家に嫁がれることがあれば、佳代さんはさらに皇室のプライベートを知りうる立場になります。それなのに、皇族方との私的なやり取りを公にすることの重大さを理解していないのは、本当に恐ろしいことです」
 と、驚きと戸惑いを隠さない。しかも佳代さんは、
《いつ死んでもいいと思うこともありました。明日死のう、と。今だってそう思うことはあります。本当に心身ともにつらくて……》
《二年ほど前には周りの人たちに『さようなら』と別れを告げて、いなくなろうとしていたんです》
と、自死願望があったことまで語った。今回の佳代さんの告白は、眞子さまのご結婚問題にどんな影響を与えるのだろうか。
「この告白で、結婚問題が前進することはありえないでしょう。むしろ、佳代さんは“しゃべってしまう”ということを印象づけたに過ぎません。『自殺願望』という恐ろしいことを、記者との雑談で平気で口にするとは、皇室の関係者としてありえないことです。皇室も宮内庁も、眞子さまが結婚されるか否かにかかわらず、徹底して佳代さんと距離を置くでしょう」(前出・宮内庁関係者)
 これだけの逆風の中では、国民の祝福を得て「納采の儀」を行い、皇族における通常の結婚に至るのは不可能に近いだろう。その一方で、4月に小室さんが金銭トラブルを説明した文書について、「眞子さまのご意向が大きかった」と明かされるなど、眞子さまが小室家の借金問題に介入されていることは明白だ。
「もう、眞子さまのお心は秋篠宮家ではなく、小室家にある。眞子さまはもはや『小室家の一員』と言う人までいます」(皇室記者)
さらに、今回の佳代さんの告白が、膠着状態をより強固なものにさせそうだ。
「ご夫妻への“恫喝”とも取れる佳代さんの『自殺願望』告白によって、今後ますます皇室側から破談は言い出しづらくなるでしょう。かといって、現状では結婚させることも難しい。もう今後何年もこの膠着状態が続いていくのかもしれません」(皇室関係者)
 5月に留学先だった米フォーダム大学ロースクールを卒業した小室さんだが、いまだ動きは見せていない。小室さんが何らかのアクションを起こさない限り、ご結婚問題が前進することはないだろう。
「眞子さまが小室家の金銭トラブル対応の“陣頭指揮”を執られているままでは、結婚を進めることは難しいでしょう。秋篠宮ご夫妻は、はじめこそ眞子さまに“目を覚ましてほしい”と願われていたそうですが、近頃はもうお手上げ状態。眞子さまを説得されることは諦めつつあると聞きます」(別の宮内庁関係者)
 佳代さんの「告白」は、結果的に眞子さまのご結婚の日を遠いものにしたようだ。


「肺活」が今、何より重要だといえる医学的理由

2021-07-26 08:30:00 | 日記

下記は東洋経済オンラインからの借用(コピー)です

自律神経研究の第一人者・小林弘幸医師。自律神経の重要性を一般に広めてきた小林氏は、日本人が今もっともケアしなければならない体の部位は「肺」だと警鐘を鳴らしています。
肺機能が衰えることによる自律神経や心身のパフォーマンスへの影響を「呼吸器研究」「循環器研究」「自律神経学」の視点から紐解いている『最高の体調を引き出す 超肺活』より一部抜粋、再編集。「今、肺トレーニングが必要とされる理由」をお伝えします。
エクモが教えてくれる「肺」の重要性
新型コロナウイルス感染症(COVID19)の流行によって、ECMO(エクモ)の存在が一般にも広く知られるようになりました。エクモのメカニズムを知ると、私たちの肺が普段どんな働きをしているのかよくわかります。
エクモによる治療は、まず太ももの付け根の静脈にカニューレという太い管を挿入したあと、血液を体の外に取り出し、ポンプによって人工肺に血液を送ります。ここまでの血液は二酸化炭素を含んでいるため「暗い赤色」をしています。人工肺に送られた血液は、酸素と二酸化炭素の「ガス交換」が行われ、カニューレを通して首の血管に戻されます。このときの血液は、酸素を含んでいるため「鮮やかな赤色」をしています。
このようにして、エクモは肺の機能を代理で行い、その間に肺の回復を待ち、通常の治療ではただちに絶命してしまいかねない患者の命を救っているのです。
私が外科研修医時代、エクモの勉強でもっとも驚いたのが、含まれているガスが二酸化炭素か酸素かによって変わる「血液の色」についてでした。
二酸化炭素を含んだ濁った血液が、人工肺を通過すると鮮やかで健康的な色に生まれ変わるさまを見て、「肺」がいかに健康状態に大きな影響を与えるかを思い知りました。そして、知識としてはもちろん知っていましたが、「酸素は血液に乗って全身に運ばれていく」ということを、エクモを目の当たりにして痛感したのです。
肺が担っているもっとも重要な役割は、「呼吸(ガス交換)」です。
酸素と二酸化炭素のガス交換は、肺の中に張り巡らされた気管支の先端にある、「肺胞(はいほう)」と呼ばれる部位で行われています。肺胞の大きさはわずか0.1ミリ程度で、およそ3億から6億個あるといわれています。
肺胞には、毛細血管が網の目のように取り巻いています。息を吸うと、酸素は3億から6億個ある肺胞の中に入り、毛細血管内の血液に溶け込んでいきます。血液は心臓に送られ、心臓から動脈を経由して全身の毛細血管に送られ、およそ1分かけて心臓に戻ってきます。心臓に戻ってきた血液は、肺胞に戻され、また酸素と二酸化炭素がガス交換されて、二酸化炭素は口から吐き出されていくわけです。
新型コロナウイルス感染症の重症患者が、脳梗塞などの「血管系の病気」になることに疑問を抱いた人もいるでしょう。肺の機能は、心臓や血液循環とも密接に関わっているため、呼吸の質によって全身の健康状態は大きく左右されるのです。
肺機能の低下が、心身を不健康にする
さて、肺機能が弱まり、肺胞から酸素を十分に取り込めないと、全身の細胞が酸素不足に陥ります。全身に張り巡らされた毛細血管まで酸素が行き渡らないため、ダルさや慢性疲労を引き起こし、酸欠状態になった細胞はがん化の原因にもなります。
また、脳に十分な酸素が届かないと、集中力が減退したり、うつなどのメンタルトラブルや認知症の一因にもなります。最近、集中力が足りないと感じている人は、肺が衰えて、必要な酸素を取り込めていないという可能性が考えられます。
さらに、肺胞から十分に酸素を取り込めないと、血中の酸素濃度が下がり、足りない酸素を補うために呼吸の回数が増え、浅い呼吸になってしまいます。浅い呼吸は、自律神経のバランスを崩す原因です。
自律神経のバランスが崩れると、血流や腸内環境にも不具合が生じ、血管や内臓の疾患を引き起こしたり、腸におよそ7割生息している免疫細胞の働きを悪くします。
その結果、全身の免疫力が低下する危険性があります。
つまり、ウイルスや病気に負けない強い体をつくるには、諸悪の根源である「肺の劣化」を防ぐことが絶対に必要なのです。
肺の機能の衰えは、自覚しにくいものです。しかし、20代から加齢とともに誰でも肺は衰え、40代になると急速に機能低下が進行することがあります。食生活や生活習慣に気を使っているのに心身がベストではない人は、肺機能の衰えを疑ってみる必要があるでしょう。
肺の衰えは、あきらめるしかないのでしょうか。
答えは、否です。「肺活トレーニング」をすれば、呼吸1回の換気(かんき)量を増やすことができ、血液に酸素を取り込む量を増やし、血中の酸素濃度をアップさせることができます。
換気量とは、呼吸によって出入りする空気の量のこと。安静時の1回の呼吸では平均500ミリリットルの空気が呼吸器の中を出入りしています。このとき注目すべきは、500ミリリットルのうち、およそ150ミリリットルはガス交換に関与しない空気で、この量は「死腔(しくう)量」と呼ばれ、つねに150ミリリットルで一定しています。
解剖学的に死腔とは、呼吸器系の中で肺胞が存在しない部分(鼻から気管支までのスペース)のことを指します。ガス交換に直接関与していない呼吸器です。つまり通常、呼吸1回で500ミリリットルの空気が出入りしても、肺胞に到達するまでに150ミリリットルが失われ、残った平均350ミリリットルの空気が肺胞でガス交換されているわけです。
何歳になっても遅くない! 肺トレで肺を鍛えよう
1回の換気量は、肺活トレーニングによって胸郭(きょうかく)の可動域を広げれば、誰でも増やすことができます。たとえば、1回の換気量が1000ミリリットルに増えれば、死腔量の150ミリリットルを引いて、850ミリリットルの空気がガス交換に使われることになります。
このことが何を意味するかというと、1回の換気量さえ増やせればガス交換に使われる酸素が増え、その結果、血中の酸素濃度も高めることができるということです。
『最高の体調を引き出す超肺活』(アスコム)。
たとえるなら、換気量を増やすこととは、パソコンのCPUを増やすことに似ています。CPUを増やせばスムーズにパソコンを動かせるように、換気量を増やすことでスムーズに肺が酸素を取り込めるようになるイメージです。多少パソコンが古いものでも、CPUが最新なら、問題なく使うことができます。
それと同じで、肺が加齢によって多少衰えていても、換気量を増やせば、いつまでもたっぷりの酸素を体内に取り込むことができるのです。
脳の衰えを防ぐために「脳トレ」が有効なのと同じで、肺の衰えを防ぐためには「肺トレ」が必要です。『最高の体調を引き出す 超肺活』では、医学的に効果が実証されている「肺トレ」を一般の方にもわかりやすく紹介しています。
「肺トレ」により息を吹き返した肺は、ウイルスに負けない免疫力の獲得、質の高い血液循環への改善、そして自律神経の大幅なパフォーマンス向上に貢献してくれることでしょう。ぜひ「肺トレ」を実践し、大変な時代を生き抜く力としてください。
小林 弘幸 : 順天堂大学医学部教授


 がん患者の最後の希望「光免疫療法」の保険診療が開始 腫瘍が縮小? すでに受けられる病院は

2021-07-25 15:30:00 | 日記
記の記事はデイリー新潮オンラインからの借用(コピー)です

主治医から見放されたがん患者にとって、希望の光となるか。昨年、保険適用され、治療がスタートした「光免疫療法」。施術を受けた患者の腫瘍は縮小した? 既に治療が開始された病院とは? 画期的療法の取材を続けるライター・芹澤健介氏が、現状をレポートした。
 ***
 昨年9月、世界に先駆けて日本で承認された「光免疫療法」。現在は世界各国で臨床試験が進むのと並行して、国内の複数の施設で治療も始まっている。
 開発したのは、米国立衛生研究所(NIH)で主任研究員を務める小林久隆氏(59)。いまや世界中から注目を集める医学者だ。
「一研究者として小林先生を心から尊敬しています」
 と言うのは、京都大学iPS細胞研究所所長の山中伸弥教授(58)である。
「最初に光免疫療法のアメリカでの治験結果を見せてもらったとき、僕は本当にびっくり仰天したんです。『がんにこれほど効く治療法ができたのか』って。今後、いろんながんに効くということが実証されていったら、ノーベル賞受賞も十分ありえると思います」
 光免疫療法は、その名の通り、「光」でがんを攻撃すると同時に、患者自身の「免疫」で防御力を高める最新の治療法だ。
 がんを攻撃する際に使われるのは、テレビのリモコンなどにも利用される日常的な「近赤外線」。出力はそれほど高くないので、実際に治療で使う光に直接手をかざしても熱くはない。
 特殊なのは同時に使われる「アキャルックス」という薬剤のほうである。少し専門的な説明になるが、「IR700」という光感受性物質と、「がん細胞の表面に多くあらわれるタンパク質と結合する物質」との複合体で、特定のがん細胞とだけ結合し、近赤外線を当てると急激な化学反応を起こす。バイオベンチャーの楽天メディカルが製造販売を行う新薬だ。この薬も近赤外線も人体への影響は限定的だが、作用の仕組みは非常にダイナミックである。
多くの命を救うのか?(他の写真を見る)
 まずは患者に点滴でこの薬剤を投与。薬剤ががん細胞に行き渡った時点で患部に近赤外線を当てる。その瞬間、薬剤の分子構造が変化し、がん細胞表面に約1万個もの傷がつく。そして、イオン濃度の差で周囲の水が細胞内へ一気に入り込むと、がん細胞が水風船のように膨れて破裂するのだ。ちょうど一つ一つのがん細胞にナノサイズの超小型爆薬を仕掛けて、スイッチオンで根こそぎ破壊していくようなイメージである。この時点で周囲の正常細胞はいっさい傷つけていない。
 だが、これだけでは終わらない。マウス実験では、がん細胞が破壊された次の瞬間、がんが撒き散らした“新鮮で良質”な抗原情報を周辺の免疫細胞が次々とキャッチすることが確認されている。残ったがんを駆逐するべく免疫システムが起動するのだ。また、驚くべきことに、同様にマウス実験にはなるが、同じがん種の再発を防ぐワクチン効果もあるという。
 つまり、光免疫療法は、がんに対する「矛」と「盾」を兼ね備えた画期的な治療法なのだ。
 開発者の小林氏が言う。
「光免疫療法の最大のメリットは、既存の治療法に比べて副作用が格段に少ない点です。周囲の正常細胞にはほとんど影響をおよぼさず、がん細胞だけを選択的に攻撃して取り除くことができる。そのため、原理的には副作用がほとんどないというわけです」
 現在は、一部の頭頸部がんのみが保険診療の対象となっているが、小林氏は「近い将来には8割から9割の固形がん(白血病などの血液のがん以外の、臓器や組織で腫瘍を作るがん)に適用されるはず」と見込む。もしその通りになれば、光免疫療法はがん医療の未来とがん患者の運命を大きく変える稀代のゲームチェンジャーとなる。
自殺率の高いがん
記念すべき承認時の記者会見(他の写真を見る)
 承認されたばかりの新療法。現在、対象になっているのは“切除不能な局所進行または局所再発の頭頸部がん”だけだ。つまり、かなり病状の進んだ〈ステージIII〉か〈ステージIV〉の頭頸部がんである。
 頭頸部がんというのは、咽頭がん、喉頭がん、口腔がん、舌がんなど、顔や首にできるがんの総称だ(脳腫瘍や眼球のがんは除く)。がん全体の中では約5%に過ぎないが、首から下にできるがんとは大きく違う点があるという。
 自らも舌がんを克服し、「頭頸部がん患者友の会」の代表理事を務める佐野敏夫さん(75)は、頭頸部がん治療の問題点を指摘する。
「頭頸部がんは、治った後も問題が多いんです。大きな手術をすれば顔が歪んだり、変形してしまうこともある。手術痕についても、首から下のがんなら服で覆えますが、頭頸部の場合は隠しづらい。その結果、引きこもりや鬱になる人もいる。他のがんと比べて自殺率も高いんです」
 後遺症にも悩まされる。
「私は手術で舌を切除して、5分の1程度しか残ってないので、味もよくわからない。発音も不明瞭になりました。ノドのがんになれば、声を失う可能性もある」
 佐野さんは4回におよぶ口腔手術で唾液腺も切除している。そのため、唾液が出ず、食べ物をうまく飲み込めない。10年以上流動食の生活だという。
「また放射線治療の影響だと思いますが、10年経って骨髄炎を発症しました。そのために12本も歯を抜いて、顎に肩甲骨を移植する大手術を受けました。もし、当時、光免疫療法を受けていたら、術後の経過も現在とは違うものになっていたかもしれません」
ピンポン玉が梅干し大に
 繰り返すが、現在、光免疫療法の施術対象となっている「一部の頭頚部がん」は、「他の臓器や組織に遠隔転移をしていない局所進行および再発の頭頸部がん」に限られている。他に治療法がなく、大血管への癒着がないなどの付帯条件もあり、まだまだ対象者が少ないのが実情である。治療が開始されてから半年を経るが、6月中旬の時点で、患者は全国でわずか10人ほどにとどまっている。
 治療を行う施設は国内で19箇所以上が登録されているが(掲載の表)、先行して治療が行われたのは、「国立がん研究センター東病院(千葉)」「東京医科大学病院」「愛知県がんセンター病院」「神戸大学医学部附属病院」の4施設。
 そのうち、国立がん研究センター東病院で治療を受けた2人は、口腔がんが再発した50代男性と中咽頭がんが再発した50代女性。2人とも施術の後にがんの縮小が確認され、現在は経過をみているという。
医療従事者向けの光免疫療法の講習会(他の写真を見る)
 東京医科大学病院では、喉頭がんの70代男性を施術した。担当した塚原清彰耳鼻咽喉科・頭頸部外科主任教授(47)に話を聞いた。
 塚原氏はこれまで3千例を超える頭頸部腫瘍手術を行ってきたベテラン外科医だ。かなり早い段階から臨床現場に手術支援ロボット「ダヴィンチ」を導入するなど先進的な考えを持った医師でもあり、常にがん患者のためによりよい治療法を探してきた。
「光免疫療法の話は学会でも昨年ぐらいから頻繁に聞くようになってきて、うちの病院でもぜひ導入しようという話になりました」
 担当の患者のがんは、原発巣の咽頭(ノドの奥)から顎下リンパ節に転移しており、すでにリンパ節外にも浸潤(周囲の組織を破壊しながらがんが広がること)していた。一般的な分類で言えば〈ステージIV〉。もうその先は厳しいというぎりぎりの段階だった。
「顎の下に転移した腫瘍はピンポン玉ほどの大きさがあって、半分ほどがノドの皮膚を突き破って剥き出しになっている状態でした」
 塚原氏が患者に「光免疫療法という新しい治療法が使えそうだ」と伝えると、「ぜひ受けてみたい」と同意を得た。
「施術の前日にこの薬剤を投与して、当日は直射日光が当たらないように布団をかぶってもらってオペ室に運びました」
 光免疫療法を施術する医師たちは、レーザー光から目を守るために濃緑のレンズのゴーグルをかける。今回の症例では、患部に直径1ミリの光ファイバーを数本刺し、50ジュールという規定の出力で近赤外線を約4分照射した。
「施術を開始すると、腫瘍部分から発光しているように感じました。腫瘍は、場合によっては一晩でポロッと取れることもあるそうですが、私が診た患者さんの場合は、むしろ翌日にはあまり変化がありませんでした。4日後に顔の腫れがあって、その後、腫れが引くのと同時に腫瘍も縮小した感じですね。ピンポン玉大だった腫瘍は、1回の照射で梅干し大にまで小さくなりました」
 従来の手術や抗がん剤、放射線療法などの“三大療法”とは違って、「光免疫療法は患者さんの負担が少ないことを実感しています」と塚原氏は言う。
「たとえば、今回の患者さんが手術を選択すると、腫瘍を切除すると同時に、欠損部分を埋めるために肩などから筋肉を移植する手術も必要になるんです。そのため合計で7時間程度はかかってしまう」
 しかし、光免疫療法なら全身麻酔の導入を含めて1時間程度で済む。患者の肉体的、精神的な負担は軽い。
「施術後も数日間は直射日光を避ける必要がありますが、集中治療室に入ることもなく、翌日にはご飯も普通に食べていました。ですからご本人もすごく喜んで、『もう少し(腫瘍を)小さくしたいね』ということで、6週間後に再び施術を行いました。2回目は腫瘍の中と腫瘍表面に光を当てる方法を併用しました」
 この患者のがんは2回目の施術でも完全には消え去らなかったが、塚原氏は光免疫療法を導入してよかったと考えている。
「まだ1例目ですので、今後も経過を見て検証していく必要はあります。ですが、『臨床現場での選択肢が増えた』『がんを倒す武器がひとつ増えた』というのが正直な実感です。将来的には放射線治療を回避するために光免疫療法が使えるようになればいいと思いますし、早期のがんについても適用されればいいなと思います。そうなればどんどんやっていきたいですね」
 光免疫療法への注目度は国内外で日増しに高まってきている。NHKの国際放送も海外向けの医療番組(「Medical Frontiers」)で特集を組んだ。その中で、再発した口腔がんに光免疫療法を施術した男性患者はこう言った。
「(光免疫療法は)まさしく僕が望んでいる治療法だなと感じました」
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現場から改善
 光免疫療法は、これまでの“三大療法”やオプジーボなどの免疫療法に次ぐ“第五のがん治療法”になると期待されている。
 だが“開発段階”から実際の“医療”へと移行するのは、そうたやすいことではない。光免疫療法の治験にも関わるある医師に言わせれば、「仮に2万マイルを飛ぶ高性能な飛行機が作れたとしても、目的地に辿り着くまでは最後の1マイルであっても気を抜けない」のだ。
 愛知県がんセンターの頭頸部外科部長、花井信広医師(51)も「治験や治療は慎重に進めていく必要があります」と気を引き締める。
「でもせっかく保険診療で行えるようになったので、今後は、早期の症例や別の部位まで適用拡大されていくのが希望です。そのために現場から提案して改善していきたいところもある」
 たとえば、近赤外線の照射装置。喉仏の骨の裏側など、どうしても光が届きにくい場所があるので、光ファイバーの形状にもバリエーションが欲しいと言う。
「それから、光免疫療法に関する正確な情報も広めていきたいですね。これはまだ一般にはあまり知られていない情報ですが、施術後にかなり痛がる患者さんもいます。中にはほとんど痛みを感じない人もいますが、がん細胞だけが無痛でスルリと取れるわけではないということです」
 また、同じ頭頸部がんでも光免疫療法があまり効かないがんもあるという。
「そもそもこの薬剤アキャルックスがターゲットにしているのは、がん細胞表面に出ているEGFR(上皮成長因子受容体)というがんの増殖に関わるタンパク質なんですね」
 そのタンパク質を目印(抗原)にして、この薬剤を構成する抗体がカギとカギ穴のようにぴったり結合する仕組みだ。
 EGFRは、頭頸部がんの典型的な組織型である「扁平上皮がん」においては90%以上の発現率が認められる。だが、同じ頭頸部の領域でも組織型が違う「甲状腺がん」での発現率はそれほど高くない。そのため、現在、「甲状腺がん」は光免疫療法の一般的な治療対象とは認識されていない。
「つまり、薬剤が結合しないがん細胞には光免疫療法は効きません。逆に言えば、EGFRが発現しているなら、頭頸部がん以外のがんにも効くはずです」
 実際、国立がん研究センター東病院ではすでに同じEGFRをターゲットにした「食道がん」や「胃がん」の治験が始まっている。
 開発者の小林氏は言う。
「その他、この薬剤はEGFRを多く発現している『子宮頸がん』や、トリプルネガティブと呼ばれる、これまで治療が難しかったタイプの『乳がん』にも有効だと考えられています」
 続けて、
「EGFRを発現していない別のがんをターゲットにするには、別の抗原(カギ)とうまく結合するような抗体(カギ穴)に変えてやればいいわけです」
 今後はさらに、対象者の多い大腸がんや生存率の低い膵臓(すいぞう)がんなどの抗原をターゲットにした第二、第三の新薬の開発が待たれるところだ。
 そのため、研究をさらに加速させる拠点として、来年4月には関西医大に「光免疫医学研究所」が開設される。所長にはNIHとの兼任で小林氏が就任する。
三木谷浩史氏(他の写真を見る)
多額の私財を投入
 光免疫療法の開発には、小林氏を筆頭に多くのがん研究者や医師が関わっている。だが、資金面で最大の援助をしてきたのは、実父のがんをきっかけに小林氏と出会ったという楽天メディカルの会長兼CEO・三木谷浩史氏(56)だ。私財だけですでに数百億円という巨額の資金を投入している。
 三木谷氏が言う。
「私が小林先生と出会ったのは2013年。まだマウスの実験しかしていない頃でした。『あれから8年でよくここまで来た』と評価してくれる人もいますが、個人的にはぜんぜん遅いと思っています。もちろん、人命がかかっていますので慎重にならざるを得ませんが、気持ちとしてはもっとスピードアップさせたい。将来的には、虫歯を治療するみたいに気軽にがんを治せるようにしたいんです」
 気軽に、という意味では実際の治療費も気になる。
 現在、光免疫療法の費用は薬代だけで約400万円かかる。決して安くはない。だが「高額療養費制度」を使えば、例えば69歳以下の自己負担の月額上限は、年収により3・5万円から高くても30万円程度となる。年収が500万円程度の人なら13万7千円ほどだ。医療の進歩により国庫がパンクしかねないという懸念もあるが、今後、適用拡大等により、政府が定めた基準以上の市場規模になれば、薬価がもっと下がっていく可能性もあるだろう。
 今もっとも懸念されるのは、「光免疫療法」という言葉が一人歩きを始めていることかもしれない。
 がん患者やその家族は、一日千秋の思いで光免疫療法の適用拡大を待っている。だが、研究の最前線に立つ小林氏は「現時点では、自分が受けられる標準治療を優先してください」と念を押す。がんに立ち向かうには今受けられるベストな治療を選択することだ。
現在、光免疫療法を受けられる国内の主な施設(他の写真を見る)
 しかし、ネットで検索すれば、患者の気持ちを弄(もてあそ)ぶかのように、「光免疫療法」を標榜するクリニックのサイトが数多くヒットする。しっかり頭に入れておいてほしいのは、現時点では、掲載の表にない施設で、保険が利かない自由診療で行われている光免疫療法はすべて“ニセモノ”だということ。もっともらしい御託を並べて、高額な治療費を騙し取ろうとする悪徳クリニックである。
 このあたりの情報整理の今後の旗振り役は、光免疫療法に関するライセンスを独占的に有している楽天メディカルにも期待したい。
 光免疫療法は多くの可能性を秘めた治療法である。今後、対応できるがん種が次々と拡大されていけば、医師や病院からも見放されてしまったような“がん難民”にとっても大きな希望の光となるに違いない。
 現在は、日本に続き、アメリカ、台湾などの国々で臨床試験が進んでいる。光免疫療法を待ち望む人たちが世界中にいる。
芹澤健介(せりざわけんすけ)
ライター。1973年、沖縄県生まれ。横浜国立大学卒。編集者、構成作家として活動し、NHK国際放送の番組制作にも携わる。著書に『コンビニ外国人』、『血と水の一滴 沖縄に散った青年軍医』、『死後離婚』(共著)など。
現在光免疫療法を受けられる国内の主な施設
治療開始施設
愛知県立がんセンター病院
神戸大学医学部附属病院
国立がん研究センター東病院
開始予定施設
大阪国際がんセンター
大坂大学医学部附属病院
岡山大学病院
がん研有明病院
関西医科大学附属病院
九州大学病院
埼玉医科大学国際医療センター
京都大学医学部附属病院
久留米大学病院
東京医科歯科大学病院医学部付属病院
鳥取大学医学部付属病院
広島大学病院
北海道大学病院
宮城県立がんセンター
横浜市立大学附属病院