眉山のふもと

徳島のくらし

31番竹林寺から33番雪蹊寺へ

2019-11-11 10:51:35 | 四国遍路

高知に来ました
前回は4月に27~30番
今日は31~33番を一日で回ります


五台山展望台から





竹林寺五重塔


一言地蔵
お願いは一言だけ


境内にある神社の狛犬は親子

開祖は弘法大師の師匠だったという1200年の歴史がある竹林寺
境内にはお遍路さん以外にも参拝客が多くせわしなくお参りして
本堂の写真が取れなかった

時間と体力が許さず31番、32番はタクシーで回ることにしていた
高知駅で乗ったのがたまたま「おもてなしタクシー」で
運転手さんのガイドが素晴らしく
途中で五台山展望台やコスモス畑で車を降りて案内してくれた
竹林寺ではお参りの間もガイドしてくれて
その間の停車中の料金は「お接待」でした





禅師峰寺入り口で運転手さんとお別れ













32番禅師峰寺からは歩いて33番雪蹊寺を目指す
浦戸大橋を渡るコースもあるが渡し船で渡るコースを選ぶ
渡し船乗り場まで1時間半と言われたが
途中で回り道をしてしまい2時間かかった
いろんな人に道を教えてもらって歩く



浦戸大橋を見ながら船で渡る

船は無料で1時間に一本
時間になると自転車の中学生などがやってきた
乗客は10人ぐらい
10分もかからずに対岸に到着

ここから雪蹊寺までは30分ぐらいで到着した







雪蹊寺からは路線バスで高知駅へ
歩いた距離は15K

2005年から始めた遍路
今年3月に82番までお参りしたが
27番から33番までが欠番(?)になっていた
5月に27~30番、今日31番から33番までお参りして
なんとか1番から82番までつながった
長くかかったが
来年には結願したいものだ
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モンゴル高原牧畜品種改良を再考する⑤

2019-11-07 22:26:48 | 翻訳
4.終わりに

 本稿ではウジュムチン牛を調査の対象にしたが、当該地で実施されている畜種改良事業は、計画経済期から続く改良研究とは異なるものの、成果主義に陥り、評価目標を踏襲し、無意識に研究の方向を誤った。現代化、市場経済化が急速に進む中、生態系維持と有機自然食品は見過ごせないタグである。多様な文化や無形文化財の保護も国際的なメルクマールになっている今、研究評価システムを時代に即したものに変化させなくはならない。畜種改良目標の刷新は急務である。新しい目標は短期的な利益重視ではなく生態系と文化継承、畜産業の潜在力を持続させるものでなくてはならない。過ちは繰り返すべきではない。


原文は下から読めます
https://mp.weixin.qq.com/s/AaVDDoHRGq7N7AP3Bl3U_Q
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モンゴル高原牧畜品種改良を再考する④

2019-11-07 20:42:13 | 翻訳
3.畜種改良評価目標の見直し

 畜種改良事業の科学的な評価システムは現段階ではできあがっていない。これまでの評価システムは、生態系維持の観点からの評価基準、規模の大きい投資と利益に対する科学的判断がなくおろそかである。従来の評価基準に頼り科学的根拠に基づかない誤った指導で、内モンゴル畜種改良技術と経済政策は長期的に有効な制度保証に欠けるものとなっている。気付かないうちに事実をごまかし、打つべき手を打たなかった結果、持続的な経済効果はなく、草原生態系を損ない、優れた伝統文化の継承を阻害してきた。

 計画経済の時代、畜種改良は計画的強制的であった。市場経済が優先されるようになった現在、安易に計画経済時代のような畜種改良をすべきではない。改良方法や牧民の技術や受け入れ能力を協議し、強制ではなく漸進的に行う。

 我々の調査の中で、行政と郷鎮企業による在来牛改良事業のマイナス面を見つけた。牧民は新畜種(シンメンタール種)の導入に疑問を持ち、この事業にはっきりと反対の意思表示する者もいた。
 東ウジュムチン旗バインホブル・ガチャーを例にとる。調査に応じた牧民は苛立たし気に以下のように述べた。係員が在来種の雄牛を強制的に去勢し、メス牛にホルスタイン種の人工授精を強行した。その結果、70%のメス牛は妊娠せず牧民は大損害を被った。在来種であるウジュムチン牛は、長期にわたる自然淘汰を経てこの地に適応した優れた品種であると牧民は認識している。伝統的放牧方式でも安定した生産をあげており、畜種改良の必要は全くない。

 単に肉の生産量だけを見ればウジュムチン種は外来種シンメンタール種に及ばない。しかし適応能力は言うまでもなく、飼料代も考慮に入れるとウジュムチン種が明らかに勝る。モンゴル高原の草原牧畜業は優位性を保ってきた要因は、この牛の放牧は少ない投資で高い生産量があり利益が大きく、それに加えて本物の有機製品だからである。このような特徴は21世紀に求められる食品の安全性に合致し、将来性がある。もしシンメンタール種との交配に成功しても雑種の子孫は経費が掛かり、一頭当たりの産量は高いが、総量が確保される保証はない。もし集約的牧畜業経営を実施しても農場の面積が厳しく制限されているので競争力がない。調査からわかるように、牧民の視点は軽視することができない。

 残念ながらこれまでの期間、草原牧畜の持つ底力を軽視し「遊牧は遅れている」という偏見のもとで、伝統的遊牧方式は日増しに廃れ、その競争力を見過ごされてきた。遊牧に適した優れた畜種に対する強制的品種改良を大規模に行ったことは誤りであったのは明白である。囲い飼い式の牧畜から無制限の交配強制になり、不要な経済損失になった。畜種の長所はそれにふさわしい環境でのみ発揮されることを無視したからである。モンゴル高原の生態環境は多元的であり、もとより畜種も多い。畜舎飼いに適した地域では無理のないように計画的に改良を進めればよい。しかし、その方法を他の地域に広めても適応するとはかぎらない。過ぎたるは及ばざるごとしである。誤りを繰り返せば、経済的損失にとどまらず草原生態系を危険にさらす。

 東ウジュムチン旗マンドボラグ鎮エレンゴビ・ガチャーの牧民は10年間の努力の結果、赤アングス牛雑種の育成に成功した。畜群は300頭になり、年間収入は数十万元になった。牧民は畜種改良に反対ではない。畜舎飼いの技術を習得する能力がないわけではなく、我々研究者や専門技術者よりも視野の広い見通しを持っているのである。モンゴル人の持つ故郷の生態系に対する知識・技能技術を理解し、又モンゴル草原の多様な自然、全面的に遊牧にふさわしい草原もあれば、半遊牧の草地もあり、人の力によって手を加えることによって畜舎飼いができるような牧場もあることを考えなければならない。畜種改良事業はその土地に適した措置を取れば、伝統に培われたモンゴル牧畜業の創造的現代化が可能である。勇気をもって牧民の意見を聞くことが成功のカギである。

  失敗と成功の両面からの例を述べたが、どの方式で新種を普及させるにしろ必要なことは当該地の生態環境に注意し、早急に行うのではなく時間をかけて適応させ、投資に見合った収益の保証があるのかを考慮しなければならない。他の土地で優良だと認められた畜種をむりやりに投入した東ウジュムチンでは大きな損害を与えた。

 調査によると、数十年間の大量の外来種の導入により、東ウジュムチン在来血統牛は数頭を残すのみになってしまった。生物DNAの多様性保存の必要性からみると、取り返しのつかない損失である。長きにわたる自然の中で選び抜かれた畜種とモンゴル高原の生態環境、生物多様性、文化多様性は、多様性を求められる商品需要と合致し、今後の研究開発の将来性は大きい。在来種の持っている現在や今後における価値は見くびることができない。研究上の価値(DNAバンクを含む)、新製品開発、それに伴う芸術的文化的な価値もある。多様な在来種遺伝子の保存は、全ての地球上の生物の多様性を保持につながる。
 我々は子孫と人類のために、純血ウジュムチン在来種牛の保護基地を創設することを地方行政に提案する。
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モンゴル高原牧畜品種改良を再考する③

2019-11-06 20:15:25 | 翻訳
2.モンゴル高原「五畜」の生態適応能力

 厳しい草原の生態環境の下で、モンゴル五畜は自然条件に適応してきた。遊牧生活様式の継続の中で自然淘汰され、又モンゴル人の心を込めた育成により優れた品種が生まれた。劉書潤の『草原は静かなり―遊牧は時代遅れか』に、「モンゴル牛、モンゴル馬、モンゴル羊、在来種駱駝がモンゴル高原の厳しい自然に適応し遊牧に最適であるのは、牧民の長きにわたる優良品種の生育によるものだ」とある。
 家畜は牧民の生産、生活、戦闘、交通の必需品であり、移動する商店、動く銀行であった。モンゴル五畜は牧民の文化と感情を託した友人であり、草原生態の一部であり、モンゴル草原遊牧に適し、牧民に受け入れられる存在である。

 畜種の改良や導入で遊牧の足を引っ張り、定住や畜舎飼いの理由にしたり長期的な生態系の利益効果を考えない種の導入や改良をすべきではない。目前の利益にだけに目を奪われ、幾千年も共に歩んできた優れた在来種とモンゴル伝統を捨て去るのは、見識の狭い筋が通らない研究であり、将来に悲しむべき教訓を残すだろう。
 劉鐘齢『モンゴル族の伝統的生態認識と持続発展理論』には、「遊牧生活の中で家畜の耐性が鍛えられ、寒冷気候と粗放放牧管理に適応する。草原の生態系の中で進化し耐性の優れた品種が選ばれ、粗放放牧の中で最高の生産力が形成された」とある。モンゴル五畜の過酷な自然に対する耐性は生態系の維持と経済発展の財産であり、この財産を手放すことは経済的損失であり、草原生態系の安全とモンゴル文化の継承に大きな傷を残す。

 モンゴル高原の先祖達は自然と人の選択によりモンゴル馬、モンゴル牛、モンゴルふたこぶ駱駝、モンゴル羊、モンゴルヤギなどの優れた品種を作り出してきた。

 モンゴル馬は太りやすく痩せにくく、雪害にあっても雪をかき分けて草を食べ冬を乗り越える。モンゴル馬は毒性のある草を識別する能力があり、毒草を誤食することが少なく、病気に強い。

 モンゴル牛は囲いの中で越冬させるのでなく、一年中草原で放牧する。飼料を与えなくとも自分で草を食べて、翌年には繁殖する。モンゴル牛の特性は、粗食に耐え、放牧が容易で、早く太り、気温の大幅な変動にも耐久力がある。-50℃から35℃の気温変化に耐え、病気に対する抵抗力が強く、肉質がよく、出肉力も多く、他種の牛とは比べ物にならないほど優れている。モンゴル牛はモンゴル草原の「絶非偶然」である。

 モンゴルふたこぶ駱駝は、飢渇や砂嵐に耐え、重荷を負い(積載200~250㎏、一日走行距離30~40㎞)ゴビや砂漠を行くことができる(一人を乗せて日に70~80㎞)。4歳で成熟し、2年に一度出産し、30~40年生きる。モンゴルふたこぶ駱駝の最重積載量は214㎏の記録がある。記憶力が良く数100㎞離れた場所から生まれた土地に帰って来る。10日間の断食にも使役することができ、30日絶食しても命に別状はない。食べ物があれば水がなくとも72~85日耐えられる。食べ物がなく水だけの条件の下では89~131日生きるというから駱駝の生命力に驚くほかはない。

 モンゴル羊は厳しい自然環境下の粗放飼育に適し、資金投入が少なくてもある程度の収益がある品種である。放牧すると移動しながらよく食べ、早く太る。人が馬に乗って放牧すれば草を求めて食べながら一日で15~20㎞移動する。雪で山に入れなくなれば蹄で雪をかき分け草を食べて命をつなぐ。一年中野ざらしで放牧でき、冬期の大雪大風のときは西北側に簡単な風よけを設置し夜をすごす。モンゴル羊は渇きに強いのが特徴で、秋の太らせる時期に牧民は「オトル」という簡単な野営テントに泊まりながら放牧する。数日から十数日水がなくても野生のネギ、ニラ、瓦松(ツメレンゲ)、黄き(キバナオウギ)などの水分の多い牧草を食べると、渇きをいやし体を太らせる効果がある。

 モンゴルヤギは適応力と病気への抵抗力が高く、荒野、半砂漠、山地の牧場でも収益を得ることができ、特にカシミヤは利益が高い。目下、柵囲い飼育の方法のカシミア生産試験中であるが、この飼育方法では繊維が太く硬くなり良い糸の原料にはならず、品質面で劣る。優良なカシミヤの生産は畜種だけではなく特殊な方法が必要であることがわかる。モンゴルカシミヤの品質は世界の他地区のものと比べて優れている。細く、しなやかで、光沢があり、浄毛率などの品質指数はいずれも高い。わが国がカシミア生産の先進国でありつづけるためにはモンゴルヤギとモンゴル文化は欠くべからざるものである。

 以上述べたように、モンゴル草原五畜の自然と生態系への適応力は一つの財産である。品種改良と外来種の導入は科学研究の正しい方向を見失い、予期しない生態系の災害と伝統文化の喪失を招くものである。

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モンゴル高原牧畜品種改良を再考する②

2019-11-05 14:36:55 | 翻訳
1.生態環境とモンゴル五畜の模塑

 モンゴル国の学者モ・トムルザブは「モンゴル遊牧民」の中で、草原五畜の生活習慣・繁殖力・生産潜在力と生態系の関係を詳しく述べている(ウランバートル・1999年)この中で太陽光と五畜の進化が強調されている。

 モンゴル高原の年間太陽照射時間は2600~3300時間であり、同緯度の中部アジア地区と比較すると100~300時間長い。このことがモンゴル畜種の防寒防暑適応力を高めている。又、モンゴル畜種の毛色は黒が多く、太陽光の吸収に役立ち冬から春の厳寒期に体温を守ることができる。例えば、モンゴル綿羊の頭、目の周辺、足は黒または茶褐色であることから、太陽光輻射を遮り体温調整に適している。

 研究によると草原の家畜の生育に最適の気温は16~21℃であり、この気温で羊やヤギは日に日に太る。しかし、モンゴル高原での家畜生育に適する気温の期間は非常に短い。モンゴル国北部の山間地では寒冷期が200日に及び、うち100日が-25℃であり、モンゴル国南部の草原やゴビ地区では寒冷期は189~192日である。

 このようにモンゴルの家畜は一年の大部分を厳寒期の中で過ごしこの環境に適応し、体温の低下を防いでいる。自然の選択と牧民による交配によって、モンゴル五畜は強い耐寒性を持つ。
(1)冬を迎える時期になると急速に毛皮層が分厚く、柔毛が伸び、体毛が密になる。
(2)秋に急速に太り、体内に多量の脂肪を蓄える。駱駝の二つのこぶ、羊の大きな尻尾、ヤギと牛の腰部脂肪層、馬の肩甲部胸部腹部の脂身などである。
(3)モンゴル五畜の毛皮には中が空洞になっている絨毛を多く含み、低温や風雪の襲撃から身を守り、劣悪な気候の中でも生き延びることができる。
(4)温暖な地方(アラブ地域)の家畜に比べて体が小さく機敏、胴体が太く、耳・足・首・尻尾が短く体毛が密である。この体形は体温の消失を防ぎ寒さに強く厳寒な環境に適する。


 モンゴル五畜は水分は全て雨と雪から摂取する。モンゴル高原の気候は乾燥であり、年間平均降水量は100~400㎜、降水分布は季節や地方によって異なるが、年間降水総量の86~96%は4~9月に集中しており、中でも7~8月の降水量が総降水量の66~78%を占めている。

 このような水資源状況下、四季を通じて家畜の水やりには苦労があり、さらに厳冬期には地表の水が凍結する。しかしモンゴル高原のかなりの地域では長期の積雪があり、家畜は雪から水分を摂取する。雪は薄く柔らかい層になり家畜の放牧には大変役に立つ。

 積雪は熱伝導率が低く、地表に対しても保温効果があり、土壌の凍結を防いでいる。柔らかく積もった雪は食べ物を探して走り回る家畜の四肢の凍傷を防ぐ。雪に覆われた草原は暴風が吹いても牧草が剥がれず、春になってからの家畜食糧を確保する。もし、積雪量が多くなり雪が深くなると家畜を放牧することができず厳冬期に飼料が不足し、「白害」となる。
 モンゴル高原の積雪期は北部の山岳部120~150日、東部地区70~120日、ゴビ地区30~60日である。積雪深度は平均3~20㎝、最高で40~50㎝に達する。積雪が25~30㎜を越えるとヤギ、羊などの小家畜は放牧できない。

 モンゴル五畜はそのヒズメで雪をかき分けて下の牧草を食べることができる。この能力はモンゴル国北部(アルタイ、ハンガイ地区)の家畜に特に顕著である。

 モンゴル高原は風が強い。強風は五畜の生育に直接間接の影響を与え、牧畜産業に損害がある。強風が吹き起こした雪粒や土埃によって家畜が小川に落ちたり雪や砂に埋もれて死ぬ。冬春期の強風は秒速14~16mになり、家畜が草を食べることができない。強風は家畜の毛皮を吹き分け、寒さに曝す。

 であるから、暴風暴雪に備える温室や囲いは安全な越冬のために重要なものである。牧民は暴風雪の前に必ず家畜を風の当たらない囲いに入れ、暴風雪が来た時には温室に入れて家畜が風に吹き飛ばされるのを防がなければならない。低地では暴風雪のために度々家畜が雪や土により圧死し、人が命を失うこともある。

 モンゴル高原の在来種は生態適応能力があり、厳しい自然に対する防衛本能を備えているのである。
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モンゴル高原牧畜品種改良を再考する①

2019-11-04 21:41:34 | 翻訳
モンゴル高原牧畜品種改良を再考する
             内モンゴル自治区社会科学院社会科学研究所 オロンチ

               原文: 原生態民族文化学刊・2013.1.


【要旨】
モンゴル牧民には元々その土地の自然生態系に適した品質の優れた家畜があった。だがこの良質の家畜種は近代的集約牧畜業の需要を満たし難く、この半世紀科学者は畜産品種改良に取り組んできた。それらは短期的にみると一定の経済効果をあげることができたが、無意識にではあるが当該地の生態系の安全性やモンゴル族の優れた伝統文化を犠牲にし、品種改良によって得た短期的経済利益を相殺する結果になっている。この間の教訓を顧み、科学研究の手落ちを逐一公表し、生態系と民族文化をなおざりにすべきではないことを明確にする。

【キーワード】
家畜品種改良、生態系への影響、システム評価



 モンゴル高原の範囲は我が国内モンゴル自治区とモンゴル国におよぶ。長期にわたりこの地に生きてきたモンゴル人牧民は世代にわたる経験の蓄積によって、モンゴル高原の生態環境の上に、土地の自然と生態系に適応した家畜の品種を育て、経済発展を支えただけでなく、心を込めて草原を守り人と土地の良い関係をつくり上げてきた。優れた家畜種はモンゴル文化の一部であり、家畜と草原は互いに不可欠の共存共栄の要素となっている。

しかし、ここ半世紀あまり、これら在来種だけでは現代集約牧畜業を包括することができず、短期的な経済効果に駆り立てられ、科学者は外来種の導入に始まり品種の交雑改良へと大規模な品種改良に取り組んだ。これはある程度の経済効果をもたらしたが、草原の生態系の安全を犠牲にするものであった。

この歴史を顧みると、経済効果というノルマを達成するためだけの研究の傾向に、偏りや誤りがあったことは明白である。モンゴル高原の草原生態系を守り今後の持続的な利用のために事実を明らかにし、牧畜産業研究は生態系の安全に配慮しながらモンゴル民族の優れた伝統文化を受け継ぎ、利用し発展させなければならない。もし今後も目標の見直しをしなければ、成功したかのように見える研究結果が、生態系の破壊者となってしまう。

 本論文では、調査例を挙げながら、モンゴル高原の家畜品種改良の利害得失を明らかにし、モンゴル高原の生態再建のためにこの間の深刻な事態を教訓としたい。(理論的な側面だけでなく経済や技術の側面から考えると)在来種と外来種や改良種は互いに補い合う関係によってのみ経済性と生態系の安全、民族文化の伝承が可能である。

 しかし生物間の属性上の矛盾は当然であり、異なる品種間で矛盾が拡大し人為的に淘汰されるなら、短期的な経済効果はあっても、生態系は破壊され民族文化は消滅する。ひいては経済効果も相殺され人と生態系のバランスが崩れる。このことをモンゴル高原の生態系にとっての悲痛な教訓にしなければならない。

 在来種は特定の民族の生活環境の中で、長い間に自然と人によって選ばれ定着した品種である。自然と環境への適応性に優れている。しかし、このような品種は伝統的な牧畜業には適応するが、現代的集約化された牧畜業の需要を満たせず経済効果が低い。製品規格基準に達しないので、市価も低くなる。外来種の導入か人工交雑種によって(在来種の)不足を補い、集約牧畜業的な利益と品質が高まるのである。
 
 しかし、外来種や改良種の飼育は相応の設備と専門的な技能が必要であり、そのためには大規模な資金と技術を投入しなければならない。技術、設備、飼育管理の導入には経済的問題があり、技術や管理を変革が必要であり、伝統文化を覆してしまうことになる。在来種、外来種、改良種の配合は行政の管理技術の責任であり、牧民の賛同と協力を得なければならない。

 行政は単一的な経済効果や技術目標(外来種交雑種の過度の依頼)ではなく、品種改良を指導実践し在来種の生態適応と牧民の伝統文化の優位性を配慮する必要がある。内モンゴルにおける家畜種改良推進は成果を上げているが、優良在来種の絶滅に追い込み、生態系及びモンゴルの牧畜の危機を招いている。表面的には畜種改良は技術の問題であるが、畜種改良を地方行政の成果や研究部門の評価指数にするなら、草原と人との調和はなくなるのである。
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