鳥居ネタをもう一投稿
「春日鳥居」とは、奈良市に鎮座する春日大社にある鳥居と普通は誰もが思うでしょう。
しかし実は、春日大社に建っている鳥居は「春日鳥居」とは、全く異なる種類の鳥居だった事が以前からこのブログで幾度も登場している鳥居研究の権威 根岸博士の調査によって判明しています。
（彼は「奈良春日形鳥居」と云う名称を用いて「春日鳥居」とは別物として区分していたようです。）
どういう事かをこの機会にご紹介したいと思います。
まずは、春日鳥居の型の説明から
図版：ウィキペディアより加工
特徴としては
（１）笠木の反り増が無く島木と共に水平であること
（２）笠木と島木の木口が垂直に切り落とされていること
（３）額束があること
（４）笠木の木口の形が五角形をしていること
春日鳥居を定義する場合は、以上の条件を満たしている必要があります。
しかし、奈良市にある春日大社にある鳥居を見てもらいますと
こちらが一の鳥居です。（撮影：2004-5月）
笠木に反り増しが発生しています。なおかつ木口が垂直にカットされておらず斜めになっています。
次に、二の鳥居をご紹介します。
見ての通り、こちらも笠木に反り増しがあり木口が垂直になっていません。
これでは春日大社にある鳥居は“春日鳥居”とは呼べません。
根岸の著した鳥居研究者のバイブル“鳥居の研究”の中で
「春日鳥居とは、勿論現在奈良春日神社にある鳥居の形式をいうのではない。実をいうと、近年までは、宮大工の雛形本か、或いは神社建築の様式を載せた書籍中に見受けるに過ぎない形式で、実物はどこにもみつからなかった」
と、あります。
では、もともと春日鳥居は存在しなかったのか？と、言う話になりますが同著の中で根岸は、以下の様に推察しています。
（春日鳥居が）「春日神社に起こったものとすれば、同神社現在の楼門は治承二年に始まるもので、古くは鳥居だったといい、承保二年に鳥居を廃して四足門にしたのだと云うから、その頃の鳥居の形式が所謂の春日鳥居であって、門形更改と同時に何時か姿を過去へ没入したのかとも想像される。」
少々わかりにくい文書ですが、要は
「建て替える以前は、本来の「春日鳥居」の形式だった事が想像できる」と、言うことです。
では、現在正真正銘の「春日鳥居」を見る事はかなわないのでしょうか？
実は、根岸も書いているのですが東京の「港区三田」と「大田区大森」にある春日神社に石造の春日鳥居が存在している事を突き止めています。
情報を元に、現地へ赴いてみました。
残念ながら今の鳥居は建て治されてしまっていて八幡型に変わっていました。
同著の中で紹介されている建替え前の（港区）三田神社の春日鳥居 （図版は「鳥居の研究」より連載）
出来れば、その形状を今の時代にまで継承し続けて頂きたかったものです。
上の図は、たまたまWEBでみつけた同社の名所図会ですが明治以前までは、見る限り普通の鳥居だった様です。
前述の同著の中で、根岸は春日神社の楼門が建て替えられたのが藤原前期頃と推測しています。藤原氏前期と言うと平安～鎌倉にかけてで、この当時「延喜式」が集成されています。神仏習合もますます盛んに行われていた時で、そんな背景から春日鳥居に限らずいろいろな形式の鳥居が派生してきた事は予想できます。
今のところ大森の春日神社は、未訪ですが
ここのブログに掲載されれいる同社の鳥居写真を見る限り微妙の様です。ここも建て直されているのかもしれません。
根岸は 「三田と大森の石造二基は、現在（根岸が生きていた時代）に於ける春日鳥居の代表的存在である」
と、書いています。
ですが両方とも現存していないのです。
やはり見ることは叶わないのでしょうか？…。
実は、三田と言うと「港区三田」が有名なのですが、実は目黒区にも「三田」が存在し春日神社があるのです。
そしてここの鳥居がなんと！！
由緒正しき「春日鳥居」の形状をしているです。
目黒三田 春日神社 これぞ！由緒正しき春日鳥居のかたち （撮影：2004-4月）
また、ここの由緒に気になる記述がありました。
“天徳2年（956年）藤原正房が武蔵国の国司として赴任する際、春日大社の神霊を勧進した”、”天文年間(1533～55)荏原目黒三田より、港区三田高台の今の地に遷座した。”
そもそも慶応大学の隣に鎮座する今の春日神社は、もともとこの目黒区三田の地にあったわけで、この手狭な境内のちっぽけな社が実は、当時由緒正しき春日神社だったのです。ここの鳥居が正式な春日鳥居の形状をしているのもこれで合点がいきます。
大森（新井宿）春日神社
祭祀：天児屋根神・建御賀豆智神・伊波比主神
【住所】東京都大田区中央1-14-1
【地図】
三田 春日神社
祭祀；天児屋根神
【住所】東京都港区三田2-13-9
【地図】
目黒三田 春日神社
祭祀：天児屋根命
【住所】東京都目黒区三田1-9-17
【地図】
（2013-05-13 図版追加、一部加筆）
「春日鳥居」とは、奈良市に鎮座する春日大社にある鳥居と普通は誰もが思うでしょう。
しかし実は、春日大社に建っている鳥居は「春日鳥居」とは、全く異なる種類の鳥居だった事が以前からこのブログで幾度も登場している鳥居研究の権威 根岸博士の調査によって判明しています。
（彼は「奈良春日形鳥居」と云う名称を用いて「春日鳥居」とは別物として区分していたようです。）
どういう事かをこの機会にご紹介したいと思います。
まずは、春日鳥居の型の説明から
図版：ウィキペディアより加工特徴としては
（１）笠木の反り増が無く島木と共に水平であること
（２）笠木と島木の木口が垂直に切り落とされていること
（３）額束があること
（４）笠木の木口の形が五角形をしていること
春日鳥居を定義する場合は、以上の条件を満たしている必要があります。
しかし、奈良市にある春日大社にある鳥居を見てもらいますと
こちらが一の鳥居です。（撮影：2004-5月）
笠木に反り増しが発生しています。なおかつ木口が垂直にカットされておらず斜めになっています。
次に、二の鳥居をご紹介します。
見ての通り、こちらも笠木に反り増しがあり木口が垂直になっていません。
これでは春日大社にある鳥居は“春日鳥居”とは呼べません。
根岸の著した鳥居研究者のバイブル“鳥居の研究”の中で
「春日鳥居とは、勿論現在奈良春日神社にある鳥居の形式をいうのではない。実をいうと、近年までは、宮大工の雛形本か、或いは神社建築の様式を載せた書籍中に見受けるに過ぎない形式で、実物はどこにもみつからなかった」
と、あります。
では、もともと春日鳥居は存在しなかったのか？と、言う話になりますが同著の中で根岸は、以下の様に推察しています。
（春日鳥居が）「春日神社に起こったものとすれば、同神社現在の楼門は治承二年に始まるもので、古くは鳥居だったといい、承保二年に鳥居を廃して四足門にしたのだと云うから、その頃の鳥居の形式が所謂の春日鳥居であって、門形更改と同時に何時か姿を過去へ没入したのかとも想像される。」
少々わかりにくい文書ですが、要は
「建て替える以前は、本来の「春日鳥居」の形式だった事が想像できる」と、言うことです。
では、現在正真正銘の「春日鳥居」を見る事はかなわないのでしょうか？
実は、根岸も書いているのですが東京の「港区三田」と「大田区大森」にある春日神社に石造の春日鳥居が存在している事を突き止めています。
情報を元に、現地へ赴いてみました。
残念ながら今の鳥居は建て治されてしまっていて八幡型に変わっていました。
同著の中で紹介されている建替え前の（港区）三田神社の春日鳥居 （図版は「鳥居の研究」より連載）
出来れば、その形状を今の時代にまで継承し続けて頂きたかったものです。
上の図は、たまたまWEBでみつけた同社の名所図会ですが明治以前までは、見る限り普通の鳥居だった様です。
前述の同著の中で、根岸は春日神社の楼門が建て替えられたのが藤原前期頃と推測しています。藤原氏前期と言うと平安～鎌倉にかけてで、この当時「延喜式」が集成されています。神仏習合もますます盛んに行われていた時で、そんな背景から春日鳥居に限らずいろいろな形式の鳥居が派生してきた事は予想できます。
今のところ大森の春日神社は、未訪ですが
ここのブログに掲載されれいる同社の鳥居写真を見る限り微妙の様です。ここも建て直されているのかもしれません。
根岸は 「三田と大森の石造二基は、現在（根岸が生きていた時代）に於ける春日鳥居の代表的存在である」
と、書いています。
ですが両方とも現存していないのです。
やはり見ることは叶わないのでしょうか？…。
実は、三田と言うと「港区三田」が有名なのですが、実は目黒区にも「三田」が存在し春日神社があるのです。
そしてここの鳥居がなんと！！
由緒正しき「春日鳥居」の形状をしているです。
目黒三田 春日神社 これぞ！由緒正しき春日鳥居のかたち （撮影：2004-4月）
また、ここの由緒に気になる記述がありました。
“天徳2年（956年）藤原正房が武蔵国の国司として赴任する際、春日大社の神霊を勧進した”、”天文年間(1533～55)荏原目黒三田より、港区三田高台の今の地に遷座した。”
そもそも慶応大学の隣に鎮座する今の春日神社は、もともとこの目黒区三田の地にあったわけで、この手狭な境内のちっぽけな社が実は、当時由緒正しき春日神社だったのです。ここの鳥居が正式な春日鳥居の形状をしているのもこれで合点がいきます。
大森（新井宿）春日神社
祭祀：天児屋根神・建御賀豆智神・伊波比主神
【住所】東京都大田区中央1-14-1
【地図】
三田 春日神社
祭祀；天児屋根神
【住所】東京都港区三田2-13-9
【地図】
目黒三田 春日神社
祭祀：天児屋根命
【住所】東京都目黒区三田1-9-17
【地図】
（2013-05-13 図版追加、一部加筆）
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます