少し前になりますが、台湾と中国大陸それぞれで、歴史的とも言えるセレモニーがありました。
日本でも小さく報道されたようですが、台湾側と中国大陸側それぞれが、相手側に旅行事務の出先機関を開設したのです。
5月4日には、中国大陸の北京に、台湾側・台湾海峡両岸観光旅遊協会(台旅会)の北京事務所がオープンしました。
台旅会は、中華民国交通部観光局の外郭民間団体という位置づけです。
上の写真:(提供 交通部観光局)
4日、北京で行われた台旅会事務所オープンに駆けつけた頼瑟珍・観光局長(右3)
そして続く5月9日には、中国大陸側・海峡両岸旅遊交流協会(海旅会)の台湾事務所が、台北市内にオープンしました。
この海旅会は、中共国務院国家旅遊局が設けた民間団体です。
9日、台北市内で行われた海旅会事務所の開設記念パーティー
(提供 CNA)
中華民国政府と北京当局は複雑な関係にあり、それぞれが直接対話を行う事はできません。
そのため、台湾側は海峡交流基金会、中国大陸側は海峡両岸関係協会という窓口機関に、交渉の権限を与えて対話を進めていますが、これらの窓口機関も、相手方への出先機関などは設けていません。
台旅会・海旅会は、あくまでも旅行事務の窓口であり民間団体の形ではありますが、双方の公的機関を背景に持つ機関が相互に事務所を設置したのは、1949年に中華民国政府が台湾に移って以来、初めての事です。
このおよそ60年間の間に両岸が経てきた歴史を振り返る時、今回の旅行事務所相互設置はまさに、両岸間における新たな歴史の1ページではないかという気がします。
2008年7月に、中国大陸旅行客の台湾観光の受入が大幅に拡大されて以降、台湾を訪れる中国大陸旅行客の数は増え続けています。
今年は早くも、長年1位の座にあった日本人旅行客数を抜いており、今年度は100万人をゆうに超えてトップとなる事がほぼ確実視されています。
交通部観光局では、台旅会の北京事務所開設によって、中国大陸旅行客の更なる呼び込みに期待をかけています。
一方、中国大陸側・海旅会は、台湾事務所開設によって、増加する中国大陸旅行客への台湾でのケアや、台湾の人々に対する中国大陸各地の観光地紹介に加え、中国大陸旅行客の台湾観光をいっそう促進したい考えです。
9日、海旅会台湾事務所開設に合わせ、
中国大陸福建省・福州と台湾双方の旅行業者代表が協力協定にサイン
後列中央は范貴山・海旅会台湾事務所主任
范貴山氏は、「今年中に、福州からだけで5万7000人の旅行客を台湾に送る」と意気込んでいます。
・・・ん????
どうやら、中国大陸側の海旅会・台湾事務所にとっては、本来台湾側の業務であるはずの「中国大陸観光客の台湾への呼び込み」も、主要業務の一つのようです。
今回の歴史的とも言える旅行事務の出先機関相互設置は、両岸関係が良好である事の証でしょう。
両岸関係の平和と安定は非常に重要ですし、中国大陸のより多くの人々に、台湾を知ってもらう事も大切です。
増え続ける中国大陸からの旅行客が、台湾に少なくない経済効果をもたらしているのも事実です。
ですが、「送れよ増やせよ」では、本当の台湾理解にはつながりませんし、友好ムードが演出される中、中国大陸からの一方的な経済的恩恵だけが蓄積されていく事になります。
台湾の旅行市場において日本は今後、人数の上ではトップの座を明け渡す事になるでしょうが、他に例を見ないリピーターの多さや台湾社会に溶け込んだ多様な旅行プランは、長年積み重ねられた、台湾への感情や理解があるからこそです。
中国大陸に初めてできた、事実上台湾の公的機関の下部組織だという事で、台旅会の北京事務所には早速、何かを勘違いした中国大陸の人々から「台湾にいるらしい親戚を探して欲しい」「この贈り物を台湾に届けてくれないか」など、旅行事務とはまったく関係ない依頼が相次いで困っているそうです。
ですが、台旅会の職員たちの親切な対応を受けた中国大陸の来訪者からは、「中国の役所とはずいぶん違う」という感想も聞こえます。
旅行事務窓口という形で両岸双方の歴史に重ねられた新たな1ページが、両岸双方の相手方に対する理解を、より本質的なものへと変化させる節目であってほしい欲しいと願わずにはいられません。(華)
北京と上海の両方に事務所があればベンリーだ。
------------------
★ とうとうやっとのことで、
台湾省が祖国中国と平和統一されたと思っているのでしょうね。