風の回廊

風を感じたら気ままに書こうと思う。

東日本大地震―福島第一原発「未知の領域へ」

2011年03月13日 | 政治・時事
マグニチュード9.0という、これまでに世界で類を見ない巨大地震に襲われ、命を落とされた方のご冥福を心よりお祈りいたします。またご不明になられた方の一刻も早い救出と被災された多くの人たちの救済が速やかに行われるように、ただ祈るだけです。
祈るだけで言葉もありません。

このような絶望的な状況の中で、自分でできることをささやかにするしかありません。ささやかなそれぞれの行為が、多様性を生み出し大きな力になるはずです。
そう思い無力感を感じながらも、情報を精査し、ツイッターで情報を流しています。
被災地では、ライフラインが破壊され、情報も遮断してしまい、今もそれほど変わらない状態が続いています。壊滅的な被害を受けた気仙沼市では、11日の早い段階から、青森県と岩手県は11日深夜から、他に情報を知らせる術がないので公式にツイッターを採用しました。
ツイッターでは、さまざまな情報が大量に流れています。相変わらずろくでもない情報もありますが、阪神・淡路大震災、中越地震を体験された方や、ボランティア活動された方からの、貴重な情報が寄せられたり、被災地での避難場所、交通情報、炊き出し場所が、グーグルマップを利用して掲載されたり、医療関係による応急手当の仕方が流れたり、医師が「気軽に相談を」との実に数多くの多様な情報が流れています。また、情報を英語、韓国語、中国語に訳してツイートしている人たち。
そしてそれを広めようとリツイーとする人たち。
どれだけ被災者の方たちに届いたか判りませんが、多くの人たちが、励まし、支援していることは伝わっていると思います。一方で、デマが流布していることも事実で、リツイートする際には、確認が必要です。
いずれにしても、今何が起り、どんな状況なのかということを共有し、伝えることも、支援や再興に向けて必要です。

現状の共有ということで、福島第一原発で何が起こり、何が行われているのか。を知ることもとても重要なことです。
ツイッター上でも、反原発の声が大量に流れ、「今はそのような時ではない。被災者をどう救済するかが大切」と戒めたり、「反対なら代替エネルギーを明示しろ」とか実に様々な意見が流れていますが、今福島第一原発で起こっていることを考えれば、これまで原発に興味を持つことなく平穏に暮らしてきた人たちが、実態を知れば、反対の声が起るのは当たり前で、反対活動家にしても、これを機にさらに反対を訴えたくなるは当たり前。それに対し「反対なら代替エネルギーを示せ」とか「原発分のエネルギーを使わない世の中になってから反対せよ」とか、もうこの状態で思考停止ですね。救済という認識は、反対、推進の立場に関わらず共通する思いであることは、容易に推察できるはずです。
反対する人も支持し推進する人も、しなやかに現状を知り、共有することが大切です。
なぜなら、今福島第一原発で起こり、それを何とか止めようとしていることは、これまで人類が経験したことのない「未知の領域」に属するからです。
「未知の領域」と指摘したのは、アメリカの専門家です。

政府発表や報道どおり、福島第一、1号機では、二重三重の自動安全冷却装置が機能しなくなりました。このことはすでに、安全が保障されなければいけない原子炉として、破綻していることを意味します。大地震で原子炉が破綻したことは、日本が原発と共存できる状況ではないことを実証してしまい、二重三重の冷却装置が稼働しなくなった後の人力による制御は、付け足し過ぎず、海水とホウ酸水注入による冷却は、他に選択のしようがない最終的な手段で、実際の事故で初めて行われた「未知の領域」だったのです。
この手段は必ずしもうまくいくとは言えず、再臨界を招く恐れのあるリスクの高い手段です。しかし、もし冷却できず、融解が進み、格納容器が融ければ大爆発を起こし、チェルノブイリと同じような惨劇を招きます。

原子炉は、核燃料とそれを包む圧力容器とさらにそれを包む格納容器と建物で構成されているようですが、福島第一1号機では、炉心で冷却制御を失い、高熱により炉心溶解が起り、その蒸気が格納容器外に漏れ、建物との空間で水素爆発を起こし、建物が骨組みを残しただけで吹っ飛びました。その爆発で建物と格納容器内に充満した放射能を含む水蒸気が放散し、すでに被爆が確認された人もいて、その数は、報道されているように増えています。

人の生命を脅かす状況が起っている現実。「未知の領域」を現在進行している現実を考えれば、原発反対も推進もなく、しなやかな気持ちで現実を知ることが必要です。
でなければ、こうした困難を超えることもできないし、先は見えません。かたちにはまっていては、何も見えてこない。

昨日政府発表の前に、反原発グループ主催の記者会見とその前に、東芝で格納容器を以前設計していた方の独占インタビューが、報道されました。
その方が語っていたことが、その後の官房長官の発表で証明されたことは、とても印象的です。政府の報道を間違いだとは言いません。しかし、具体性に欠けるし、具体性の欠如から、安心感も生まれません。会見も遅いし被災者の人たちの不安も重なります。

昨日の記者会見と独占インタビューは、Ustreamの生中継にも関わらず、5万人を超える人が視聴し、同時に流れる視聴者のコメントは、何が行われているか知ることができて良かった。最悪のケースではないことが分かり安心した。という声が多く、有益だったと思います。
一方で、原発反対グループ主催だから、プロパガンダだというコメントも見られました。
たしかに、会見の前後で反対を訴えていますが、その部分を除いても、元設計者が語る、原子炉の詳細と「今何が起っているのか」という説明をしなやかに共有することは、とても大切だと思います。
生中継から、事実を掴み取るのは、視聴者の体験と知識、思考という力量次第。
この会見を見ずに、内容の一部を知ったとみられる、一部のだけを取り上げ、批判していたツイートを見かけましたが、思考停止以前の話です。しなやかさの欠片もない。

もう一度言います。今私たちは「未知の領域」にいるのだから。


昨日行われた記者会見のアーカイブです。http://iwakamiyasumi.com/
*岩上安身(フリージャーナリスト)オフィシャルサイト

そして、昨日に続き今日も同団体による記者会見が、17時から行われ、上記サイトの9chで生放送される予定です。
ぜひご覧ください。またアーカイブされると思うので、お時間のない方はアーカイブをご覧ください。

こちらは、ロイターによる被災地の画像です。
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-19972320110313




武井繁明