番外編 猪木vsアリ

　今夜、午後7時よりテレビ朝日系列で放送される「50時間テレビ、伝説のスポーツ名勝負」で実に33年ぶりにあの、アントニオ猪木vsモハメド・アリが再現される。プロレスラーとプロボクサーの対決…それも現役の世界ヘビー級王者がプロレスラーと闘うなんて、信じられないことだった。私は当時、19歳で写真専門学校に通っていた。この試合の入場料は一番安い席で5,000円。今なら1,000円以上に相当する金額だ。私は2階席で望遠レンズを使い、猪木vsアリを撮影していたのだが、世紀の一戦を望遠レンズで撮るのは私のマニア心が許さなかった。
　１R、２R、３R、４Rが過ぎで同じような展開が繰り広げられた。猪木が寝た状態からアリの足を蹴るという繰り返し。「もしかしたら、このまま最終ラウンドまでいくだろう…」と察した私は、２階からアリーナに場所を移し試合が終了することを待っていたのだ。
　予想は的中し、フルラウンドが終わった。ボクシングは通常、試合が終わると同時にカメラマンがエプロンやリング内に入り撮影している。この試合もそうだろう…だから、その瞬間を狙っていた。この時が来た！私はリング上に入り、撮影を試みたのだ。当然、プロではない、一ファンだ。それでも撮影を敢行したのだ。若気の至り、というしかない。ここに１枚の写真が残っている。猪木の左となりにいるカメラマン風が私である。もしかしたら、今夜この場面？が映るかもしれない…なんて、１人で興味津々なのだ。