■ 数字で見る、プレミアリーグ07/08シーズン |
◆ 勝ち点を増やす為には
優勝したマンチェスター・ユナイテッドの数字は以下の通り。
1位 マンチェスター・ユナイテッド 勝ち点 87/27勝6分5敗/得点80 失点22
[06/07シーズン]のマンチェスター・Uの数字は次の通り。『勝ち点 89/28勝5分5敗/得点83 失点27』。ほぼ同じような数字で2連覇しています。
今シーズン優勝したマンチェスター・ユナイテッドの勝ち点は「87」。4位に終わったリバプールの勝ち点は「76」。両チームの勝ち差は「11」となっている。
つまり、単純に4試合相当の勝ち数(12)が足りなかったのである。(当たり前だけど)
では、どうすれば良かったのだろうか?
ちょっとこの点について今シーズンのプレミアの傾向と共に話を進めていく。
■ 負け数を減らすことは難しい |
◆ まず、上位4チームの負け数に目を向けてみる
上位4チームの負け数に、大差はない。もちろん、各チーム負けた試合ごとの内容に目を向ければ中には、“勝てた試合、最低でも引き分けれた試合”はあったと思う。
では、リバプールは、負け試合(4つ)を全て勝っていたら優勝出来たのだろうか?
いや、そもそも無敗で優勝することは可能なのだろうか・・・
アーセナルは、03/04シーズン偉大な記録を打ち立てた。無敗で優勝したのである。その時の上位チームのデータは次の通り。
【2003/2004】 | |||||
1位 | アーセナル | 勝ち点90 | 26勝 | 12分 | 0敗 |
2位 | チェルシー | 勝ち点79 | 24勝 | 7分 | 7敗 |
3位 | マンチェスターU | 勝ち点75 | 23勝 | 6分 | 9敗 |
4位 | リバプール | 勝ち点60 | 16勝 | 12分 | 10敗 |
アーセナルは無敗で優勝したものの引き分け数は、4位のリバプールと同数の「12」であった。
◆ リーグ無敗は、困難
余談であるが、他のリーグでちょっと調べると・・・
91/92シーズンのセリエAで、ACミランが「勝ち点56 22勝12分」で優勝している。ちなみに、この時のミランの監督はカペッロ。
(当時は18チーム34試合。勝ち点の規定が「勝ち」=2点 「引き分け」=1点 )
04/05シーズンのチェルシーは、「勝ち点95 29勝 8分 1敗」。
06/07シーズンのインテルは、「勝ち点97 38勝 30勝 7分1敗」
とこのような成績もある。
(他のリーグ及びもっと昔のデータを調べれば、他にもいくつかこのような数字は出てきそうであるが・・・)
いくら強いチームであっても無敗で優勝するというのは、快挙と言わざるを得ないし、そう簡単に出来ることではない。それはリーグ戦においてある程度の負け数は絶対に起こり得るということである。つまり、「負け数の許容範囲」というものがあると思われる。
◆ 負け数の許容範囲
実際に、プレミアリーグにおいて、どれくらいが負け数の許容範囲なのだろうか?そこで過去16年のデータを調べてみた。(※)
但し、時代性を考慮し「平均負け数」の項目は、2001年以降とした。
(※ 1992年に現在のプレミアリーグというリーグ形態になった)
1.過去16年の中で、一度も二桁(負け数10以上)で優勝したチームは存在しない。
2.優勝争いするチームは、平均負け数「5」前後である。
例えば、06/07シーズン(昨シーズン)優勝争いから離脱したリバプールは「10敗」、アーセナルも「8敗」であった。一方、優勝したユナイテッドは「5敗」、チェルシーは「3敗」であった。このシーズンの負け数も「5」前後と言っても良いと思う。
この傾向は、数字上の差異はあれど、他の欧州リーグにおける上位(CL出場圏内)のチームのデータでも大差はない。
現代の欧州リーグにおける負け数の許容範囲は、負け数「5」前後と言って良いと思う。
つまり、今シーズンのプレミア上位4チームの負け数は、許容範囲であった。言い方を変えれば、負け数「5」前後でなければ、優勝争いが出来ないのである。(※ 実は、Jリーグも差はあれど、ほぼ変わらない。)
余談であるが、各国リーグで上位とその直下(UEFAカップ圏内くらい)の順位に付けるチームとは「負け数」に差がある。
今シーズンのプレミアリーグの上位4チームとそれ以下の違いは顕著である。
5位エバートン 勝ち点65 19勝 8分 11敗
6位アストン・ヴィラ 勝ち点60 16勝 12分 10敗
7位ブラックバーン 勝ち点58 15勝 13分 10敗
この3チームは、優勝争いには一切顔を出すことはなかった。ただ、この辺の“中位の上”の順位のチームの引き分けは、アーセナルとリバプールとさほど差はなかったりする。ただ、もう少し負け数を減らす必要がある。その負けを引き分けにするか勝ちにするかは上位も中位も変わらないのだが・・・。
現実的に考えて、今シーズンのプレミア上位4チームは、これ以上負け数を減らすことは難しかったと思われる。特に、長いリーグ戦の合間に、国内の2つのカップ戦、そして、チャンピオンズリーグ(以下、CL)の試合が組み込まれる。さらに、各国代表クラスの選手は代表の試合にも招集される。数多くの試合数をこなさなければならない選手(チーム)は、このような状況下で 選手(チーム)がシーズン通して常に高いパフォーマンスを維持するのは無理と言える。どこかのタイミングでパフォーマンスが落ち込むことは仕方がないのである。そして、このビッグ4と呼ばれるクラブは、いずれの試合でも上位進出、優勝を求められる状況にある。
リバプールが優勝する為に必要だった「勝ち点12(4試合の勝利)」を“負け”から持ってくることは、現実的には難しかったと言わざるを得ない。では、次に考えるのは、引き分けを勝ちに持っていくことである。
■ 引き分けの数を減らさなければならない |
◆ 「いかにして引き分けの数を減らすか?!」
よく「最低でも勝ち点1(引き分け)」という言葉を聞くが、これはある側面では正しいのだが、今回色々と調べてみると少し考え方を変えなければならないと思った。前述の通り、優勝するには「最低でもこれ以上は負けられない」という数字が存在する。
次に考えなければならないのは、「いかにして引き分けの数を減らすか?!」である。
そして、この引き分け数は、重要なポイントであると思われる。
◆ チェルシーに見る引き分けと勝ちの差
今シーズン最後までマンチェスター・Uと優勝争いを繰り広げたチェルシー。
最終戦、「チェルシーが勝利しマンチェスターUが引き分け以下」という条件が現実的な優勝争いの焦点であった。しかし、ユナイテッドは勝利して、チェルシーは引き分けた。
ただ、この最後の試合に限らず、今シーズンの両チームの差は「引き分け数」の違いであったと思う。それは、最終戦の前(37試合終了時)の順位に目を向けると分かり易い。
1位マンチェスター・U 勝ち点84 26勝 6分 5 敗 2位チェルシー 勝ち点84 25勝 9分 3 敗 |
3勝 | 「9」 |
2勝1分 | 「7」 |
2勝1敗 | 「6」 |
1勝2分 | 「5」 |
1勝1分1敗 | 「4」 |
1勝2敗 | 「3」 |
3分 | 「3」 |
2分1敗 | 「2」 |
1分2敗 | 「1」 |
3敗 | 「0」 |
2.チェルシーの「勝ち数」は1つ少なかった。
3.チェルシーの「負け数」は「3」であった。(アーセナルと同数の今シーズンリーグ最小)
4.チェルシーの「引き分け数」は、マンチェスターUより「3」多かった。
この引き分け数「3(3試合)」の差が優勝の行方を左右したと思われる。
(※ 最終戦のチェルシーの引き分けは、ここでは考えない)
3試合行った時に起こり得る勝ち点数は、右の通りである。(これはW杯のグループリーグ等でも同様)
もう少し突っ込んで考えてみる。
「2位のチームが優勝したチームより2試合負けが少なかった。しかし、引き分けが3試合多かった」
(人それぞれ見解は多少異なるだろうが)“引き分けた試合”について考える必要があると思う。そして、“引き分け”について考えなければならないのは、次の3通り。
「両チームの力関係上、試合内容上~」
1.妥当な引き分け。
2.負け試合を引き分けた。
3.勝ち試合を引き分けた。
チェルシーは、マンチェスターUよりも負け数が2も少なかった。
仮にチェルシーがその2試合勝利していれば、最終戦を前にして『勝ち点88 27勝 7分 3敗』だった。そして、最終戦が引き分けたとしても優勝していたのである。
しかし、チェルシーはマンチェスターUと比較して負けなかった2試合分を(どこかで)引き分けてしまったのである。言い換えれば、勝ちに持っていけなかったのである。
前述の通り、現代の欧州のリーグ戦の事情を考えれば、引き分けもやむを得ない。しかし、上記1~3の条件に各チームの引き分けの内容を当てはめた時に、チェルシーサポーターの方であれば、どこかの2試合をどの2試合と位置付けるだろうか・・・?(リバプールの検証は、次回。)
先に述べた「最低でも勝ち点1(引き分け)」という言葉は、例えば、W杯やCLのようなグループリーグでの戦い方においてはその通りで非常に重要である。しかし、欧州トップリーグ戦においては、引き分けすら大きな差となる。つまり、優勝を狙うチームというのは、極端な話、「無駄な引き分」は許されないのである。
■ 引き分けが多過ぎた2チーム |
◆ アーセナル、多過ぎた引き分けと終盤の勢い
この「無駄な引き分け」というのは、3位のアーセナル、4位のリバプールにはピタリと当てはまる。
特に、アーセナルは、優勝出来た可能性は非常に高い。
アーセナルの負け数は、チェルシーと同じ「3」であった。最終戦前の順位を見てみると・・・
3位アーセナル 勝ち点80 23勝 11分 3敗 4位リバプール 勝ち点73 20勝 13分 4敗 |
(リバプールに関しては、以前ちょっと書いたが、改めて次回リバプールだけに焦点を当てて書くつもりなので今回は割愛する。)
アーセナルは最終戦前の勝ち点を見ると首位ユナイテッドと勝ち点「4」離れている。勝ち点「4」は1勝1分の数値である。ところが、リーグ序盤から中盤にかけてのアーセナルの試合内容、そして数字(成績)は、優勝するには十分可能性はあったし、ある時期までは、数字上では優勝候補筆頭だった。さらに、アーセナルはチェルシーと同様、ユナイテッドより負け数が「2」少ない。つまり、これはチェルシーと同様で引き分けを勝ちに持っていけなかった試合があったはずである。
“しかし”である、ある時期から現実的には、上位4チームの順位と差は大きく縮まることはなかった。
理由は単純で、リーグ戦の対戦日程と関係があった。
サッカーに絶対はないが、純粋に上位4チームと下位チームとの力の差は大きい。
中位の上につける(UEFAカップ圏内に届く順位)のエバートン、アストン・ヴィラ、ブラックバーンであっても上位4チームと互角に渡り合えるとは言いがたい。そうなると必然的に上位チーム同士の直接対決で勝ち点の奪い合いが発生する。
今シーズンの優勝争いを占う上で象徴的な時期があった。3月23日(日)『「プレミアの大一番、迫る!!」』参照。
この日、「ユナイテッドvsリバプール」と「チェルシーvsアーセナル」という上位4チームによる直接対決があった。さらに、この時期から、CL準々決勝の試合がミッドウィークに入っていた。そして、この4チームはCLベスト8まで残っていた。3月23日(日)前のリーグ順位は次の通り。
この時点ではアーセナルは2位につけている。さらに、1敗しかしていない。つまり、許容範囲以内よりも少ない負け数である。
しかし、この時点で明らかにユナイテッドに比べると、他の3チームの引き分け数が多い。3チームの中で一番少ないチェルシーでもユナイテッドの倍の引き分けの数である。それでも尚、直接対決という今シーズンの大きな山場であったのは間違いなかった。
そして、「チェルシー(2-1)アーセナル」と敗れたアーセナルは順位をひっくり返されてしまい、その順位を取り戻すことは出来なかった。
この3月23日以降の上位4チームの勝ち星を見てみる。(最終含め全8試合)
マンチェスター・U 5勝2分1敗(勝ち点17)
チェルシー 6勝2分 (勝ち点20)
アーセナル 5勝1分2敗(勝ち点16)
リバプール 5勝2分1敗(勝ち点17)
アーセナルのチーム詳しい事情は分からないが、負傷者が出たり選手層の問題など考慮すると苦しいながらもチームとしてはベストを尽くしていたと思う。それに、先に述べた通り、アーセナルの負け数はあくまでも許容範囲内である。よって数字的には、この時期の1分2敗(リバプールと引き分け、チェルシーとユナイテッドに敗れる)を責めることは、多少酷である。
事実、アーセナルの最終的なユナイテッドとの勝ち点差は「4(1勝1分)」であった。そして、最後の8試合で広げられた勝ち点はわずか「1」である。しかし、チェルシーと同様、最終的なユナイテッドとの勝ち点差「4(1勝1分)」をクリアする為の勝ち点(「勝ち点6(2勝)」)をもっと早い時期に挙げていたらと思わざるを得ない。(※ 勝ち点4だと得失点差で2位)
さらに、優勝の行方を左右する重要な時期(CLの戦い含め)に、直接対決で勝利していれば、チームには自信と勢いも出て、アーセナルが優勝した可能性も高い。逆に、この時期、チームに勢いと結束が出たチェルシーが喰らい付いて最後まで優勝争いを繰り広げたのは当然なのかもしれない。
繰り返すが、長く厳しいシーズンの中で負けてしまうことも当然あり得るし、引き分けてしまうこともある。そして、サッカーは最後の最後まで何が起こるか分からない。最終的にマンチェスター・ユナイテッドが優勝したとはいえ、数字上の可能性では、チェルシーにも優勝の可能性があったわけである。リバプールは、随分と前に優勝の可能性は消えてしまったが、少なくともアーセナルには、もしかしたらチェルシー以上に今シーズン優勝するチャンスはあったと思う。しかし、シーズンを通して、2桁の引き分けをしたチェルシー、アーセナル、リバプールに関しては、シーズン序盤から中盤で失った引き分けの試合の数の多さ、その試合の内容に目を向けなければならないと思う。
来期08/09シーズン、この3チームが今シーズンの反省生かすならば、シーズン序盤から中盤に如何にして引き分けを勝ちに持っていけるかが重要ではないかと思う。そして、この引き分けの内容は、各チームによってことなると思う。例えば、引き分けでも勝ちきれないとかロスタイムでの失点が多いとか、各チームによって様々な原因があると思う。
長々と書いてきたが、今シーズンのプレミアリーグの優勝を分析してみた。
結局、結果が出た後のレビューなので「たら・れば」の話でしかないが、今回痛感したのが、「最低でも勝ち点1(引き分け)」という言葉は、拮抗した上位チームとの戦いの中では、「勝ち点1。つまり、勝ち点2を失うこと」は大きいということである。この辺の内容など、次回は、リバプールに焦点を当ててみようと思う。
最後まで読んで下さって、ありがとうございます。
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たしかにシーズンで下位のチームからちゃんと勝つことが(直接対決よりも)重要だということがわかりました。
余計かもしれませんが、もっと深くなぜMAN U以外のチームが下位のチームから勝ち点3を取れなかったを個人的に分析すると、やはり攻撃力だと思います。特に下位チームは4強と戦うときは守備を固めてくるので、それをいかに崩すかによって差が出てくると思う。その点ではUTDは一番コンスタントに攻撃が効いてた。また最失点からも読めるように、下位チームから1点奪って相手が同点をとりに攻撃的に変化しても1-0などで逃げ切れる守備力がちゃんとあったって事でしょう。チェルシーも攻撃力はありましたが守備が以外に結構ゆるいとこがありました。
アーセナルとリバプールは下位チームの守備を崩すことができなかった事が多かったように記憶してます。(パスしすぎだったり、攻撃パターンが少なかったり)
こんばんは。
フラムのファンとは渋いですね~。
ご指摘の問題点に関しては、次回リバプールをメインで書く予定でした。