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各国のセンターハーフの類型2 「ボランチ論」 PART2

2008年03月22日 | 考察集
■ ドイツ ZENTRALEN MITTELFELDSPIELER (ツェントラーレン・ミッテルフェルトシュピーラー)

◆ リベロの伝統とセンターハーフ

前回は、スペイン、イングランド

ドイツにおけるセンターハーフ(CH)は守備力があることが求められる。
世界的に名を馳せた最初のセンターハーフはベッケンバウワーだった。リベロとして名高い選手だが、66、70年のワールドカップでは中盤を仕切るいわゆる“ゼクサー(6番の人)”だった。そのころはまだリベロという概念はなく、ビリー・シュルツという守備専門のスイーパーが最終ラインを統率していた。シュルツが代表から退いたときに、バイエルンですでにスイーパーを任されていたベッケンバウワーが最終ラインへ下がるのは自然な流れだった。ただ、それまでの屈強なタイプと異なり、ボールを奪うときも、ボールを持ったときもエレガントなベッケンバウワーが、新たな役割を担うようになる。

ドイツのセンターハーフを語る際、リベロを切り離せないのは、こうした背景があるからだ。相手ボールのときは最終ラインで待ち構えるのだが、マイボールになった瞬間に中盤へ進出して、センターハーフとしての役割を務めた。特定のマークを持たず、相手も後方から上がって来る選手を捕まえきれなかったた、中盤に出ると自由にゲームを組み立てることができた。

その後、ベッケンバウワーのように攻撃面でも秀でたリベロの後継者はしばらく現れなかったが、一方で中盤には守備も得意とするゼクサーが次々と登場する。ライナー・ボンホフ、ボルフガング・ドレムラー、ローター・マテウスらが、中盤でゲームをコントロールした。その後、マテウスはマティアス・ザマーやシュテフェン・エッフェンベルグといった優れたセンターハーフと共存するため、リベロへとポジションを下げた。だが、そのころのマテウスは怪我が多く、同じく中盤で異彩を放っていたザマーが代役を務めるようになる。ザマーはベッケンバウワーについで、リベロとしての能力が際立つプレーヤーだった。EURO'96の優勝に多大な貢献をしたものの、ヒザに爆弾を抱えていた影響で長期にわたって活躍出来なかった。W杯98とEURO2000では、ディトマール・ハマンがセンターハーフ、そしてマテウスが再びリベロとしてチームの中心を担ったが、年齢的な衰えを隠せないマテウスは精細を欠き、若く有能な後継ぎが育っていなかったためドイツは低迷期を迎える。その後、ようやく時代遅れと言われた3バックをあきらめ、リベロを置かないフラットな4バックを採用することになったのだ。

◆ ドイツ新時代の象徴、ミヒャエル・バラック
4バックへの変更によって中盤の組み合わせは、ふたりのサイドハーフ、守備的MF、攻撃的MFというダイヤモンド型の構成が最もポピュラーになった。ただ、ラインを押し上げて最終ラインから前線までが60メートル以内でコンパクトに保つ戦術が主流を占めるようになると、攻撃的MFを置くチームが減少。トーマス・ヘスラー、アンドレアス・メラーやメーメット・ショルのような10番タイプのテクニシャンが徐々に姿を消していった。激しいプレッシャーにさらされる位置に攻撃の中心を置くのをやめ、中盤の4人をフラットに並べる方法が採られた。そして、ミヒャエル・バラックの時代が到来する。

もともとセンターハーフとしてプレーしていたバラックは、レバークーゼン時代に大きな転機を迎えた。当時中盤でコンビを組んだエメルソン(現ACミラン)がひとりで中盤の底を任せられるだけの力を持っていたため、バラックは後ろを気にすることなく積極的に前線へ飛び出して、その得点力を開花させたのだ。得点力の高い「ゼクサー」という意味をこめて、「TORGEFAHRICHER NUMMER SCHES (トアゲフェアリッヒャー・ヌンマー・ゼックス)」という新たな概念が生まれた。バラックのような攻撃的なセンターハーフの登場により、高い守備力を持つパートナーは欠かせなくなった。

イエレミースが登場したころから、守備力の高いMFが見直されるようになり、守備専門の選手を表す言葉も増えていった。「ZERSTORER(ツェアシュテーラー)」は守備的な選手を指し「相手のプレーを邪魔する」という意味だ。そして、イエレミースはまさにこの典型的なタイプだった。その他にもデミチェリス、フッゲル、ラメロウなどが代表格となる。

ただ、彼らのような守備の専門家は減少傾向にある。現在は、オールラウンドな能力を持った選手が重宝されており、守備が出来ることを大前提とし、バラックのようにゴールも奪えるセンターハーフが若手にも増えている。また、中には中央だけにとどまらず、サイドでもプレーできる能力を兼ね備えている。

◆ ZENTRALEN MITTELFELDSPIELER (ツェントラーレン・ミッテルフェルトシュピーラー)の分類
1.SECHSER (ゼクサー) 「6番の人」の意味。
守備能力が高く、攻撃においても非凡な能力を持っている。パサータイプから、運動量が豊富なタイプまでさまざまだ。
 ex.フリングス、デヨング、ハーグリーブス、ガラセク、ハマン、エッフェンベルク、ザマー、ベッケンバウアー

2.ZERSTORER (ツェアシュテーラー) 「邪魔する人」の意味。
攻撃の組み立てなどは求められず、相手の中盤を破壊する役目を担う。
 ex.デミチェリス、ケール、ラメロウ、イエレミース

3.TORGEFAHRICHER NUMMER SCHES (トアゲフェアリッヒャー・ヌンマー・ゼックス) 「ゴールに危険な6番」の意味。
センターハーフとしての能力を備え、ペナルティ・エリアにも進出してゴールを奪う。
 ex.バラック、ボロフスキ、ファンボメル


■ フランス MILIEU DE TERRAIN DEFENSIF(ミリュ・ドゥ・テラン・デフェンシフ)

◆ マケレレの背番号 ナンバー6の本流
かつてフランスにも“ドゥミ・デフェンシフ”という呼び名が存在した。DFとFWの中間に位置するプレーヤーを指し、イングランドのハーフバックと全く同じ意味である。その後、同ポジションはシステムの多様化に伴い、ドゥミ・デフェンシフという言葉でくくるには無理が生じ、世界的にもハーフという名称が時代遅れとなる。そこで、守備的なMFを意味する“ミリュ・ドゥ・テラン・デフェンシフ”という総称が誕生した。

ミリュ・ドゥ・テラン・デフェンシフが伝統的に背番号「6」をつけている。そのため“ヌメロ・シス(ナンバー6)”と呼ばれることも多い。理由は単純明快だ。フランスではGK「1」、右サイドバック「2」、左サイドバック「3」、ストッパー「4」、リベロ「5」に続いて、6番目のポジションと解釈されているからだ。背番号が固定性になってからは、こだわる選手も少なくなったが、マケレレのように、いまだにナンバー6を身につけている選手もいる。ティガナが一つの流れを作った

その後、80年代以降“ミリュ・ドゥ・テラン・デフェンシフ(守備的MF)”は、細分化されていった。
 “RECUPERATEUR (レクペラトゥール)「回収業者」の意味” ディフェンスに従事する選手
 “RELAYEUR (ルラユール)「リレー走者」の意味” 攻守のスイッチャーで攻守に機能する選手


◆ ティガナが確立した“RELAYEUR(ルラユール)”
混乱をさけるためにも、ここでもう一度“RECUPERATEUR(レクペラトゥール)”と“RELAYEUR(ルラユール)”の役割と言葉の起源について、歴史的な背景を交えながら、分かり易いフランス代表を例に説明してみたい。

フランス代表は伝統的に“NUMERO 10(ヌメロ・ディス)”「ナンバー10」がゲームメーカーを務めてきた(アンリ・ミシェル、ミシェル・プラティニ、ジレディーヌ・ジダンの系譜)。
70年代初頭にナンバー10として君臨したのは、アンリ・ミシェルだった。しかし、70年代後半にミシェル・プラティニが現れるとアンリ・ミシェルは徐々にポジションを下げるようになった。そして、W杯78では、アンリ・ミシェルは3センターの底でプレーをしている。ディフェンスの仕事を担うと同時に、長短のロングパスを駆使して攻撃の起点にもなった。こうして、これまでのナンバー6の枠に収まらない、モダンな“ミリュ・ドゥ・テラン・デフェンシフ”が誕生した。

時代は進み、フランス代表はプラティニの黄金期を迎えた。82年のスペインW杯では、プラティニとアラン・ジレスという稀代のゲームメーカーが揃う。その背後で支えたのが、ルイス・フェルナンデスとジャン・ディガナの2センターだった。フェルナンデスは、ナンバー6の本流を受け継ぐ、よりディフェンシブな選手だった。主な役割は、敵のボールを奪い、危険を未然に回避することだ。つまり、“RECUPERATEUR(レクペラトゥール)”である。

一方、ティガナはニュータイプの選手であり、既存の言葉ではくくれない存在だった。ディフェンスへの貢献も怠らず、ときには前線へと攻め上がりプラティニのゴールをアシストすることもあった。すべては、ティガナの豊富な運動量と、非凡なパスセンスのなせる業だった。攻守のバランスを司る“RELAYEUR(ルラユール)”は、こうして誕生したのだった。
エシェンはフランスのサッカーの流れを変えたアフリカ人選手となった
◆ エシェンの衝撃で誕生した新分野
近年、守備的MFのポジションでよく使われているのが“HARCELER(アルセレール)”という言葉だ。言語は「執拗に攻撃する」という動詞で、ルラユールの流れを受け継ぎながら、守備力、攻撃力にもパワーアップしている選手を指す。(昨年リヨンからユベントスへ移籍した)チアゴ・メンデスが典型的なタイプだ。

そして、アルセレールが最初に使われたのは、言うまでもなく前任者のマイケル・エシェン(現チェルシー)のためだった。エシェンは豊富なスタミナと機動力、ポジショニングのセンスを生かし、攻守両面で強いインパクトを残した。CBもこなすディフェンス力に加え、力強い攻撃参加で魅了し、一躍ヨーロッパレベルのセンターハーフへと成長していった。

◆ MILIEU DE TERRAIN DEFENSIF(ミリュ・ドゥ・テラン・デフェンシフ)の分類
1. “RECUPERATEUR(レクペラトゥール)”「回収業者」の意味。
文字通り、ボール奪取が主な役割。ナンバー6の系譜を受け継ぐディフェンシブなセンターハーフであり、フィジカルとスタミナを兼ね備えた選手が適任者。
 ex.A・ディアラ、マケレレ、デシャン、プティ、フェルナンデス

2. “RELAYEUR(ルラユール)”「リレー走者」の意味。
ディガナの登場でミリユ・ドゥ・デフェンシフから独立した。攻守のつなぎ役となるため、この名称が使われている。パスセンスと守備の能力が必須だ。
 ex.ジュニーニョ・ペルナンブカーノ、プラシル、ドラソー、ディガナ

3. “HARCELER(アルセレール)”「執拗に攻撃する」という意味の動詞。
中盤からエリア付近まで飛び出し、ゴールを狙う。エシェンのインパクトによって、ルラユールから派生した。攻守に万能なタイプが担い手となる。
 ex.エシェン、チアゴ、マクーン、レコ


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お待たせしました。次回は戦術の国・イタリア各国のセンターハーフの類型3 「ボランチ論」 PART2

■□ 参考資料・引用など □■
 ・ワールドサッカーマガジン 2006/09/21発売号 (10/5号) - 国別センターハーフ研究
 ※ 今回の資料は、2年ほど前の雑誌なので、情報の新鮮さに欠ける部分はありましたが、逆に時代を遡るという意味では良かったかもしれません。この辺に関しては、ご理解、ご了承願います。


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