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観たい映画だけしか観てません。今忙しいんでいろいろ放置

『愛する人』 (2009) / アメリカ・スペイン

2011-01-15 | 洋画(あ行)




原題: MOTHER AND CHILD
監督: ロドリゴ・ガルシア
出演 ナオミ・ワッツ 、アネット・ベニング 、ケリー・ワシントン 、ジミー・スミッツ 、サミュエル・L・ジャクソン

公式サイトはこちら。




昨年9~10月の、第7回ラテンビート映画祭出品作品。
そこで鑑賞したかったのですが、新宿で1回しか上映がなく、
やむなく日本公開待ちとなりました。
もう待ち切れず(!)、初日に行って参りました。



印象としては、一昨年myランキング第1位の作品、
『あの日、欲望の大地で』にテイストが似ていたかなーという気がするのです。


女性がいかにして、母となっていくのか。
原題 "Mother and Child" でもあるように、これは「母と子」、とりわけ「母と娘」の話である。
単に母親になりたいのなら、誰でもなれる。 
しかしながら、自分が母親から最も遠い存在なのではないだろうか、
いやむしろ、「母親」という存在自体を嫌悪していた自分が、
期せずして母親になることになってしまったら。
その事実をどのように受け止めればよいのだろう。


生後すぐに養子に出されてしまったエリザベス。
両親の顔も、存在すらも知らずに1人で生きてきた。
絶対に母親にはならない、そう思って生きてきた彼女に訪れた妊娠という出来事は、
彼女の心境を変えていく。




<以下ネタばれを含みます。 見えない部分は反転させて下さい。>












エリザベスの生き方、というか生きる上での「信条」、
それは徹底して自立していくこと。 人に依存しないこと。
1つところに、自分が帰れる場所を作らない。 帰る場所などいらない。
根無し草の自分にとって、今さらそんな場所を作ってみたところで、
一体何になるのだろう。
というよりも、「人に頼らないこと」、「1か所に根を下ろさないこと」という生き方そのものが、
彼女自身の中に、まずありきとして植わってしまっている。
例え根を下ろしたところで、それはどうせ脆いものだから・・・ という
あきらめのような気持ちがあったのだろう。
誰かを当てにしたところで、それが根底から裏切られてしまった時には、
一体何を拠り所にすればよいのだろう。
裏切られて失望するくらいなら、最初から帰る場所など、なくても構わない。




親から愛情をかけてもらえなかった自分を、まるで痛めつけるかのように
エリザベスはこれまで男性と交わってきたのではないだろうか。
卵管結紮してまで、しかも(恐らくは)魅力的でもタイプでもなんでもない
男性とまで、すぐに何の衒いもなく交渉を持ってしまうその裏側には、
「望まれて生を受けなかった自分から、次代ができることはあり得ない」
という意識があったのではないだろうか。

人と愛を育んでいくことは、愛を知らない自分なんかがしたって意味のないこと。
そのように思っていたのならば、エリザベスにとって大変不幸なことだと思う。



そのエリザベスを、生後間もなく養子に出した側の母、カレンもまた、
実の母との間がしっくり行っていない。
普段の生活から垣間見ることができる頑なさ、そこからは、
実の母が娘を理解できず、また娘も母からは愛されていないというあきらめにも似た表情が読みとれる。
そしてこの映画に出てくるもう1組の母娘、ルーシーたちもまた、
互いの想いがかみ合っていない。

やっぱり実の母娘って難しい。
お互いに十分思いやって愛しているはずなのに、その想いが濃いあまりに
空回りしてすれ違ってしまうことが何と多いことか。



女性であれば恐らく誰もが、妊娠ということが自分の中に起こったなら、
そこで立ち止まって、様々なことに想いを馳せるはずだけど、
本当に思いもよらない妊娠という事実を突き付けられ、エリザベスの心境は
いかばかりだっただろう。
あんなに嫌悪していた「母」に自分がなるなんて。
でも、命を胎内に宿したこと、それが彼女を変えていく。
本来なら気にもかけなかった人とも、何故か心を通わせる気になったのも、
まだ見ぬわが子がきっかけになってくれたから。



それにしてもエリザベスの自立心というものには驚かされる。
自分自身の危機かもしれないのに、そこで誰かを頼った方がいいのに、
それが彼女にはわからないのかもしれない。
生まれた時から「人に頼らない」主義だった彼女にとって、
「何が何でも子どもを自然分娩で産みたい」ということもまた、彼女なりのこだわりだったのだろうけど・・・。
でも、前置胎盤で自然分娩というのはなかなか難しく、
そこに彼女が頑固にもうなずかなかったのもね。 気持ちはわかるのですが。



エリザベス、カレン、ルーシーが結びついていく過程も、
考えようによっては出来過ぎと思わなくもないけど、
1つの命が、3組の母娘たちをつなぎとめたと考えると、
1人の人間ができることって大きいと思います。
少女から大人の女性、妻、母と、
それぞれのステージで立ち止まって考える女性たちの姿は、感慨深いものがあります。



また、養子の在り方についても本作はさまざまな角度から描いています。
一口に養子と言っても、
受け入れ側や提供側、仲介者など、それぞれの立場ならではの想いがあり。
何がその子にとって最もいい方法なのかを考えた上の選択であっても、
後々になって、思わぬ結果が出てしまうことを考えると、
目の前の感情や事情に流されて養子に出すことの重みも、思わざるを得なかった。



とにかく、多彩な側面からの物語でした。
非常によかったです。



★★★★★ 5/5点









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