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観たい映画だけしか観てません。今忙しいんでいろいろ放置

【TIFF_2011】『ザ・パワー・オブ・ツー』 (2011) / アメリカ・日本

2011-10-27 | 洋画(さ行)


原題:The Power of Two
監督:マーク・スモロウィッツ
出演:アナベル・ステンツェル 、イサベル・ステンツェル・バーンズ 、ハツコ・ステンツェル 、アナ・モデリン 、ロビン・モデリン 、アンドリュー・バーンズ 、河野太郎 、寺岡 慧 、中澤奈美枝

第24回東京国際映画祭『ザ・パワー・オブ・ツー』ページはこちら。

映画『ミラクル・ツインズ』公式サイトはこちら。(2012年11月10日公開)
日本公開が決定しましたね。おめでとうございます。











この次に『アルバート・ノッブス』を鑑賞する予定でチケットを取っていたんですが、その前に1本観れる時間ができましたのでこちらを観ることにしました。 WORLD CINEMA部門にドキュメンタリーが入ってくるのは結構珍しいような気がしまして。 

イサ&アナの公式日本語web siteはこちら。

彼女たちの著書「ミラクル・ツインズ!」はこちら。


恥ずかしながら初めてこの映画でイサベルさん・アナベルさんのお2人の存在を知ったわけなのですが、とにかく凄まじいパワーと運の持ち主。
主人公のイサベルとアナベルは日系の一卵性双生児。 2人とも先天的にCF(嚢胞性線維症)という難病を抱え、それぞれが肺移植を経験するという過酷な半生を生きてこられました。

CFってなあに (イサ&アナの公式web siteより)

嚢胞性線維症 wikipedia

CFとは分泌液の粘度が高くなってしまって呼吸困難その他の合併症を引き起こす遺伝性疾患で、白人に多く発病します。
治療法は抗生物質や遺伝子治療があるそうですが、臓器移植はかなり有効な手段です。


イサとアナはそれぞれ肺移植を経験する訳なんですが、アメリカでは移植待機リストに名前が載ることが非常に大変なようで、また載ったとしてもステータス(優先順位)があるようなので、同じ病気だからといって同時にリストに名前が載る訳ではなく、移植の時期は違っていました。
そして移植したからそれでいいと言う訳ではなく、拒絶反応が起こったりその後の経過も観察せねばならず、一生自身の健康管理には気を遣わないといけません。


一口に移植すると言ってもそこにはドナー(臓器提供者)が介在している。 もしも脳死になった時に自分の処置をどうしてほしいのか、以前は生前に自分の意思表示をしておくことが必要だったが、2010年7月17日からは日本の臓器移植法案では、本人の意思が不明瞭でも家族の承諾があれば臓器提供が可能となった。 
世界では一般的にこのスタイルを採用しているようで、日本の臓器移植法もこれに向けて改正された訳だけど移植数は諸外国に比べて圧倒的に少ない。 その根源にあるものはやはり「脳死を人の死と認めたくない」精神があるように思う。
日本人の死生観の中には、「死者を成仏させる」という概念がある。 脳死であっても心停止していない状態の人の臓器を摘出することは、肉体と精神が分離していくという概念とは相反すると受け止める人もまだまだ少なくないのも現状であるから、この映画や、その他広く世界で認知されつつある「死してなお人の役に立ちたい」という方針に転換していくのは容易ではないだろう。


イサとアナは、自身たちの母親の祖国である日本で臓器移植件数が少ないことを恐らくは憂慮しており、自身たちの移植体験によって人生が変わったことを伝えたくて度々来日をしている。 双子であるということ、快活な女性であるということ、そして何よりも彼女たちの前向きなキャラクターが魅力的なこともあり、体験談を伝えるにはふさわしい存在だと言える。 身内に移植を必要としている方も、そうでない方にも伝えないと移植は広まっては行かないから、このような役目を担う人物はまず、人を惹きつける存在であるということは重要であるからだ。


そしてこの映画そのものの魅力は何と言ってもイサとアナの2人の人柄にある。 
いつも前向きで笑顔を絶やさず周囲を励ましているかのようなその生き方は、とても難病を持っている人とは思えず、観ているこちらが逆に元気をいただくような感覚になる。
しかしながらその笑顔の裏側には数々の葛藤や迷い、肉体的・精神的な苦しみがあったことは言うまでもなく、自身たちのドナーに対しての感謝と畏敬の念を常に忘れず、気持ちを前向きに保つように努力し、「いただいた命、生かされている命」ということを念頭に置いて健康管理を厳格に行っている所に深く共感を覚える。 そして彼女たちはドナーの家族に対しての気配りや優しさも忘れてはいない。 ここに彼女たちの深い苦悩ととてつもない生命力が伝わってくる要素がある。
日本での活動はまだまだ大きなものを乗り越えていかないといけないように感じるが、それでも決してあきらめず人々と対話していこうという姿勢には頭が下がる。




映画の後にQ&Aがあり、マーク・スモロウィッツ監督、アンドリュー・バーンズ氏(プロデューサー、イサの夫)、イサベル・ステンツェル・バーンズ(出演者、本人)、プロデューサーの竹内直実氏の4名が登壇されました。
アナベルさんは今回いろいろな要因で来日を断念し、VTRによるメッセージを寄せて下さいました。 イサベルさんも渡航に際してはいろいろとお気遣いもあったと思います。 それでも映画祭に選定され、今回はぜひにということで来日されました。
鑑賞後の感想や質問も数多く出ていました。 医療関係者やご身内に移植者を持つ方などの想いというのはやはり切実だなと感じます。 質問に対してイサベルさんは「大事なことは、たくさんの人と移植について話をしていくということ。(世界にはいろいろな意見がありますが)根気よく話をしていくことで、きっとわかってくれることもあると思いました」ということをお話しされていたのが印象的でした。
また自民党の河野太郎衆議院議員もこの映画にご出演でしたが(実際にこの回にご本人がご鑑賞でした)、ご自身が実父の河野洋平氏に生体肝移植をした体験を基に、映画の中でコメントをしています。 実際に健康体だった太郎氏が、身体にメスを入れるということはどのようなことか。 それを踏まえた上でのご自身の議員活動であるということを感じさせるものでした。
実際に臓器移植を必要としている人がいる現状を、そうではない人が意識する機会が日本では少ない。 その現状を打破していく役目を持った作品であることは間違いないだろう。 そしてイサとアナの今後の活躍を切に願う。



★★★☆ 3.5/5点



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