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観たい映画だけしか観てません。今忙しいんでいろいろ放置

『ブラック・スワン』 (2010) / アメリカ

2011-05-13 | 洋画(は行)




原題: BLACK SWAN
監督: ダーレン・アロノフスキー
出演: ナタリー・ポートマン 、ヴァンサン・カッセル 、ミラ・クニス 、バーバラ・ハーシー 、ウィノナ・ライダー

公式サイトはこちら。


公開日に行きたかったんですけどねえ・・・。 風邪引いちゃいまして。
仕事も学校もありまして。
(一応家もか (^_^;) )
いつものように無茶なスケジューリングが出来なくて、今日になりました。
ですがこれは人気作品だから、水曜レディースデーだとか、土日祝日には行かなくてよかったかもです。 
普段映画観ない人がわさわさやってくるんで、ウルさくてしょうがなさそう。 
集中して観てほしい作品だし、できれば人が少ない日に行きましょう。
情報は事前に全てシャットアウトして鑑賞することをお勧めします。
予告編以上のもの、ありましたね。
存分に楽しみたい人は、余計な感想は読まないこと!  それに尽きます。
ですのでまだ未見の方はここでお帰り下さいませ~  ネタばれと言われても責任取れないし困りますので。












ダーレン・アロノフスキー監督の前作『レスラー』においては、
闇雲にしか前に進めない、ランディというレスラーを通じて、
「自分を偽らない」ことにより自分自身を昇華させていく人間を描いた。
そして本作『ブラック・スワン』では、
自分を偽れないと思ってきた主人公が二面性のある「白鳥の湖」に抜擢されることにより、
自分が今まで持ち合わせていなかった正反対の側面を引き出すことにより、
昇華していく、ということを描く。


つまりはこの2作品、2つ揃って1つになる。
ラストなどはまさに、方向性は違えども、伝えたいことは同じだったんですね。
ラストの解釈ですが、ここは分かれるところでしょうね。
額面通りにストーリーを受け取ってもいいんでしょうけど、 監督は観客に委ねたようにも思えます。
本作、『レスラー』と対で鑑賞することによって、監督の哲学としてうなずけるものが大いにあるように感じました。
まだの方はぜひ! 黒鳥の前に鑑賞して下さい。





表現者になるということは、時に自分自身を超えないといけない場面がある。
どれだけ自分を壊せるか。
壊しても耐えられるものだけが、真の表現者たるものとして世に認知されていくのだろう。
ニナは白鳥としてはパーフェクトであったけど、黒鳥としては足りないものがあると
自分でも認識し、それを出せないことが苦悩であった。
指導者であるトマはニナに、
「自分を解放しろ。 自分自身を遮るものは自分のみ」と説く。
自分を縛っているものから己自身を解き放つ時、初めてその時、それまでの自分を超えた表現者になれると。


ニナは完璧にこなすことに対しては応じられるものの、
その自分を崩すことに足を踏み入れることができない。
それは彼女の生育環境にも大いに原因があることがわかってくる。
母親から刷り込まれてきた、有形無形の圧力や、それからくる様々な節制は、
よきバレリーナを作るためにはごく真っ当なことではあるのだけど、
ニナにとっては形を変えた「呪縛」となってしまう。


そしてニナは自分が持ち合わせていない「漆黒の部分」を見事に表現しているリリーと出会ってしまう。
彼女の存在がニナを別の局面へと追い込んでいく過程も興味深い。
ダンサーとしてのリリーの力量にはまるでこの映画では触れられていない。 
むしろ、リリーの人間性にのみニナは囚われていく。
自分にないものを持っている、それが完璧な表現者になる上での憧れでも羨望でもあり、試練でもあった。


ただ・・・。
自分のポリシーとは正反対のことをしていくのはよほどの覚悟がないと出来ないこと。
リリーの場合、ニナがどんなに逆立ちしたってできない小悪魔的魅力、男が誘惑されてしまう女そのものであったから、
ニナにとっては、それを自然に出せとトマに言われることはどんなにか苦痛であったことだろう。
自分も知らない自分自身を見つけること。
それは未知の世界でもあるし、苦痛に満ちたものかもしれないし、
今まで築いてきたものを捨てないといけないこと。
しかしながら、それをやってのけた時に、超えた自分でしかできないパフォーマンスが待っていたとしたら。。
自分は、自分を超えることに挑戦するだろうか。
超えた後に何が待っていてもやるだろうか。


芸術家に自殺が多いのも、
自分を超えた後に待っていたものがあまりにも過酷だったからなのかもしれません。
自分を追求するあまりの破滅。
自分を1度葬り去らないと、新たな自分など出るはずもなく、
だからこそ破天荒な人生が芸術家に多いのもわかるような気がします。
しかしその破滅こそが、美そのものである可能性も非常に高いとするならば。
その誘惑に耐えられるだろうか。
男を、周囲を誘惑しろ! とトマに言われた言葉がそのまま、
自分自身を破滅させていく誘惑への入り口となっていたようにも思えて仕方がありません。


自分が憧れていたベスという存在になりたくて、
彼女の「念」を思わず身につけたところが既にもう、ニナ自体が誘惑に魅入られていたのかもしれませんね。
その、ニナ自身が一流の表現者として尊敬していたベスにおいてでですら、
「己の葬送」に失敗してしまった。 
今思い返すと、それを目の当たりにしたニナは、
ベスからも、嫉妬に満ちた呪いのトゥシューズを履かされてしまったのだろうか・・・ と。
それほどまでに女の嫉妬は毒々しいものなのでしょう。 実際のバレエ界がそうかどうかは知りませんが、
女の世界は大抵どこも同じです。
自分を応援してくれるはずの声がある一方で、自分をせせら笑ったり欺いたりするような
幻覚が見えるほどの妄想に囚われること、それも現実世界ではあることなのです。
ニナは自分自身という存在がもはやどこにあるのかわからないほどの狂気に包まれながらも、
2つのスワンを完成させていきます。




それにしてもとにかくすさまじく、素晴らしい映画でした。
それぞれのキャラクターがきちんと役割を与えられ、完璧に理解してこなしていましたし。
そして、違う側面を写し出すという意味で、多用されている「鏡」の効果ですね。
自分の影を写し出す、悪魔を引き出す効用でした。
バレエ小物なども使い方が巧みでしたね。
ナタリーもバレエの習得は本職のバレリーナでない分大変だったと思いますが、
バレエの技量についてはとやかく言う必要はないように思います。 文句なしの主演女優賞。
ストーリーにきちんと合った演技。
真の表現者たるもの、それに見合う苦悩を引き換えにできるかどうかということなのです。



★★★★★ 5/5点







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48 Comments

コメント日が  古い順  |   新しい順
きた~! (まっつぁんこ)
2011-05-14 06:07:29
久々の満点 5/5。
厳しいroseさん(笑)の満点だから間違いない!
みなさん観に行きましょう!!
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まっつぁん (rose_chocolat)
2011-05-14 06:10:59
そ~お?
ワタシ厳しいですかね?

最近、めんどくさいので、よかったのしか記事書かないからさあ。。
★4.5とか結構あるけど。
まっつぁんはこれ何点よ?
返信する
では是非 (メイマーム)
2011-05-14 09:58:39
正直ちょっとホラーな部分にびびって腰が引けていましたが、読ませていただいて(ネタバレ部分は薄目でちらちらくらい・笑)行こうと決心しました。
3~7歳までバレエやってて、病気の為やむなくリタイアしたのですが、もし病気してなかったら、今頃バレエ団の先生やってると思います。独身で。
いやいや、幼くしてバレエ団の先生達から唯一素質があると見込まれていたので(親は自慢だったみたいです)・・・
運命のいたずらでバレエとは縁が切れてしまいましたけどね。
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Unknown (けん)
2011-05-14 10:13:04
TBさせていただきました。
またよろしくです♪
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実は・・・ (マリー)
2011-05-14 14:40:08
こんにちは~~
私、『レスラー』がイマイチ心に響かなくて・・・あの生き方に否定的すぎたのかなぁ
・・。
でも、こうして読ませていただいて
あちらとこちらで“対”というroseさんの指摘になるほど~って思いました。

ラストの彼女の表情に(恍惚とした)拍手でした。ナタリー凄い!
でもママ役の方も素晴らしかったし・・・
ストーリーと演技者が揃って素晴らしい作品でした。
もう1回観たいです~。
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メイマームさん (rose_chocolat)
2011-05-14 16:19:22
本作、バレエやった方は、また別の思い入れがあるようですよ。
ぜひぜひ。
語って下さいな。
(ちびっと、怖いかもしれませんけど。。。)
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けんさん (rose_chocolat)
2011-05-14 16:19:42
どうもありがとうです。
またどうぞよろしく^^
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マリーさん (rose_chocolat)
2011-05-14 16:21:53
そっか、『レスラー』が今一つだったのね~。
何か、ラストの持って行き方が同じかなって思いました。
こちらの方がより複雑に、掘り下げて深化させた感じですね。

『レスラー』へのアンサームービーとでも言えばいいのかな?
それとも、『レスラー』で言い足りなかったことをここで言い尽したような。
いろいろ考えがあって、これは面白いですね~。
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Unknown (latifa)
2011-05-14 16:30:53
roseさん、こんにちは!
うん、うん、レスラーと本作と通じるものがありましたよね。こういう内容は好みだわ~

ここには、うなっちゃった!

>芸術家に自殺が多いのも、 自分を超えた後に待っていたものがあまりにも過酷だったからなのかもしれません。
自分を追求するあまりの破滅。
自分を1度葬り去らないと、新たな自分など出るはずもなく、だからこそ破天荒な人生が芸術家に多いのもわかるような気がします。
 すごい納得
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latifaさん (rose_chocolat)
2011-05-14 16:35:37
私結構、『レスラー』って好きだったんですよねー。
あれはもう、レスラー一色なランディがもう、何と言われようがまっしぐらってところが魅力だった。

これは、たどりつく形は違えど、自分が追い求める場所へと進んだ話だよね。
その結果引き返せない場所までニナは行ってしまったけど。。
あのあと彼女はどうなっていくんでしょうね。
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