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ジェノサイドはなくならない、アンゼルム・キーファー

2013-11-15 15:25:45 | アート

lilith

今から20年前、アンゼルム・キーファーの展覧会を観に行った。
第二次世界大戦、ヨーロッパでの戦争の末期、ドイツに生れ落ちたキーファーは、宿命的に生涯追及するものを背負ってしまったかのようだ。
天井の高い白い室内には、鉛色の、錆びた鉄色の、巨大な画面が磔にされていた。
なかには黒くとぐろを巻く黒髪が流れ出し、あるものは苦しみもがきのたうっている。
断末魔の咆哮が、会場に凍り付いているような凄惨な衝撃を受けた。
そのときは、ユダヤ人大虐殺の十字架を背負ったドイツ人の苦悶と内省と受け取っていたが、いろいろなことを知るに連れ、人類共通の問題なのだと悲しくなった。
この罪悪を持たない国家民族は、どこにもいない。
しかし、それを認め、猛省のもとにこの愚行を二度と繰り返さない国家民族も、決して存在しない。
それでも、諦めて流されてはいけないと、キーファーは警告しているのではないだろうか。
美しく夢を描くだけが芸術ではない。
悪夢や醜怪なものを表現することで、人に問題を提起する場合もある。
キーファーは、後者だ。

最近、「進撃の巨人」に小さい人と熱を入れている。
次々と簡単に多くの人があっけなく死んでいくこのアニメは、ある意味のジェノサイド。
取り立てて目新しいことはないと言ってしまえばそれだけだけれど、この世界でも類を見ないほど平和的な日本において、人が本来持っている利己主義と残酷さに優しさという支離滅裂な性質がもたらすカタストロフを見ることが、新鮮に映っているのだろう。

怖いもの汚いものから目をそむけることはできない、人の負の好奇心。
もしかすると、キーファーの作品を観に行く人の心境も、それがあるのかもしれない。
観たあとに、何をどう捉え考えるのかは千差万別にしても、北風が吹いて凍え枯れた大地に希望の芽が吹くことを私も願っている。







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