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思い出の絵本、くまくんのトロッコ:ブライアン・ワイルドスミス

2011-06-15 00:01:23 | 本たち


ブライアン・ワイルドスミス作”くまくんのトロッコ”は、大切な思い出の絵本の1冊になる。
小さい人が、まだ3歳くらいのとき、古書店で見つけたものだ。
凝ったつくりの絵と、坂からトロッコを滑らせる爽快感が、子供の冒険心をくすぐる。
しかし、それだけでは物語にならない。
単純だが誰の心にもあるだろう「意地悪な暴君」を戒める話になっており、幼心にも響いたのだと思う。
だから、小さい人は、毎日のようにこの本をせがんだのだ。

人は、矛盾を抱えた生き物だ。
「良心」を持ってはいるが、「出来心」「ズル」「怠け心」が、いつの間にか芽生え、他人を道具としてみてしまい、自己中心的に振舞ってしまう。
他者を「思いやる」気持ちは、育ちにくい。
この”他者を思いやる”気持ちは、客観的な視点を持ちながら他者に共感しないと生まれない。
ただの「共感」だけでは、公平さと冷静さを欠くのだ。
それなくしては、結局自己中心的価値観を回りに押し付ける羽目になり、「思いやり」からはかけ離れてしまう。
「思いやり」は、一方だけに向けられたものであってはならない。

これは大変難しいことであるが、最近、安っぽい「共感」が巷に横行しているように見受けられる。
そして、その「共感」を利用して利益を貪ろうと暗躍する輩がいる。
狼は、その姿をそのまま晒しては、赤頭巾のところへは行かないものだ。
冷静に公平な目を持って「共感」し、「思いやり」の気持ちを育てないと、ただの獣に落ちてしまいそうで、心配な風潮であるよ。

くまくんは、仲間に痛いしっぺ返しを喰らって、やっと目が覚めた。
それでも、くまくんは悔悛したのだからいいけれど、「金」の衣を纏った成功者は、その燦然と光り輝く「金」の光で目くらましをし、しっぺ返しを喰らうことなんてないのだろうと高をくくっているに違いない。
物語のようにならないのが、現実の厳しさであると、この本を読み聞かせているときに、心の隅でつぶやいたのであった。

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