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ワイエスの水彩画、オルソン家をめぐって

2013-03-28 12:25:12 | アート
昨日、『アンドリュー・ワイエス 水彩と素描展』を観てきた。
ワイエスの代表作『クリスティーナの世界』を生む土壌となったオルソン家をモチーフに描いた、水彩と素描の数々が展示されていた。
ワイエス22歳ごろから60歳ごろまでの約40年間に渡り描き続けた軌跡が、そこにはあった。
ワイエスの画業の痕跡が、しっかりと刻み込まれているのを、鑑賞者は辿ることができる。
それらの水彩画とデッサンにより集結したイメージの結晶を同時に展示できると最も良かったのだが、それらを知っていたならば、この展覧会の内容はより濃いものになるはずだ。

ワイエスの、飽くなきイメージの収斂は、画家の分水嶺を思わせる。
ともすると、手馴れたイラストに陥りそうな一歩手前は、ほんの微細なことであり、実は深い溝、一枚の壁である。
ワイエスは、そこのぎりぎりのところで絵を描いたのではないかと、数々の水彩とデッサンを観ていると考えさせられた。
そして、イラストとタブローの境界は、特に現代において非常に曖昧なものになっていることもあり、絵を描く本人すら迷うことも多い。
実際、イラストとタブローのどちらが格上とか、それはナンセンスといえるだろうが、自分の立脚点を定かにしたいというのは人の自然な心理ではあるまいか。

この日は、小雨降る肌寒い日であったが、湖のほとりに立ち並ぶ桜がそぼぬれてもその美しさを損なうことはなかった。
ワイエスの絵の放つ精錬された美もまた、桜に劣らず美しかったといえるだろう。





海からの風


クリスティーナの世界

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