rock_et_nothing

アートやねこ、本に映画に星と花たち、気の赴くままに日々書き連ねていきます。

待望の雨、藤に覆いつくされそうな雑木林

2013-05-12 23:40:19 | 随想たち
昨日から降り続いた雨は、夜明け前に上がった。
乾ききった大地を潤したのは、久しぶりか。
これで、畑には作付けしやすくなり、野山の木々は勢いをつけて葉を繁らせるだろう。

最近、自動車を走らせていると目に付くのが、藤の花だ。
家々の庭を彩っているのではない、雑木林の木を覆いつくさんばかりに花をまとわり付かせ咲かせている。
藤は蔓性の植物、自立できないので木などに巻きつき形成を保つ。
しかしその力はとても強く、巻きつかれた木々の生育を妨げ、ついには枯死させてしまう。
だから、蔓性の植物は厄介視されて、大切な雑木林に蔓延らないよう、かつての人々は注意を怠らなかった。
ガスや石油、石炭、電気の整備されていなかった頃、もっぱらの燃料を間伐材などで作る薪に頼っていた。
雑木林や里山は、燃料をまかなう宝の山だ。
人々は頻繁に雑木林や里山に足を踏み入れ、手入れを怠らない。
藤などが巻きつき始めようものならば、抜き取ったに違いない。
ところが今は、雑木林や里山にかつての重要性はなくなった。
下草は生い茂り、篠が木々の間を埋め尽くし、藤は猛威を振るいだした。
自分が子供の頃、野生の藤は珍しく、雑木などに咲いていると珍しく見たものだ。
特に今年は藤の花のあたり年なのか、どこでも見事な花を薄紫に野山を染めるほど咲かせている。
これから10年20年後、藤に巻きつかれた木々は立ち枯れるだろう。
もしかすると、木々の植生が変わり、ひいては生態系に影響を及ぼすかもしれないと想像する。
気候変動もさりながら、人が作り上げてきた人の住むところと住まないところの境は、緩衝地帯がなくなって、自然と人との軋轢が増しそうだ。
どちらにせよ、人も自然の一部ならば、変化し続けるのは当然でもある。
藤は、自然の生命力の強さ、修正力を代表して、新しい世界を作ろうとする使者なのかもしれないが。