goo blog サービス終了のお知らせ 

烏鷺鳩(うろく)

切手・鉱物・文学。好きな事楽しい事についてのブログ

新月印を楽しむ

2018-05-29 | 切手


私が「新月印」と呼んで、密かに楽しんでいる消印がある。
使用済み切手の中でも、消印の丸部分がほとんど切手に押されていない物である。
これは、「満月印」という物に対する呼び名であることはご想像の通りだ。


手元に完璧な「満月印」というのはないが、その一例がこんな感じである。



消印がほぼ完璧にまん丸と切手に押されている物である。無論、消印の文字、すなわち郵便局名、押印年月日が完全に読み取れる状態でないとあまり価値は無いかもしれない。
偶然「満月」のように押印された物もあれば、窓口で記念印のように「満月」状に押印してもらうという物もあるらしい。


私が「新月印」と呼ぶ物は、完璧に偶然の産物であることが条件だ。加えて、消印の存在自体が確認できるように、台紙が残っている物が好ましい。


私が「おお!」と密かに喜んでいるのは、目打ちと目打ちの間の部分(←なんて呼ぶのか分からない)1~5個程度しか消印の丸部分がのっていないものである。
消印係の局員さんが、「あ、ちょっと失敗だったかも」と思ったような物が「新月印」である。

そんな、一見すると「押したか押してないか分からない」アクシデンタルな消印こそ、「新月印」である。



どうだろう!よく見ないとインクがのっているのかいないのか分からない位だ。
左の「七夕祭り」は、波線が飾りの房のような部分と同化しており、「小笠原」の方は波線が海の波と同化している。デザイン的にも波線と図案が一体化しており、とても気に入っているのだ!


というわけで、私が勝手に「新月印」を定義する際に用いる条件をご紹介しよう。

《新月印の条件》
①偶然の産物であること
→実際に使用された切手であり、風景印や記念印なども含め窓口でわざわざ押してもらったものではないこと。
②できれば台紙が残っていること
→消印が押されたことが確認できなければならないので、台紙ごと切り抜くか、あるいはそのままの状態の葉書、封筒であるともっと良い。消印全体が残っている状態ならばさらに好ましい。
③消印の丸部分が、切手の外枠、もしくは目打ち部分に押印されていること
→波線部分が図案にかかっていても、まあ、良しとする。極上の物は波線さえかかっていない物であることが必須条件。

「なんだ、波線が切手にのっていても良しとするのならば、それほど珍しい物でもないじゃないか」。
そんなお声も聞こえてきそうだ。

しかし先日、「休日の切手剥がし」の回で数百枚の使用済み切手を一枚一枚じっくり眺めたのだが、上記の条件に当てはまる切手は約400枚中わずかに2枚であった。さらに台紙に消印が完全な形で残っている物はその内の1枚である。(ちなみに満月印もどきも2枚確認できた。)
確率にして0.5%である。
結構珍しいのである。
だから、上記の条件を完璧に満たす物があったら、それは極上のお宝なのだ。
波線が図案にのっていても、一見すると未使用かと見まがうほどである。


昨今、郵便物に切手が貼られている割合が少なくなったように思う。
そんな中で、いつの日か、「目打ちの間1つ分しか消印がのっていない郵便」―「限りなく未使用に近い使用済み切手」―に出会えたら、すごく幸せだなあと、想像しているのである。
そしていつか、「新月印を楽しむ会」とか「新月印愛好会」なんてのができて、仲間と新月印を持ち寄ってわいわいやるのが、ちょっとした夢なのである。

アルゼンチン 恐竜切手 1992年:アマルガサウルスとカルノタウルス

2018-05-23 | 切手
先月、「サントメ・プリンシペの恐竜切手(2)」の回で、私はぼやいていた。
謎恐竜・テリジノサウルスを切手の図案にしろだの、とげとげ恐竜・アマルガサウルスを登場させろだの、クチバシがかわいいオビラプトルに出演させろだの、ぼやいていた。
ノムさんも苦言を呈するかと思われるほどのぼやきっぷりであった。


「天は我に味方した」のか、「もっと勉強しろよ」のメッセージだかは知らないが、ぼやいた直後のスタンプショウで、なんと、「アマルガサウルス」がご登場したではないか!しかも「カルノタウルス」とコンビで華々しく私の前に現れたのだ!!
これはご一緒に拙宅までお越し頂かねばなるまい、と捕獲いたしたのがこちら。



アルゼンチン、恐るべしである。脱帽。そして自分の無知から出たぼやきにお灸をすえたい。
1992年にアルゼンチンで発行された恐竜切手。どうやら、額面に+表示があることから、寄付金付きの切手のようである。


この「アマルガサウルス」と「カルノタウルス」はアルゼンチンから発掘されている恐竜たちである。いずれもインパクトの強さではテリジノサウルスやオビラプトルに引けを取らない。




「アマルガサウルス」は、「アマルガのトカゲ」という意味である。ネメグトサウルスやアパトサウルス(かつてのブロントサウルス)、ディプロドクスと同じグループ「ディプロドコイデア類」に属する竜脚類である。白亜紀前期に生息していた。
首に50cmにも達する長い「とげとげ」が並んでいる。「とげとげ」のままであったり、この切手のように「とげ」と「とげ」の間に膜が張っている姿で復元されている。個人的には膜が張っている方がより迫力があって好きである。
この「とげとげ」、実は「神経棘(きょく)」という脊椎骨から伸びている骨の一部なのである。ちょっと驚きである。




目の上に角が生えている。かなり変わったビジュアルをお持ちの獣脚類が、カルノタウルスである。その名は「肉食の雄牛」である。おっかない。
白亜紀中期に生息していたカルノタウルス、おっかないビジュアルとは対照的に、後世の私達人間にその姿を想像するヒントを残してくれた、実は律儀な恐竜だったのである。

化石というのは、骨や歯といった硬い組織が鉱物と置換されて残ったものだ。基本的には、皮膚や筋肉、脂肪といった柔らかい組織は化石には残らない。が、ご存じのように、「印象化石」というものが存在する。皮膚が泥に押し当てられてその形が残り、そのスタンプを押したような皮膚の跡が鉱物と置換されると、化石として残るのである。

このカルノタウルス、恐竜たちがめったに残してくれない、「皮膚の印象化石」を残してくれたのである。そしてその皮膚は、「粒状の鱗がびっしりと並んでおり、その周囲には小さな丸みを帯びた鱗が並んでいた」(『恐竜学入門』p.187)というのだ。


いずれの恐竜も、どうして「骨を伸ばしてみよう」とか、「角生やそう」と思ったのであろうか。これって、いつも不思議に思うのだが、何か必要に迫られて念じていれば、いずれは首の骨が50cmも伸びたり、目の上にかっこいい角が生えたりするものだろうか。
はたまた、棘が25cmくらいの段階があったのだろうか。角がこぶ程度の時期があったのだろうか。それとも、成長と共に伸びていった物なのか?不思議で仕方ない。考えると眠れなくなってしまうのだ。
この疑問て「なぜ像の鼻が長いのか?」という永遠の疑問に通じる気がする。
さらに言えば、「恐竜と鳥の境目」に存在していたとされる生物Xについての議論にも通じる。


黒と白とその中間のグレー。どこまでが黒でどこまでがグレーなのか。あるいはどこまでが白でどこまでがグレーなのか。そもそも、この「グレー」は存在するのかしないのか。
「烏鷺鳩」という言葉に込めた意味の一部である。



【参考文献】
・『恐竜学入門』 Fastovsky, Weishampel 著、真鍋真 監訳、藤原慎一・松本涼子 訳 (東京化学同人、2015年1月30日)
・『へんな恐竜』歯黒 猛夫 著(彩図社、2010年2月22日)

沖縄切手:沖縄返還から46年

2018-05-15 | 切手


沖縄切手、または琉球切手をご存じだろうか?
本土復帰の1972年まで、アメリカの統治下にあった沖縄で発行されていた切手のことである。


沖縄の地に咲き誇るデイゴやサンダンカ、月下美人。沖縄の海に生息するハマクマノミやジュゴン、ウミガメ、貝。沖縄の島で歌うノグチゲラ。
海に浮かぶ島々に沈もうとする夕日。
沖縄の人々に大切に守られてきたイザイホウやハーリーといった祭。
機織りや農業にいそしむ人々の姿。
風に漂う三線の音色。


温かみを感じさせるタッチの絵と鮮やかな色遣い。そういった、いつまでも眺めていたくなるような絵の描かれた、大変魅力的な切手である。


この「沖縄切手」がいかに独特で世界でも類を見ない切手であるか、『沖縄切手のふるさと』という本に説明されているので、是非ご一読頂こう。

本土復帰前の話である。沖縄の切手――というと「アメリカの切手を使っているんだろう」とか「いや、日本の切手をそのまま使っているんだよ」という人に出会って、びっくりしたことがある。独立国でもない、植民地でもない地区が、独自の切手を発行したということは、あまり例のないことなので、関心のうすい人にとっては、そのような返事が出てきたのも当然かもしれない。
戦争などで、その国の一部が占領された場合、占領軍はその国の切手の上に自分の国の国名を加刷して使うのが普通である。日本もマレーや蘭領インドを占領して、大日本郵便などという文字をその上に加刷して住民に使わせたことがある。
しかし、沖縄の場合はちょっと事情が違っていた。1945年、太平洋戦争末期に沖縄を攻略したアメリカ軍は、ほとんどの地区で日本の切手を使用させていた。そして1947年になって、宮古、八重山、沖縄、奄美大島の各民政府で、それぞれの郵政の最高責任者である通信部長(もちろん日本人である)の認め印を押して使うことになったのである。
日本の切手の上に、アメリカの文字がベッタリと加刷されなかったことは、幸いなことであったといえるだろう。(『沖縄切手のふるさと』p.9)


1972年4月20日に発行された、切手趣味週間の「ユシビン」に至るまで、沖縄の人々が切手をデザインしていた。

この本には、その当時の様々な苦労や逸話が載せられている。慣れない切手印刷に手こずったり、アメリカとの軋轢に悩まされたり、ご苦労は相当のものだったらしい。
切手のデザインだけではない。当時も今以上に米兵による犯罪に苦しめられていた沖縄の人々についてもページが割かれている。第2次大戦後から本土復帰までの歴史についても詳しく述べられていて、大変勉強になった。


5月15日は本土復帰から46年にあたる。
のどかな、南国の魅力的な風土を描いた切手の背景には、沖縄の人々の様々な苦労があったのだなあと、改めて感じた次第である。
せめて今日くらいは、美しい切手に込められた沖縄の人々の思いや誇りに、心を寄せてみたいと思うのである。



【引用文献】
・『沖縄切手のふるさと』 月刊 青い海 編集部 編 (高倉出版会 1973年3月30日)

マダガスカル 恐竜切手 小型シート 1997年 (3)

2018-05-14 | 切手


隕石の落下と大規模噴火。
いずれも恐竜を絶滅させた要因とする説がある。

恐竜が絶滅したのは、約6600万年前、白亜紀の終わりである。
これまで、絶滅の原因については様々な説が立てられてきた。
〈生物学的要因〉
●ホルモン異常
●種族としての老衰
●哺乳類が恐竜の卵を食べ尽くした
●森林の減少
●植物が有毒になった      等

〈物理的要因〉
●気候が急激に変化
●海退による恐竜の生息域の減少
●引力の変動
●超新星爆発による電磁波と宇宙線の被爆
                等

こうした要因は陸上の生物の絶滅を説明できる一方、水中の生物の絶滅を説明できない、など色々と反論が可能であるため、有力な説とは言えない。

数ある説の中で、今や恐竜の絶滅要因の一番有力となっているのが、小惑星の衝突説である。


K/Pg境界線(かつてK/T境界線)と呼ばれる層に、有孔虫という海中に生息していた微小生物の化石が大量に見つかった。有孔虫が一度に、あるいは短い期間に、大量に死んだということである。

Alvarez達の研究者グループがこの境界線付近を調べたところ、通常の30倍という非常に高い濃度のイリジウムが検出された。
通常、イリジウムは地球上ではわずかな量しか検出できない物質である。地球外、つまり宇宙から飛散してこない限り、通常の30倍の濃度のイリジウムが検出されることはない。
このことから、Luis Alvarez達の研究者グループが、小惑星衝突の可能性を提唱した。
その後、世界各国、100カ所以上で「イリジウム異常」が報告されるようになる。

さらに、「衝撃石英」や「マイクロテクタイト」という、隕石衝突の衝撃によって形成されるガラス質の物質が、モンタナのK/Pg境界を示す層で発見される。

決定的な証拠は、メキシコのユカタン半島にあるチクシュルーブという町でみつかった、直径180kmにもなる巨大なお椀状の地下構造である。
ボーリングコアによって、そこから衝撃石英が発見された。

以上のことから、6600万年前に、小惑星が衝突したということが分かったのだ。


ただし、これで恐竜の絶滅が全て説明されるわけではない。衝突により一瞬で死に絶えたのか、それとも、徐々に滅んでいったのか、検証のしようがないのである。

K/Pg境界をはさんで起こったイベントとして、デカン高原の大陸洪水玄武岩があげられる。
大陸洪水玄武岩と大量絶滅の起こった時期を調べると、対応関係があることが分かったのだ。
ペルム紀と三畳紀の境界で起こった大量絶滅にも、この大陸洪水玄武岩の大規模な噴火が関係していた可能性があるのだ。そしてこれが白亜期末にも起こっている。

ということは、大陸洪水玄武岩の噴火と、小惑星の衝突が、それこそ何千万年に1回の確率で同時期に起こったことによって、恐竜や水陸の大型爬虫類などの大量絶滅につながったのではないだろうか、と考えられるのである。


ところが、恐竜絶滅に関しては、分かっているようで分かっていない、というのが本当のところらしい。

K/Pg境界で大量絶滅が起こったことは事実であり、恐らくその要因は、K/Pg境界で起こった何等かのイベントである。しかし、絶滅の原因となったイベントの候補を除外できなければ、絶滅の原因を絞り込むことはできない。それでは、K/Pg境界で起こったことについて、何も新しいことがわかっていないのと同じことである。複合要因仮説はあまりに大雑把で、何も説明できていないのと同じことになってしまうのだ。皮肉なことに、複合要因仮説はおそらく正しいのだろう。K/Pg境界で特異的に、独特な組み合わせのイベントが同時に起こり、それによって特異的な大量絶滅が引き起こされたのかもしれない。しかし、ここまで説明してきたように、複合要因仮説は検証が不可能であり、科学的な仮設としての条件を満たしていないのである。(『恐竜学入門』p.341)

科学的理論の仮説というのは「仮説が検証可能であること」(p.336)、「仮説はそのイベントで起こったすべての事象を説明できていなければならない」(p.338)というのが必須条件なのだ。


小惑星衝突説を打ち出した研究グループの、W. アルヴァレズ(Alvarez)とF. アサロが、1990年に「日経サイエンス」誌に寄稿している。この中で、3200万年周で太陽の周りを回っている、彗星「ネメシス」の接近による大量絶滅の可能性も示唆されており、大変興味深い記事だった。
2004年に採録された文章の一部をご紹介しよう。

カタストロフィズムのすすめ
完全な決着を見てはいないが、KT境界(※当時の呼称)の絶滅問題は多くのことを教えてくれている。18世紀後半から19世紀初期にかけては、地球の研究が初めて科学として歩み始めた時期であった。この時期は、突発的な大事件が地球進化に重要な役割を果たしたとするカタストロフィストと、すべての地史はゆっくりとした通常の変化で説明されるとするユニフォーミタリアンとの長い戦いの時期でもあった。
・・・
カタストロフィーは進化を考える際にも重要な役割を果たしている。6500万円前(※当時の計算による)、偶然の衝突が、地球上の生命の半数を抹殺したとすると、適者生存は進化の唯一の推進力にはならないのである。生き残るためには、種はよく適応しているだけでなく、幸運でなくてはならないのだ。
・・・
KT境界の絶滅を生き延びたのは、第三紀初期の哺乳類たちであり、この中に私達の祖先がいた。恐竜たちが地球上に君臨していたころの哺乳類は、小さくて取るに足らない存在であった。温血の代謝機構、小型の身体、個体数の多さなどが、衝突による厳しい状況に耐えるのに有利だったのだろうか。あるいは、ただ単に幸運だっただけなのかもしれない。
巨大な爬虫類が消失したことにより、哺乳類はついには人類へと進む爆発的な進化を開始した。6500万年前のミステリーの謎解きが進むにつれて、私達が考える人間の存在自体が、恐竜を破滅に導いた衝突の結果であることを意識するようになってきた。(「地球を支配した恐竜と巨大生物たち」 p.100)



化石は不完全な状態で発見されることが多い。ただでさえ、その生物がどういう状況で最期を迎えたのかというのを研究するだけでも大変なことなのだ。
なんだか、今回の切手シートを調べてみるにつれ、恐竜研究の難しい側面を次々目にしたような気がする。新しい種の発見からその学名取り消し、そして恐竜絶滅の要因を検証することの難しさ。恐竜の絶滅というテーマだけでも大きすぎて手に負えないくらいだ。今回はほんとにざっくりとした紹介しかできなかった。でも、そんな難しい問題も含めて、恐竜について思いをはせるのは尽きない楽しみなのかもしれない。



【参考文献】
・『恐竜学入門』 Fastovsky, Weishampel 著、真鍋真 監訳、藤原慎一・松本涼子 訳 (東京化学同人、2015年1月30日) 
・「別冊日経サイエンス145 地球を支配した恐竜と巨大生物たち」 (日経サイエンス 2004年6月17日)

マダガスカル 恐竜切手 小型シート 1997年 (2)

2018-05-13 | 切手


まずは左のコリトサウルスについて見てみよう。
ランベオサウリナエ類というグループに属する、植物食恐竜である。このグループでは、ランベオサウルスやパラサウロロフスといった恐竜も含まれている。特徴的なのは、バラエティーに富んだ「とさか」のような突起である。

この突起、ただかっこいいから発達しただけではない。内部構造は非常に複雑であり、空気が通り抜けることで音が出るという、共鳴構造になっていたのだ。

空洞のとさか状の突起をもっていた仲間については、水中で生活していたか、鋭い嗅覚をもっていたのではないかと考えられたこともあった。しかし、最近の研究によって、とさか状の突起の内部に細かく区切られた空洞が反響室の役割をし、まるで中生代の“アルペンホルン”のように大きな低周波音を生み出すことができたのではないかと考えられるようになってきた。この見解をもとに、現在ではとさか状の突起の役割については、種内競争と性選択が主だったのではないかと考えられている。種、性別、あるいは集団における社会的地位といった情報を伝えるため、とさか状の突起は視覚的にも(反響室としての機能があった場合)聴覚的にも特殊でなくてはならなかっただろう。こうして、成熟した成体同士で条件に合致したペアだけが出会い、交配を成功させることができるのだ。(『恐竜学入門』p.133)

共鳴音が出せるということはそれを聞き分ける良い耳を持っていたということが考えられるようである。さらに、とさかの形状が多様化しているということから、それを見分けられる良い目を持っていた、ということが仮説として述べられている。

「音」というのは化石に残らない。白亜紀の地球にはどんな音、そして「声」が響き渡っていたのだろう。ホルンのような低い音が、色々な音階や抑揚をもってこだましていたのかもしれない。


続いて、隣のストゥルティオミムス(※『恐竜学入門』における表記)はどんな恐竜だったのだろうか。

ストルティオミムスはオルニトミムス科としては典型的な体つきをしている。すなわち小型でスレンダーな頭部、大きな眼とくちばし状の口である。尾の骨は固まっておりディノニクスや一部の小型恐竜のようにバランスをとるのに使っていたと思われる。特徴的な細長い腕を持つがナマケモノに似たつくりをしており頭上の枝を手繰りよせる役割をしていたのではと思われている。事実第二指と第三指はほぼ同じ長さでこの2本を独立して動かすことはできず何かを掴むということには適さなかった。

ストルティオミムス及びオルニトミムス科の食性についてははっきりとした結論は出ていない。

そのくちばし状の口器から雑食性であるとも考えられるが、ガリミムスやオルニトミムスでは頭部化石の研究からくちばしに小さなスリットを多数持つことがわかっており、フラミンゴのような濾過食ではなかったかという意見もある。ただ水中の藍藻類や小動物だけでは、ストルティオミムスにとって十分な量を確保できなかったのではないかという反論もある(小型恐竜といってもそれらの水鳥よりははるかに大きかった)。また胃石の化石や頭の真横に着いた眼、前述の細く長く物をフックのように引き寄せるのに使われたと思われる手などから植物食、または植物食の傾向が強い雑食だったというのが現在の主流である。

オルニトミムス科の特徴である長く力強い後ろ脚をもっており最高速度は時速60〜80キロメートルに達した。


確かに、姿もフラミンゴみたいにスレンダーだ。
最近は、「植物食」か「肉食」かという恐竜の食性による二分法が危うくなってきているようだ。そりゃそうだ、原生の動物たちを見たって、植物か肉か、なんていう単純な食生活をおくってるものだけじゃない。だけど、食べた証拠、つまり排泄物の化石からしか実際の食性はわからないから、難しいところなのかもしれない。




さあ、お待ちかねのトロオドンである。
トロオドンといえば「ディノサウロイド」(恐竜人間)を思い浮かべる方も多いに違いない。元祖「頭の良い恐竜」である。もし、恐竜が6500万年前に滅んでいなかったら、トロオドンから(トロオドン科の恐竜から、といった方が正しいか)進化した「ディノサウロイド」という種族が、大きな文明を築いて繁栄していただろうという仮説である。
体の割に大きな脳を持っていたこと、そして目が前に付いていた、つまり立体視ができていた、というのが根拠である。

「どうしてそんなことが分かるの?」という疑問が沸いたのは私だけではあるまい。だって、トロオドンとして記載されている化石は「1本の歯」だけなのだから。

どうやら近縁種のステノニコサウルスの骨格から、想像して復元したらしいのだ。「恐竜人間」の模型はさらにそこから想像したものだったのだ。あの宇宙人みたいな目のでっかいやつである。子どもの頃、『科学』という子ども向けの雑誌に載っていた恐竜人間が、妙におっかなかったという覚えがある。なんか、支配されそうな怖さを感じたものだ。

そんなトロオドンなのだが、どうやらその学名が抹消されてしまうらしい。
結局のところ、ステノニコサウルスという名前に吸収されるということだ。ただし、「トロオドン科」という科名としては残るという。

まったく、頭の良い恐竜だけあって、学名記載から学名抹消までの経緯が複雑すぎてついていけない。というわけで、詳細をばっさり省いたことをご容赦頂きたい。


ところで、この切手、恐竜たちの「背景」についても、ちょっと思いをはせてみる価値がありそうなのだ。

幻のトロオドンが見つめる先は? 次回へと続く。



【参考サイト・文献】
・ウィキペディア 「ストルティオミムス」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%AB%E3%83%86%E3%82%A3%E3%82%AA%E3%83%9F%E3%83%A0%E3%82%B9
・GET AWAY TRIKE ! ※トロオドンの発見から現在の疑問名扱いに至るまでが詳しく述べられている。
https://blogs.yahoo.co.jp/rboz_05/38507230.html 
・『恐竜学入門』 Fastovsky, Weishampel 著、真鍋真 監訳、藤原慎一・松本涼子 訳 (東京化学同人、2015年1月30日)