mab's MemoBlog

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学校には必ず来ないといけない。

2010-01-21 16:06:55 | USA(学校)
渡米してから、日本の学校との違いを一番痛感したのは、これだ。
「生徒は、学校にくる義務がある。親は子供を学校へ行かせる義務がある。」
「学校(先生)は、生徒が安全で過ごせるための環境を整える義務がある。」


それは、いわゆる健常者だけでなく、体や心に障害や病気を持つ子たちも同等に守る義務があるし、学校へ来て教育を受けるという権利なのだ。
確かに日本でも、「建前上」はそうだ。でも、真剣さや厳格さやそのための施策があるかという点では、はるかに日本は劣っている。

日本では、例えばイジメや体調不良で子供が学校を休みがちになると、「その子にとって楽な方へ、無理なくできる方へ、たまには逃げながら、少しでも学校へこれるような環境を整備する」という方へ、舵が切られる。日本的な「心の痛みを重視した教育」だと、私も思っていた。
心や体に多少問題があって普通の授業に付いて行けない子たちは、「特殊学級」へとクラスが分けられ、小学校までは1クラス位そんなクラスが設けられる。中学校にはそういうクラスが無い学校も多い。
今までフツー学級に入っていた子が、いろんな原因(イジメや体調不良など)で、フツーに登校できなくなると、結構悲惨だ。
通常、学校にいけない原因はすぐには解消されないし、先生たちはオロオロするか、「来れるようになったら来てください。」という(一見優しく見えるが、実は些事を投げた)対応が普通だ。そして義務教育は出席率が厳しくないので、欠席し続けても、とくに補講しなければいけないということはない。よって割と気楽に休みがちになる。その弊害として、行き続けないと行きづらくなるし、落ちこぼれるし、「もう自分はフツーじゃない」と思うと、元の状態に復帰するのが難しくなる。日本の高い登校拒否率はそのせいも大きいだろう。

一方、アメリカだと、よほど治安が悪いとか重病や感染させる病気以外は「学校はこないといけない。」ものなのだ。安全な郊外の公立学校では、登校拒否などありえないのだそうだ。特殊クラスはなく、普通のクラスに数人はSpecial Careの必要な子が混ざっている。
毎日決まった時間に注射や投薬をしないといけない病気の子は、School Nurseが注射をする。心の病気のために、普通に授業が受けられない状態になった場合は、補助の先生が別室へ連れ出す。身体のリハビリの必要な子は、授業を抜けてリハビリへ行く。
そうまでして学校に来ないといけないのだ。ちょっと位(親から見るとちょっととは言えないけど。。)体調が悪い位で休むなんて、ありえないのだ。うちの子供たちのESL(英語の特別補講授業)だって、同じようなものだ。いろんな子たちがいて、いろんな教育を受けている。

もちろん、それを実現するために、先生たちがすごく個々の生徒を見ている。
こちらの学校にきて感じたのは、「学校(先生)がすごく真剣だ」ということだ。
学校へ快適に(体だけでなく心も)来るための施策を一緒に考えてくれる。最初はこちらの家庭での生活面や食生活や教育方法にも介入してくるので、押し付けがましくも感じたけど、担任とスクールカウンセラー(ガイダンスカウンセラー)やナース、担当している先生たちがチームとなって、生徒の対応方法が検討され、まずいことがあればすぐ校長へ報告される。
先生たちのメールアドレスは公開され、親からの意見や質問をいつも受け付けている。私はとくに英会話(電話)が苦手なので、メールで意思疎通できるのですごく助かっている。

学校によって異なるとは思うけど、息子のMiddle Schoolでは、「5日以上休むと医師の診断書が休む度に必要。休んだ分は宿題や補講で補充する必要がある。休みすぎると進級不可」と明記されている。

今まで何度か書いてきたけど、息子は渡米直前に「起立性調節障害」というやっかいな病気にかかり、めまいや頭痛でどうしても起き上がれなくて、気がつくと学校を休み続けてしまった。
日本の医者は、息子が学校生活を少しでも楽に過ごせるようにと、「とくに朝の体調不良で、遅刻や欠席が起きることがあります。無理のない生活をさせて下さい」という診断書を書いてくれた。これで日本では堂々と学校が休めた。毎朝の欠席連絡はストレスたまったけど。。

私たちは、体調が悪いまま渡米すべきか悩んだ末、日本と環境が違うから直るかもしれない、という希望にかけて、渡米することにした。
「アメリカはいざとなればフリースクールもあるし、学校なんて休むのは自由だよ。」なんて、気楽に考えていたし、そう言って安心させて息子をつれてきた。
しかし、「アメリカの学校への出席義務」は予想以上に強固で、この大原則には、かなり泣かされた。

9月の新学期から、だんだん調子が落ちてきて、9月10月は本当にしんどそうだった(2009/9中旬のブログ:息子の新学期)から、数日休ませたら、ナースから案の定呼び出しが来た。

School Nurse「日本の診断書ではなく、アメリカの主治医の診断書が必要です。」
ワタシ「日本での診断書はあるけど、アメリカの主治医には専門外と言われ、専門医の予約は3ヶ月先だから、診断書はすぐに出ない。」
School Nurse「それでも、遅刻や欠席が5日以上になる場合は、日本の診断書ではなく、アメリカ診断書が必要です。日本の薬は学校では飲ませられません。たとえ診断書があっても、休む度に医師の診断が必要です。」
ワタシ「。。。(どうしろと?もう5日で崖っぷちなんだけど?どの医者に毎回診断してもらうんだよ?)」

結局、ここは堂々巡りで、学校も5日以上勝手に休まれると、「子供に教育を受けさせない虐待」の疑いがあるとし、TOWNの警察、続いて州の警察に呼び出しを食らうとか、どんんどん面倒なことになるようなのだ。

しかし、先生たちも、大原則をかざすばかりではなく、生活面での指導や、食生活の相談や、保健室の使い方、英語が離れないという環境での心理面のケアについて、踏み込んで解決策を出そうとし、本当に真剣だった。
学校にフツーじゃない子が来ると困ってしまうような、日本の先生とは大違いだ。

School Nurse「日本で、学校を休んでいて、いいことがありましたか?」
ワタシ「。。(当然、ない。病気も良くならなかったし。)」
School Nurse「ここで何百人も生徒を見ているけど、低血圧で朝起きれないから学校に来れないという子は一人もいません(怠けではないですか?)」
ワタシ「だから、そういうレアケースな病気なんですよ。。」
School Nurse「朝、血圧が低くて調子が悪なら、早起きをして、十分運動をして、ご飯をしっかり食べて、血圧をあげてから来て下さい。」
ワタシ「朝、具合悪くてご飯食べれないときもあるんです。。。(起きれないんですよ。夜10時前には寝てるのに。。朝は具合悪くて動けないんですよ。。)」
School Nurse「朝食を食べれなかったら、学校に持ってきて食べて下さい。水分(ゲータレード)は、どこでも持ち歩いて、授業中でも飲んでいいです。スナックも食べて下さい。保健室にも、常備しておいていいです。スナックで足りなければ、お湯をわかして、インスタントラーメンとか作って食べてもいいです。」
ワタシ「保健室で、寝ている(横になる)こと自体が、病気を悪化させるので、起きていることが必要ですが、クラスで座っている事自体が辛い場合があります。」
School Nurse「保健室で寝ている必要はありません。楽な体勢で、宿題をやったり、本を読んでいてもかまいません。」

学校に来るために、どんなことでもサポートしよう、という姿勢だ。そのためには、学校へ来るための「努力」を要求される。息子の場合の努力とは、調子が悪くても、学校へまずは来て授業に参加することなのだ。それは、日本に居た時以上に、きっと辛い。しかし、学校へ行きさえすれば、なんとか(しんどくても)一日過ごせることは、わかってきた。息子も、話をしながら、肝が座ってきたようだ。

というわけで、「日本のような、休んでもいい病気」ではなく、「アメリカでは、学校には行かないといけない病気」という考え方に切り替えて、朝青白い顔をしている息子をしつこく起こし、ベットから担いで出たり、朝はたっぷりの食事を無理矢理とらせた。これが、学校へ子供を行かせるための「親の義務」なのだ。

そして、これがまた不思議。食べると、動けるようになるのだ。
息子「今日は、昨日よりもしんどい。。。動けない。。」
ワタシ「辛いのはわかってるけど、でも、学校には行かないといけないんだよー。」
息子「知ってるよ。。めんどくせえなあ。。」(と何度かの呼びかけで起き上がる)
ワタシ「頭いたくない?」
息子「頭痛い?とか、いちいち聞かないで。そう聞かれると、痛いのに気づくからさあ。」
校門の前まで自家用車で送り迎えが出来るという安心感もあるし、スクールバスや自家用車通学が普通という状況だから、行きやすいというのもある。

11月になって、「薬は今日はいらない」と言う日が増えてきた。でもやっぱり調子が悪い日は悪い。その時は、自分で薬の量を調節しているようだ。

12月末に、やっと専門医に診断してもらうことができた。
日本の病名とは違うけど、POTS(Postural Orthostatic Tachycardia Syndrome)と診断された。日本での診断内容とほぼ同じだ。これで、アメリカの正式な診断書が出たし、日本に帰国するから、薬も日本から送ってもらっている薬(低血圧のための昇圧剤、頭痛薬、腹痛薬、漢方、ビタミン剤)を飲んでもいいと一筆書いてもらったので、学校にも置き薬してもらえる。とはいえ、「休めない」という点では、診断書があっても、息子にとっては同じだ。

多分、日本にいたら、あのままたくさん休んでしまっていた。
でも、今は「辛い」と言いながらも、学校へ行けている。
「あいかわらず英語はわかんないけど、楽しいよ。学校」と、放課後のクラブにも出ている。逆境の中で図太さも育ってきたようだ。すごい。

これだけでも、アメリカに来て良かった、と感じる。子供たちはずっとしんどいんだろうけど。。
息子のESLの先生のメールでは、「最近、本当にすごくがんばってますよ」と書いてくれる。
息子曰く、「全然がんばってないよ。わけわかんねえ時は、日本の本読んだり、絵書いてるし。」

全部がんばる必要はない。その子ができる最善の力を、見てくれる。力を抜いてがんばれるのがアメリカ式。結構いいかも。

転校の日に(2009/7のブログ)を読み直しながら、本当にそう思った。
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6 コメント

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Unknown (Unknown)
2010-01-23 10:28:08
素晴らしいブログですね。思わず引き込まれました。
Berlitzでのレッスンのお話がおもしろくて、それ以来拝読しています。いやー、たのしい!
返信する
ありがとうございます (mab)
2010-01-23 21:13:31
このエントリーは、いつもよりもちょっと真面目に書いてみたので、そういっていただけると嬉しいです。
ちょっと笑える話も、おりまぜつつを心がけてます。

ベルリッツでのレッスンを考えられてますか?面白いですよー。

今度はお名前(ニックネーム)残して下さいね~。
返信する
試練… (かいちょ)
2010-01-27 01:55:06
ときどき来てアメリカライフを疑似体験してますが
たまーに、重たいネタもありますねぇ。

私も、人並みにタバコやら万引きやらで道を外れ掛けた事もあるし
小学校でイジメられて学校がイヤになったこともあったけど
それでも高校で入院経験するまで、学校を休んだこと、
一度もないんですよねぇ。

「熱が出ようが、骨折してようが
 学校はいかないといけない場所だ」

って、小学校の時から信じて疑わなかったので(’’

診断書が出る病気っていう、特殊な事情もあるんでしょうけど
郷に入りては何とやら…で、子供も何とか順応するんですねぇ。
特に、学校サイドの【熱意】を感じたエントリでした。

支離滅裂、失礼m(_ _)m
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かいちょさんへ (mab)
2010-01-27 03:51:06
そうなんですよ。
うちも「学校は熱が出ない限りは来ないといけないところ。」ろ言われて育ったので、自分の頑丈さをのろいました(笑)
なので、子供たちもそうして育ててきたのですが、「病気」だとねえ。。。
しかし、やっぱり日本の学校は熱意無い、と思った次第です。
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Unknown (愛知っ子)
2010-01-27 11:18:25
mabさん、こんにちは。
我が家も何度か転勤しているので(海外は行ってませんが)ブログを見て胸が痛みます。
でも、確かにそちらの方が学校、先生方が熱心ですね。お子さんたちは今の状態が辛いこともあるかと思いますが今後、きっと生かされることがあると思います。
私の友人も同じような転勤族でやはり現在中学2年生の子ども公立中学に通えず現在フリースクールに通っています。小学6年生からなので親子共に大変な期間があったようです。現在はお子さんも少し落ち着いてフリースクールへの登校日数も増えてきたようです。でも、今後の高校などの進学問題で悩みはつきないと・・・・。
やはり転勤で辛いこともあるかと思いますがいろんな場所で生活する経験は貴重だと思います。お子さんばかりでなくmabさんも心と身体の健康に気を付けてください。応援しています。
返信する
愛知っこさんへ (mab)
2010-01-28 11:05:32
こんにちは、コメントありがとうございます。
私も子供たちも、図太くなって、帰りたいと思っています。
アメリカの方が、いろいろすっぱりと諦められることも多く、実は気楽かもしれません。
日本に戻ったら、キチキチとした規則がうっとおしいんだろうなあ、と思っています。
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