ちぎれ雲

熊野取材中民俗写真家/田舎医者 栂嶺レイのフォトエッセイや医療への思いなど

台風12号災害から知ったこと 4)土石流は真っすぐ流れる(ようとする)

2013-11-05 | 危機管理と災害

 2011年9月に紀伊半島を襲った台風12号大災害を体験してわかったことをシリーズで書いています。

4)土石流は真っすぐ流れる(ようとする)

 当たり前、と言えば、当たり前。
 その地形にもよるでしょうが、基本的に落下エネルギーはシンプルに重力の方向へ。

 ………でも、実際に土石流被害の跡を見て、「ああ。真っすぐ流れ下ってきたら、ここを直撃か……!」と気づいてがっくりするような光景が、台風12号後のあちこちでありました。

 例えば上の写真。
 左に見えている家は無傷でしたが、そのすぐ右の隣家は土石流の直撃を受けて写真の通り跡形もなくなり、人も亡くなられました。

 災害が起こる前、いつもここを通る時見たのは、この家に突き当たる感じで小さな沢が流れてきていて、それで、家の横を沢がぐるりとまわるようによけて、それから車道に橋がある、……という位置関係でした。上の写真の土石流の流路のもうちょっと右側に、小さな沢の流れと橋があったんです。

 でも、災害が起こってしまった今、家をよけるように流れていた小さな沢を思い出しても「ああー(嘆)」としか思えません。土石流はよけてなんてくれない、当たり前のことなんですが、今更わかっても遅いんです。

 もう少し言えば、今更ながらこの写真の土石流の場所を地形図で確認すると、この沢の上流は枝分かれもせず、かなりの距離にわたって真っすぐ下り続ける沢であることがわかります。沢の流れは小さく見えたんですけどね、実際は山頂直下から来る長い谷でした。たくさん枝分かれしたり流路の短い谷に比べて、流下するエネルギーが大きいことが伺われます。

 ただ、地形図だけでは、この家のみが直撃されるような、細かい沢の位置関係はわかりませんでした。
 地図だけでなく、自分の家と周囲の沢や尾根、谷、との位置関係を、ふだんからよく見ておかなくてはと戦慄しました。


 もう1例あげてみます。
 那智勝浦町を襲った大規模土石流の一つで、西山集落の半分を押し流し、人的被害も大きかった所です。
 国際航業ホールディングス株式会社が公開している西山の災害直後の写真をリンクしてみます(下記をクリック)


http://www.kk-grp.jp/csr/disaster/201109_kii/n/n05.html

 土石流は写真の左から右へ向かって流れ下っています。
 ほとんど真っすぐなのがわかるでしょうか……?

 西山集落は、ちょうど県道が谷を横切る所に、谷沿いに家々が並ぶ集落でした。谷に沿って……というよりも、県道から見上げると、谷床に家が建っているように見えました。西山集落の上方には昔、鉱山があって、西山の人々はこの沢を道にして、働きに通っていたそうです。
 それで、真っすぐ流れ下ろうとする土石流は、写真で見ての通り、流路の家を押し流し、山を背にしていた家だけ助かりました。

 自分が住んでいる土地が、どっち側からどんなエネルギーを受けるか(受ける可能性があるか)、よく見ておかなくてはと思った次第です。


 ちなみにこの会社は、数々の災害後の上空からの写真を公開しているので、防災に関心のある人には大変ためになります。災害後何年経っても公開を続けてくださっていてありがたい。
2011年台風12号の被害状況はこちら↓
国際航業ホールディングス株式会社:平成23年9月 台風12号による紀伊半島豪雨災害
その他の災害(3.11東日本大震災や、今回の大島町の災害も含む)のリストはこちら↓
国際航業ホールディングス株式会社:災害調査活動への取り組み


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