「動物好きなんだなお前」
デパートに行けば服だの本だの色々あるってのに。
「だって、見てて面白いじゃないですか。
次にどう動くか予測できないし、しかも可愛いし」
「やっぱりカエルも可愛いうちに入ってるのか?」
「もちろんです」
もちろんですか。こいつの『可愛い』は一体どんな守備範囲をしているのだろう。
「……ちなみに、可愛くない動物は存在するのか?」
訊いてみた。
「そりゃいますよ。ゴキブリとか」
「嫌われ者の代表格だな」
哀れゴキブリ。こいつにすら嫌われてしまった。
「かわいくないどころか、なんかこう……気持ち悪い感じすらします」
「どうしてなんだろうな。近づきたくないって言うか近づいてはいけないって言うか……
体が拒絶するんだよ。見た目は角のないカブトムシって感じなんだが」
「なんででしょうね? 動きが速いからかな。それとも触覚?」
「謎だな」
「ですね」
……なんで休日の外出中にこんな話してんだ俺達。
「なあ、セン」
別の話を切り出した。ああ気持ち悪い。
「なんですか?」
「欲って、どんな風にして金に入り込むんだ?」
なにしろ目に見えないから、訊かなきゃ解らん。解っても意味ないかもしれんが。
「えーっと、そうですねぇ……明さん、今お金持ってますよね?」
「もちろん」
持ってなかったらデパートに何しに行くんだ。それ以前に電車に乗れないぞ。
「その中に欲が入ってない、空のお金があるとします」
「ふむ」
「で、例えば明さんが『お腹すいたなー』と思えばその食欲が空のお金に入り込みます」
「ふーん。空の金がなかったら?」
「手当たり次第にお金に入ろうとします。
それで、元々入ってる欲と場所の取り合いするんです」
「一つの金に一つの欲しか入れないってことか?」
「そうです。で、勝った方の欲がお金に居続けられるんですけど、
お金に入れない欲は五分ほどで消えちゃうんですよ~」
……中々にハードな世界だな。生まれてすぐに生きるか死ぬかの大勝負か。
「勝ち負けはどうやって決まるんだ?」
「欲の強さは欲の強さ……ってなんか変な言い方ですね。
具体的にはちょっとお腹がすいた時の食欲よりも、
餓死寸前な時の食欲の方が強いって事です」
具体的過ぎて怖いわ。よく解ったけど。
「じゃあとんでもなく強い欲は、お前に食われん限りずっと居座り続けるのか?」
それがどんな欲かは皆目見当がつかんが。
「それがそうもいかないんですよ。やっぱり実体のない不安定なものですからねぇ。
お金に入っても一ヶ月ぐらいで結局消えちゃいます」
「ほお」
「儚いですよねぇ」
「なんだ急に」
「人の夢と書いて!」
「急カーブ!」
減速無しで九十度曲がってみた。別にここで曲がる必要はなかったが。
「わわわーっ!」
「こ、怖かった……すっごい良いこと言おうとしたのに」
少し予定から外れた道をのんびり進むと、そろそろ民家が多くなってきた。
「聞かなくても解るから大丈夫だ」
「え。なんでですか?」
「聞き飽きるほど聞いたことあるからな」
「そんなに有名な台詞だったんですか。カッコイイと思ったんですけど」
「テレビとかネットとか本とか、な。結構いろんな所で聞くぞ」
「うーむ、残念。そういうことは欲からじゃあ解り辛いですからねぇ」
そうか……欲からの情報は単発でしかないんだな。
その情報がどのくらい広まっているか知るのは難しいと。
「そっちの方が面白そうだけどな」
「そうですか~? 今みたいになるとちょっと恥ずかしいですよ?」
「皆が知らなきゃいっつも新鮮な台詞になるだろ。
さっきの俺みたいなつまんない返しもなくなるし」
「皆がそうだと社会的にマズくないですか色々と」
おお、センらしからぬ真面目な意見。まあ俺もそれは解ってるけどね。人の夢だよ。
デパートに行けば服だの本だの色々あるってのに。
「だって、見てて面白いじゃないですか。
次にどう動くか予測できないし、しかも可愛いし」
「やっぱりカエルも可愛いうちに入ってるのか?」
「もちろんです」
もちろんですか。こいつの『可愛い』は一体どんな守備範囲をしているのだろう。
「……ちなみに、可愛くない動物は存在するのか?」
訊いてみた。
「そりゃいますよ。ゴキブリとか」
「嫌われ者の代表格だな」
哀れゴキブリ。こいつにすら嫌われてしまった。
「かわいくないどころか、なんかこう……気持ち悪い感じすらします」
「どうしてなんだろうな。近づきたくないって言うか近づいてはいけないって言うか……
体が拒絶するんだよ。見た目は角のないカブトムシって感じなんだが」
「なんででしょうね? 動きが速いからかな。それとも触覚?」
「謎だな」
「ですね」
……なんで休日の外出中にこんな話してんだ俺達。
「なあ、セン」
別の話を切り出した。ああ気持ち悪い。
「なんですか?」
「欲って、どんな風にして金に入り込むんだ?」
なにしろ目に見えないから、訊かなきゃ解らん。解っても意味ないかもしれんが。
「えーっと、そうですねぇ……明さん、今お金持ってますよね?」
「もちろん」
持ってなかったらデパートに何しに行くんだ。それ以前に電車に乗れないぞ。
「その中に欲が入ってない、空のお金があるとします」
「ふむ」
「で、例えば明さんが『お腹すいたなー』と思えばその食欲が空のお金に入り込みます」
「ふーん。空の金がなかったら?」
「手当たり次第にお金に入ろうとします。
それで、元々入ってる欲と場所の取り合いするんです」
「一つの金に一つの欲しか入れないってことか?」
「そうです。で、勝った方の欲がお金に居続けられるんですけど、
お金に入れない欲は五分ほどで消えちゃうんですよ~」
……中々にハードな世界だな。生まれてすぐに生きるか死ぬかの大勝負か。
「勝ち負けはどうやって決まるんだ?」
「欲の強さは欲の強さ……ってなんか変な言い方ですね。
具体的にはちょっとお腹がすいた時の食欲よりも、
餓死寸前な時の食欲の方が強いって事です」
具体的過ぎて怖いわ。よく解ったけど。
「じゃあとんでもなく強い欲は、お前に食われん限りずっと居座り続けるのか?」
それがどんな欲かは皆目見当がつかんが。
「それがそうもいかないんですよ。やっぱり実体のない不安定なものですからねぇ。
お金に入っても一ヶ月ぐらいで結局消えちゃいます」
「ほお」
「儚いですよねぇ」
「なんだ急に」
「人の夢と書いて!」
「急カーブ!」
減速無しで九十度曲がってみた。別にここで曲がる必要はなかったが。
「わわわーっ!」
「こ、怖かった……すっごい良いこと言おうとしたのに」
少し予定から外れた道をのんびり進むと、そろそろ民家が多くなってきた。
「聞かなくても解るから大丈夫だ」
「え。なんでですか?」
「聞き飽きるほど聞いたことあるからな」
「そんなに有名な台詞だったんですか。カッコイイと思ったんですけど」
「テレビとかネットとか本とか、な。結構いろんな所で聞くぞ」
「うーむ、残念。そういうことは欲からじゃあ解り辛いですからねぇ」
そうか……欲からの情報は単発でしかないんだな。
その情報がどのくらい広まっているか知るのは難しいと。
「そっちの方が面白そうだけどな」
「そうですか~? 今みたいになるとちょっと恥ずかしいですよ?」
「皆が知らなきゃいっつも新鮮な台詞になるだろ。
さっきの俺みたいなつまんない返しもなくなるし」
「皆がそうだと社会的にマズくないですか色々と」
おお、センらしからぬ真面目な意見。まあ俺もそれは解ってるけどね。人の夢だよ。
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