暫らく待っていると電車が来たので乗り込んだ。
席は空いていたが、
どうせ一駅だけなので座りはせずに反対側のドアの前に立って発車を待つ。
すると、人が六人ほど階段を駆け上がって来た。
俺達が乗り込んだのは階段から一番近い車両、かつ一番近いドアからだったので、
その六人が全員同じ場所に駆け込む。
入ってきた六人の中に、見た顔が二つ。
あの五人組の内の声がでかい男と、兄を亡くしたらしい女だった。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
よほど急いで来たらしく、女は肩で息をしていた。男の方はそうでもないようだったが。
まああの階段結構長いからな。エスカレーター付けたらいいのに。
六人のうちこの二人を除いた残りの四人はそれぞれ空いていた席についた。
ドアが閉まって電車が発進すると、女は閉まったドアにもたれかかる。
息は落ち着いたらしい。
しかし、顔は伏せられたまま。
そして体がしゃっくりでもしているかのように僅かに痙攣している。
それはどうやら電車の振動によるものとは違うようだった。
「あの女の人、泣いてるんですかね?」
センに小声で訊かれた。
「そうなんじゃないか」
俺も多分そうだと思う。
「あの人確か、おんなじ映画観てましたよね。よっぽど感動したんでしょうか」
「だろうな」
でかい声の男は、そんな女を見て何も言わなかった。
行きと同じく、三分ほどで到着。
「着いたぞ」
でかい声の男が普通な声でそう言った。
「うん……」
泣いてるらしい女が返事をする。
「あれ……?」
センが何かに反応した。
「どうした?」
と俺が尋ねたところで俺達の前のドアが開く。
降りて改札に向かいつつ、会話を続行。
「あ、いえ、何か誰も居ない所から声がしたような……」
「そりゃ怖いな」
「まあ気のせいですよね」
「だろうな」
改札に切符を通して駅を出ると、あの二人は歩いて行ってしまった。
どうやらこの辺に住んでいるようだ。
しかし俺はそうではないのでまだ少し頑張らなくてはならない。
さぁて、不法駐輪な我が自転車は…………無事だった。ほっ。
掃除機のフィルターが入ったビニール袋を籠に入れ、自転車にまたがる。
「うし、行くぞ」
「はい」
センが後ろに腰掛ける。では出発。
自転車を漕ぎだして少し経ったあたりで、
前輪の横に備え付けられたライトを蹴る。これだけでライトはオンに。便利。
……また少しペダルが重くなった。ただでさえ二人乗りなのに。
「涼しくて気持ちいいですねぇ」
お前はそうだろうな。俺は暑くなってきたよ。重っ。
「まあ夜だしな」
暫らく重いペダルをこぎ続け、住宅地を抜ける。
そこには見渡す限りの田畑、そしてぽつりぽつりと民家。一気に視界が広くなる。
「あっ!」
センが急に声を上げた。
「どうした」
「星! 凄い綺麗ですよ星!」
俺の顔の横から腕を伸ばし、遠くの星空を指差す。
「まあ今日もいい天気だったからな」
明日も晴れたら今度は布団干そうかな。
「はわ~。凄いですね~……あ、そうだ! 明さん、星座とか解りますか星座!」
「全く知らん」
「流れ星来ないかな~」
自分で質問しといて聞いてない上になんだそれ。そんなのそうそう来るわけないだろ。
もし来たら……そうだな、「ペダルが軽くなりますように」とでもお願いしてみるか。重っ。
席は空いていたが、
どうせ一駅だけなので座りはせずに反対側のドアの前に立って発車を待つ。
すると、人が六人ほど階段を駆け上がって来た。
俺達が乗り込んだのは階段から一番近い車両、かつ一番近いドアからだったので、
その六人が全員同じ場所に駆け込む。
入ってきた六人の中に、見た顔が二つ。
あの五人組の内の声がでかい男と、兄を亡くしたらしい女だった。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
よほど急いで来たらしく、女は肩で息をしていた。男の方はそうでもないようだったが。
まああの階段結構長いからな。エスカレーター付けたらいいのに。
六人のうちこの二人を除いた残りの四人はそれぞれ空いていた席についた。
ドアが閉まって電車が発進すると、女は閉まったドアにもたれかかる。
息は落ち着いたらしい。
しかし、顔は伏せられたまま。
そして体がしゃっくりでもしているかのように僅かに痙攣している。
それはどうやら電車の振動によるものとは違うようだった。
「あの女の人、泣いてるんですかね?」
センに小声で訊かれた。
「そうなんじゃないか」
俺も多分そうだと思う。
「あの人確か、おんなじ映画観てましたよね。よっぽど感動したんでしょうか」
「だろうな」
でかい声の男は、そんな女を見て何も言わなかった。
行きと同じく、三分ほどで到着。
「着いたぞ」
でかい声の男が普通な声でそう言った。
「うん……」
泣いてるらしい女が返事をする。
「あれ……?」
センが何かに反応した。
「どうした?」
と俺が尋ねたところで俺達の前のドアが開く。
降りて改札に向かいつつ、会話を続行。
「あ、いえ、何か誰も居ない所から声がしたような……」
「そりゃ怖いな」
「まあ気のせいですよね」
「だろうな」
改札に切符を通して駅を出ると、あの二人は歩いて行ってしまった。
どうやらこの辺に住んでいるようだ。
しかし俺はそうではないのでまだ少し頑張らなくてはならない。
さぁて、不法駐輪な我が自転車は…………無事だった。ほっ。
掃除機のフィルターが入ったビニール袋を籠に入れ、自転車にまたがる。
「うし、行くぞ」
「はい」
センが後ろに腰掛ける。では出発。
自転車を漕ぎだして少し経ったあたりで、
前輪の横に備え付けられたライトを蹴る。これだけでライトはオンに。便利。
……また少しペダルが重くなった。ただでさえ二人乗りなのに。
「涼しくて気持ちいいですねぇ」
お前はそうだろうな。俺は暑くなってきたよ。重っ。
「まあ夜だしな」
暫らく重いペダルをこぎ続け、住宅地を抜ける。
そこには見渡す限りの田畑、そしてぽつりぽつりと民家。一気に視界が広くなる。
「あっ!」
センが急に声を上げた。
「どうした」
「星! 凄い綺麗ですよ星!」
俺の顔の横から腕を伸ばし、遠くの星空を指差す。
「まあ今日もいい天気だったからな」
明日も晴れたら今度は布団干そうかな。
「はわ~。凄いですね~……あ、そうだ! 明さん、星座とか解りますか星座!」
「全く知らん」
「流れ星来ないかな~」
自分で質問しといて聞いてない上になんだそれ。そんなのそうそう来るわけないだろ。
もし来たら……そうだな、「ペダルが軽くなりますように」とでもお願いしてみるか。重っ。
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