(有)妄想心霊屋敷

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欲たすご縁は女の子43 気付いてみれば4:1

2007-01-17 22:51:39 | 欲たすご縁は女の子   三日目
俺と今日香が入って来た時には、
『携帯電話の電源はお切り下さい』
やら
『館外からの食べ物・お飲み物の持ち込みはご遠慮下さい』
といった
あまり誰も気にしてなさそうなお知らせや他の映画の宣伝はほぼ終わっていたらしく、
もう一枚の百円を今日香が発見したあたりで映画本編が始まった。
「セン」
すぐ左の人物に顔を寄せ、小声で話し掛ける。
「なんですか?」
俺の声に合わせて相手も小声で返事。
「映画見てる間は静かにしてろよ」
「解ってますよ」
ならいいんだが。ここで暴走されるのだけは勘弁だぞ。
とはいえ、今始まったこの映画がどういう話なのか俺は全く知らんのだがな。
知ってると言えば恋愛もの、ということだけだ。
……ポスターぐらい探せばどこかにあったかもしれないな。
まあ今の時代、事前情報全くなしで映画が見れるというのは幸運なのかもしれん。
つべこべ言わずに見るとしよう。

…………
…………

さて、あっという間に二時間が経過し、映画も終わってエンドロール突入。
幸いセンが暴走することはなかった。
……などと隣を気に掛けるほど余裕はない。俺が泣きそうだったのだ。
それはちょっと恥ずかしいので苦し紛れにコーラを飲む。
まあ二時間も経っているので、炭酸は抜けてるし氷はとけてるしで美味くはなかった。
そのおかげか目頭の熱いものが急速に冷めたので涙を流すことはなんとか防げた。ふう。
「じゃ、行くか」
と、さもなんともないかのように言おうとして横を見ると、
明日香は袖で目をゴシゴシと拭いている。
センは微動だにせずに涙を一筋流している。
反対側の今日香は右手を目にあてがっている。
……もう少し待つか。

暫らくすると、
「ふう……あーもうやっと落ち着いたわ。ほんじゃ出よか」
と明日香が立ち上がった。
「う、うん」
次いで今日香。手は座っている時のまま。こっちはまだ少し落ち着いていないようだ。
「人が居ない割に面白かったな。……にしても、全滅か俺達」
俺も席を立つ。同時にセンも。
「明さんも泣いちゃったんですか?」
「泣く寸前だった。なんとか堪えたがな」
「別に堪えることないじゃないですか~。泣いてたって誰も文句は言いませんよ?」
そうかもしれんがな、誰も何も言わなくても恥ずかしいものは恥ずかし……
おいそこ、センの後ろ。苦笑いしてんじゃねえよ。お前何か言うつもりだったな?
「あは、あはは……あ~えぇっと……そや、今日香。本本。忘れるとこやったわ」
俺と合った視線を逸らし、さらに逸らした視線を泳がせた後、話題も逸らした。
「あ、そやったね。忘れてたわ」
そして本を渡すとすぐに、
「じゃあ行こかいな」
俺に何も言わせない気らしい。

出入り口に向かう途中、あの五人組をちらっと見てみる。
でかい声の男が思い切りティッシュで鼻をかんでいた。
相当壮絶な泣きっぷりだったようだ。

ホールから外に出てみると、時間の経過が一目で解った。
「あっらー。もう外真っ暗やねぇ」
「ホントだな。じゃあ解散にするか」
「あ、そ、そですね。うちら自転車やし。あの、明くん達は何で来はったんですか?」
「電車だ。駅までは自転車だけど」
結局喋り方は元のままか。まあいいけど。
「ってことはあんたら、駅側に住んどんの?」
「いや神社側なんだが、自転車が一台しかなくてな。二人乗りは疲れるんだよ」
ホントはずっと自転車でもよかったんだが。
「あ、そうなん? うちらも神社側やねんで。学校の帰りとか会うかもな」

ということはもし全員揃ったら俺とセンと岩白と……男比小せぇ。


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