「……すまんが、どういう意味だ?」
わたしはわたしって、そりゃそうだろ。お前はいつでもお前だろ?
お前じゃなくなったりはできんだろ。……変身とか?
「わたしは名前を貰うまで、自分っていう概念があまりなかったんです」
そう言えばこいつが初めて自分をセンと呼んだ時……
『欲食いって存在は自分だけですからねぇ。
自分と他者っていう感覚が薄かったのかもしれないです』
……確かにそう言ってたな。
「それで?」
「今日春菜さんとお話してる時に、春菜さんが言ってくれたんです。
わたしが岩白を名乗り始めたのは四日前からだけど、
わたしが神社で生まれたその時からわたし達は家族だって」
相変わらず格好いいこと言ってるなあいつは。
よくそんなくっさいドラマみたいな台詞を……
俺もさっき言ったか。ああもう恥ずかしい。
「もちろん春菜さんは、昔からわたしが人間じゃないって知ってました。
それを知ってても春菜さんは、わたしを家族だと思ってくれてたんです」
「じゃあなおさらだな」
「何がですか?」
「お前が人間かどうかでごちゃごちゃ言ってたら岩白に怒鳴られそうだからな。
あの木刀が構えだけのものとは言え、なんかあいつ普通に強そうだし」
そうでなきゃ初めて遭った時の迫力が納得いかん。
その時、月が隠れたのか部屋が再び暗くなった。だから、
「明さん、木刀のこと聞いてたんですか……
そんなことないですよ。
春菜さんだって女の子なんですから、男の人と喧嘩なんてとんでもないです」
と言うセンの表情は見えなかった。そしてまたすぐ部屋に光が差す。
「……だから名前がなくてもわたしは、春菜さんの家族っていう『わたし』だったんです。
春菜さんの妹っていう、『わたし』だったんです」
話が元の話に戻る。
そうか。なんか難しい言い回しだけど、お前はずっと、お前だったんだな。
……あれ、最初に戻った? って言うか、
「妹? って、お前やっぱり年下だったのか」
「年は一緒なんですけどね。生まれたのが何日か違うだけですから。
……『やっぱり』って、なんでですか? わたし、幼く見えます?」
「ああ」
「すみませんねー。子供っぽくて」
つん、と横を向く。
「いやすまん、そういうつもりじゃ……」
そういうつもりじゃないけど、『子供っぽくて』って子供っぽく言うなよ。膨れやがって。
「わたしは、明さんの妹じゃないんですからね。
わたしは、明さんの、その……」
「……なんだよ」
「え、えっと……あ、明さんの……」
「……居候?」
「うぅ。そ、それはもちろんそうですけど……」
「悪い。冗談」
ちょっと酷かったかもしれない。
「……だって、言えませんよ。明さんがわたしをどう思って……そうだ!」
何か言いかけて、何か思いついたらしい。
「なんだよ」
訊いてみたものの、少々の間が発生した。
「……え、えっと……
あ、明さんも、わたしに言ったみたいにやりたいようにやってみて下さい!」
「はぁ!?」
思わず、声が大きくなった。
「だ、だって! わたしだけじゃ、駄目じゃないですか!
明さんはわたしを……!」
そこまで言って、急停止。
「ご、ごめんなさい。無茶苦茶ですね、わたし……」
自分が口走ったことに戸惑っているのか、それとも俺に悪いと思ったのか。
下を向いて力なくつぶやく。
「謝ることはないと思うぞ」
俺も多分お前と同じだ。同じだからあの時『嬉しい』なんて思ったわけで……
だから、こっち向いてくれ。あまり素人に気を使わせないでくれよ。
手で顔をこっちに向かせ。驚いているセンとみつめ合って。
もう一度、今度は俺が、部屋の時間を止めた。
わたしはわたしって、そりゃそうだろ。お前はいつでもお前だろ?
お前じゃなくなったりはできんだろ。……変身とか?
「わたしは名前を貰うまで、自分っていう概念があまりなかったんです」
そう言えばこいつが初めて自分をセンと呼んだ時……
『欲食いって存在は自分だけですからねぇ。
自分と他者っていう感覚が薄かったのかもしれないです』
……確かにそう言ってたな。
「それで?」
「今日春菜さんとお話してる時に、春菜さんが言ってくれたんです。
わたしが岩白を名乗り始めたのは四日前からだけど、
わたしが神社で生まれたその時からわたし達は家族だって」
相変わらず格好いいこと言ってるなあいつは。
よくそんなくっさいドラマみたいな台詞を……
俺もさっき言ったか。ああもう恥ずかしい。
「もちろん春菜さんは、昔からわたしが人間じゃないって知ってました。
それを知ってても春菜さんは、わたしを家族だと思ってくれてたんです」
「じゃあなおさらだな」
「何がですか?」
「お前が人間かどうかでごちゃごちゃ言ってたら岩白に怒鳴られそうだからな。
あの木刀が構えだけのものとは言え、なんかあいつ普通に強そうだし」
そうでなきゃ初めて遭った時の迫力が納得いかん。
その時、月が隠れたのか部屋が再び暗くなった。だから、
「明さん、木刀のこと聞いてたんですか……
そんなことないですよ。
春菜さんだって女の子なんですから、男の人と喧嘩なんてとんでもないです」
と言うセンの表情は見えなかった。そしてまたすぐ部屋に光が差す。
「……だから名前がなくてもわたしは、春菜さんの家族っていう『わたし』だったんです。
春菜さんの妹っていう、『わたし』だったんです」
話が元の話に戻る。
そうか。なんか難しい言い回しだけど、お前はずっと、お前だったんだな。
……あれ、最初に戻った? って言うか、
「妹? って、お前やっぱり年下だったのか」
「年は一緒なんですけどね。生まれたのが何日か違うだけですから。
……『やっぱり』って、なんでですか? わたし、幼く見えます?」
「ああ」
「すみませんねー。子供っぽくて」
つん、と横を向く。
「いやすまん、そういうつもりじゃ……」
そういうつもりじゃないけど、『子供っぽくて』って子供っぽく言うなよ。膨れやがって。
「わたしは、明さんの妹じゃないんですからね。
わたしは、明さんの、その……」
「……なんだよ」
「え、えっと……あ、明さんの……」
「……居候?」
「うぅ。そ、それはもちろんそうですけど……」
「悪い。冗談」
ちょっと酷かったかもしれない。
「……だって、言えませんよ。明さんがわたしをどう思って……そうだ!」
何か言いかけて、何か思いついたらしい。
「なんだよ」
訊いてみたものの、少々の間が発生した。
「……え、えっと……
あ、明さんも、わたしに言ったみたいにやりたいようにやってみて下さい!」
「はぁ!?」
思わず、声が大きくなった。
「だ、だって! わたしだけじゃ、駄目じゃないですか!
明さんはわたしを……!」
そこまで言って、急停止。
「ご、ごめんなさい。無茶苦茶ですね、わたし……」
自分が口走ったことに戸惑っているのか、それとも俺に悪いと思ったのか。
下を向いて力なくつぶやく。
「謝ることはないと思うぞ」
俺も多分お前と同じだ。同じだからあの時『嬉しい』なんて思ったわけで……
だから、こっち向いてくれ。あまり素人に気を使わせないでくれよ。
手で顔をこっちに向かせ。驚いているセンとみつめ合って。
もう一度、今度は俺が、部屋の時間を止めた。
毎日楽しく読ませていただいております。
これからもマイペースで頑張って下され☆
ところでせんのスペックはどんな感じの設定なんでしょうか?
自分の中ではどうしてもかなり幼い印象になってしまって(^-^;
はい。マイペースで頑張ります。
毎日読んでいただけるなら、毎日書かせていただきます。
ようは暇人ってことなんですがね。はははああぁぁ……
センのスペック、ですか。
そうですね……
言われるまでは中学生に見えるって感じですかね。
下手したらちょっと大きめな小学生、みたいな。
あと、洗濯板。
たまに漫画読んでると、
こいつ、あいつのイメージぴったり!
なんてのが出てきて楽しかったりするんですが、
その度思います。
……絵が書けたらなあ……