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弁護士・元ロースクール教授宮武嶺の社会派リベラルブログです。

ロシアがクリミア橋を攻撃された報復に、ウクライナ産農産物の輸出合意の履行を一方的に停止して離脱。 全世界の飢えた人々を危険にさらしたことで、国際的な猛批判を受けているのは当然だ。

2023年07月18日 | ロシアによるウクライナ侵略

食料協定の合意の中にあったロシア産の食物や肥料への制裁緩和が実現していないとして、「ロシアの国益に関係する項目が実行されていない」と述べるロシアのプーチン大統領。

実際にはロシアの食糧輸出も肥料輸出もウクライナ戦争開始前より伸びている。

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 ロシア外務省は2023年7月17日(現地時間)、黒海を通じたウクライナからの食料輸出協定について

「トルコとウクライナ、国連に延長に反対だと正式に通知した」

と発表しました。

 ロシアの離脱で同協定の今の期限が7月17日までなのですが、この協定が停止すれば、国際的な食料価格に影響する恐れがあり、欧米を中心とする各国は国連安保理などでロシアを激しく批判しています。

 7月17日の米シカゴ商品取引所では小麦の先物価格が乱高下しました。

 ロシアの通告が伝わった直後に世界的な小麦の輸出国のウクライナからの供給が滞るとの見方が広がり、小麦の先物価格は一時、前週末より7%超急騰したのです。

 ちなみに2022年2月のロシアのウクライナ侵攻直後には、供給不足の懸念から一時、小麦の先物価格がそれ以前の約2倍に急騰し、トウモロコシや大豆など他の穀物価格も大きく値上がりしましたが、今は食料の値段はウクライナ戦争開始前より下がっていました。

ロシアが方針転換して再びウクライナの穀物輸出に同意!さらにウクライナが「汚い爆弾」を準備しているという説も放棄。国際社会がロシアに道理を通させる道はある。

 

 

 ところで、よく国際社会のロシアに対する経済制裁に誤解していて、ロシアの食料が欧米の経済制裁で必要なところに届いていないから経済制裁をやめるべきだと的外れなことを言う人がいるのですが、ロシアの食糧輸出に対しては経済制裁はかけられておらず、ロシア軍によるウクライナ侵略後もロシアの食料輸出はむしろ伸びています。

 たとえば、2022年から2023年にかけての1年間ではロシアの小麦の輸出量は、前の年に比べて36%増えて4500万トンとなり、過去最多を記録することが予想されるとしています。

 問題はその輸出先がロシアの「友好国」に限られているということです。

 そして、ウクライナも世界有数の小麦などの輸出国なので、ウクライナのゼレンスキー大統領は食糧協定について

「この合意を受けて、これまでおよそ3300万トンの農産物が45か国に輸出された。その60%はアフリカとアジアの国々に届いている」

と語り、英国のクレバリー外相は

「ロシアは延長を拒否し、今後1年間で世界市場からウクライナの食料2300万トンを奪う」

「アフリカや中東、中南米の最も貧しい人々の口から食料を奪っている」

と主張し、期限なしで協定を延長するようロシアに求めています。

「私の提案が無視されたことに深く失望している。ロシアによる決定は困窮している人々に打撃を与えるだろう」

と語るグテーレス国連事務総長。同事務総長は、先週、プーチン大統領に書簡を送るなどして合意延長に向けた提案を伝えてきたが、受け入れらず。

 

 

 ロシアは今回のウクライナの食料品の輸出協定を停止するのは、協定に含まれたロシア産の食料や肥料の輸出への制裁緩和の約束が守られなかったことが引き金になったとしていますが、たとえばFAO(国際連合食糧農業機関)の推計によると、少なくとも2022年1月~7月では、ロシアからの肥料輸出量は減少していません。

 ロシアの協定破りの理由は、実際には、2014年にロシアが違法に併合したクリミア半島とロシアの間を結ぶクリミア橋を再び攻撃されて恥をかいたことに対する報復であるのは明らかです。

 もちろん、この攻撃はウクライナの自衛権行使の範囲内なので違法ではなく、さらには食糧輸出協定違反でもありません。

 また、相手の兵站を断つのは戦争の常道です。

 そもそも、ウクライナは戦争拡大やロシアによる核攻撃などの過激な行動をさせないためにロシア本土をほとんど攻撃していないわけですが、そのためロシアの兵器や食料や兵士は素通りでウクライナまで届くわけで、これは実はウクライナだけが片腕を縛ってボクシングをしているようなものです。

 そして、クリミア橋を攻撃されてクリミアに物資が届かなくなると困るからこそ、ロシアは世界の飢えた人々を人質に取ってウクライナの食料が各国に届かないようにして、ウクライナを経済的に締め上げようとしているわけです。

ウクライナの攻撃で損傷を受けたクリミア橋。

国連総会での非難決議、経済制裁、パリ五輪からの締め出し、そしてフィンランドのNATO加盟。ウクライナを侵略したロシアに「お灸」が据えられることで侵略は割に合わないと全世界に知らしめることが大事。

 

 

 そして、クリミア橋攻撃の報復としてロシアは南部の都市オデッサを攻撃しましたが、実は黒海に面するオデッサを攻撃することこそが逆にロシアとウクライナの食糧協定違反なんです。

 ロシアはこれがしたくて食料協定を中止にしたのかもしれません。

 2022年7月22日、ロシア・ウクライナ・トルコ・国連の4者がイスタンブールで、海上輸送再開に向けて合意し外交文書を作成しました。

 その合意文書の中では、穀物の一大輸出拠点となっている黒海沿岸の南部オデーサ(オデッサ)港を含めた3か所の港を輸出再開の対象としていました。

 この国連とトルコの仲介で署名したロシアとウクライナの合意は世界的な食料高騰に歯止めをかける鍵とみられていて、両国は関連する船舶や施設などを攻撃しないことで合意していました。

  • 農産物を載せた貨物船が航行中は、ロシア軍は黒海に面したウクライナの港を攻撃しない
  • 機雷が敷設された水域では、ウクライナ艦艇が貨物船の安全航行を誘導する
  • 密輸に対するロシアの懸念に対応するため、トルコは国連の支援を受けて貨物船を検査する
  • 黒海からのロシア産穀物や肥料の輸出も可能にする

 うちのブログにしては激しい言葉使いになりますが、自分の利益とメンツのためなら大嘘をついて自分がした約束も破って、世界の飢えた人々を切り捨てるプーチン政権の外道ぶりには反吐が出ます。

 

ロシアによるウクライナ侵略から5カ月。飢えるアフリカに向けウクライナの穀物を輸送するため、ロシアとウクライナが3カ月かけて港湾への攻撃をしないことを合意した翌朝、ロシアがオデーサ港をミサイル攻撃。

 

 

ロシアがいきなり食糧協定の停止を通告した背景には、この協定の仲介役でもありこれまでロシア寄りの立場で仲介役をしてきたトルコが、反対していたスウェーデンのNATO入りを承認するなど、急にロシアから距離を置き始めたことへの報復もあると思います。

どちらにしても我利我欲。

ところで、れいわ新選組など日本の一部の即時停戦派・軍事支援反対派は、ウクライナに対する軍事援助もダメ、ロシアに対する経済制裁もダメと主張していますが、それって国連憲章違反のロシアの侵略とその後の数々の国際法違反行為や戦争犯罪に対して何もしない、手をこまねいて全く不問に付せと言っているのも同然です。

れいわ新選組なんて衆議院でのロシア非難決議にも反対していますからなおさらです。

だいたい、ロシアが世界の発展途上国の人々を人質に取ってウクライナの穀物輸出を止めようとしているのに、グローバルサウスのためにロシアへの経済制裁を止めるべきだなどと言うのはナンセンスです。

国内的には憲法9条を守れ、緊急事態条項にも反対と言っている数少ないまともな野党であるれいわ新選組ですが、ウクライナ戦争に関して反米をこじらせたとしか言いようがない言動を続けているところだけは、絶対に考え直してほしいものです。

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ロシア政府は、ウクライナ産の農産物の輸出をめぐる合意の履行停止を発表し、ロシア産の農産物などの輸出が実現されないかぎりは、合意に復帰することはないと強調しました。これに対し、国連のグテーレス事務総長が「困窮しているすべての人たちに打撃を与える」と述べるなど、世界的な食料危機への懸念が高まっています。

ウクライナ産の農産物の輸出をめぐるロシアとウクライナの合意について、合意の延長期限となっていた17日、ロシア大統領府のペスコフ報道官は「合意の履行を停止した」と発表しました。

また、ロシア外務省は「約束や保証ではなく、具体的な結果を得られた場合のみ、ロシアは合意の再開を検討する用意がある」としていて、滞っていると主張するロシア産の農産物などの輸出が実現されないかぎりは、ウクライナ産の農産物をめぐる合意に復帰することはないと強調しています。

これに対し、ウクライナのゼレンスキー大統領は「ロシアは明らかに政治的な問題を解決するため圧力をかけている」と強く非難しました。

また、仲介役を担ってきたトルコのエルドアン大統領は「合意の延長に向けた外交努力を続けている。プーチン大統領と電話で話す」などと述べ、ロシアへの働きかけを続ける考えを強調したほか、同じく仲介にあたる国連のグテーレス事務総長は「深く失望している。ロシアの決定は、困窮しているすべての人たちに打撃を与えるだろう」と述べるなど、世界的な食料危機への懸念が高まっています。

ゼレンスキー大統領「ロシア抜きでも合意継続を」

 
ウクライナのゼレンスキー大統領は17日に公開した動画で、「この合意を受けて、これまでおよそ3300万トンの農産物が45か国に輸出された。その60%はアフリカとアジアの国々に届いている」と述べ、合意の意義を強調するとともに、農産物がアフリカ諸国などには届いていないとするロシア側の主張に反論しました。

また、ゼレンスキー大統領は合意について「ロシア抜きでも続けることはできるし、そうすべきだ」と述べました。

そのうえで、トルコのエルドアン大統領と国連のグテーレス事務総長に書簡を送ったことを明らかにし「トルコと国連、それにウクライナの3者で似たようなものか、いまの合意を継続することを提案した」と述べ、ウクライナ産農産物の輸出継続に向けて仲介役のトルコや国連と連携していく考えを示しました。

EU委員長「ロシアの身勝手な行動だ」

ロシア大統領府の発表についてEU=ヨーロッパ連合のフォンデアライエン委員長はツイッターに投稿し「ロシアの身勝手な行動だ」と述べて強く非難しました。

その上で「世界の弱い立場の人たちの食料安全保障のためEUは対応している」としてウクライナ産の農産物をEU域内の港から輸出するという支援の取り組みを続ける考えを強調しました。

米 ブリンケン国務長官「許しがたい、あってはならない」

 
アメリカのブリンケン国務長官は17日、記者会見で「ロシアがウクライナとの戦争で、食料を武器として利用したために食料を切実に必要としているところでの入手がより困難になるだろう。許しがたいことであり、あってはならないことだ」と述べ、ロシアを強く非難しました。その上で、ロシアに対し速やかに合意に復帰するよう求めました。

また、ホワイトハウスのカービー戦略広報調整官は記者会見で、「われわれは引き続きウクライナがほかのルートを含め、穀物を必要としている市場に届ける取り組みを支援する」と述べ、同盟国などとともに取り組んでいくと強調しました。

一方、ロシアが欧米側の制裁措置によって農産物の輸出が滞っていると主張していることについて、「ロシアの食料や肥料は制裁対象ではない」と述べ反論するとともに、これまでどおりロシアの農産物の輸出を制限することなどはしないとしています。

エジプト市民 「パンが買えなくなる」

 
ウクライナなどから多くの農産物を輸入している中東のエジプトでは、今後、パンなどの価格がさらに高騰するのではないかと懸念の声が上がっています。

エジプトは、主食のパンの原料となる小麦を世界で最も多く輸入していて、その大半をロシアとウクライナからの輸入に頼ってきました。

ロシアによるウクライナ侵攻によって小麦の輸入が滞るなか、エジプトではほかの地域から輸入を増やそうと努めていますが、国内消費に追いつかず、一部の商店では、パンの価格が侵攻前と比べ、5倍以上に跳ね上がっています。

首都カイロの市場で買い物をしていた市民からは今後、パンなどの価格がさらに高騰するのではないかと懸念の声が上がっています。

市場で買い物をしていた男性は「エジプト人にとって、パンは水と同じで生活に不可欠なものだ。これ以上値上がりしたら、パンが買えなくなる。遠い国の戦争で私の生活も厳しくなっている」と話していました。

また、別の女性は「すべての商品が値上がりしていて、生活ができない。元の生活に戻るためにも早く戦争が終わってほしい」と話していました。

小麦の先物価格 乱高下も

 
シカゴ商品取引所では小麦の供給が滞るとの見方から、国際的な小麦の先物価格が一時、大きく上昇しました。その後は急落し、乱高下しています。

17日のシカゴ商品取引所では、ロシア政府の発表を受けて国際的な取り引きの指標となる小麦の先物価格が一時、大きく上昇し、先週末の終値と比べた上昇率は7%を超えました。

ロシア政府が、ウクライナ産の農産物の輸出をめぐる合意の履行停止を発表したことを受けて世界有数の小麦の輸出国、ウクライナからの供給が滞るとの見方が出たことが主な要因です。

その後、小麦の先物価格は、発表前を下回る水準まで急落するなど、ロシアによる今回の発表がウクライナ産の小麦の輸出にどのような影響を及ぼすかさまざまな見方が交錯し、乱高下しています。

ウクライナは「ヨーロッパの穀倉」とも言われ、FAO=国連食糧農業機関によりますと、2021年の小麦の輸出量は世界第5位となっています。

市場関係者は「ロシアによる合意の履行停止の影響に加え、世界的な気温の上昇が、小麦の収穫に影響して需給が引き締まることも懸念されて小麦の先物価格は上昇しやすい状況にあり、先行きは不透明だ」と話しています。

アメリカ農務省 “ロシアの小麦輸出量はむしろ増加”

ロシアは、欧米側の制裁によって農産物の輸出が滞っていると主張していますが、アメリカ農務省は、ロシアの小麦の輸出量はむしろ増加しているとする報告書を発表しています。

アメリカ農務省がことし5月にまとめた報告書によりますと、輸出先の国からのデータなどをもとに調べたところ、去年からことしにかけての1年間ではロシアの小麦の輸出量は、前の年に比べて36%増えて4500万トンとなり、過去最多を記録することが予想されるとしています。

輸出先としてはトルコやエジプト、イラン、サウジアラビアのほか、スーダンやアルジェリアといった中東やアフリカの国々が上位を占めているということです。

さらに、ロシアが主導する「ユーラシア経済同盟」の加盟国にも陸上輸送で小麦が輸出され、なかでもカザフスタンへの輸出量が多いということです。

一方、ロシアのインターファクス通信は、6月、ロシアのパトルシェフ農業相が「ことしの農産物の輸出額はおよそ15%から20%、前の同じ時期を上回っている」と述べたと伝えています。

国営のタス通信も今月7日、パトルシェフ農業相の話として「今月から来年6月にかけての1年間で、最大で5500万トンの穀物を輸出する計画だ」という見通しを伝え輸出先としては、ロシアに友好的な国が9割近くを占めるとしています。

松野官房長官「ロシアの決定は極めて遺憾」

松野官房長官は、閣議のあとの記者会見で「ロシアの決定は極めて遺憾だ。決定が世界の食料供給にもたらす影響を懸念しており、状況を注視していく」と述べました。

そのうえで「世界の食料安全保障を確保していくため、G7=主要7か国をはじめとする国際社会と連携しながら、ロシアが合意に基づく穀物輸出の枠組みに復帰し、再開されるよう強く求めていく」と述べました。

林外相「負の影響はロシアが最終的な責任負うことに」

林外務大臣は閣議のあとの記者会見で「極めて遺憾で、非難する。ロシアの決定がもたらす負の影響は、ロシアが最終的な責任を負うことになる」と述べました。

そのうえで「国際的な枠組みを継続するため精力的に取り組んできた国連やトルコの努力を評価している。引き続き両者の取り組みを注視し、後押ししていきたい。ロシアが国際的な枠組みに復帰し、ウクライナからの穀物輸出が再開されるように強く求めていく」と述べました。

野村農相「穀物の国際価格や食料供給への影響 懸念」

野村農林水産大臣は閣議のあとの記者会見で「日本は小麦の多くをアメリカやカナダから輸入している。このためわが国の穀物の供給量に直ちに支障が生じる状況にはない」と述べました。

そのうえで「ウクライナ産の農産物の輸出をめぐる合意は、世界の食料市場の価格低下と安定化に大きく貢献しており、今回の履行停止により小麦やトウモロコシなど穀物の国際価格や世界の食料供給への影響が懸念される。引き続き、緊張感を持って対応していきたい」などと述べ、今後の状況を注視する考えを示しました。

 

 

[キーウ 17日 ロイター] - ロシアは17日、黒海経由のウクライナ産穀物輸出に関する合意の履行停止を発表した。食料価格の高騰を招いて低所得国が危機的状況に陥る恐れがあり、国連のグテレス事務総長は「あらゆる場所で世界の困窮している人々に打撃を与える」と非難した。

合意停止の数時間前には、ウクライナ南部クリミア半島とロシア本土を結ぶクリミア橋で爆発が起き、橋が破損して2人が死亡。ロシア政府はウクライナによる海上ドローン攻撃との見方を示し、道路橋に対する「テロ攻撃」だと非難した。

ロシア大統領府はクリミア橋が破壊されたことと、穀物合意停止は関係ないと説明。

ペスコフ大統領府報道官はロシアが見返りに求めた同国産食料・肥料輸出の促進に関する合意が「残念ながら実施されていないため、合意の効力は消滅した」と述べた。

グテレス国連事務総長は、ロシアの決定により同国産穀物・肥料の輸出を促進する合意も停止したと示唆した。

ペスコフ報道官は「ロシア関連の部分が履行され次第、合意に復帰するだろう」と述べた。

米ホワイトハウスはロシアの合意停止が「食料安全保障を悪化させ、多くの人々に痛手を与える」と非難。ブリンケン米国務長官はロシアの合意停止を非良心的と断じた。

<アフリカに深刻な影響も>

ウクライナとロシアは穀物や食料の世界有数の輸出国で、輸出停止が国際的な食料価格の高騰を招く恐れがある。

国際救助委員会(IRC)の東アフリカ緊急ディレクター、シャシュワット・サラフ氏は「アフリカの角」と呼ぶアフリカ東部が過去数十年で最悪の干ばつに見舞われる中、ソマリア、エチオピア、ケニアに深刻な影響があると予想した。

ウクライナのゼレンスキー大統領は、ロシアが合意に不参加のままで穀物輸出を再開するシナリオを提示。

恒例のビデオ演説で「ウクライナ、国連、トルコが共に(貨物船が安全に航行できる)食料回廊と貨物船検査の運用を保証できる」と述べ、国際社会にとって「脅しが通用しないことを示す機会」で「ロシアの狂気からの保護を図る必要がある」と訴えた。

 

 

 

CNNの取材班は現地でサイレンや爆発音を聞いた/CNN

 

(CNN) ウクライナ南部の都市オデーサで18日未明、爆発音が聞こえた。このおよそ24時間前には、ウクライナ軍のものとみられる攻撃がケルチ橋(クリミア橋)に加えられていた。同橋はロシア軍が併合したクリミア半島とロシア本土を結ぶ。

現地のCNN取材班は午前2時前後に空襲警報のサイレンを聞き、市全域で防空システムが稼働するのを目撃した。これに先立ち、4度の大きな爆発音がしていた。続いて近くの港湾で、4度の爆発と対空砲の発射音を聞いたという。

CNNはこれらの攻撃が着弾したのかどうか、標的が何だったのかを確認できていない。

オデーサ軍政当局の報道官は、ウクライナの防空がロシアの空襲を撃退したと説明した。

またオデーサ州軍政トップはロシア軍がドローン(無人機)を使用したと指摘。SNSテレグラムへの投稿で「複数回の波状攻撃が見込まれる。ミサイルの脅威もある!」と警告した。

その上で住民に対し、空襲警報がやむまで避難所で待機するよう強く求めた。午前4時16分前後、同トップはオデーサ州の空襲警報の終了を発表した。

クリミア橋については真夜中過ぎ、ロシアのフスヌリン副首相が、一方のレーンの通行再開を明らかにしていた。

 

 

2023年2月7日 JETRO

アフリカ開発銀行(AfDB)の推定によると、2022年、アフリカで消費者物価の平均インフレ率が13.8%に及び、過去10年で最高になる(2023年1月30日付ビジネス短信参照)。

これは、IMFの予測する世界の平均インフレ率8.8%を大きく上回る。また世界銀行は、(1)サブサハラ・アフリカ(SSA)地域の4分の1以上の国で、食糧インフレ率が20%を超え、(2)食糧価格の高騰は、推定1億4,000万人超に深刻な影響を及ぼすことを指摘した(2023年1月17日付ビジネス短信参照)。

2022年は、穀物、植物油脂、エネルギーなどの価格が世界的に上昇した。特にウクライナやロシアとの経済的関係が深いアフリカ各国では、その影響を強く受けた。2000年代は、穀物輸入は米国主体だった。しかし2010年以降は、安価なウクライナ産・ロシア産に傾斜し、両国からの輸出量が増加した(図1参照)。世界銀行によるとSSA地域は、穀物輸入の15.3%(そのうち小麦に限っては、約3分の1)を両国に依存している。換言すると、アフリカの人口増加に伴う穀物需要を両国が支えてきた。

本稿では、アフリカとウクライナ・ロシアの貿易関係を分析しながら、ロシアによるウクライナ侵攻がアフリカの物価に与える直接的・間接的影響を検討する。

図1:ウクライナ・ロシアからのアフリカ向け穀物輸出量の推移
2002年には650万トン程度であったが、2009年には1,000万トンを超え、2016 年には2,000万トンを超えた。

出所:Global Trade Atlas(GTA)からジェトロ作成

ウクライナは、アフリカ向けに穀物、鉄鋼、油脂などを輸出

Global Trade Atlas(GTA)によると、2021年のウクライナのアフリカ向け輸出は56億ドルとなった。2020年(約40億ドル)より増加した。主な品目(金額ベース)は、2020年と変わらない(2022年3月3日付ビジネス短信参照)。穀物(53.5%)と鉄鋼(22.4%)が中心で、ひまわり油などの油脂(5.3%)をあわせた3品目で全体の8割を超える。穀物は小麦・メスリン(66.7%)とトウモロコシ(27.8%)が中心になっている。

ウクライナの輸出先国としては、小麦・メスリンは全世界でエジプトが1位、トウモロコシも4位だった。ウクライナがアフリカ向けに輸出する主要品目の仕向け先上位5カ国は、表1のとおりだ。

表1:ウクライナのアフリカ向け主要輸出品目の仕向け先上位5カ国(2021年)

小麦・メスリン
国名 金額
エジプト 8億5,800万ドル 331万トン
モロッコ 2億3,200万ドル 85万トン
チュニジア 1億6,300万ドル 65万トン
エチオピア 1億6,100万ドル 61万トン
リビア 1億4,600万ドル 57万トン
 
トウモロコシ
国名 金額
エジプト 5億2,300万ドル 221万トン
リビア 1億2,200万ドル 49万トン
チュニジア 9,000万ドル 39万トン
アルジェリア 7,000万ドル 32万トン
モロッコ 2,200万ドル 10万トン
 
ひまわり油
国名 金額
エジプト 8,400万ドル 6万9,000トン
スーダン 5,500万ドル 4万1,000トン
リビア 4,700万ドル 2万9,000トン
ジブチ 2,400万ドル 1万8,000トン
ガーナ 1,300万ドル 8,000トン

出所:Global Trade Atlas(GTA)からジェトロ作成

ロシアからは、穀物、燃料、肥料など

ロシアからのアフリカ向け輸出は、2021年に147億ドルに上った。主な品目(金額ベース)は、穀物(24.1%)、燃料(19.8%)だ。肥料(3.5%)も上位に入った。穀物は小麦・メスリンが92.9%、燃料は石油・石油製品(原油を除く)が79.3%、肥料は窒素肥料が50.7%を占める。

ロシアの小麦・メスリンの輸出先国は、全世界でトルコに次いでエジプトが2位、ナイジェリアが4位、スーダンが6位など、20位以内にアフリカが11カ国入った。ロシアがアフリカ向けに輸出する主要品目の仕向け先上位5カ国は、表2のとおりだった。

表2:ロシアのアフリカ向け主要輸出品目の仕向け先上位5カ国(2021年)

小麦・メスリン
国名 金額
エジプト 15億5,000万ドル 566万トン
ナイジェリア 2億5,000万ドル 97万トン
スーダン 2億ドル 69万トン
カメルーン 1億4,000万ドル 48万トン
リビア 1億1,000万ドル 37万トン
 
石油・石油製品(原油を除く)
国名 金額
セネガル 10億ドル 187万トン
ナイジェリア 5億ドル 10万トン
および80万Kl
トーゴ 2億5,000万ドル 58万トン
モロッコ 2億1,000万ドル 53万トン
カメルーン 1億3,000万ドル 24万トン
 
窒素肥料
国名 金額
コートジボワール 4,500万ドル
ガーナ 3,700万ドル
モロッコ 3,700万ドル
タンザニア 2,700万ドル
モザンビーク 2,100万ドル

出所:Global Trade Atlas(GTA)からジェトロ作成

(中略)

自給率高いエチオピア、ケニアでも、生産コスト増が響く

エチオピアは、穀物の自給率が比較的高い。主食のテフ(イネ科の雑穀)は100%自給しており、トウモロコシも、ほぼ自給できている。小麦はやや例外で、両国への依存もある。2021年には、輸入の最も多くをウクライナ(45.4%)に、3番目にロシア(13.5%)に頼っていた。もっとも、その輸入量は消費量の約20%程度にとどまる。それでも、エチオピア統計局(Statistics Service)は、2022年12月の食料インフレ率が前年同月比36.8%だったと発表した。2022年3月以降、食料インフレ率が36%を切ったことはない。7月には、実に40.4%を記録していた。

穀物の輸入依存率が高くないにもかかわらず、食料インフレ率が高い要因としては、(1)同国での人口増加に伴う需要増、(2)干ばつや北部での武力紛争に加えて、(3)穀物生産コストの高騰が考えられる。世界的なエネルギー価格の高騰は、農業機械や輸送コスト、さらには天然ガスを原料とする窒素肥料などの価格上昇にも影響する。

ケニアでも同様のことが言える。ケニア統計局(KNBS)によると、主食のトウモロコシは自給率が約90%に及ぶ。それにもかかわらず、2022年12月時点で、とうもろこし粉のインフレ率が前年同月比35.3%になっている。これも、農機の燃料や肥料など、生産コストの上昇が原因とみられる。

エチオピアとケニアの前年同月比のインフレ率推移は、図3のとおり。

図3:エチオピア・ケニアのインフレ率推移(前年同月比)
2022年1月~12月のエチオピアの全品目のインフレ率(前年同月比)は、30%前後で高止まりとなった。食品のインフレ率も、35%から40%の間を推移した。 2022年1月~12月のケニアの全品目のインフレ率(前年同月比)は、5%から10%にかけて徐々に上昇傾向にあった。食品・ノンアルコール飲料のインフレ率も、全品目と同じ動きで、10%から15%へ上昇傾向にあった。

出所:エチオピア統計局(Statistics Service)、ケニア統計局(KNBS)からジェトロ作成

(中略)

肥料価格の先行きにも懸念

アフリカ各国は、既に食糧価格の高騰にあえいでいる。しかし、これが帰結ではない。今後も、肥料へのアクセス制限によって、さらなる食糧価格の高騰や貧困拡大に直面する可能性がある。

IMFによると、肥料価格が10%上昇すると、1四半期後に穀物価格が7%上昇する。さらに、その後も中長期的に影響を受けるという。国連食糧農業機関(FAO)とWTOの合同レポートでは、ロシアは世界最大の肥料輸出国とされる。2021年には、窒素肥料の輸出国として世界1位、カリウム肥料で2位、リン酸肥料で3位だったと報告された。

同レポートによると、肥料価格の上昇は、農業生産者による資材投入の減少につながり、食料問題の悪化に直結する。特にアフリカでは、小規模生産者が多い。それだけに、肥料価格上昇の影響が大きい。さらにその結果、農産品の供給が量的にも質的にも低下し、飢餓や栄養不良の拡大を招くとしている。また、アフリカで使用される肥料のうち、約50%分の量が換金作物用だ。すなわち、農家の貧困も懸念材料になる。特に窒素肥料の価格高騰が顕著で、2022年9月には2020年1月と比べて3倍以上になった。今後も、国際的な肥料供給には制約要因が生じる可能性が高いとされている。

なお、FAOの推計によると、少なくとも2022年1月~7月では、ロシアからの肥料輸出量は減少していない。窒素肥料市場の供給不足はむしろ、天然ガス(窒素肥料の主要原料)の価格高騰が原因と分析した。ただし、窒素肥料の輸出を制限しているロシアは、2022年の肥料輸出量が前年比10%減になると予測している(2022年12月7日付ビジネス短信参照)。

(後略)

執筆者紹介
ジェトロ海外調査部中東アフリカ課
天神 和泉(てんじん いずみ)
2015年、ジェトロ入構。ビジネス展開支援課、ジェトロ静岡、企画部海外地域戦略班(アフリカ担当)を経て、2022年7月から現職。

 

 

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12 コメント

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他はともかく“電気代高騰”は単なる便乗値上げ (ロハスな人)
2023-07-19 10:18:53
 穀物価格、その他に関しては詳細情報がないので、またの機会にして、今回は日本で『物価高騰』に関して。

 “ウクライナ戦争のせいで日本の電気代が高騰している”説は間違いです。(※他の物価高騰は戦争と関係が深いと思いますが。)
 燃料代と一番相関関係のあるはずの天然ガス価格は一時期上がっていましたが、去年の秋をピークに下がり続けています。
(※一時期“ロシア産の安価な天然ガスが激減”したことで、すさまじく高騰していた欧州の天然ガス価格もかなり落ち着きだしています。それでもまだまだ高価なようですが。)

 今年の初夏に値上げしなければいけない理由はありませんでした。

 日本の電気料金の大幅な値上げは『悪質な便乗値上げ』です。
 (※原発が必要という『プロパガンダ作成』の疑いも…。)
 各電力会社には断固抗議しましょう。 

https://pps-net.org/statistics/gas
新電力ネット
天然ガス価格の推移

2023/06    前月比  前年比
日本 13.17 $/mmbtu    -0.87(-6.2%)   -3.9(-22.85%)
米国 2.18 $/mmbtu   +0.03(+1.4%)   -5.49(-71.58%)
欧州 10.35 $/mmbtu    +0.24(+2.37%)  -24(-69.87%)
再生可能エネルギーの拡大へ (秋風亭遊穂)
2023-07-19 23:17:49
>日本の電気料金の大幅な値上げは『悪質な便乗値上げ』です。

 電気代の値上がりの理由は経産省のHPでまとめられている。

2023年6月の電気料金、なぜ値上がりするの?いくらになるの?
enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/denkidai_kaitei.html
([https://www.]を冒頭に付けてください)

 その他の説明もこれにほぼ沿っている。

電気代高騰の原因は?なぜ料金が上がってしまうのか理由を解説
softbank.jp/energy/saving/soaring-electricity-prices/
([https://www.]を冒頭に付けてください)

 便乗値上げなどではない。理由は構造的な原因と一時的な原因がある。一時的な原因が消えれば(例:燃料費の高騰が再燃しなければ)電気代は落ち着くと期待できる。

 なお、考えるべきは再生可能エネルギーの拡大である。その鍵となるのが蓄電技術だろう。例えば太陽光発電の余剰電力で水を電気分解し水素で貯蔵、太陽光エネルギーが途絶えた時点で燃料電池による発電など。
 ただし、こうした技術開発に伴う投資が、将来の電気代にかかるかもしれない。その負担を軽減すべく国が補助すべきだが、どこまで脱炭素に真摯に取り組むのかが問われているのである。

tokyokankyo.jp/kankyoken/profile/organization/field09/significance
([https://www.]を冒頭に付けてください)

〔参考〕
 ドイツは原発を廃止したが火力発電所再稼働したことを批判された。しかしこの再稼働は一時的措置だという。原発より再生可能エネルギーの拡大を追求するドイツの政策を注目してほしい。

ロシアのウクライナ侵攻で、脱炭素を加速するドイツ 熊谷徹のヨーロッパSDGリポート【2】
asahi.com/sdgs/article/14842235
([https://www.]を冒頭に付けてください)
“蓄電技術”を欠く再生エネルギーは… (ロハスな人)
2023-07-20 07:35:04
秋風亭遊穂さん>
『原発激押し』の経産省は論外として、
☆『電気代高騰の原因は?なぜ料金が上がってしまうのか理由を解説』  
に関しても以下の二つの考察が論外なので、あまりあてにできないように思えます。

☆エネルギー自給率が低く海外から輸入される化石燃料に大きく依存している状況では、世界情勢による燃料価格の高騰は大きなダメージです 
(※その燃料価格が“高騰どころかむしろ下がりつつある”ことを指摘させていただいています。)>
☆原発による影響 >

※原発は環境に壊滅的な以外にも『ランニングコスト』だけは激安ですが、『環境コストが無限大』なので、原発を使用しないことで『短期的にはコストは安くなり、長期的には燃料費をすさまじく高騰させる』インチキな発電方式…だと周知する必要があると思います。

“蓄電技術の整備”には大賛成です。

電力は『必要な時に必要なだけ電力を供給できること』がコスト面からも(それが環境保護にもつながる)大切であったのに、『“不要な夜間にも発電し続けなければならない”原発を激押し』するために『蓄電技術を意図して普及させなかった』日本政府と各電力会社の“怠慢”は非常に問題があったと判断しています。

※“再生エネルギー”は『非常に効率のいい蓄電システム』と併用しなければ、『“無駄が多すぎ”ちっともエコでない』ことはもっと周知してしかるべきです。風力発電やメガソーラーを推進する前に『“効率的な”蓄電技術の大規模な普及』を先に行うべきです。

※※現時点の日本でコスト、環境負荷の点で本当の意味で“及第点”と言える発電システムは『天然ガス複合発電』、『水力発電』、『“超効率化した”石炭発電』、『地熱発電』くらいでしょう。
 “高効率な蓄電技術”が進めば“最新鋭の太陽光発電”や“効率的な風力発電”が使えるようになりうる…と判断します。(現時点では両方式はまだまだ『化石燃料にはるかに劣る』と思います。)
もうご存じかもしれませんが (raymiyatake)
2023-07-21 18:19:55
kojitakenの日記さんが、お二人の蓄電池技術のお話について、新しい記事を書かれています。

『蓄電技術でも自動車製造業でも、日本の「大いなる凋落」は目に見えている』
https://kojitaken.hatenablog.com/entry/2023/07/21/085901

お三人とも何でもよく知っておられて感心します。
余剰電力活用の知恵 (秋風亭遊穂)
2023-07-21 19:51:10
>以下の二つの考察が論外なので、あまりあてにできないように思えます。

 一体何を読んでいるのか? 経産省の説明でも燃料費の高騰が原因の一つに説明されているが、大手電力の規制料金が燃料費高騰とリアルタイムに連動していないのは「燃料費調整」という仕組みであり、規制料金と自由料金の上がり方の違いにも現れている。自由料金の方が高くなったと話題にもなったのを知らないのか? 経産省のHPでも「一方で規制料金については、燃料費が高騰しているにもかかわらず、燃料費調整の上限によって、その値上がりは2022年2月以降、順次ストップしていました。」と書いてあるではないか。先送りしてきたものが今出ているということ。
 なお、燃料費の高騰には円安の影響も留意すべき。
 「あまりあてにできない」と言うのはきちんと文章を読んでからの話だ。

 また、原発の影響はロシアの侵攻以前からのもの。
 なお、核のゴミ処理すら計算に入れない原発の運転コストがなぜ安いと言えるのか。そしてその放射性廃棄物から何が作り出せるのか知らないはずもあるまい。原発はコストだけの話ではない。

>“再生エネルギー”は『非常に効率のいい蓄電システム』と併用しなければ、『“無駄が多すぎ”ちっともエコでない』ことはもっと周知してしかるべきです。

 そんなことを言っていると日本は脱炭素のラストランナーになるのである。日本においても市町村別に見ればエネルギー自給率の高い地域もある(注1)。こうした実践に対しても「ちっともエコでない」という指摘は不当だ。むしろリチウムのような資源に依存するタイプの蓄電池併用の発電所(例:すずらん釧路町太陽光発電所)は多数展開できないだろう。持続可能な素材を開発するか、全く発想を変えるか。例えばフィンランドには自然エネルギーで発熱させた砂を蓄え冬期に熱エネルギーを供給するシステムがあるという(注2)。日本なら揚水発電の例(こちらは場所の制約がある)がある。その他、余剰電力を不足する地域に送電する方法もある。技術的な問題ではない。
 余剰電力をどのように活用するかという話で、蓄電池はその方法の一つに過ぎない。原発はそこを思考停止させ、余剰電力を生ませない、つまり太陽光発電を切断する等の愚行に走らせている。

 kojitakenさんの記事を読んで改めて思うのは、優秀な技術を開発してもコストが嵩めば売れない、それほど優秀でなくとも手頃な価格の商品がよく売れ、資本を増大させた企業は技術開発に投資をし磨きをかけていく、国もそこに支援する-そんな構図が浮かぶ。そもそも大学に予算を割かない(大学だけではないが)日本の行政によって、優秀な人材が海外に流出している現実に政府は危機感がないのである。

【注】
1,エネルギー永続地帯からみる日本の自然エネルギー100%地域
go100re.jp/3032
([https://]を冒頭に付けてください)
2,フィンランドで世界初の「砂電池」による熱エネルギー貯蔵が開始 ? 蓄えたエネルギーで地域暖房が可能に
texal.jp/2022/07/08/worlds-first-commercial-sand-battery-begins-energy-storage-in-finland/
([https://]を冒頭に付けてください)
新技術でCO2を利用 (秋風亭遊穂)
2023-07-21 21:49:48
 再生可能エネルギーで生じた余剰電力活用は技術の問題ではないとしたが、新技術でCO2も活用、一石二鳥の方法にも触れておきたい。それは水素を生産、回収したCO2と反応させメタンを生産し、燃料や化学製品の原料とするもの(注1)。水素を貯蔵するのではなく、メタンを貯蔵、活用するものである。炭素を循環させるもの(カーボンニュートラル)で減少というわけではないが、エネルギーの自給にも繋がる。
 減少させたい(カーボンネガティブ)なら地中深くに埋め込むのだが、地震大国の日本ではという懸念もある。それどころか、地震を誘発する疑いもかけられた(注2)。また、コストがかかるという。

 炭素が大気に戻らなければいいので、その発想からダイヤを作る試みもある。ダイヤでなくともプラスチック代替製品ができるならそれもよい(注3)。
 
【注】
1,env.go.jp/earth/brochureJ/ccus_brochure_0212_1_J.pdf
([https://www.]を冒頭に付けてください)
2,「二酸化炭素を地下に埋める」注目の技術“CCS”が抱える期待と課題【脱炭素とはなにか#5】
businessinsider.jp/post-234099
([https://www.]を冒頭に付けてください)
 原油増進回収法はカーボンネガティブとは言いたくない。
3,This entrepreneur says he’s making diamonds ‘from the sky’
edition.cnn.com/style/article/diamonds-from-sky-scli-intl-gbr/index.html#:~:text=A%20British%20entrepreneur%20claims%20to,carbon%20drawn%20from%20the%20air.
([https://]を冒頭に付けてください)
CO2からプラスチックを合成! 日本製鉄らが挑む世界初の触媒プロセスが脱炭素社会にもたらす効果
https://emira-t.jp/special/19784/
([https://]を冒頭に付けてください)
天文学的な廃炉及び、放射性廃棄物保管コスト (ロハスな人)
2023-07-22 10:01:39
日本の電気料金の決定方法が『原発を見据えてインチキ極まりない』ことはご存じかと思いますが…。

海外の電力会社と違って、『かかった原価を勝手に上乗せしても大丈夫』という凶悪な制度のおかげで、『コストがかかりすぎるのが一目瞭然で導入に二の足を踏んでいた』電力会社を『“アメリカの圧力”で原発を導入したかった日本政府』がごり押しで説得した…のはもはや広く知られた事実です。

『文書を改造するのはお手の物の経産省官僚』の素晴らしい能力(その能力を建設的なことに使ってほしいですが)をしっかり見据えて“事実を読み取る”のは非常に大変な作業だとは思いますが…。

※原発のコストに『“恐ろしく困難な”廃炉費用』及び、『“数万年以上?!”に及ぶ莫大な放射性廃棄物を安全に管理する費用』は全く含まれていません。
(※その費用は何十兆円、何百兆円になるか見当すらつきません。)
 そして、これらは今までの政府と電力会社のやり口から『いつのまにか電力費用に上乗せ』するつもりだと簡単に推測できます。

 少なくとも『天文学的過ぎて考えたくもないほど膨大な原発の負のコストを国民に負担させる気満々』の経産省の“たわごと”は警戒してしかるべきだと思います。

※再生エネルギーは『使い方次第』です。『我々を地獄に誘う』原発よりも100倍マシですが、現状では発電しかできない点で『天然ガス』よりはずっと劣る(内燃機関にも天然ガスは使えることの意味をもう少し掘り下げてみましょう。)という事実は認識されることをお勧めします。

https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20211109/se1/00m/020/046000c
☆10月から"こっそり"と電気料金に上乗せされた原発賠償金=編集部
2021年11月1日 エコノミストオンライン

http://www.magazine9.jp/osanpo/130821/
☆廃炉作業の費用と期間に隠されている
原発の真っ黒な現実。
廃炉だけに特化した「廃炉庁」を早急に作れ!
時々お散歩日記

◎  安定的に冷却停止し、スムーズに廃炉作業に入った小規模の原発でさえ、イギリスの場合は90年が必要といっているのだ。溶融核燃料がどこにあるかさえ分からず、現在も大規模な高濃度汚染水の漏出を止めることすらできていない東電や政府が、廃炉作業は「最長で40年」…。よくもこんな工程表を恥ずかしげもなく発表できるものだ。

 廃炉費用にいたっては、日本政府(経産省)の試算のいい加減さは目に余る。
 東海原発は廃炉費用を885億円と見込んでいるが、それはあくまで23年間で終えるという想定上でのこと。この期間が延びれば、当然のように費用も増えていく。しかも、白々しく断っているように「原発廃止後の高レベル放射性廃棄物の恒久処理・隔離・管理に関しては未定」なのである。つまり、その費用がいくらかかるか分からないので、廃炉費用には入れていない、ということを意味する。
 要するに、数万年かかるはずの処理・隔離・管理の費用はまるでここには含まれていないということだ。
 こんな無責任な話があるだろうか。ツケはすべて未来の世代へ遺しておく。「いくらかかるか知らないが、あとはよろしく」というわけだ。これがこの国の「原発行政」の実態なのだ。
Unknown (ロハスな人)
2023-07-22 11:54:59
先程の値上げを詳しく調べると早速『 動いていない原発維持費の算入も認められる 』とか諸悪の根源『総統括原価方式』にまつわる“怪しい”動きがありますね。(苦笑)

https://www.tokyo-np.co.jp/article/250367
☆☆6月から東京電力の規制料金値上げへ 動いていない原発維持費の算入も認められる
2023年5月16日 東京新聞

◎ 6月使用分から東京電力エナジーパートナー(東電EP)の家庭向け規制料金の値上げが認められる見込みとなった。値上げ幅は、当初の申請時より圧縮されたものの、稼働していない原発を維持するための費用は原価として認められ料金に算入された。有識者らからはこの方針に疑問の声が上がる。

https://wpb.shueisha.co.jp/news/society/2019/10/15/109927/
☆原発マネーの深すぎる闇。諸悪の根源は『総統括原価方式』
週プレニュース 2019年10月15日
天然ガスの落とし穴 (秋風亭遊穂)
2023-07-22 21:06:44
>再生エネルギーは『使い方次第』です。『我々を地獄に誘う』原発よりも100倍マシですが、現状では発電しかできない点で『天然ガス』よりはずっと劣る

 この書き方からすれば、天然ガスに対する相当に甘い幻想を見ているようだ。火力発電で排出するCO2は、石炭:石油:天然ガス=10:8:6などとされている(比べれば少ないだけで、CO2は排出することに留意。)。だからカーボンネガティブの技術が確立するまでのつなぎとされてきた。しかし、そこに警鐘を鳴らす記事がある。

天然ガスは期待したほどクリーンでなかった、研究
natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/20/022100117/
([https://]を冒頭に付けてください)

引用開始----
 生産工程での漏出や損失が数%未満と非常に少なければ、天然ガスの炭素排出量は他のエネルギー源と比べて同等以下になる。そこが天然ガスの「損益分岐点」だ。だが、「漏出率」がガス回収量全体の約1%を超えた段階で、炭素排出が本当に少ないか、はっきりしたことは言えなくなると、米コーネル大学の気候科学者ロバート・ハワース氏は説明する。

 最近のある論文によると、天然ガス生産工程におけるガスの漏出率は、全米平均で2%超になることが示唆された。また、米国の主要採掘地域にある特定の「スーパー排出源」を調べた別の論文では、漏出率はさらに高いことが示された。
引用終わり----

 そもそも天然ガスはメタンガスが主成分。メタンガスはCO2の28倍の温室効果がある(IPCCの第5次評価報告書)。
 また、bloomberg の記事でも、メタン漏出の問題が指摘されている。

As Gas Prices Soar, Nobody Knows How Much Methane Is Leaking
bloomberg.com/features/2022-methane-leaks-natural-gas-energy-emissions-data/
([https://www.]を冒頭に付けてください)

引用開始----
The agency estimates that 1.4% of all natural gas produced in the U.S. is leaked into the air, according to a recent Stanford University study in which researchers strapped specialized cameras to small planes. The flights peeked down onto about 26,000 oil and gas wells and found the figure was likely much higher at 9%.
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研究者たちが小型飛行機に専用カメラを取り付けたスタンフォード大学の最近の研究によれば、米国で生産される天然ガスの1.4%が大気中に漏れていると推定されている。約26,000の油田とガス田を調査した結果、9%という数字で、もっと高いことが判明した。
(中略)
Big leaks and releases in Russia, Kazakhstan and Iran increased those countries’ methane emissions by as much as 20% compared with official national figures reported to the United Nations, according to a study by an international team of researchers published in the journal Science earlier this year. Super leaks in Turkmenistan, the central Asian oil-rich nation controlled by a secretive dictator, have doubled its annual carbon output.
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国連に報告された公式な国内の数字と比べて、ロシア、カザフスタン、イランなどでの大規模な漏れと放出により、これらの国々のメタン排出量が20%増加したと、今年初めにScience誌に掲載された国際研究チームの調査により明らかになった。中央アジアの石油豊富な国であり、秘密主義的な独裁者によって統制されているトルクメニスタンでは、超大規模な漏れにより年間の炭素排出量が倍増している。
引用終わり----
EPA:U.S. Environmental Protection Agency(米国環境保護庁)

 ナショジオの記事に戻ると、毎年大気中に放出される全メタン量は、約5億7000万トン。そのほとんどが人間の活動由来のものとされる。天然ガスの採掘もその一因である。「石油や石炭よりエコ」という想定が崩壊した以上、天然ガスの利用は少ないに越したことはない。一方、再生可能エネルギーは温室効果ガスを排出しない。

 ロハス("lifestyles of health and sustainability" )を自称したいなら、環境問題(特に地球温暖化・気候変動)にもっと関心を持ってもらいたい。経産省の文章をろくに読まず、エビデンスを示して反論することもなく、「便乗値上げ」と言うようでは「事実を読み取る」姿勢ではない。
これ以上は不毛と判断します。 (ロハスな人)
2023-07-23 14:56:59
さん>
秋風亭遊穂)さん>
見解は違えど興味深いご見解をありがとうございます。

話題がどんどんスレッドの本筋からもそれてきたので、今回はこのあたりにしたいと思います。

※これ以上やると『文明論』にまで踏み込みそうなので。

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