鍵穴ラビュリントス

狭く深く(?)オタク
内容は日々の戯言
イギリス、日本、リヒテンシュタイン、大好きです
プラトニックlove好き

載せちゃいます☆

2013-12-29 07:41:09 | ヘタリアのBL小説
pixivに載せているBL小説を載せちゃうことにしました!
ぜんぜーんエロくないBL小説です。BLが苦手な方、BLの意味が分からない方、お逃げください!
ではでは、ヘタリアのBL小説、第一弾はこちら!




初めての朝のジャガイモ事件

※お花夫婦(独伊)の夢小説です。
マイピクの方とのリレー小説ですので、これまでのあらすじを紹介しておくと、
イタリア(フェリシアーノ)とドイツ(ルートヴィッヒ)は結婚したが、その生活はラブラブ生活というよりどたばた生活である
って感じです。



「ヴェ。あれ? ここ……あ!」
 朝、目覚めたフェリシアーノは大声をあげた。
「起きたか」
「ヴェ!」
隣ではぱっちり眼を開けたルートヴィッヒが、フェリシアーノのことを愛おしそうに見ていた。それにひかれてフェリシアーノも自然と笑顔になる。
「ね、ねっ。俺、ルートに起こされなかったよ?」
「ああ。びっくりだな」
ルートヴィッヒはくすりと笑う。実際のところ、ルートヴィッヒはフェリシアーノの天使のような寝顔に惹かれて、それが正式に〈俺の〉になった嬉しさをかみしめていて、起こすことをすっかり忘れていたのだった。
 さて、二人は起きて、朝ごはんの仕度に取りかかった。まず、フェリシアーノは菊からもらった割烹着を着て、パスタを茹ではじめた。
「ふふん♪ パスタ、パスタ~」
「俺は……、その……ジャガイモはあるか?」
ルートヴィッヒが腕まくりしてそう言う。
「ジャガイモなら、あっちの籠の中にあったよ!」
「そうか」
ルートヴィッヒはジャガイモを2つ、手にもって、これを茹でていいかとフェリシアーノに尋ねた。
「いいよー♪ 俺、バジリコ、ベランダから摘んでくるから勝手にやっていて!」


「ルートぉ~ルート~、あのね、ファルファッレがいた!」
「春だからな。何色の蝶々だ?――というか」
「白色~っ」
「――フェリシアーノぉぉお! パスタもういいんじゃないか?!」
「わ、わ、大変! ルート、早く火を止めて!」


「ふー、あとは、バジリコ切ったからオリーブオイルとパスタをあえて……かんせーい♪」
 食卓には、バジリコパスタと茹でたまるごとのジャガイモが乗った。
「いっただっきます」
パスタをフォークに巻き付けたフェリシアーノは、向かい側に座っているルートヴィッヒを凝視した。
(な、なにあれ?!)
そこでは熱心にルートヴィッヒがジャガイモをフォークの背で潰している姿があった。
(なんかの儀式? ドイツ人はまったくなにをしでかすか分からない)
自分のことは棚に上げて、フェリシアーノは胸を高鳴らせてルートヴィッヒを見つめた。
「む……な、なんだ?」
「な、なんでもない、なんでもないっ!」
フェリシアーノは慌ててフォークに巻き付いたパスタを口に入れた。
(危ない、危ない。儀式中に邪魔をしちゃいけないって、たしかローマ爺ちゃんが昔読んでくれた絵本に書いてあった。さもないと呼び出された霊が俺にとりつくかもしれないって……!)
 フェリシアーノは黙々と食事を続けた。ルートヴィッヒが何か言ってもうなずくか首を横に振るかどちらかで、上の空だ。ちなみに、ルートヴィッヒが言っていたことは
「パスタ、この硬さでいいのか? 俺はいいと思うぞ」
「バジリコがうまみをひきだしているな」
「お前、なんでジャガイモを食わない?」
――だった。

「フェリシアーノおおお!」

 ルートヴィッヒが怒鳴ったところで、いいかげんフェリシアーノのほうもビクッと肩を揺らした。
「……な、なに……?」
すると、ルートヴィッヒは顔をそむけた。
(え! もしかして、儀式、失敗した?!……それを俺のせいにしようとしてる、と考えると…………、でもありえないよな、だってルートいつも俺に優しいもん。ほら、あのときだって――)
フェリシアーノは自分に告白する直前のルートの様子を思い出した。


『ルート、みて! じゃーん。俺が作った欲しいものリスト』
『だ、誰に頼むんだ……?』
『え。……もちろんサンタさんだよ?』
『どれ。見せてみろ。――パスタ(フェデリーニ、スパゲッティ、スパゲッティーニ、ラザニア、フィットチーネ、リングイネ、ブカティーニ、リッチャレッレ、ファルファッレ)、白い布きれ、木の棒(ちくちくしないもの)、絵の具各種』
『へへ』
『フェリシアーノ。これなら俺がそろえてやる。わざわざサンタクロースに頼むことでもないだろう。俺が用意してやる』
『えええ! ほんとに?』
『ああ、安心しろ』
『ルートに頭の毛撫でられるとなんだか安心する……。嬉しいなあ。パスタ、種類ごとに違う鞄につめこむんだ、それが俺の夢』
『も、もっと、壮大な夢はないのか?』
『ヴェ、たとえば?』
『――ん、そうだな、俺は、お前と一つ屋根の下で暮らして、朝も昼も夜も、お前とずっと一緒に居たい』
『…………?〈←告白されていることに気づいていない〉』
『こ、こほん。とにかくだ、えーと』
 ルートは俺の両手を手にくるんだ。12月の寒さの中、それはひときわあたたかだった。クリスマスツリーのライトの照らす中、ルートは俺に告白した。
『お前が、好きなんだ。結婚を前提に付き合ってくれないか?』
『お、俺……!?』
『ああ』
ルートの顔は真剣そのものだったから、俺は少しばかり、たじろいたけれども、よくよく胸に手を当てて考えてみたら、俺こそがルートのこと、好きなんだ、って解った、それも大大大好きなんだと。
『俺……、サンタさんに頼むもの決まったよ!』
ルートは驚いたのか目を見開いて首をかしげた。
『ルート! 俺、サンタさんにルート頼む! ね! いい案でしょ?』
――――そうして、俺たちは12月25日に付き合うことになったのだ。





「どうしてお前はジャガイモを食べてくれない……」
 その声はいつものルートヴィッヒとは打って変わって湿っぽかった。
「え? え?」
フェリシアーノは慌てた。確かに、ルートヴィッヒの“儀式”のせいでジャガイモには心的距離を置いていた。
「だって、だって、ルートが何かフォークで占いやっているからでしょ! カークランドになっちゃうじゃないのさ。ああ~、やだーやだー、考えるだけで寒気が」
「占い……? 何を言っているんだお前は」
(やっとルートが目を合わせてくれた)
フェリシアーノはほっとした。

「ジャガイモは潰して食べるものだろう。フォークの背で」

「………………え?」
フェリシアーノは口をポカンとあけた。




「儀式だとばっかり思ってた……」
「儀式や占いなど、だいたいこの俺がするわけないだろう!」
「そ、それもそうだね! あはは……」
 フェリシアーノも倣ってフォークの背でジャガイモを潰して食べてみた。
「いたって普通なつぶれたジャガイモ……」
 空は快晴。
 今日は、デパートにでも行くか、とルートヴィッヒは思った。