けちな方、というのは、とにかく使えるものはとことんまで使う。そうでなくちゃどうにも落ち着かなくて、夜も眠れないってんだからすごいものです。
なかにはそんなけちな人を捕まえて、からかってやろうと悪さをする連中もおりまして、
「おい、見ろよ。今、表通るの。ありゃお前、けちべえだよ。いやね、世の中に、あんなにけちな奴はないよ。ひとの顔みりゃ、何かくださいってんだから。今もキョロキョロ下向いて歩いてるだろ。ああやってなんかおっこってないかと探してるんだよ。まったく、しみったれなんだから、本当に。
・・・・そうだ! いいこと思いついた。えぇ、やろう、ひとつからかってやろうじゃねえか」
「ふーん。どうやって?」
「今おれがここでな、えーぃ、うっちゃちまうぞ! って言うからお前が、よしなよもったいないから、とか言ってごらん、やろうすっ飛んでくるから」
「ええ、くるかね?」
「くるともさ。やつは真夏のサバよりも足がはやいんだから。じゃあいくぞ。
なんだなー。こりゃぁ、おめぇ、うっちゃちまうぞ!」
「よしなよぉ。もったいないから・・・!」
「えー、ごめんくださいまし」
「おぉ、ほっほっほ、入って来た、入って来た。サバが来たよ」
「え? なんでございます?」
「いやあ、こっちの話だ。で、なんだい、けちべえさん」
「えー今、ご当家で何かお捨てになるそうで、できましたら、あたくしが頂戴したいのでございますが」
「ふうん。持ってくかい。持ちにくいけどいいかい」
「はあ、大きいのでございますか」
「いや、大きかない」
「じゃあ、重いんでございますか」
「いや、重くもない」
「ほほう。では、なんでございます」
「屁だよ」
「へ?」
「お前が言っちゃぁいけないよ。屁だよ」
「へと言うと、あの、おならでございますか。おしりから出る」
「大概おまえ、ケツから出るもんだよ」
「左様でございますか・・・。では、折角ですから頂戴をいたします」
「・・・みろよ、頂戴しますって手ぇだしたよ。お前、そこでイッパツやれい」
「冗談言っちゃいけないよ。すぐ出るもんじゃないよ。無理に出したら実まで出らい」
「ええ? そりゃまずいわな。じゃあ、とにかくけちべえさん、後ろへまわんな」
びろうなお話ではございますがネ、この男、けちべえさんを後ろへまわしておいて、大きいやつをイッパツ、ぶうっ!
けちべえさん、これを両手でむんずと掴むと、ターってんで走り出した。
どこに行くんだろう、とあとをつけてみますと、走った先は自分の家。
けちべえさん家の裏に、小さな菜畑がありまして、やっこさん、ここまで来るっていうと、それまで大事に掴んでいた屁をあたりにぱ~っと振りまいた。
「・・・ただの風よりましだろう」
かき麿
なかにはそんなけちな人を捕まえて、からかってやろうと悪さをする連中もおりまして、
「おい、見ろよ。今、表通るの。ありゃお前、けちべえだよ。いやね、世の中に、あんなにけちな奴はないよ。ひとの顔みりゃ、何かくださいってんだから。今もキョロキョロ下向いて歩いてるだろ。ああやってなんかおっこってないかと探してるんだよ。まったく、しみったれなんだから、本当に。
・・・・そうだ! いいこと思いついた。えぇ、やろう、ひとつからかってやろうじゃねえか」
「ふーん。どうやって?」
「今おれがここでな、えーぃ、うっちゃちまうぞ! って言うからお前が、よしなよもったいないから、とか言ってごらん、やろうすっ飛んでくるから」
「ええ、くるかね?」
「くるともさ。やつは真夏のサバよりも足がはやいんだから。じゃあいくぞ。
なんだなー。こりゃぁ、おめぇ、うっちゃちまうぞ!」
「よしなよぉ。もったいないから・・・!」
「えー、ごめんくださいまし」
「おぉ、ほっほっほ、入って来た、入って来た。サバが来たよ」
「え? なんでございます?」
「いやあ、こっちの話だ。で、なんだい、けちべえさん」
「えー今、ご当家で何かお捨てになるそうで、できましたら、あたくしが頂戴したいのでございますが」
「ふうん。持ってくかい。持ちにくいけどいいかい」
「はあ、大きいのでございますか」
「いや、大きかない」
「じゃあ、重いんでございますか」
「いや、重くもない」
「ほほう。では、なんでございます」
「屁だよ」
「へ?」
「お前が言っちゃぁいけないよ。屁だよ」
「へと言うと、あの、おならでございますか。おしりから出る」
「大概おまえ、ケツから出るもんだよ」
「左様でございますか・・・。では、折角ですから頂戴をいたします」
「・・・みろよ、頂戴しますって手ぇだしたよ。お前、そこでイッパツやれい」
「冗談言っちゃいけないよ。すぐ出るもんじゃないよ。無理に出したら実まで出らい」
「ええ? そりゃまずいわな。じゃあ、とにかくけちべえさん、後ろへまわんな」
びろうなお話ではございますがネ、この男、けちべえさんを後ろへまわしておいて、大きいやつをイッパツ、ぶうっ!
けちべえさん、これを両手でむんずと掴むと、ターってんで走り出した。
どこに行くんだろう、とあとをつけてみますと、走った先は自分の家。
けちべえさん家の裏に、小さな菜畑がありまして、やっこさん、ここまで来るっていうと、それまで大事に掴んでいた屁をあたりにぱ~っと振りまいた。
「・・・ただの風よりましだろう」
かき麿