かみいた落語塾

噺家さんの指導のもと、小咄から古典落語までしっかり学べる、老若男女うぇるかむの落語団体、上板橋落語塾のかわら版!!

小咄ノート6「小児」

2005年08月19日 | 参考書
小児は白き糸の如しといいまして、子供というのは生まれ育った環境によってどんな色にも染まってしまう。

遊び方にしてもそうですね。
駅の近くで電車ごっこ、学校の近くで学校ごっこ、なんてのはかわいいもんです。
病院の近くでお医者さんごっこ、だってまだかわいい。子供がやる分にはね。
中には、お寺の近くでお弔いごっこ、なんてのがあったりして、

「金ちゃん金ちゃん、今日はねえ、おまえが死体の役だよ」
「えー。あたい昨日も、砂浜に打ち上げられた変死体の役をやったばかりじゃないか。たまには棺桶担がせてよ」
なんて、棺桶担ぐのを名誉がったり。

ひどいのになると、刑務所の近くで懲役ごっこ、なんてのをやったりしましてね。
「ま、やだよこの子は。洗って着せてやりゃあ、そうやってすぐに汚しちまって。泥なんぞ担いで、何やってるんだい?」
「あ、おっかあ。いまね、懲役ごっこやってるの」
「懲役ごっこ! 相変わらず変なことやってるのねえ。どうでもいいけど、金ちゃんごらん。おとなしくゴザの上に座ってるじゃないか。お前もちょっとは金ちゃんを見習いな」
「おっかあ、何もわかってないんだからなあ。金ちゃんはしょうがねんだよ。終身懲役だから。明日への希望もなく、ああやってただ座ってなくちゃならないんだ。そこへいくっていうと、おいらは三ヶ月の半端懲役だから、こうやって泥も運ばなくちゃなんないんだ」
「ま、実話系の週刊誌みたいなこと言って。じゃあわかった。おっかさんが頼んでやるから。お前も終身懲役にしてもらいな!」


かき麿