「不可視の両刃」放射線に挑む~英国大学院博士課程留学~

英国に留学して放射線研究に取り組む日本人医師ブログ

明治150年

2018-01-02 | 2018年イベント
あけましておめでとうございます。
今年2018年は平成30年であり、明治150年に当たる年でもあります。明治維新を振り返る催しが日本国内でも色々と行われていることと思いますが、私もこちらで引き続き、明治期に西洋医学を日本へ導入した英医ウィリアム・ウィリスの調査を行っています。

先日、エニスキレン Enniskillenの学校に調査協力を依頼しました。これからウィリスの幼少期について迫っていくつもりです。ウィリスの伝記などによって、彼がグラスゴー大学へ進学、後にエジンバラ大学医学部課程に転学し、外科医になったことはよく知られているのですが、大学へ進む前の彼の幼少期については判っていないことが多いのです(あまり幸福ではなかったようですが)。知られているのは医師だった長兄の援助によってウィリスも医師になったということくらいでしょうか。
鹿児島大学医学部関係者のご尽力によって、ウィリスのことはこれまでにも色々と調査が進められてきました。ウィリスの子孫に当たる方々は今も日本に住んでいらっしゃるようです。私も研究の合間にではありますが、すこしこの医学史的な調査にご協力できることがあればと思っています。明治150年に明治期にもたらされた西洋医学の源流について新たな何かが判ればいいですね。

もちろん、放射線研究も鋭意進めていきます。
実は、昨年まで積み重ねた実験結果から、すでに新しい事象を見出しています。一流誌であるNatureやScienceで発表できるほどかと言われると正直自信はありませんが、福島被災地などに見られる低線量放射線被ばくを考える上で有意義なデータであることは間違いありません。
昨年12月に学会発表した時や、所属医局ですこしお話しした時は、残念ながら諸事情により紹介しなかったのですが、実は、共同研究者の先生方、放射線医学の大御所の方々にはこの新しい事象について相談することが出来まして、すでにある程度の手応えをつかんでいるのです。今年はこの成果をなんとか論文として発表したいと願っています。
問題の一つは「再現性」です。小保方晴子氏が「あります」と叫んで、しかしついに再現できなかったSTAP細胞論文が提起したように、新しい事象を報告するときに大事なことの一つは「誰がやっても報告通りの手順通りにやれば再現できること」なのです。私も今回見出した事象はすでに慎重に検討し、ある程度の再現性までは確認できています。ただ、メカニズムがよく判らない部分が残るのです。もちろん、山中伸弥教授のiPS細胞のように「詳細なメカニズムは不明だが、とにかく創ることが出来る」という点を高く評価されることもあるのですが、今回の私たちの研究は放射線を使ったものですからより慎重な議論が必要な類になるでしょう。
様々な問題と取り組みながらも、なんとか前に進みたいと願っています。

今年も微力を尽くしたいと思います。


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