「不可視の両刃」放射線に挑む~英国大学院博士課程留学~

英国に留学して放射線研究に取り組む日本人医師ブログ

世界対がんデー World Cancer Day

2018-02-04 | 2018年イベント
本日2月4日は「世界対がんデー World Cancer Day」です。
国際対がん連合 Union for International Cancer Control (UICC) が導入したもので、世界各国でがんに関する啓発行事が行われます。ここBelfastで何か特別な行事が行われていたかどうかは気づきませんでしたが、私の所属する研究センターではがん研究を行っていることもあり、受付にチャリティー関連のものが置いてありました。£2のUnitiy Bandを購入することで寄附出来るという仕組みです。

日進月歩の医学において、「がん」はかなり治療出来る範囲が広がったものの、未だに根治は難しい病気の一つです。この病気は遺伝子発現異常の蓄積によって生じるものであり、それは加齢と密接に関係します。「加齢とは何か」という問いに答えるのは現在の医科学ではまだ難しいのですが、その特徴の一つに遺伝子発現異常の蓄積があることは判っています。つまり、年老いれば、誰でもがんになると言えます。実際、超高齢社会が進行する日本において、2人に1人はがんに罹患しており、3人に1人はがんで亡くなっています。
なんとか治したいと医療人ならば誰もが思うことですが、一方で「高齢者ががんになったとして、それはもはや天寿と言うべきなのではないか?」という意見もあります。例えば、平均寿命を超えている95歳の患者さんに新たにがんが発見されたとして、それを一生懸命に治すために、抗がん剤による化学療法、手術などの外科療法、そして放射線治療、最近ではこれに免疫療法が加わりますが、そのフルセットを全力全開で行うべきなのかどうか。そもそも、その高齢者さんの体力では耐えきれない治療もあるかもしれません。このような状況でどうするべきなのかは、医療従事者の中でも意見が分かれることでしょう。おそらく「対症的な治療(つまり根治は目指さない治療)」を勧める医療従事者が多いのではないかと思います。

がんを征圧するというのは医学(Science)的にも医療(Art)的にもとても難しいです。
私は、かつて腫瘍学の研究に取り組めば取り組むほど、その征圧の難しさに打ちのめされるような気持ちになりました。しかし、がんで苦しむ患者さんに接する度に「これをなんとかしたい」という思いにも駆られました。現在、世界中の研究者、医療従事者の懸命の努力ですこしずつがん研究・治療は発展していますので、私もこの発展に貢献をしたいと心から思っています。

これまでの研究から「がんを治すよりも、そもそも、がんにならないように予防する方が良い」という見解もあります。
簡単に言うと、遺伝子発現異常につながるような行動を抑えることです。例えば、喫煙、飲酒などを控えることです。喫煙と発がんの関係は厳密には明らかになっていませんが、疫学的には因果関係は明らかであり、おそらくこれらは身体の細胞に与えるダメージが大きく、DNAに変異が生じたり、正常な遺伝子の発現を損なうのだろうと考えられています。
がんを征するのは、まだたしかに難しいのですが、身近に出来ることから始めるのは良いですね。


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