「不可視の両刃」放射線に挑む~英国大学院博士課程留学~

英国に留学して放射線研究に取り組む日本人医師ブログ

若き死と、生きる道

2016-09-06 | 留学するまでの色々
母校の後輩が脳腫瘍で今年亡くなっていたということを、先刻、はじめて知りました。

まだ若すぎる天才の死でした。たった一度の人生を音楽に捧げたようです。今、彼が遺したピアノ作品が収められたCDを眺めながら、色々と思うところがありました。風の噂でそのような麒麟児が母校にいることは知っていました。闘病のことも。生前にお会いしたことはありませんが、医療従事者の端くれとして、治療が奏功することを願っていました。
さぞかし無念だったことでしょう。
「なぜ自分が」と、きっと、思ったことでしょう。
死を受け入れるのは困難だったに違いない。
それでも容赦なく死は訪れて、彼が遺した音楽は今日も続きます。

私はまだ生きています。
持病を抱えながら、ある意味すでに身も心もボロボロですが、それでもまだ燃やせる命があります。私の母校のモットーは「他者のための人になりなさい(man for others)」というものでした。思春期には反発さえ覚えたモットーでしたが、今はその教えが私の心の最後の拠り所になっています。
私は誰かのために生きる人になれるでしょうか。
命を燃やして戦うことで、いつかどこかで誰かが喜んでくれるなら。幸せになってくれるなら。
後で振り返った時、私が生きた意味も見つけられるでしょうか。

一期一会の世の中です。
八方美人に振る舞って、万人に好かれることなんて、とうの昔に諦めました。しがらみだらけで何も出来なくなるよりも、嫌われても、憎まれても、蔑まれても、それでも為すべきことを為そうと決意しました。
その道が正しかったかどうかは判りません。楽な道ではありません。
しかし、たとえ志半ばで倒れようとも、身も心も朽ち果てようとも。誰かのために戦えたなら、誰かのために生きられたなら。
後悔せずに済むんじゃないかって思うのです。