「不可視の両刃」放射線に挑む~英国大学院博士課程留学~

英国に留学して放射線研究に取り組む日本人医師ブログ

オバマ大統領の広島訪問とスピーチ

2016-05-28 | 留学するまでの色々
オバマ大統領の広島訪問とスピーチに関する報道を、昨夜、当直した病院の医局で知りました。
たしかに歴史的瞬間だと思います。原爆被ばく者Hibakushaと抱き合う大統領の姿は、私のような放射線研究者の端くれにとっても、感慨深いものがありました。スピーチの内容も素晴らしかった。私自身は、日本にはいつまでもたっても謝罪が云々という某国のような文化はないと思っているし、第二次世界大戦後の日米の歩みを鑑みれば、アレで良かったのではないかと感じています。

以前に米国や英国に短期ではありましたが留学した際、「第二次世界大戦についてどう思うか」と尋ねられたことがありました。
米国に留学した際にはUCSDの女性講師に「どうして日本人留学生は日本の国歌を知らないのか、歌えないのか」と聞かれたことがあり、戦後教育の歴史と背景について、私なりに説明したら、大変驚かれたのを思い出します。70年以上前のことではありますが、現代日本の社会にいまだにひっそりと残る先の戦争の影響を、これまでにも度々感じることはあったのです。そして、その度に、日本人として、色々と考えさせられてきたのでした。

広島の原爆ドームの映像を見るたびに、Hibakushaに関する話を聞くたびに、福島原発事故とはまた違った観点から「放射線被ばく影響に関する研究の重要性」を感じてきました。

広島、長崎、そして福島……。

唯一の被ばく国である我が国の研究者こそが世界の放射線研究をリードしてほしいとつくづく思います。
原爆や原子力発電所事故などで凄惨な一面を見せる一方で、医療や工業の分野でわれわれの生活を支える一面も併せもつ、放射線という「不可視の両刃」にはまだ判っていないことも多々あります。より正確に言うならば、我々が「自分たちの身体」のことをよく判っていないから、放射線を被ばくした際の影響が判っていないのです。今後、人類が宇宙に進出する際には宇宙線という放射線の一種からどのようにして身体を守るか、あるいはもっと放射線を利用して医療の質を向上できないか、など様々な課題が残されています。

もっと研究を進めていかなくてはならないと――今回の現役米国大統領の広島訪問によって、改めて、そんなことを考えさせられたのでした。