「不可視の両刃」放射線に挑む~英国大学院博士課程留学~

英国に留学して放射線研究に取り組む日本人医師ブログ

肩の荷が下りた症例報告

2016-05-31 | 雑記
前任地を離れる際に、私にはまだやり残したことがありました。

古巣の公立相馬総合病院という病院は、市中病院でありながら症例豊富であり、医師として経験を積むには好適な環境でした。私が常勤として在籍していた期間は短いですが、それでも極めて稀な疾患、病態に遭遇する機会が幾度かありました。例えば、21世紀になってから世界で数例しか報告がないという疾患を診たこともありました。中には不幸な転帰をたどった例もありましたが、今も元気にご健在の例もあります。そして、そういう患者さんたちと接した大変貴重な知見を、他の医療従事者と共有することで、医学の発展に貢献しなければならないと私は思っていました。ですから、症例報告という形で、私が経験したこと学んだことを、学会や医学誌上でこれまでも発表してきました。
相馬を離れる際に「できれば発表したい、しなければならない」と思っていた症例が2例も残っていました。

つい最近、どうやら、その2例の発表に目途がつきました。

福島の片隅で永遠に埋もれることなく、「我々はこういう体験をしましたよ」と形に残すことで、あとに続く人たちの参考にしてもらえるように。もしも、同じような疾患、病態に苦しむ人がまた現れた時に、我々の経験を活かして、よりよい医療が提供されるように。
そういう願いを込めてケースレポートにまとめたのでした。それがなんとか近日中に陽の目をみることになりそうです。
もちろん嬉しく思いましたし、なによりも、ほっと安堵する気持ちがありました。

ようやく肩の荷が下りました。
これでもう、思い残すことなく、次へ進むことが出来そうです。