「不可視の両刃」放射線に挑む~英国大学院博士課程留学~

英国に留学して放射線研究に取り組む日本人医師ブログ

北アイルランドにおける『地球の歩き方』問題

2017-04-02 | 留学全般に関して
みんな大好き『地球の歩き方』について、一言申し上げたいと私は常々思っていました。
一般に、海外旅行必携のガイドブックとして広く知られており、私もこれまでにアメリカ、スコットランドなどに短期滞在した時に観光する上でよくお世話になりました。しかしながら、こと英国領北アイルランドについては、私は『地球の歩き方』を断じて許すわけにはいきません。

奴らは大変な間違いをしていきました!
北アイルランドに関する情報をアイルランド版に収載しているのです!
(写真は2015~2016年版です)

もちろん、確信犯なのでしょう。アイルランドと北アイルランドは別々の国であるというか、北アイルランドは英国だと知っていながらの狼藉であります。
あるいは穿った見方をすれば、「北アイルランドはアイルランド共和国に編入されるべきだ」という政治的なメッセージなのかもしれませんが、北アイルランド紛争(The Troubles)という一大紛争を抱える地域について、たかが日本の一ガイドブックに過ぎない『地球の歩き方』がそういう政治的な誤解を生むようなことをするのは色々な意味でやめてほしいものです。
下手すると、「日本のガイドブックでは北アイルランドはアイルランドと同じ扱いらしい」「日本人は北アイルランドをアイルランド共和国だと思っているのか?」と地元の方々に誤解されかねませんから。場合によっては、危険なことにもなりかねません。

とにかく、このせいで北アイルランドを観光しようと思って、イギリス版を買ってしまうという悲劇がたびたび繰り返されてきました。
とくにAmazonなどの通販で『地球の歩き方』を購入する場合、本の中を確認できずに買うことが多いので、たいへん恐ろしい罠になります。いわゆる初見者殺しです。まあ、どうせ北アイルランドに行くならブリテン島も観光するからいいかと、泣き寝入りするしかありません。
アイルランドと北アイルランドの違いさえろくに知らない方々ならばともかく、ちゃんと英国がイングランド、スコットランド、ウェールズ、そして北アイルランドで構成されていることを知っている人たちをも欺くという意味で、実に罪深い罠だと感じます。
つい先日も「『地球の歩き方』を買ったんだけど、北アイルランドが載っていなかったんだぜ?」という、実に辛く悲しいお話を聞きました。

北アイルランドは英国であります。
現在に至るまで数百年間にわたって英国領であり、近年も北アイルランド紛争や英国EU離脱(Brexit)で揺れるアイルランド島にあるとはいえ、それでも現時点では英国によって統治されている地域なのです。英国文化とアイルランド文化が混在する非常に興味深い地域となっています。本学も大英帝国ヴィクトリア女王によって設立された英国屈指の研究大学であり、公用語はもちろん英語になっています。地元住民も、色々と思うところはあるのかもしれませんが、英国の国籍を有している人たちです。
そのような現時点での事実に反して、北アイルランドがアイルランド共和国の一部と見做されてしまうかのように書かれているガイドブックの構成は、流石に、ちょっと問題があるでしょう。とくに旅行者向けのガイドブックで、そのような誤解を招きかねないことをするのは、いかがなものかと。

現在の地球の歩き方では、なぜかイギリス版(ブリテン島)、アイルランド版(アイルランド島)という構成になっているのですが、ちゃんとイギリス(ただし北アイルランドを除く)版(ブリテン島)、アイルランドと北アイルランド版(アイルランド島)と正しく表記するか、あるいはイギリス版(ブリテン島+北アイルランド)、アイルランド版(アイルランド島ただし北アイルランドを除く)として正しく収載し直すべきでしょう。

もしも北アイルランドまで足を運ぶ際には、どうか『地球の歩き方』にお気を付けて下さい。地球の迷い方になりかねません。