(J.B)「初めて会った時、おまえ、豆とピーチを混ぜて食ってたんだ。癇に障るメシの食い方をするやつだ、と思ってな」
―When I first saw you, you were jamming on beans and peaches, eating to get on my nerves.
なぜ豆? どうしてピーチ?
メンタリティのトラブルや亜鉛(Zn)欠乏による味覚異常のせい、と云われればそれまでなんですが、鬼の形相でぐちゃぐちゃのサルサスープ、またはピーチコブラーのフィリングもどきを製造する深井零少尉の手つきがあまりにも秀逸で・・・気になるじゃないか。
「しずく、雨だれ、ほんの少し」少佐は言った、「ゼロ。――おまえの名だ、零」
Ⅰ 妖精の舞う空/『戦闘妖精・雪風<改>』
ああ。
beans:ほんの少し(almost nothing)
本人のことか。そっか。
(J.B)「願わくば、こんなやつが俺の隊に配属されないようにって祈ったよ。ありゃあ、メシ食う時の顔じゃなかったぜ」
―I wished, this guy, what's a pain he is, shouldn't be assigned to my corps. That wasn't the look of having a meal.
ちなみに「bean」と「peach」にはヤバいスラングがあり、それはこの記事を上から下まで読んで察するか、こことかここで察してほしいんですが、どうやら相当に嫌なことがあったらしい深井少尉の気分としては、
So fuckin’what!
だったでしょうね。そして「peach」が「cheap」のアナグラムだとすると、
cheap:とるに足らない(almost worthless)
「beans」と同じ意味(synonym)になってしまう。
「peach(pí?t?)」≒「speech(spí?t?)」のhomonymだとしても、話す能力(the ability to speak)ほとんどナッシング、気の滅入る話だ。
(J.B)「美味いか不味いかも、感じてなかったんだろう」
―You could feel neither tastiness nor tastelessness.
ここまで、いかれてる、と感じたにもかかわらず、おそらくは英国人の伝統的な“MADセンサー”―――ノンセンス(nonsense)に対する好奇心を刺激され、ジェイムズ・ブッカー少佐は深井少尉を思索の対象にしたらしい。魅入られた、とも云いますな。
(J.B)「なにを考えてた? ずっと・・・それが知りたかった」
―What were you thinking then ? It has ever been...on my mind.
(R.F)「・・・憶えてない」
―...out of my mind.
この、狂気の淵まで行って底を覗き込む、時には飛び下りてしまうエッジな感覚は英国人の血なんでしょうか。
HAMLET:
Ay, marry, why was he sent into England ?First Clown:
Why, because he was mad: he shall recover his wits there; or, if he do not, it's no great matter there.HAMLET:
Why ?First Clown:
'Twill, a not be seen in him there; there the men are as mad as he.Hamlet - Act 5, Scene 1 @ The Complete Works of William-Shakespeare
正気と狂気の間で、あえて遊んでしまう肝の据わりようはOPERATION5の「フール・オン・ザ・ヒル」に通じます。
いずれにせよ、とんでもない自己紹介となった「深井スペシャル」ですが、もし少佐があの場で、おまえどうした、と声をかけたら、零―――豆とピーチ―――はえらい剣幕でこう怒鳴り返したかもしれません。
I don’t know beans.
(俺の知ったことか)Don’t follow me around.Stop gawking,go cut your peaches!
(俺にかまうな。なにを見ている、さっさと行っちまえ!)
*
【戦闘妖精・雪風】愛は負けても、親切は勝つ
【戦闘妖精・雪風】愛機とのコミュニケーション
【戦闘妖精・雪風】1904年1月1日午前0時
【戦闘妖精雪風(OVA)】豆とピーチが云いたかったこと(OP1)
【戦闘妖精雪風(OVA)】戦士のパーソナルネーム(OP3)
【戦闘妖精雪風(OVA)】フール・オン・ザ・ヒル(OP5)