経済なんでも研究会

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新次元・SF経済小説 【 プ レ ー ト 】

2018-06-10 08:21:25 | SF
第4章  錬 金 術 と 太 陽 光

≪36≫ 国家機密 = また1ブロック先のレストランに来ている。落ち着いた間接照明で、高級感と居酒屋的な気安さが同居している住民の集会所だ。いつかマーヤに名前を尋ねたら「満足」という意味だという。人々は人生に満足しているからここへ来るのか、していないから来るのか。よく解らない。

よく一緒になるSさんとMさんの夫婦が、今夜も酒を飲んでいる。そこで隣に座ってもいいかと聞いたら、4人とも手を挙げて歓迎してくれた。断わっておくが、ダーストン語で言ったわけではない。身振り手振りで、そう伝えたのだ。ダーストンの言葉は難しくてとても覚えられないが、そのくらいのことは出来るようになった。

しかし考えてみると、日本に宇宙人が迷い込んだらどうだろう。こんなに打ち解けて歓迎するだろうか。本当にダーストン人は優しくて寛容でもある。健康な生活が保障され、犯罪や争い事もないから、大らかなのだろうか。

ピスコという発泡酒で乾杯したあと、世間話が続いた。もちろんマーヤの通訳入りである。たまたま2組の夫婦は、すべて40歳代。子どものことや教育に関する話が多い。なかで教育をロボットに任せることの是非については、意見が一致しなかった。

折をみて、ぼくが金属精錬所を見学したと言うと、みんながびっくりしたようだ。遠くからドーム型の工場を見たことはあるが、なかに入ったことはないと言う。Sさんが「あそこは国家機密の場所になっていて、一般の人は立ち入り禁止だと思うよ」と断定すると、みんなが首をタテに振った。そこで聞いてみた。

――ダーストニウムという新発見された金属を知っていますか。

「知りませんね。学校でも教わらないし、ネットで調べても出てこないでしょう。それは何ですか」

――あそこの工場長が言うには、この金属のおかげでエネルギーの供給と交通手段が革命的に変わったそうですよ。

「へえ、でも解らないなあ」「たしかにモノは何でもロボットが作っている。しかしロボットも電気は作れないだろう。電気はだれが、どこで作っているのか。いつも不思議に思っていました」

この国の人たちは、ダーストニウムのことを知らないらしい。これは今夜いちばんの収穫だ。もう少し詳しく知るためには、どうすればいいのだろう。帰り道でこう考えていると、マーヤがささやいた。
「あす一番で、賢人会のウラノス博士と連絡を取りましょう」

ぼくのマーヤは秘書としても素晴らしい。2人は一心同体の関係になってきた。

                            (続きは来週日曜日)


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