経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

抵抗力に差が出た 新興国経済

2022-03-31 07:37:29 | 新興国
◇ インフレ抑制で利上げラッシュ = 多くの新興国がインフレを抑制するため、続々と金利を引き上げている。アメリカが利上げに踏み切ったことから資金がアメリカに引き揚げられ、自国通貨が下落。輸入物価が上がってインフレになりやすい。加えてウクライナ紛争でエネルギーや資源価格が高騰。新興国としては経済成長を犠牲にしても、やむなく政策金利を引き上げざるをえなくなった。

利上げを余儀なくされたのは、南アフリカ・メキシコ・ブラジル・シンガポール・フィリピン・インドネシア・・・など。このうちブラジルの金利は11.75%にまで上昇した。このブラジルをはじめ南アフリカ、メキシコは、すでに経済成長率がマイナスに沈んでいる。物価騰貴と不況が共存する、典型的なスタグフレーションに陥っているわけだ。それでもインフレを抑えるため、まだ利上げしなければならない。

そんななかでも、インドネシア・マレーシア・チリなどの新興国は、比較的に落ち着いている。これらは資源国であり、ウクライナ戦争で資源価格が急騰、輸出が伸びているためだ。これら諸国はアメリカの利上げに対して、早くから対応策を講じてきた結果だと考えられる。一方、同じ資源国でも対応が遅れたブラジル、南アフリカなどは苦境に追い込まれた。

実質実効為替レートという統計がある。多くの国の通貨に対する交換レートを、貿易量や物価変動を加味して算出する統計だ。BIS(国際決済銀行)の試算によると、日本円の実質実効レートはことし1月時点で50年ぶりの低さとなった。そのあとアメリカに続いて新興国の多くが利上げしたから、円の実効レートはもっと下がったに違いない。それだけ輸入品の価格は上昇しているわけである。

       ≪30日の日経平均 = 下げ -225.17円≫

       ≪31日の日経平均は? 予想 = 下げ≫
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耐久力競争の 新興国経済

2018-08-24 07:25:46 | 新興国
◇ トルコ ⇒スペイン が要警戒 = 新興国の多くが、自国通貨の防衛に必死となっている。アメリカの金利上昇に加えて、広がりをみせ始めた貿易戦争。資金の流出を防ぐために、各国は競って政策金利を引き上げている。なかにはアルゼンチンのように、政策金利が45%になったところも。通貨が下落し金利が上がれば、インフレが進行し景気は悪化する。そうしたなかで多くの新興国が耐え抜いているのは、この10年間に経済が発展し、それだけ抵抗力を増したためだろう。

通貨の下落率を年初比でみると、トルコ・リラが50%で最も大きい。すでに債務不履行を回避するためIMF(国際通貨基金)から融資を受けることになったアルゼンチンは、36%の下落。ブラジル・レアルが15%、インドネシア・ルピアが7%などとなっている。自国通貨が下落すると、輸入品の価格が上昇するだけでなく、対外債務の実質的な負担が増大してしまう。

このため新興国は必死で防衛しているわけだが、実は先進国にとってもこの点が最大の関心事になる。というのも新興国が債務を返済できなくなると、損失を被るのは先進国の金融機関だからだ。そこから世界的な金融不安が惹き起こされることは、これまでに何度も経験している。

この観点からみると、対外債務が外貨準備の何倍あるかが、重要な指標になるだろう。現状ではアルゼンチンが4.4倍。次いで南アフリカが4.3倍、トルコが3.6倍となっている。特にトルコの場合は、アメリカとの間で貿易戦争が始まった。エルドアン大統領が金利の引き上げを認めないという状態。この国に800億ドルを貸し付けているスペインの金融機関に、どんな影響が及ぶのか。現時点での最大の注目点になってくる。

       ≪23日の日経平均 = 上げ +48.27円≫

       ≪24日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
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こんどは トルコ です : 通貨不安

2018-08-14 07:48:27 | 新興国
◇ リラ暴落が東京市場にも波及 = 日経平均は先週末の300円に続いて、きのうも440円の大幅安を演じた。その大きな要因がトルコの通貨リラの暴落だった。トルコ・リラの対ドル・レートは、10日だけで20%もの下落。年初に比べると4割も下がって、過去最低値に落ち込んでいる。アメリカの高金利で資金が引き揚げられていたところへ、トランプ大統領がトルコの鉄鋼製品に50%の追加関税をかけたことが原因。

トルコ政府は、クーデターに関与した疑いでアメリカ人牧師を拘束している。トランプ大統領が鉄鋼製品に高関税をかけたのは、これに対する抗議で、特にリラを下落させるほどの経済的な影響はない。しかしアメリカとの関係がますます悪化したことが、資金の流出を加速させることになった。

トルコ経済は最近まで順調に推移、外貨準備も1000億ドル保有している。このためアルゼンチンのように、いますぐIMF(国際通貨基金)に駆け込む状況ではない。だが政治的には、エルドアン大統領の独裁状態。たとえば中央銀行がリラ防衛のために金利を上げようとしても認めない。このため将来への不安が、必要以上に増大している。

トルコにはスペイン、イタリア、フランスなど南ヨーロッパの銀行が多額の投融資をしている。これらの銀行経営に支障が出ないかどうか。またロシア、南アフリカ、インドネシアなどからの資金流出を加速させないかどうか。このような心配が強まった結果、先進各国の株式市場でも警戒感が強まった。今週も目は離せない。

       ≪13日の日経平均 = 下げ -440.65円≫

       ≪14日の日経平均は? 予想 = 上げ≫
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リラの花散るころ : 新興国に試練 (下)

2018-06-01 07:39:30 | 新興国
◇ 試される新興国の耐久力 = 新興国のなかには、突如として吹き荒れた寒風にもめげず頑張っている国もある。年初来の通貨騰落率をみると、アルゼンチンが22%、トルコが19%下落したのに対して、タイは1.2%、マレーシアは1.9%上昇した。国内経済の状態が良好なためである。ただマレーシアの場合は先週になって、前政権による多額の債務隠ぺいが発覚。今後の見通しは、急激に悪化した。

新興国を取り巻く環境も、よくはない。アメリカのFRBが6月の政策決定会合で、追加の利上げを決めることは確実。それが長期金利をどこまで押し上げるかは不明だが、少なくとも下げ要因にはならない。もし長期金利が3.2-3.3%に上昇するようだと、新興国からの資金流出には拍車がかかりかねない。

自国通貨が下落し、その防衛のために金利を引き上げると、新興国の経済は不況に陥る。するとまず近隣諸国からの輸入減という形で、不況が伝染する。先進国からの輸入も減少するから、不況はしだいに世界へと拡散して行く。こうした現象は、1980年代と90年代にも発生した。ただ新興国もその当時よりは、かなり抵抗力を増している。その耐久力が、これから試されようとしているわけだ。

経済が成長して、たしかに耐久力は増した。だが結果として新興国の賃金水準が向上し、それだけ先進国の直接投資は伸び悩んでいる。逆に先進国は、証券などの間接投資に重点を置くようになった。それだけ金利の変動には敏感になっているわけで、引き揚げも簡単にできる。こうしたマイナス材料もあるなかで、新興国がどこまで耐えられるか。当面の抵抗線はトルコの通貨、リラの花の散り具合である。

       ≪31日の日経平均 = 上げ +183.30円≫

       ≪1日の日経平均は? 予想 = 下げ

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リラの花散るころ : 新興国に試練 (上)

2018-05-31 07:21:26 | 新興国
◇ 当面の標的にされたトルコ・リラ = アメリカの高金利に吸い寄せられて、新興国からの資金流出が加速している。多くの新興国が為替介入や利上げに踏み切り、自国通貨の防衛に必死。すでにアルゼンチンはお手上げの状態となり、IMF(国際通貨基金)に支援を要請した。続いて苦境に立たされたのがトルコ。通貨のリラは年初に比べて23%も下落、過去最安値に沈み込んだ。6月24日には大統領選と国会議員選挙を予定しているが、情勢が好転する見通しはない。

ほかにもブラジル、フィリピン、インドネシア、ロシア、メキシコ、南アフリカ、香港などの通貨が売り込まれている。これらの国や地域に共通しているのは、財政赤字や物価高を伴う国内経済の不振、あるいは政治的な不安定だ。最も国内経済の不振に悩んでいたアルゼンチンは政策金利を年40%にまで引き上げたが、通貨ペソの下落を止めることが出来なかった。いまIMFが支援策を検討している。

トルコも巨額の経常赤字と政治リスクを抱えている。強権政治で知られるエルドアン大統領は非常事態を宣言、選挙を強行することになった。しかし大統領に再選されたとしても明るい展望は見えず、むしろ事態はさらに悪化する可能性も大きいとみられている。こうした状況下で、高金利につられてトルコに投資していた日本のファンドも続々と資金を引き揚げているという。

新興国からの資金流出は、アメリカの長期金利が3%に達した4月下旬から始まった。IIJ(国際金融協会)の集計によると、4月下旬だけで流出額は55億ドルにのぼった。5月に入って、その勢いが加速したことは間違いない。一方、4月下旬から5月中旬までの間に、アメリカをはじめ日本、ドイツ、フランスなどの先進国には、計180億ドルの資金が還流している。

                              (続きは明日)

       ≪30日の日経平均 = 下げ -339.91円≫

       ≪31日の日経平均は? 予想 = 上げ

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