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足繁く通う演奏会の感想等でクラシック音楽を追求/面白すぎる台湾/イタリアやドイツの旅日記/「ドイツ留学相談室」併設

アンドレ・プレヴィン指揮 NHK交響楽団(1998年定期公演Bプロ)

2019年05月19日 | pocknのコンサート感想録(アーカイブ)
プレヴィンが亡くなってから、FMではプレヴィン追悼特集が2週に渡って放送されたり、N響の「フィフハーモニー」4月号に特集が掲載されたり、「レコード芸術」6月号でも特集が組まれるなど、プレヴィンを偲ぶ場面によく出逢う。N響定期が行われたサントリーホールのホワイエには、「ありがとう」のメッセージが入ったプレヴィンの写真パネルが置かれ、プレヴィンの存在の大きさをあらためて感じた。

プレヴィンはN響との共演で数々の名演を聴かせてくれ、その多くが未だに心に強く焼きついている。定期会員とした聴いたBプロ以外の公演もできるだけ聴きに行ったが、1999年の定期公演のあと、目を患ったとのことで長らく来日がなく、もうプレヴィンを聴くことはできないかも、と諦めかけていたところ、2007年にN響に復帰し、再び忘れ得ぬ名演をいくつも届けてくれた。

けれど、最後にN響に登場した2012年の演奏会では衰えも感じ、そのあとはプレヴィンの音楽活動を耳にすることもなくなってしまったことから、プレヴィンは僕の意識から遠ざかっていたのだが、訃報に接したあとは、再びプレヴィンとN響の演奏に魅せられていたことが強く思い出されるようになった。ここで、僕にとって最も大切な指揮者の一人であるアンドレ・プレヴィンに思いを寄せ、このブログを始める前に聴いたN響との一期一会の素晴らしい演奏会を振り返っておきたい。

pocknのコンサート感想録アーカイブス ~ブログ開設以前の心に残った公演~

1998年 5月20日(水)
アンドレ・プレヴィン指揮NHK交響楽団
NHKホール
1. 武満 徹/セレモニアル -An Autumn Ode- (1992) 笙:宮田まゆみ       ☆
2. モーツァルト/シェーナ「どうして、あなたを忘れられましょう」&
                 ロンド「恐るるな、愛する人よ」K.505   ☆
  S:ロバータ・アレキサンダー/Pf:アンドレ・プレヴィン
3.マーラー/交響曲第4番 ト長調 S:ロバータ・アレキサンダー         ㊝

 Cプロに続きプレヴィンの魅力を存分に味わったコンサートだった。 武満の曲は晩年に属するものにしてはメロディック過ぎず、格調高く、笙の響きとあいまって雅びやかな雰囲気を漂わせていた。 武満の曲ではN響はいつもたいへんいい演奏をするが、プレヴィンの指揮で透明度と空気のような無重力感がますます高まった。
モーツァルトではプレヴィンはピアノを担当、とろけるようにオケと融合して慈しみ深い、幸せな気分に浸らせてくれた。 モーツァルトで特に評判というソプラノのアレキサンダーだが歌が重く、レッジェロ感と透明度がもっと欲しい気がした。
マーラーではオケのうまさに舌を巻いた。 普段活躍のクラの横川さんやホルンの松崎さん、オーボエの茂木さんはいなかったように見えたが、それでも全く水準が落ちずN響の層の厚さを証明している。 弦の美しさも並のものではない。プレヴィンのマーラーは、痒いところに手が届くというか、もう少し上品に言えば蝶がストロー(触手?)をスルスルっと伸ばして可憐に咲く花の蜜をおいしそうに吸うような、美しく細かい芸術品を眺めているような気分にしてくれる。 そのたたずまいは常に自然体、この曲でよく聴くような、指揮者が指先を巧みに動かして演奏に化粧を施すようなやり方ではない、楽に呼吸をするような自然体がプレヴィンの一つの持ち味だと感じた。 4楽章のソロも大変歌いやすいようにオケが呼吸していた。 また、4楽章ではオケが歌の影のようにぴったりと寄り添い、しかもその影がただの黒い影ではなくいろいろな淡い色彩を放っていたように聞こえた。 アレキサンダーはモーツァルトのときよりずっといい歌をうたい、豊な表情が音楽に色を添えた。 聴き終わったあと何ともいい満足感に満たされじわじわとトリハダが立った。 オケの演奏での久々の「優」が出た。

1998年にプレヴィンがN響に客演した公演ではCプロのモーツァルト特集も聴いているが、こちらの感想では満足した様子を綴る一方で「あまりに美しすぎて、躍動感に欠ける」とも書いていて、大感激とまではいかなかったようだ。となると、このマーラーが、僕がプレヴィンの指揮で心底感動した最初の演奏会だったということで、まずこの感想を載せることにした。感想を読み返していたら、このときの幸せな気持ちが蘇ってきた。
(2019.5.18)

《ブログ開設前感想アーカイブより》
1999年5月19日(水)サントリーホール
アンドレ・プレヴィン指揮 NHK交響楽団《1999年5月Bプロ》
プレヴィン/「ハニー・アンド・ルー」、ヴォーン・ウィリアムズ/交響曲第5番 他

1999年5月29日(土)NHKホール
アンドレ・プレヴィン指揮 NHK交響楽団《1999年5月Cプロ》
モーツァルト/ディヴェルティメントK.251、ヴァイオリン協奏曲第3番、交響曲第38番「プラハ」

《ブログ感想バックナンバーより》
2007年9月8日(土)NHKホール
アンドレ・プレヴィン指揮(&Pfソロ) NHK交響楽団《2007年9月Aプロ》
モーツァルト/「フィガロの結婚」序曲、ピアノ協奏曲第24番/交響曲第36番「リンツ」

2007年9月14日(金)NHKホール
アンドレ・プレヴィン指揮 NHK交響楽団《2007年9月Cプロ》
ラヴェル/組曲「マ・メール・ロワ」、ピアノ協奏曲、バレエ音楽「ダフニスとクロエ」

2007年9月19日(水)サントリーホール
アンドレ・プレヴィン指揮 NHK交響楽団《2007年9月Bプロ》
武満徹/セレモニアル、コープランド/「アパラチアの春」、ラフマニノフ/交響曲第2番

2009年10月24日(土)NHKホール
アンドレ・プレヴィン指揮 NHK交響楽団《2009年10月Cプロ》
プレヴィン/オウルズ、モーツァルト/ピアノ協奏曲第23番、ショスタコーヴィチ/交響曲第5番

2009年10月28日(水)サントリーホール
アンドレ・プレヴィン指揮 NHK交響楽団《2009年10月Bプロ》
モーツァルト/交響曲第38、39、40番

2010年11月6日(土)NHKホール
アンドレ・プレヴィン指揮 NHK交響楽団《NHK音楽祭 2010》
ブラームス/交響曲 第3、4番

2010年11月13日(土)NHKホール
アンドレ・プレヴィン指揮(&Pfソロ) NHK交響楽団《2010年10月Aプロ》
武満徹/グリーン、ガーシュウィン/ピアノ協奏曲、プロコフィエフ/交響曲第5番

2011年10月27日(木)サントリーホール
アンドレ・プレヴィン指揮 NHK交響楽団《2011年10月Bプロ》
ショスタコーヴィチ/ヴァイオリン協奏曲、モーツァルト/「リンツ」、R.シュトラウス/「ばらの騎士」組曲

2012年9月27日(木)サントリーホール
アンドレ・プレヴィン指揮 NHK交響楽団《2012年9月Bプロ》
モーツァルト/交響曲第1番、第41番「ジュピター」、ハイドン/交響曲第102番
♪ブログ管理人の作曲♪
金子みすゞ作詞「私と小鳥と鈴と」
S:薗田真木子/Pf:梅田朋子
合唱曲「野ばら」(YouTube)
中村雅夫指揮 ベーレンコール
金子みすゞ作詞「さびしいとき」(YouTube)
金子みすゞ作詞「鯨法会」(YouTube)
以上2曲 MS:小泉詠子/Pf:田中梢
「森の詩」~ヴォカリーズ、チェロ、ピアノのためのトリオ~(YouTube)
MS:小泉詠子/Vc:山口徳花/Pf:奥村志緒美

拡散希望記事!やめよう!エスカレーターの片側空け

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