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小澤征爾 指揮 新日本フィル:メシアンの「アッシジの聖フランチェスコ」(1986/聖マリア大聖堂)

2024年02月14日 | pocknのコンサート感想録(アーカイブ)
小澤征爾さんの訃報を機に、このブログを始める前に書いていた小澤征爾指揮の公演の感想から、とりわけ感銘を受けたものの感想をアーカイブで紹介します。

pocknのコンサート感想録アーカイブス ~ブログ開設以前の心に残った公演~

1986年 3月13日(木)
小澤征爾指揮 新日本フィルハーモニー交響楽団/晋友会合唱団
天使:伊藤淑(S)/聖フランシスコ:勝部太(Bar)/癩者:下野昇(T) 他
東京カテドラル聖マリア大聖堂

◎ メシアン/「アッシジの聖フランシスコ」より3景 ☆
  i) 第1幕第3景「癩者への接吻」
 ii) 第3幕第7景「聖痕」
 iii) 第3幕第8景「死と新生」


メシアンの神聖な音楽がカテドラルの大聖堂に響き渡った。メシアンのクリスタルで輝かしい、しかも豊かな残響を必要とする音楽にとって、カテドラルの石造りの聖堂はたいへんふさわしい。小澤の棒は実に明確。妥協のない厳しさと奥深さ、繊細さと大きさ、エネルギー全てを備え、非の打ちどころのない指揮ぶり。さすがは世界のオザワだ。オーケストラも見事に応えていた。パーカッションも素晴らしい。歌手は配役にふさわしい衣装を身に着け、小さな動きも入れ、また照明も多彩に使われ、オペラとしての効果も楽しめた。

聖フランシスコを歌った勝部の堂々とした、それでいて贅肉のない明晰な歌唱は聖者にふさわしいものだった。天使の伊藤淑は、淀みのない清らかな歌声でこれも天使にふさわしかった。癩者を歌った下野昇はたいへん表現力があり、聖フランシスコとのコントラストがよく出ていた。祭壇上の勝部と下野の声が、この教会の音響上の問題だろうが散ってしまってはいたが。

合唱も見事と言っていい。輝かしい力強さこそ足りなかったものの、よく練り上げられ説得力のあるものだった。メシアンの音楽は、先月聴いたトゥランガリラ交響曲とたいへん類似性があり、劇的であり鋭く輝かしい。幕切れの部分のテキストに「・・・この光線は終幕に向かって次第に強くなってゆく。目がくらんで耐えられないほど強くなったところで幕が下りる」という舞台上の指示があるが、音楽もまさにこの記述そのものの光を発した。興奮した聴衆の拍手と歓声はいつまでも続き、作曲者のオリヴィエ・メシアンが小澤と共に祭壇に立ったとき最高潮に達した。私もメシアン大先生に謁見することができて感激だった。


丹下健三が設計した東京カテドラル聖マリア大聖堂は、他の会場では得られないほどの豊かな残響が注目され、この頃は大編成のオーケストラや合唱団の演奏会がよく行われていた。曲目や編成によっては、残響が長過ぎて音が混ざって不明瞭になることもあるが、メシアンのこの宗教作品はここで理想的に響いただけでなく、奇蹟が行われる場としても相応しかったように思う。

38年前に書いた感想を今読み返してみると、突っ込みどころが散見されてお恥ずかしいが、素直に感動したことは伝わっているのではないだろうか。この頃は、メシアンをはじめ、武満、ベリオ、シュトックハウゼン、ジョン・ケージ、クセナキスなど、音楽史に名を刻む大作曲家たちが存命で、来日することも珍しくなかった。メシアンの大作「アッシジの聖フランチェスコ」は小澤の指揮で1983年にパリで初演された。カテドラルでのこの公演は、抜粋ながら日本初演という記念すべき演奏会だったわけで、メシアンがこれに立ち合ったということで更に意味のある演奏会だったと云える。喝采を浴びる小澤とメシアンが、とても神々しく見えたことを覚えている。
(2024.2.14)

巨星・小澤征爾の訃報

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