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11月A定期(プレヴィン指揮)

2010年11月13日 | N響公演の感想(~2016)
11月13日(土)アンドレ・プレヴィン指揮(&Pfソロ)/NHK交響楽団
《2010年10月Aプロ》 NHKホール

【曲目】
1.武満 徹/グリーン
2.ガーシュウィン/ピアノ協奏曲ヘ調
3.プロコフィエフ/交響曲第5番変ロ長調 Op.100

先週、NHK音楽祭でプレヴィン/N響の演奏を聴いた身としては、今夜の演奏会には期待というより、何とかして名演をやらかしてはもらえないものか、と祈るような気持ち。だけど正直そうはならないのでは… という気持ちが強かった。

楽員がステージに集まり、チューニングが始まった。ん!? コンマス席の堀さんの隣、いつもは大宮さんが座るところに、なんとマロさんがいる。これは異例の席次だ。事情はわからないが、コンマス二人並んで臨む演奏会はオケ全体にもたらす空気も確実に変えるはず。祈りが期待に変わった。

最初の武満の「グリーン」、アンサンブルが整っていていい音が聴こえる。ドビュッシーの「牧神の午後への前奏曲」のような調べが聴こえてくるところ、バイオリンのデリケートで透明な音と、ホルンの調べが交ざり、極上の響きに身を委ねようとしたところで、曲は終わってしまった。ちょっとあっけなかったのは残念だが、一曲目は上々の滑り出し。期待は確実に次へと繋がった。

その2曲目のガーシュウィンは期待にたがわぬ素晴らしい演奏だった。全体が軟かなタッチで描かれ、オーケストラの響きはジューシーといえるほど瑞々しい。先週とほぼ同じ3階Rの前方の席だが、オケ全体が散漫に聴こえたブラームスのときとは別物のようにまとまったいい音がする。ブラームスのオーケストレーションが、ガーシュウィンの苦労の末、自力で仕上げたオーケストレーションより問題があるとは考え難い。バイオリンの歌が豊かな表情でオケを先導していくのは、度々堀さんと顔を見合わせながら弾くマロさん効果の現れかも。

久々の弾き振りとなったプレヴィンのビアノは、自家薬寵中の曲といえる、いかにもプレビンならではの魅力に溢れていた。デリケートでウィットに富み、サッとスマートに表情や色合いを変えていく。強い打鍵で圧することはなくても、リズムの切れ味は抜群。それにオケもあうんの呼吸でセッションを展開する。第2楽章のトランペットのブルースも決まってる。オケは大編成だが、プレヴィンとN響による室内楽的な親密さが伝わってくる演奏に心が踊った。さあこうなると、プロコフィエフへの期待は益々増大する。

そしてそのプロコフィエフのシンフォニー、素晴らしかった。瑞々しさ、切れ味の良さは惚れ惚れするほど。そのうえプレヴィンは、短いパッセージでも、もたれることなく心憎いほどに歌を聴かせ、アンサンブルに潤いを与える。さっきのガーシュウィンのセンスがここでも生きている。パーツを組み上げて、微妙なバランスを保つ「危うい大きさ」にも目を見張るものを感じたが、それは、プレヴィンの構築力もあろうが、N響メンバーの力量によるところが大きい。前回の演奏会ではケチをつけてしまった金管や木管が、今夜は見違える出来で(メンバーが同じかまでは定かでないが)、短い打点で決めるべきハーモニーも、息の長い歌も、見事に聴かせてくれた。

鮮やかで、活き活きした、そして充実した展開にわき目も振らずに聴き入り、ワクワクドキドキの連続のうちに早くもフィナーレ。アンサンブルは益々冴え渡り、スピード感を増していく。細かい動きが次々と見事な技を決めながらリズムに乗ってまい進し、スマートさを保ったまま鮮やかに曲を閉じた。いかにもプレヴィンらしい終わり方。最後は魔物に取りつかれたような、威圧的な饗宴を聴かせて欲しいとは思ったが、こんなスマートに演奏しながら、これほどの興奮へと導くことができたのは、プレヴィン/N響が本領を発揮したからに他ならない。プレヴィン健在を示した、素晴らしい演奏会だった。


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4 コメント

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コンマスお二人 (一静庵)
2010-11-14 00:51:17
来年のアメリカ演奏旅行の布陣だからではないでしょうか?
それにしても素晴らしい演奏会でしたね♪
返信する
Re: コンマスお二人 (pockn)
2010-11-15 01:02:34
一静庵さん、情報ありがとうございます。
なるほど、アメリカ演奏旅行の布陣ですか。
マロさんが堀さんの隣りに座る姿は、
マロさんがN響コンマスに就任した頃は時々見かけましたが、
お二人が並ぶとやっぱり圧巻ですね。
そして、N響の音も違ってきます。
アメリカ公演の模様は、是非BSでやってもらいたいです。
返信する
ナイス・プレヴィン (yokochan)
2010-11-17 23:10:47
こんばんは。コメント遅くなってしまいました。
同じ日でしたね。
ブラームスもご一緒だったようで、あちらは印象が別れました。
やはり、プレヴィンには、今回のような演目がお似合いなのでしょうか、ガーシュインのナイスなオーケストラにはN響ということを忘れさせてくれました。
堀さんの指揮も辞さないやる気と、まろ様のアシストぶり。見ていて感動してしまいました。
大好きなプロコフィエフも聴いていてドキドキしましたし、CDにしてもおかしくない完成度の高さに思いました。
CDで聴く比べましたが、N響との実演が一番いいです!
どうもでした!
返信する
Re: ナイス・プレヴィン (pockn)
2010-11-20 01:31:55
yokochanさん、こんばんは。いらっしゃるかな、と3階席を見渡してみたのですが、2階でしたか!

ガーシュインのセンス、プロコフィエフの完成度の高さ、どれもプレヴィンならでは音が聴けて嬉しくなりました。できれば定期を3つとも振ってもらいたかったです。NHK音楽祭はどこかお祭り気分的なところがいかんです… あ、失礼、yokochanさんはこちらも気に入っていたのでした…

また近いうちに語りましょう!
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