![]() 5-109教室前のスピーカー、これオブジェ? | 藝祭2014 2日目 9月6日(土) |
声楽科C年合唱
~第6ホール~
1.武満 徹/混声合唱のための「うた」~
「小さな空」「○と△の歌」「明日ハ晴レカナ曇リカナ」「島へ」
2.モーツァルト/ミサ曲ハ長調「戴冠ミサ」K.317
声楽科1年生恒例のC年合唱。前半はメンバーを半分にしてそれぞれ武満のアカペラ作品を2曲ずつ。
歌科に入って半年足らず、輝かしい美声をベルカントで披露したいところだろうがさすがは芸大生、個よりも和を重んじ、武満作品のデリケートに移ろうハーモニーを、磨かれた声で、温かく柔らかな空気を含ませて丁寧に聴かせてくれた。
後半の「戴冠式ミサ」はオーケストラが入って全員合唱。モーツァルトの若さ溢れる名品を瑞々しい感性で生き生きと歌い上げた。艶のあるキュッと濃縮された声が合わさり、合唱が鮮やかに浮き上がる。ポリフォニックなパッセージでの各パートのしなやかでくっきりとした線も見事。ソリストは楽曲ごとに交替。格調のある音楽の様式を踏まえつつ、「声楽科1年生としては初の舞台」という記念のステージでみんな立派にソロを勤め、華やかな演奏に花を添えた。1年生だけでこれだけのソロを歌える人材を擁しているとなると競争も過酷かも。オケも冴えた息づかいを聴かせて好演だった。
Trombone ensemble concert
東京藝術大学トロンボーン科
~第2ホール~
1.Brian E.Lynn/BACHY THINGS
2.Goff Richards/SUITE for TROMBONES 3・4楽章
3.Vaclav Nelhybel/TOWER MUSIC
アンコール:ボスコロスコ?
トロンボーン奏者8人が揃い、トロンボーンだけの純な響きを聴かせるステージ。こうして一種類の楽器だけのアンサンブルが聴けるのも藝祭の楽しみだ。披露してくれた4曲(アンコールも含め)のうち一番印象に残ったのは、2曲目のトロンボーン組曲。とてもデリケートでふくよかな表情を湛えた最初の楽章が始まったとき、「うん、これはいい感じ!」と、たちまち音楽と演奏に魅了された。次のパンチが効いたパワフルな楽章との対比も面白かった。
トロンボーン8人が勢揃いした「タワーミュージック」は腹の底から震わせる重厚で充実した響きに、これから始まる8人の競演に期待が高まったが、早々と曲が終わってしまった。本気で「これはプロローグ、これからが本番のはず」と思ってしまった。アンコールの一発芸を堂々と演じた1年女子の度胸には「さすがパフォーマー」と感心したが、8人のサウンドをもっと楽しみたかった。それは来年1月18日にリリアでやる定期演奏会のお楽しみってこと?でもこの日はセンター試験業務で行けない。。
g-celt 藝祭LIVE !

ケルト音楽研究部(g-celt)
~第2ホール~
ケルト音楽研究部(g-celt)はケルト民族の音楽やダンスを行う学生サークルで、結成されて9年になるという。華やかなコスチュームを身につけた学生もいて、見渡したところ20人は軽く越えている。日本ではマイナーなジャンルにこれだけの学生が集まり本格的な活動を続けているというのも芸大ならでは。
メンバーは小型のバンドネオンのような楽器や金属製?のリコーダー、ふいごを抱えたリード楽器の音がする笛など、珍しい楽器を手に手に携え、異国情緒溢れる独特な音楽を合奏する。「入り」はクラシックのように一息で合わせるのではなく、打楽器奏者がしばらく拍子を取ってテンポを示し、木枠を叩く音で開始。
音楽にはいくつかのパターンがあって、やろうと思えば延々と続けられそうな感じだが、終わりがなぜかキチンと揃うのは、何かの合図があるのかも。メンバーは屈託ない表情で楽しそうに演奏しているように見えるが、瞳の奥にはキラリと光る真剣さが。合奏にどんどんハマって行ってる感じ。聴いてる方も演奏が続くにつれて引き込まれて行く不思議な感覚。後半はダンスつき。ペアを組んでの輪舞が基調でそれが大きな輪に合わさるとクライマックス。靴音高らかに踏む細かいステップは難しそうだけどやってみたい。気になるのは使われた楽器たち。簡単な解説をしてくれると嬉しい。
奏楽堂オルガンコンサート
オルガン科有志
~奏楽堂~
・クープラン/「修道院のためのミサ曲」~聖体奉挙 テノールの3度管

・ヴィエルヌ/幻想的小曲集~水の精
・レーガー/トッカータ ニ短調Op.59/5
・デュプレ/行列と連祷Op.19-2
・ネルソン/ペブル・ビーチ・サジャーン

オルガン科上級生によるコンサートの後半を聴いた。曲はフランスものが中心。優れた作品は多くても演奏される機会が少ないフランス系のオルガン曲をまとめて聴けるのは貴重(前半のメシアンは聴けなかったが)。
厳格な教会音楽のイメージもあるオルガン曲だが、フランスものはパイプから仄かな香りが立ち上るような優美さがある。フーガのテーマだって微笑を含んでいる。そんなフランスの香り漂うなかで特に繊細で優美だと感じたのは原田真侑さんが演奏したクープランの「聖体奉挙」。息づかいや運指がとりわけ滑らかで、トリルのタイミングなんかも自分の波長にフワリとマッチして心地よかった。最後のネルソンの曲は、金管合奏とパーカッションがつく珍しい編成。金管とオルガンは音色に共通点があるが、そこに種々のパーカッションが入ることで響きにスパイスが加わり快い刺激が生まれる。オルガンと合奏のスピード感溢れるやり取りが高揚感をもたらした快演。オルガンは石川優歌さん。
愛の歌~ブラームスのひととき~
ブラームスを演奏する会
~第2ホール~
1.ブラームス/ハイドンの主題による変奏曲Op.56b
2.ブラームス/ワルツ集「愛の歌」Op.52a
整理券配付開始30分前では遅すぎた。整理券は1時間前に早々と捌けてしまい、1時間半キャンセル待ちで並んでやっとの思いで聴けた。
「ハイドンバリエーション」で大貫瑞季さんと白井聖也さんは、たっぷりと朗々と始まった主題提示で聴き手の心をしっかり捉えた。最初から最後まで捉え続けるのは難しいにしても、全体として深く大きな呼吸で骨格のしっかりしたダイナミックな演奏を繰り広げた。
「愛の歌」では、ピアノ連弾の軽妙なワルツのリズムに乗って、4人の歌い手(根本真澄さん、石田滉さん、金沢青児さん、黒田祐貴さん)が生き生きとした豊かな表情で、あるときは情熱的に、あるときはしおらしく… いろいろな形で愛を叫び、語り、ささやいた。男女の呼びかけ合いも抑揚たっぷりに聴き手に訴えてくる。特に女性二人が積極的。顔の表情もいい。
どこまでやるか、という程度問題はあるが、この歌のテーマでもある「愛」や溢れる幸福感を吐露する言葉"Wonne"などが素っ気なく聴こえる。言葉に更に感情を乗せると言葉の意味が生きてくると思う。とは言え、成熟した大人の感情が伝わる熱い「愛の歌」に共感!
夏だ!藝祭だ!カルミナだ!
F年有志オーケストラ
~奏楽堂~
オルフ/独唱と合唱のための世俗カンタータ「カルミナ・ブラーナ」


4年生の学生オケ(F年オケ)が大作の「カルミナ」に挑んだ。大作ではあるが、熟達した4年生が結集して熱い魂をぶつければいい結果が出そうで期待大。そしてその期待を上回るほどの充実した熱演を実現してくれた。
スゴイと思ったのは集中力と結束力の高さ。それぞれがどんなに頑張っても、それだけでは一つの力として訴えかけることはできない。この演奏ではオケも合唱も、一人一人の熱い思いが一つの束にまとまり、人数以上に濃厚かつ強烈なパワーで迫ってきた。そして全曲を通して、この作品から感じたいメラメラと萌え出る生命力が伝わってきたこともインパクトを高めた。静かなところでも人間の「生き物」としての体温や体臭までもが、演奏から沸き上がってくるようで、性と生命を謳歌する「カルミナ」の核心に迫ることに成功した。ここまでオケと合唱を束ねて導いた指揮の石坂幸治さんの力も注目に値する。
4人のソリスト達の活躍もこの演奏に大貢献。とりわけ素晴らしいと思ったのはソプラノの中山美紀さん。妖艶さも感じるとびきりの美声と深く長い呼吸で描く、滑らかな表情の歌に聴き惚れた。ついさっきブラームスで「健全な」愛の歌を歌っていた金沢青児さんが、ここでは別人のように赤裸々に熱唱している姿にも打たれた。こうしたメンバー一人一人の本気で献身的なアプローチが、プロのオケの定期でもなかなか聴けない素晴らしい演奏を実現したのだろう。
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