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ペーター・レーゼル&紀尾井シンフォニエッタ東京

2014年11月14日 | pocknのコンサート感想録2014
11月14日(金)オラフ・ヘンツォルト指揮 紀尾井シンフォニエッタ東京
二十年の恵み … 名作の心髄 ~第97回定期演奏会~
紀尾井ホール


【曲目】
1.ブラームス/ハイドンの主題による変奏曲 Op.56a
2.ブラームス/セレナード 第2番イ長調 Op.16
3.ブラームス/ピアノ協奏曲第1番ニ短調 Op.15
【アンコール】
モーツァルト/ピアノ協奏曲第27番変ロ長調~第2楽章

Pf:ペーター・レーゼル

ペーター・レーゼル、先週のリサイタルに続いて、今夜は紀尾井シンフォニエッタとの共演でブラームスの第1コンチェルトを聴いた。指揮のヘンツォルトはレーゼルと同じ旧東独出身。

前半はヘンツォルトと紀尾井シンフォニエッタによるブラームスの管弦楽曲が2つ。ハイドンバリエーションでは、緩やかなパッセージでのしっとりとした歌いかけに味わいを感じた。次のセレナーデでは屈託のないディヴェルティメント的な楽しさにワクワクし、聴かせどころのフレーズでの歌心に聴き入った。木管の名手たちによる表情豊かな歌いかけにヴァイオリンの席に座ったヴィオラパートがちょっぴり見栄を張って味わい深く呼応し、チェロやコントラバスも、自分の持ち味をたっぷりと聴かせた。

後半はお待ちかねのコンチェルト。若いブラームスのエネルギーみなぎる大曲を、レーゼルは泰然自若に全体を見渡しつつポイントをかっちりと押さえ、筋の通ったしなやかでダイナミックなアプローチで築いた。磨かれ、研ぎ澄まされたレーゼルの鋭い感性の冴えが随所で光る。ヘンツォルト指揮の紀尾井シンフォニエッタは骨太な枠組みにすっきりと明快な細部を組み込み、エネルギッシュに進んで行く。

ただ、ピアノとオーケストラがお互いに呼吸を合わせることに力みが感じられ、そのために両者がせめぎ合うことで生み出される推進力が削がれてしまうと感じることがあった。そのせいか、或いは風邪で頭がポーッとしていたせいか、聴いていて集中力が途切れることがあり、終楽章の終盤、どんどん盛り上がって行くところでも「いいぞ!」と思いながら完全には感動し切れていない自分がいた。

それでも「良かった!」と精いっぱいの拍手を送っていたら、オケがアンコールの準備を始めた。「オケ付きでアンコール?何やるんだろう、モーツァルト!?」という期待に演奏してくれたのは、僕がこの世で最もホレているモーツァルトの27番のコンチェルト!これが極上の演奏。レーゼルが鳴らす全ての音が自分の心の琴線と完全に共鳴し、音楽と自分が同化してしまったような稀有の感覚!なんてピュアで、なんて気高いピアノ!こんなに少ない音でモーツァルトは宇宙を表現したということを、レーゼルは殊更に飾り立てることなく、澄み切った調べで真っ直ぐに伝えてくれた。これに味付けするオケがまた素晴らしい。まるで全てを優しく包み込む包容力を持った人の呼吸のよう。風邪で体調がすぐれないことなんて吹っ飛んでしまい、いつまでも終わって欲しくない至福の時間を味わった。

プログラムには、レーゼルの紀尾井ホールでのシリーズが「この公演で(ひとまず)大団円を迎える」と書いてあった。でも「ひとまず」がカッコ書きで添えられているから、きっと新たなシリーズが計画されていると信じたい。そして、その新シリーズでは、何が何でもモーツァルトのコンチェルトをやってもらいたい!と、このアンコールを体験して強く強く念じた。

ペーター・レーゼル ピアノリサイタル「ドイツ・ロマン派 ピアノ音楽の諸相」2014.11.8 紀尾井ホール

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