facciamo la musica! & Studium in Deutschland

足繁く通う演奏会の感想等でクラシック音楽を追求/面白すぎる台湾/イタリアやドイツの旅日記/「ドイツ留学相談室」併設

パーヴォ・ヤルヴィ指揮ドイツ・カンマー・フィル/ブラームス・シンフォニック・クロノロジー

2014年12月11日 | pocknのコンサート感想録2014
12月11日(木)パーヴォ・ヤルヴィ指揮 ドイツ・カンマー・フィルハーモニー管弦楽団
東京オペラシティコンサートホールタケミツメモリアル


【曲目】
1.ブラームス/ハイドンの主題による変奏曲 Op.56a
2• ブラームス/ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 Op.77  
 【アンコール】
 バッハ/無伴奏ヴァイオリンソナタ 第3番ハ長調~「ラルゴ」
Vn:クリスティアン・テツラフ
3. ブラームス/交響曲第2番 ニ長調 Op.73  
【アンコール】
1. ブラームス/ハンガリー舞曲 第3番
2. ブラームス/ハンガリー舞曲 第5番


パーヴォ・ヤルヴィ指揮ドイツカンマーフィルを聴くのは2007年以来2度目。前回の印象はあまり強くはないが、その後益々高い評価を得ているし、来年からN響の首席指揮者にも就任するし、大好きなブラームスだし、いろいろな意味で聴いてみたかった。会場の東京オペラシティコンサートホールは3階まで超満員。よくここまで埋まったものだ。

オールブラームスプロの最初は「ハイドンバリエーション」。これにはもう出だしから魅了された。オーボエをはじめ木管楽器たちの何とも優美で生き生きとした舞踊。デリケートに囁きかけてくるリピートの表情も絶品。この曲は、中弛みしてしまう演奏が多いが、今夜の演奏はそれが全くない。どの変奏でも親密に語りかけてきて、淀みがなく、ムーヴマンを失わない。フィナーレの低音で繰り返されるパッサカリアの定旋律の躍動感、それに乗って繰り広げられる賑々しい音の饗宴も明晰で、それらが頂点に向かって集結していく様子が、臨場感を伴って迫ってきた。

ヴァイオリンコンチェルトのソリストを務めたテツラフは、9月に聴いたカルテットで純度の高い能動的な演奏に感銘を受けたが、コンチェルトではその個性が更に花開いた。テツラフの大きな持ち味は、カルテットでも聴かせた能動性。オーケストラとアグレッシブなバトルを繰り広げた。前へ進む力だけでなく、垂直方向への掘り下げるエネルギーも強い。アグレッシブではあっても荒っぽくならず、凝縮されて磨かれた美しい音を聴かせる。

弱音の魅力もテツラフの特徴だ。テツラフが奏でる弱音は、極細の筆でスラスラと書かれる小さく美しい文字を見るよう。音量は小さくても魅力がますます引き立ち、そこに静寂感が漂う。そうした硬軟織り交ぜた振幅の大きな演奏でグイグイとドライブして行く。肉体美がはじけるエネルギッシュなブラームス。アンコールで演奏してくれたバッハの温かく静寂な世界にもじーんと来た。

最後は第2シンフォニー。それまでの演奏から、これもエネルギッシュな清々しい演奏になると思ったが、それだけでは終わらない深い精神性を感じさせる演奏だった。配られた舩木篤也氏によるプログラムノートで、ブラームスがこの作品について「耐えがたいほどメランコリック」と形容した言葉を紹介しつつ、単に明るく牧歌的なだけでない曲の面について記していたが、今夜の演奏では、全体はエネルギーに満ちていながら、その陰から時おり深刻で鬱屈した表情を覗かせた。

例えば第1楽章の第2主題のメランコリックなフレーズが、ロマンチックに朗々と歌いかけるのではなく、途切れそうな息遣いで切々と訴えてくる痛々しさ。そんな「痛み」が曲のあちこちに潜んでいることを感じさせた。弱音での美しい表情も絶品で、日陰にひっそりと咲く小さいけれど美しい白い花のよう。

一方で、強烈な推進力で突き進むフィナーレの終盤は実に輝かしかったが、そこでこちらをじっと見据えている瞳の奥に「私をまっすぐ見て!」と訴えてくる声を聞く思いがした。ブラ2からこんな印象を受けたのは初めて。研ぎ澄まされ、深く掘り下げられ、そしてエネルギーに溢れながら、そこに影が落ちた演奏に心から感銘を覚えた。

2曲のアンコールでは、そんなシビアなものを払いのける陽気で熱い演奏を聴かせた。聴衆の熱い拍手はオケの楽員が退場したあとも続き、1回だけではあったがヤルヴィがステージに呼び戻される「一般参賀」が起きた。

拡散希望記事!STOP!エスカレーターの片側空け

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 2014年11月B定期(サンティ指... | トップ | フォーレ四重奏団 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

pocknのコンサート感想録2014」カテゴリの最新記事