6月11日(木)小菅 優プロデュース
武満 徹「愛・希望・祈り」~戦争の歴史を振り返って~ Ⅰ
~サントリーホール チェンバーミュージック・ガーデン 2021~
サントリーホール(小)ブルーローズ
【曲目】
1.武満徹/「2つのメロディ」より 第1曲「アンダンテ」
2.武満徹/カトレーンⅡ
3.メシアン/世の終わりのための四重奏曲
【演奏】
Pf:小菅優/Vn:金川真弓/Vc:ベネディクト・クレックナー/Cl:吉田誠
サントリーホール主催で毎年6月に行われる室内楽の祭典「チェンバーミュージック・ガーデン」。去年は中止になってしまったが、今年は一部外来演奏家による公演を除いて予定通り始まった。5公演分を予約したうちの(このうち1公演は中止)今夜は初日。目玉のメシアンに武満も加わった魅力的なプログラム。
最初のピアノ曲は、武満が17歳の時の発掘ものとのこと。すでに武満らしい穏やかに香るハーモニーと永続性が感じられる一方で、武満が避けていた日本的なメロディーが聴こえた。小菅は温かな詩情でじんわりとこの曲を聴かせたあと、すでにスタンバっていた3人のプレイヤーが加わり、カトレーンⅡが始まった。これは、後半のメシアンの作品に触発された武満が、同じ楽器編成で書いた曲だ。
金川とクレックナーの織り成す弦のハーモニクスは、薄明のなかで光る琥珀が極薄の層で削り取られて浮遊するようなイメージ。そのなかで浮かび上がる歌も美しい… けれど、聴いていて集中力を持続させるのが難しく、これといった掴みどころは感じられず仕舞いだった。事前にもっと聴きこんでおいた方がよかったかも。
これに対し、後半のメシアンは明快なメッセージを持つ音楽で、聴き手の心をぐいぐいと掴んできた。この曲は、捕虜収容所という特異な環境のなかで生まれたことを抜きに聴くことはできない。今夜の演奏からは、メシアンが極限の捕虜生活(実際はどうであれ)のなかで研ぎ澄まされた感覚、高めた信仰心、強めた他者(演奏家たち)との絆から生まれた音楽であることを、様々なシーンから感ぜずにはいられなかった。緊迫感と集中力が演奏全体を貫いていた。
なかでも鮮烈だったのは、吉田のソロによる第3曲「鳥たちの深淵」。無の世界からピアノ(p)が何個並んでいるかと思う微弱音が生まれ、滑らかなグラデーションを辿りながら、最後は堰を切ったような怒濤の強音へと至る驚異的な表現力で、まさに深淵の世界を描き切ったと云える。これがどんなに名曲でも、このような演奏があってこそ真価がわかる。
終曲「イエスの不滅性への賛歌」での金川のヴァイオリンも強いインパクトで迫ってきた。第1曲では1本の絹の糸のようなデリケートな音と表情を聴かせたヴァイオリンが、ここではチェロを思わせる太くて包容力のある歌を聴かせた。それが徐々に高揚していく様子からは、神が昇天していくような神々しさや、とてつもないエネルギーが伝わってきた。金川は当初出演予定だったシトコヴェツキーの代役だが、以前シトコヴェツキーを聴いた印象があまり残っておらず、金川の演奏でこれを聴けたのは良かった。
ピアノパートはあまり目立たないが、小菅のピアノは弾力性と温もりのある人間的な存在感を示していた。クレックナーのチェロは悪くはなかったが、もう少しアグレッシブに迫ってきて欲しかった。日本人プレイヤーの存在感が光った。長い静寂のあと、盛大な拍手が続いた。
ミロ・クァルテット(チェンバーミュージック・ガーデン2013)2013.6.11 ブルーローズ
堤剛 & 小菅優 デュオリサイタル 2021.3.11 東京文化会館小ホール
小菅 優 ピアノリサイタル Four Elements Vol.4 Earth 2020.11.27 東京オペラシティ
小菅 優 ピアノリサイタル Four Elements Vol.3 Wind 2019.11.29 東京オペラシティ
#文化芸術は生きるために必要だ
コンサートを中止にしないで!
コロナ禍で演奏会の中止が続く欧米、やっている日本
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2.武満徹/カトレーンⅡ
3.メシアン/世の終わりのための四重奏曲
【演奏】
Pf:小菅優/Vn:金川真弓/Vc:ベネディクト・クレックナー/Cl:吉田誠
サントリーホール主催で毎年6月に行われる室内楽の祭典「チェンバーミュージック・ガーデン」。去年は中止になってしまったが、今年は一部外来演奏家による公演を除いて予定通り始まった。5公演分を予約したうちの(このうち1公演は中止)今夜は初日。目玉のメシアンに武満も加わった魅力的なプログラム。
最初のピアノ曲は、武満が17歳の時の発掘ものとのこと。すでに武満らしい穏やかに香るハーモニーと永続性が感じられる一方で、武満が避けていた日本的なメロディーが聴こえた。小菅は温かな詩情でじんわりとこの曲を聴かせたあと、すでにスタンバっていた3人のプレイヤーが加わり、カトレーンⅡが始まった。これは、後半のメシアンの作品に触発された武満が、同じ楽器編成で書いた曲だ。
金川とクレックナーの織り成す弦のハーモニクスは、薄明のなかで光る琥珀が極薄の層で削り取られて浮遊するようなイメージ。そのなかで浮かび上がる歌も美しい… けれど、聴いていて集中力を持続させるのが難しく、これといった掴みどころは感じられず仕舞いだった。事前にもっと聴きこんでおいた方がよかったかも。
これに対し、後半のメシアンは明快なメッセージを持つ音楽で、聴き手の心をぐいぐいと掴んできた。この曲は、捕虜収容所という特異な環境のなかで生まれたことを抜きに聴くことはできない。今夜の演奏からは、メシアンが極限の捕虜生活(実際はどうであれ)のなかで研ぎ澄まされた感覚、高めた信仰心、強めた他者(演奏家たち)との絆から生まれた音楽であることを、様々なシーンから感ぜずにはいられなかった。緊迫感と集中力が演奏全体を貫いていた。
なかでも鮮烈だったのは、吉田のソロによる第3曲「鳥たちの深淵」。無の世界からピアノ(p)が何個並んでいるかと思う微弱音が生まれ、滑らかなグラデーションを辿りながら、最後は堰を切ったような怒濤の強音へと至る驚異的な表現力で、まさに深淵の世界を描き切ったと云える。これがどんなに名曲でも、このような演奏があってこそ真価がわかる。
終曲「イエスの不滅性への賛歌」での金川のヴァイオリンも強いインパクトで迫ってきた。第1曲では1本の絹の糸のようなデリケートな音と表情を聴かせたヴァイオリンが、ここではチェロを思わせる太くて包容力のある歌を聴かせた。それが徐々に高揚していく様子からは、神が昇天していくような神々しさや、とてつもないエネルギーが伝わってきた。金川は当初出演予定だったシトコヴェツキーの代役だが、以前シトコヴェツキーを聴いた印象があまり残っておらず、金川の演奏でこれを聴けたのは良かった。
ピアノパートはあまり目立たないが、小菅のピアノは弾力性と温もりのある人間的な存在感を示していた。クレックナーのチェロは悪くはなかったが、もう少しアグレッシブに迫ってきて欲しかった。日本人プレイヤーの存在感が光った。長い静寂のあと、盛大な拍手が続いた。
ミロ・クァルテット(チェンバーミュージック・ガーデン2013)2013.6.11 ブルーローズ
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小菅 優 ピアノリサイタル Four Elements Vol.3 Wind 2019.11.29 東京オペラシティ
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