4 :名無しさん@12周年:2012/01/01(日) 18:51:45.63 ID:1hG7/TS80 [5497ポイント]
がんばれ餅の仲間達
【磯部餅】
老人撲滅のエースオブエース。
焼いて醤油につけて海苔を巻くだけという精錬された調理法で
初心者から玄人まで幅広いユーザをつかんでいる
【雑煮】
正月に現れる最強の暗殺者
つゆと共にするりと喉元へ忍び込み、老人の息の根を止める
【ぜんざい】
甘さの裏に隠れてた静かな伏兵
思いがけない熱で舌を痛めつける荒業も
【きなこもち】
老若男女の人気を活かし、物量作戦を挑む鉄砲玉
成功率は低くとも、消した老人の数は数知れず
むやみに突撃するのはゴリ押し。勝算ある突撃は集中攻撃だ
【あんころもち】
子供や老人に人気がある、ターゲット層を狙った策略家
あんこに身を包み自身の大きさを隠して特攻する
特大の餅でバカどもを首相官邸ごと包み込んで焼き殺してやったら世の中すっきりすると思う今日この頃。
まあ、その後始末するのはいろんな意味で大変だが。
がんばれ餅の仲間達
【磯部餅】
老人撲滅のエースオブエース。
焼いて醤油につけて海苔を巻くだけという精錬された調理法で
初心者から玄人まで幅広いユーザをつかんでいる
【雑煮】
正月に現れる最強の暗殺者
つゆと共にするりと喉元へ忍び込み、老人の息の根を止める
【ぜんざい】
甘さの裏に隠れてた静かな伏兵
思いがけない熱で舌を痛めつける荒業も
【きなこもち】
老若男女の人気を活かし、物量作戦を挑む鉄砲玉
成功率は低くとも、消した老人の数は数知れず
むやみに突撃するのはゴリ押し。勝算ある突撃は集中攻撃だ
【あんころもち】
子供や老人に人気がある、ターゲット層を狙った策略家
あんこに身を包み自身の大きさを隠して特攻する
特大の餅でバカどもを首相官邸ごと包み込んで焼き殺してやったら世の中すっきりすると思う今日この頃。
まあ、その後始末するのはいろんな意味で大変だが。
日韓新時代共同研究プロジェクト
日韓メンバー名簿
1. 日本側メンバー(13名)
分 科 氏 名 所 属
委員長 小此木政夫 慶應義塾大学法学部 教授
幹事 西野純也 慶應義塾大学法学部 准教授
日韓関係 添谷芳秀 慶應義塾大学法学部 教授
日韓関係 平岩俊司 関西学院大学国際学部 教授
日韓関係 小針進 静岡県立大学国際関係学部 教授
国際政治 中西寛 京都大学大学院法学研究科 教授
国際政治 田中明彦 東京大学大学院情報学環 教授
国際政治 村田晃嗣 同志社大学大学院法学研究科 教授
国際政治 田所昌幸 慶應義塾大学法学部 教授
国際経済 深川由起子 早稲田大学政治経済学術院 教授
国際経済 小川英治 一橋大学大学院商学研究科 教授
国際経済 木村福成 慶應義塾大学経済学部 教授
国際経済 澤田康幸 東京大学大学院経済学研究科 准教授
32
2. 韓国側メンバー(13名)
分 科 氏 名 所 属
委員長 河英善 ソウル大学校外交学科 教授
幹事 李元徳 国民大学校国際学部 教授
日韓関係 金浩燮 中央大学校国際関係学科 教授
日韓関係 朴榮濬 国防大学校安保大学院 副教授
日韓関係 朴熙 ソウル大学校国際大学院 副教授
国際政治 李淑鍾 成均館大学校国政管理大学院行政学科 教授
国際政治 文興鎬 漢陽大学校国際学大学院中国学科 教授
国際政治 尹徳敏 外交安保研究院 教授
国際政治 全在晟 ソウル大学校外交学科 副教授
国際経済 鄭永祿 ソウル大学校国際大学院 教授
国際経済 金良姫 対外経済政策研究院 研究委員
国際経済 金基石 江原大学校政治外交学科 教授
国際経済 孫洌 延世大学校国際大学院 教授
日韓メンバー名簿
1. 日本側メンバー(13名)
分 科 氏 名 所 属
委員長 小此木政夫 慶應義塾大学法学部 教授
幹事 西野純也 慶應義塾大学法学部 准教授
日韓関係 添谷芳秀 慶應義塾大学法学部 教授
日韓関係 平岩俊司 関西学院大学国際学部 教授
日韓関係 小針進 静岡県立大学国際関係学部 教授
国際政治 中西寛 京都大学大学院法学研究科 教授
国際政治 田中明彦 東京大学大学院情報学環 教授
国際政治 村田晃嗣 同志社大学大学院法学研究科 教授
国際政治 田所昌幸 慶應義塾大学法学部 教授
国際経済 深川由起子 早稲田大学政治経済学術院 教授
国際経済 小川英治 一橋大学大学院商学研究科 教授
国際経済 木村福成 慶應義塾大学経済学部 教授
国際経済 澤田康幸 東京大学大学院経済学研究科 准教授
32
2. 韓国側メンバー(13名)
分 科 氏 名 所 属
委員長 河英善 ソウル大学校外交学科 教授
幹事 李元徳 国民大学校国際学部 教授
日韓関係 金浩燮 中央大学校国際関係学科 教授
日韓関係 朴榮濬 国防大学校安保大学院 副教授
日韓関係 朴熙 ソウル大学校国際大学院 副教授
国際政治 李淑鍾 成均館大学校国政管理大学院行政学科 教授
国際政治 文興鎬 漢陽大学校国際学大学院中国学科 教授
国際政治 尹徳敏 外交安保研究院 教授
国際政治 全在晟 ソウル大学校外交学科 副教授
国際経済 鄭永祿 ソウル大学校国際大学院 教授
国際経済 金良姫 対外経済政策研究院 研究委員
国際経済 金基石 江原大学校政治外交学科 教授
国際経済 孫洌 延世大学校国際大学院 教授
を展開し、これを持続的に研究することで環境の整備を進める必要がある。
5.情報通信分野の協力
日韓両国は、情報通信分野の協力を強化し、産業技術競争力を高めながら、東アジア共
生ネットワークの構築に貢献することができる。情報通信技術の標準化は、国家間協力が
必要な代表的ケースである。日本は優秀な技術力を保有しているにもかかわらず、世界標
準の掌握に失敗した過去を教訓として積極的に標準競争に乗り出している。韓国も自国で
開発した技術を地域あるいは世界標準にするため絶え間ない努力をしている。これに加え
て中国の台頭も著しい。中国は2000年代初めから技術標準の重要性を認識し、独自の技術
開発で、それまで世界の標準化体制を支配してきた米国、欧州連合(EU)、日本と直接
対決を行う過程にある。
このように日韓中三国は、自国の技術を世界標準にすべく互いに競争しているが、競合
すればするほど、域外勢力が世界標準となる可能性が高まっていく。このため、三国間協
力による地域標準の確保は、三国すべてに利益となると同時に、地域の公共財を提供する
意味を持っている。
これまで日韓両国および日韓中三国の間では、情報通信一般および標準部門で多様な協
力活動が行われてきたが実質的な成果は少ない。日韓両国はまず、次世代情報通信技術の
共同開発および国際標準化協力のための協議体を設置して、4世代(LTE: long term evolution
等)国際モバイル通信分野やインターネットを超えた次世代分野で協力を推し進め、さら
にスマートグリッドのような代表的複合技術・事業の標準化のために協力を強化する必要
がある。
こういった努力は、日韓が中国を参加させる方向で達成されるべきである。中国と協力
して地域標準技術開発に取り組み、これを土台として地域および世界市場の確保に乗り出
すことができる。
6.開発援助のための日韓協調
日本と韓国は、類似した経済発展のパターン、急速な工業化、産業政策など政府・制度
の役割を重視してきたという経験を共有している。さらに被援助国としての成功体験も共
通して持っており、これを生かしたユニークな援助供与国として活動するという点でも共
29
通点がある。日本はすでに開発協力支援および国際貢献先進国として多くの国際的貢献を
してきた一方、韓国は2010年のDAC加入を契機に開発途上国に対する開発協力をさらに
進めようと努力している。日本が先進供与国ならば韓国は後発供与国である。日韓両国は、
互いの強みを認識して両者の適切な役割分担の公共モデルを探りつつ国際開発協力に貢献
すべきである。
このためにはまず、第一に、日韓とも支援において技術協力・無償援助・有償援助の三
スキームが効果的に連携し、補完性と相乗効果を持つように援助を再設計するべきである。
例えば、中小企業成長の経験や産業振興政策、農業発展の経験を、被援助国への技術協力
や、借款を通じたインフラ支援、中小企業へのマイクロファイナンスなどに生すことがで
きよう。また、日韓における教育・公衆衛生改善の経験は、学校運営や職場環境改善など
のソフトウェアと、建物の補修・建設への借款を通じたハードウェアの両面で生かせる。
防災面でも防災投資や、人材育成、無償援助による緊急支援などが可能である。
第二に、「グリーン協力」たる、気候変動対策については、より「適応策(アダプテー
ション)への投資」に注目した連携が望まれる。気温上昇は、アフリカなど途上国を直撃
し、熱帯病の蔓延、旱魃や気温上昇による作物収量減少、水没した地域での難民の続出と
いったリスクの問題を生み出す。こうした問題に対して援助は防災インフラや、旱魃抵抗
性や高温抵抗性のある作物品種の開発等、重要な「適応策への投資」の基礎を形成できる。
第三に、資源関連での共同援助も考えられる。資源投資は民間主導だが、労働者の健康
改善や教育支援、さらに周辺コミュニティ開発などにも幅広くつながる。三スキームが連
携した開発援助は、こうした民間主導の経済関係を補強する役割を担うべきである。また、
いわゆるBOPビジネス(Base of the Economic Pyramid、年収3,000ドル以下低所得層対象ビ
ジネス)のためのインフラ整備分野でも日韓両国は協力し、DACの綱領に忠実に沿った
民間支援を行うことも可能である。
第四に、同じ開発思想を共有する日韓両国は協力して、国連改革・国際金融機関(MD
Bs)の制度改革、OECDの開発援助委員会(DAC)の場における東アジア的開発思
想の浸透など、国際開発の制度改革・設計に積極的に関与し、協力して政策研究を積極的
にサポートし、グローバルな場で東アジア的な開発経験を積極的に発信できる。
第五に、韓国と日本は援助の分散度が高いので、集中度を高めてより効果的な援助体制
を構築すべきである。特に、韓国と日本が共に主要供与国となる受恵国では、協調体制を
整え、比較優位の原則にのっとって事業を分業化することで援助供与の効果を高め、共同
でモニタリングを行うことにより行政コストを減らすことができる。
30
最後に、日韓両国は、北朝鮮の体制変化にともなう支援体系の共助に備える必要がある。
北朝鮮支援という文脈についても三スキームの一体化によって協調融資や官民協力(PP
P)などこの援助のモダリティを共通化し、日韓間で人的ネットワークを形成するなど緊
密な協力体制を構築する必要がある。
7.環境事業の機会拡大
日本と韓国は、中国と共に北東アジアの大気、海洋、自然環境を共有する「環境共同体」
である。1999年からは日韓中環境大臣会合が毎年開催され、2009年には日韓中サミットで
「持続可能な開発に関する共同声明」が発表され、10分野(環境教育、気候変動、生物多
様性、黄砂、汚染管理、循環型社会(3R)、電気電子機器廃棄物の越境、化学物資の管
理、環境ガバナンス、環境産業と技術)について行動計画がまとめられて情報収集や研究
から一歩踏み出した。
ただし、世界金融危機後、先進国はほぼ一斉に環境重視の成長戦略を明らかにし、アジ
アにも影響が出てきている。国連環境改革(UNEP)は2009年には1.37兆ドルの環境製
品、サービスの市場規模が、2020年までには2.74兆ドルまで増大するとしている。環境ビ
ジネスは省エネルギー型家電や次世代自動車、住宅などの消費需要、森林・土壌・水環境保
全や都市交通などの社会資本整備、排出権取引・電力買取り、循環産業などの投資、低炭
素関連技術開発など、極めて幅の広い複合産業である。消費財では既にグローバルな日韓
間の競合が始まっているが、投資事業やシステム・ビジネス全体では日本が国内市場中心に
先行している。今後は地理的に近く、自然環境や都市基盤が似た日韓の統合市場が成長す
る中に大きな潜在性が存在しよう。都市化率が高く、集合住宅が主流で、高水準のIT基
盤と国民背番号制度、中央集権的な社会組織を持つ韓国は一部の環境ビジネスに必要な可
視化、標準化が比較的進み易い条件が揃う。日韓市場の中では集権性と分権性、実験と市
場化を組み合わせた、補完的発展の可能性があるといえるだろう。
環境ビジネスの多くは規制や基準認定、或いは補助の双方で政府の関与が大きく、民間
主導分野とは性格の異なる面もある。環境基準と規制緩和で足並みを揃えると同時に、経
済連携の中で相互基準認証や、グリーン会計などに関わる専門家の資格共通化、ベンチャ
ー企業の知的財産権保護や投資支援整備、環境教育の交流等を進めることは民間企業の投
資環境を整え、潜在的事業機会を拡大し、雇用にも資するところ大と考えられる。
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5.情報通信分野の協力
日韓両国は、情報通信分野の協力を強化し、産業技術競争力を高めながら、東アジア共
生ネットワークの構築に貢献することができる。情報通信技術の標準化は、国家間協力が
必要な代表的ケースである。日本は優秀な技術力を保有しているにもかかわらず、世界標
準の掌握に失敗した過去を教訓として積極的に標準競争に乗り出している。韓国も自国で
開発した技術を地域あるいは世界標準にするため絶え間ない努力をしている。これに加え
て中国の台頭も著しい。中国は2000年代初めから技術標準の重要性を認識し、独自の技術
開発で、それまで世界の標準化体制を支配してきた米国、欧州連合(EU)、日本と直接
対決を行う過程にある。
このように日韓中三国は、自国の技術を世界標準にすべく互いに競争しているが、競合
すればするほど、域外勢力が世界標準となる可能性が高まっていく。このため、三国間協
力による地域標準の確保は、三国すべてに利益となると同時に、地域の公共財を提供する
意味を持っている。
これまで日韓両国および日韓中三国の間では、情報通信一般および標準部門で多様な協
力活動が行われてきたが実質的な成果は少ない。日韓両国はまず、次世代情報通信技術の
共同開発および国際標準化協力のための協議体を設置して、4世代(LTE: long term evolution
等)国際モバイル通信分野やインターネットを超えた次世代分野で協力を推し進め、さら
にスマートグリッドのような代表的複合技術・事業の標準化のために協力を強化する必要
がある。
こういった努力は、日韓が中国を参加させる方向で達成されるべきである。中国と協力
して地域標準技術開発に取り組み、これを土台として地域および世界市場の確保に乗り出
すことができる。
6.開発援助のための日韓協調
日本と韓国は、類似した経済発展のパターン、急速な工業化、産業政策など政府・制度
の役割を重視してきたという経験を共有している。さらに被援助国としての成功体験も共
通して持っており、これを生かしたユニークな援助供与国として活動するという点でも共
29
通点がある。日本はすでに開発協力支援および国際貢献先進国として多くの国際的貢献を
してきた一方、韓国は2010年のDAC加入を契機に開発途上国に対する開発協力をさらに
進めようと努力している。日本が先進供与国ならば韓国は後発供与国である。日韓両国は、
互いの強みを認識して両者の適切な役割分担の公共モデルを探りつつ国際開発協力に貢献
すべきである。
このためにはまず、第一に、日韓とも支援において技術協力・無償援助・有償援助の三
スキームが効果的に連携し、補完性と相乗効果を持つように援助を再設計するべきである。
例えば、中小企業成長の経験や産業振興政策、農業発展の経験を、被援助国への技術協力
や、借款を通じたインフラ支援、中小企業へのマイクロファイナンスなどに生すことがで
きよう。また、日韓における教育・公衆衛生改善の経験は、学校運営や職場環境改善など
のソフトウェアと、建物の補修・建設への借款を通じたハードウェアの両面で生かせる。
防災面でも防災投資や、人材育成、無償援助による緊急支援などが可能である。
第二に、「グリーン協力」たる、気候変動対策については、より「適応策(アダプテー
ション)への投資」に注目した連携が望まれる。気温上昇は、アフリカなど途上国を直撃
し、熱帯病の蔓延、旱魃や気温上昇による作物収量減少、水没した地域での難民の続出と
いったリスクの問題を生み出す。こうした問題に対して援助は防災インフラや、旱魃抵抗
性や高温抵抗性のある作物品種の開発等、重要な「適応策への投資」の基礎を形成できる。
第三に、資源関連での共同援助も考えられる。資源投資は民間主導だが、労働者の健康
改善や教育支援、さらに周辺コミュニティ開発などにも幅広くつながる。三スキームが連
携した開発援助は、こうした民間主導の経済関係を補強する役割を担うべきである。また、
いわゆるBOPビジネス(Base of the Economic Pyramid、年収3,000ドル以下低所得層対象ビ
ジネス)のためのインフラ整備分野でも日韓両国は協力し、DACの綱領に忠実に沿った
民間支援を行うことも可能である。
第四に、同じ開発思想を共有する日韓両国は協力して、国連改革・国際金融機関(MD
Bs)の制度改革、OECDの開発援助委員会(DAC)の場における東アジア的開発思
想の浸透など、国際開発の制度改革・設計に積極的に関与し、協力して政策研究を積極的
にサポートし、グローバルな場で東アジア的な開発経験を積極的に発信できる。
第五に、韓国と日本は援助の分散度が高いので、集中度を高めてより効果的な援助体制
を構築すべきである。特に、韓国と日本が共に主要供与国となる受恵国では、協調体制を
整え、比較優位の原則にのっとって事業を分業化することで援助供与の効果を高め、共同
でモニタリングを行うことにより行政コストを減らすことができる。
30
最後に、日韓両国は、北朝鮮の体制変化にともなう支援体系の共助に備える必要がある。
北朝鮮支援という文脈についても三スキームの一体化によって協調融資や官民協力(PP
P)などこの援助のモダリティを共通化し、日韓間で人的ネットワークを形成するなど緊
密な協力体制を構築する必要がある。
7.環境事業の機会拡大
日本と韓国は、中国と共に北東アジアの大気、海洋、自然環境を共有する「環境共同体」
である。1999年からは日韓中環境大臣会合が毎年開催され、2009年には日韓中サミットで
「持続可能な開発に関する共同声明」が発表され、10分野(環境教育、気候変動、生物多
様性、黄砂、汚染管理、循環型社会(3R)、電気電子機器廃棄物の越境、化学物資の管
理、環境ガバナンス、環境産業と技術)について行動計画がまとめられて情報収集や研究
から一歩踏み出した。
ただし、世界金融危機後、先進国はほぼ一斉に環境重視の成長戦略を明らかにし、アジ
アにも影響が出てきている。国連環境改革(UNEP)は2009年には1.37兆ドルの環境製
品、サービスの市場規模が、2020年までには2.74兆ドルまで増大するとしている。環境ビ
ジネスは省エネルギー型家電や次世代自動車、住宅などの消費需要、森林・土壌・水環境保
全や都市交通などの社会資本整備、排出権取引・電力買取り、循環産業などの投資、低炭
素関連技術開発など、極めて幅の広い複合産業である。消費財では既にグローバルな日韓
間の競合が始まっているが、投資事業やシステム・ビジネス全体では日本が国内市場中心に
先行している。今後は地理的に近く、自然環境や都市基盤が似た日韓の統合市場が成長す
る中に大きな潜在性が存在しよう。都市化率が高く、集合住宅が主流で、高水準のIT基
盤と国民背番号制度、中央集権的な社会組織を持つ韓国は一部の環境ビジネスに必要な可
視化、標準化が比較的進み易い条件が揃う。日韓市場の中では集権性と分権性、実験と市
場化を組み合わせた、補完的発展の可能性があるといえるだろう。
環境ビジネスの多くは規制や基準認定、或いは補助の双方で政府の関与が大きく、民間
主導分野とは性格の異なる面もある。環境基準と規制緩和で足並みを揃えると同時に、経
済連携の中で相互基準認証や、グリーン会計などに関わる専門家の資格共通化、ベンチャ
ー企業の知的財産権保護や投資支援整備、環境教育の交流等を進めることは民間企業の投
資環境を整え、潜在的事業機会を拡大し、雇用にも資するところ大と考えられる。
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3.域内の金融危機再発防止及び金融秩序安定のための協力
1997年に発生したアジア金融危機は、日韓両国はもちろん、その他の域内諸国に地域金
融協力の必要性を認識させる契機になった。2008年の世界金融危機はその必要性を再認識
させた。日韓両国は、金融危機の再発を防止し、域内金融秩序の安定を図るため、次のよ
うな二つの領域で相互協力を深めていくべきである。
第一は、アジア通貨基金(AMF)創設のための協力である。東アジア金融危機以後、
域内諸国は緊密な協力を通じて、通貨危機管理のための通貨スワップ取極めと危機防止の
ためのサーベイランス・プロセスから構成されるチェンマイ・イニシアティブ(CMI)
という実質的な成果を上げ、近年、CMIは二国間取極めのネットワークから多国間取極
め(CMIM)へ、と発展した。
しかし、CMIMも、大規模化する通貨危機管理には十分ではない。特にIMFリンク
(IMFからの金融支援を受けて初めて実施されるという条件)のために、CMIの下の
通貨スワップ取極めが実際には実施されていない。IMFリンクの制限を縮小・撤廃する
ことが必要だが、そのためにはIMFに頼っているサーベイランスやコンディショナリテ
ィ作成のための作業等を自ら行う実施機関が必要となる。域内諸国は、経済監視機構であ
るAMRO(ASEAN+3 Macroeconomic Research Office)を2011年に設立することで合意して
その第一歩を踏み出した。日韓両国は、この機構が安定して機能するよう積極的に協力し
なければならない。
もうひとつの問題点は、サーベイランス・プロセスがマクロ経済変数や金融部門の健全
性に対してのみであり、為替相場に関するものでないという点である。為替管理・資本市
場の自由化を達成し、変動相場制の下にある日韓両国は、経済レビューと政策対話(ER
PD)を強化することにより、総合的にサーベイランスが機能するようイニシアティブを
とるべきである。
以上のような努力を通じて、CMIM体制はアジア通貨基金(AMF)に発展すること
が期待される。通貨・財政危機に陥った欧州においてドイツがEMF(Euro Monetary Fund)
創設を提唱したように、日韓両国もAMF実現のために協力しなければならない。また、
昨今のギリシャ財政危機とユーロ暴落が示したように、財政にもサーベイランスが必要で
ある。
第二に、日韓両国間では、2008年に日本銀行と韓国銀行が締結した円とウォンの通貨ス
ワップ取極めが引き続き強化されるべきである。この通貨スワップは、世界金融危機時に
27
おけるウォンの暴落に対しては実施されなかった。しかし、この取極めは韓国政府や韓国
銀行の外貨準備残高が減少してきても、日本銀行がこれらの外貨準備残高のある程度の水
準維持を保証し、それ自体が通貨の暴落を止める効果を持った。これと関連して為替相場
の急激な変動を監視するために、相互のマクロ経済と銀行部門の健全性に対する日常的な
サーベイランスのほか、急激な資本流出入の監視が検討されねばならない。
4.域内金融市場の長期的な発展のための協力
まだ金融産業の発展水準が低い東アジア地域で日韓両国が緊密な協力を通じ、地域公共
財提供に向けて努力することがより長期的に世界経済の安定と持続可能な成長に重要であ
る。日韓金融協力は二国間のみならず、中国を含めた日韓中三国間、ASEANを含めた
東アジア(ASEAN+3)の地域レベル、また地球規模の政策協調と相互密接に関連した有機
的相互作用を念頭に置いて進められるべきである。域内で最も発展した金融システムを持
つ日韓は、アイディア、モデル、モメンタムなどを提供する役割を担える。
日韓両国は、域内金融市場の長期的な発展のためにイニシアティブを発揮しなければな
らない。域内金融市場の拡大のために2003年から推進してきた「アジア債権市場イニシア
ティブ」(ABMI)が代表的な例である。ABMIは、アジア債券ファンド(ABF)イ
ニシアティブとともに、債券市場の規模を拡大させ、発行者を多様化するなどその発展に
貢献した。2009年には信用保証投資機構(CGIM)が設立され、新アジア債券市場イニ
シアティブ・ロードマップ(New ABMI Roadmap)も採択された。日韓両国はこれを一層発
展させて、債券発行者(企業)と投資家が実際に市場を活用するための環境整備や、クロ
ス・ボーダー取引への規制緩和を進めていくのに積極的に役割を果たすべきである。
長期的には、域内通貨の為替レート安定のための日韓両国のイニシアティブも重要であ
る。これまで、日韓両国の実物経済は、対ドル相場の乱高下によって円・ウォン相場も乱
高下を続け、商品貿易(観光を含む)のみならず、直接投資など実体経済に大きな影響を
及ぼしてきた。これは、両国の経済ファンダメンタルズというより、円キャリー・トレー
ド等、欧米金融機関による両国間での資本移動の影響を受けている。裁定は考慮するとし
ても、円・ウォン取引を直接に行えれば、双方のファンダメンタルズをある程度は反映し
た相場決定が可能となるかもしれず、世界金融危機経験の教訓から、こうした共同研究を
推進することには実用的意義が大である。
最後に、さらに長期的な課題として、ASEAN+3の民間レベルでアジア共通通貨議
論があるが、目立った進展はない。日韓両国は、このような長期的な金融通貨協力の議題
28
1997年に発生したアジア金融危機は、日韓両国はもちろん、その他の域内諸国に地域金
融協力の必要性を認識させる契機になった。2008年の世界金融危機はその必要性を再認識
させた。日韓両国は、金融危機の再発を防止し、域内金融秩序の安定を図るため、次のよ
うな二つの領域で相互協力を深めていくべきである。
第一は、アジア通貨基金(AMF)創設のための協力である。東アジア金融危機以後、
域内諸国は緊密な協力を通じて、通貨危機管理のための通貨スワップ取極めと危機防止の
ためのサーベイランス・プロセスから構成されるチェンマイ・イニシアティブ(CMI)
という実質的な成果を上げ、近年、CMIは二国間取極めのネットワークから多国間取極
め(CMIM)へ、と発展した。
しかし、CMIMも、大規模化する通貨危機管理には十分ではない。特にIMFリンク
(IMFからの金融支援を受けて初めて実施されるという条件)のために、CMIの下の
通貨スワップ取極めが実際には実施されていない。IMFリンクの制限を縮小・撤廃する
ことが必要だが、そのためにはIMFに頼っているサーベイランスやコンディショナリテ
ィ作成のための作業等を自ら行う実施機関が必要となる。域内諸国は、経済監視機構であ
るAMRO(ASEAN+3 Macroeconomic Research Office)を2011年に設立することで合意して
その第一歩を踏み出した。日韓両国は、この機構が安定して機能するよう積極的に協力し
なければならない。
もうひとつの問題点は、サーベイランス・プロセスがマクロ経済変数や金融部門の健全
性に対してのみであり、為替相場に関するものでないという点である。為替管理・資本市
場の自由化を達成し、変動相場制の下にある日韓両国は、経済レビューと政策対話(ER
PD)を強化することにより、総合的にサーベイランスが機能するようイニシアティブを
とるべきである。
以上のような努力を通じて、CMIM体制はアジア通貨基金(AMF)に発展すること
が期待される。通貨・財政危機に陥った欧州においてドイツがEMF(Euro Monetary Fund)
創設を提唱したように、日韓両国もAMF実現のために協力しなければならない。また、
昨今のギリシャ財政危機とユーロ暴落が示したように、財政にもサーベイランスが必要で
ある。
第二に、日韓両国間では、2008年に日本銀行と韓国銀行が締結した円とウォンの通貨ス
ワップ取極めが引き続き強化されるべきである。この通貨スワップは、世界金融危機時に
27
おけるウォンの暴落に対しては実施されなかった。しかし、この取極めは韓国政府や韓国
銀行の外貨準備残高が減少してきても、日本銀行がこれらの外貨準備残高のある程度の水
準維持を保証し、それ自体が通貨の暴落を止める効果を持った。これと関連して為替相場
の急激な変動を監視するために、相互のマクロ経済と銀行部門の健全性に対する日常的な
サーベイランスのほか、急激な資本流出入の監視が検討されねばならない。
4.域内金融市場の長期的な発展のための協力
まだ金融産業の発展水準が低い東アジア地域で日韓両国が緊密な協力を通じ、地域公共
財提供に向けて努力することがより長期的に世界経済の安定と持続可能な成長に重要であ
る。日韓金融協力は二国間のみならず、中国を含めた日韓中三国間、ASEANを含めた
東アジア(ASEAN+3)の地域レベル、また地球規模の政策協調と相互密接に関連した有機
的相互作用を念頭に置いて進められるべきである。域内で最も発展した金融システムを持
つ日韓は、アイディア、モデル、モメンタムなどを提供する役割を担える。
日韓両国は、域内金融市場の長期的な発展のためにイニシアティブを発揮しなければな
らない。域内金融市場の拡大のために2003年から推進してきた「アジア債権市場イニシア
ティブ」(ABMI)が代表的な例である。ABMIは、アジア債券ファンド(ABF)イ
ニシアティブとともに、債券市場の規模を拡大させ、発行者を多様化するなどその発展に
貢献した。2009年には信用保証投資機構(CGIM)が設立され、新アジア債券市場イニ
シアティブ・ロードマップ(New ABMI Roadmap)も採択された。日韓両国はこれを一層発
展させて、債券発行者(企業)と投資家が実際に市場を活用するための環境整備や、クロ
ス・ボーダー取引への規制緩和を進めていくのに積極的に役割を果たすべきである。
長期的には、域内通貨の為替レート安定のための日韓両国のイニシアティブも重要であ
る。これまで、日韓両国の実物経済は、対ドル相場の乱高下によって円・ウォン相場も乱
高下を続け、商品貿易(観光を含む)のみならず、直接投資など実体経済に大きな影響を
及ぼしてきた。これは、両国の経済ファンダメンタルズというより、円キャリー・トレー
ド等、欧米金融機関による両国間での資本移動の影響を受けている。裁定は考慮するとし
ても、円・ウォン取引を直接に行えれば、双方のファンダメンタルズをある程度は反映し
た相場決定が可能となるかもしれず、世界金融危機経験の教訓から、こうした共同研究を
推進することには実用的意義が大である。
最後に、さらに長期的な課題として、ASEAN+3の民間レベルでアジア共通通貨議
論があるが、目立った進展はない。日韓両国は、このような長期的な金融通貨協力の議題
28
III.国際経済
1.東アジア共生・繁栄ネットワーク構築のための知識貢献
世界金融危機を契機に東アジアの存在感は急速に高まっている。リーマン・ショック以
来、輸出市場の急激な縮小により予期せぬ困難を体験した東アジア諸国は、足早に回復の
軌道にさしかかり、更に世界経済回復の牽引役を果たしている。
このような成長のエンジンになっているのは、地域を単位にした超国家的な産業集積と
国際分業ネットワークである。東アジアの国家と企業は、貿易と投資を媒介として生産ネ
ットワークを形成しながら成長のダイナミックスを創造してきた。とりわけ、日本と韓国
の多国籍企業は、域内に存在する立地特性と要素賦存を活用して、世界的に最もダイナミ
ックな製造業の競争力を蓄積してきた。国際競争を通じて東アジア経済のネットワーク化
はさらに進んでいる。
市場主導型で形成されたネットワークを維持、そしてさらに発展させるための制度化努
力として2国間、多国間の自由貿易協定(FTA)締結も活発に行われている。東アジア全
体を結び付ける多国間のFTA 構想も提案されてきた。しかし、東アジアのFTAネットワ
ークにおいて決定的に欠如しているのは、日韓中三国間の連結である。域内の三大経済大
国でもある三国間の制度的連携が欠落しているのは、相互の市場開放にともなう産業調整、
雇用調整(特に農業と一部製造業部門)のコストが大きく決断を下せないためであるが、
相互の信頼関係の不足や、域外国である米国との関係など政治的な要素が決断を阻害して
いる面も大きい。
しかしながら、日韓中はいずれも人口成長のボーナス期が終わり、今後は急速に少子高
齢化が進行するため、域内市場の安定的な拡大が戦略的な重要性を持つ。そのため、日本
と韓国は、地域の公共財としての性格を持つ域内経済ネットワークの制度化のために努力
すべきである。日韓両国は、学界専門家で構成される仮称「東アジア共生・繁栄ネットワ
ーク構築のための日韓研究会議」を組織し、体系的な共同研究を通じて新たな思考による
新戦略を導き出すことが期待される。
出発点は、東アジアにおける日本と韓国の役割を明確にすることである。日韓両国は、
24
国民経済中心の思考から抜け出し、多様なアクターを水平的かつ柔軟、複合的に繋いでい
く発想に基づき、互いが共有する理念と価値を提示する東アジアネットワークの建設者
(architect)の役割を担わなければならない。そこでの中心課題は、グローバルな普遍性と
地域的な特殊性が複合した資本主義のプラットフォームの創造である。それは、市場のダ
イナミックスを維持しながら分配の価値を尊重し、資源枯渇と環境破壊を防止する持続可
能な発展に基づいた共生と繁栄のネットワークである。このような資本主義に賛同する国
家によってネットワークは拡がるであろう。
これは、地域機構を作ってメンバーを決めた後、その制度が追求する価値と理念を探す
既存の東アジア共同体構想とは異なるものである。地域の範囲とメンバーをめぐり、国家
間の政治的摩擦が絶えない現実を考慮すれば、これから有効な戦略は、利益を共有する少
数の国家群を探してネットワークのプラットフォームを創った後、これに同意する国家群
を加えていくという方法である。したがって、地理的には域外国家であるが、東アジアネ
ットワークの繁栄に死活的な存在である米国も連結対象となる。
日韓両国は、このような努力を通じて危機以後のグローバル資本主義の未来像を見据え、
両国が共有する新資本主義の理念と価値を創り、これを制度化する戦略を準備して、日韓
から東アジア地域へのネットワーク拡散のロードマップなどに対する合意を引き出すであ
ろう。それによって、日韓両国は経済的により統合され、技術と生産のイノベーションを
進め、インフラおよび人的資本投資を通じて域内の発展不均衡を是正する新しい東アジア
の創造に知的に貢献することができる。
2.包括的な日韓自由貿易協定(FTA)の締結
日本と韓国はOECDのメンバーとして、両国関係の特殊性を反映すると同時に未来志
向的な観点から、貿易自由化を超えて東アジア繁栄のネットワークを指向する包括的FT
A協定を推進すべきである。特に、東アジアを単位とした生産ネットワークが組まれ、製
造業の工程間分業が精巧化していく中で、日韓の企業はその中心的役割を担っており、両
国の間には競争だけでなく緊密な分業と協力の関係も築かれている。このような点から、
日韓FTAは、両国の企業がより積極的に生産・貿易ネットワークを構築、深化させ、地
域と世界経済の発展を先導するイノベーションの発信地を造る、制度条件整備の装置とし
て認識される必要がある。その具体的な内容は次の通りである。
第一に、商品市場の開放は、両国共通の懸案である高齢化による内需市場縮小に備えて、
その外延を互いの市場に拡大することが狙いである。これは、グローバル経済危機をきっ
25
かけに明らかになった両国の高い域外市場依存度を引き下げ、東アジア地域全体へと市場
の外延を拡大する出発点に立つことを意味する。日韓FTAの締結可能性を高めて東アジ
ア地域統合の実現を加速化するためには、東アジアの特性である域内国間の格差を踏まえ
て、敏感部門の開放レベルを弾力的・漸進的に調整しつつも、先進国のレベルにふさわし
い、透明で完成度の高い自由化交渉を推進する必要がある。
第二に、サービス分野の協力である。日韓両国は高齢化による労動人口減少に直面する
一方、サービス業においては製造業に比べて労動生産性が劣るという共通点を持っている。
このため、人の移動の自由化(サービスモード 4の開放)を推進し、併せて資格要件の共
通化や移動に伴う制度を整備する必要がある。専門家や熟練労働者の労働市場統合はサー
ビス産業のイノベーションを推進し、労働生産性向上に資するだろう。これは長期的に、
労動力が豊富である東アジア域内国との労動市場統合へと発展させるという観点から推進
されるべきである。
第三に、日韓両国はFTAによって、競争政策、知的財産権、投資、相互認証など貿易
規範の分野で漸増している両国間の通商摩擦を合理的に調整する一方、製造業部門を中心
にした両国企業間の生産ネットワークの効率性を増大させて、域内の地位に見合うように
東アジアの通商ガバナンスを先導するよう努力すべきである。日韓両国は、東アジア標準
となる高いレベルの知的財産保護体制を確立し、知財の創造と共有との間の最適なバラン
スをとっていかねばならない。
第四に、日韓両国は、少子高齢化対策、財政健全化、所得配分の改善、労動市場の柔軟
性や社会セーフティネットの整備、農水産業およびサービス業の競争力向上、為替変動等
の外部変数に対する脆弱性、域外市場への依存軽減といった数多くの共通の懸案に直面し
ている。したがって、両国の共通課題を解決するための協議体を構成し、短期的には両国
に実益を与え、長期的には東アジア地域統合へ備えたガバナンス構築の土台とすべきであ
る。
最後に、仮称「日韓構造基金(Japan-Korea Structural Fund)」の設立を提案する。欧州連
合(EU)は、経済統合後、各国の経済規模に比例して基金を造成し、域内後進地域の開
発を支援するために構造基金(Structural Fund)を運用している。日韓構造基金はこのアイ
ディアを援用したものである。日韓両国によるFTAの締結時、競争法との調和を考慮し
ながら日韓構造基金を試験的に実施し、東アジア地域統合のための「東アジア構造基金(E
ASF)」へと拡大発展させる。日韓構造基金の設立は、対内的には地域経済の活性化に
寄与し、対外的には日韓FTAが域内地域格差の解消に寄与することを示すであろう。
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1.東アジア共生・繁栄ネットワーク構築のための知識貢献
世界金融危機を契機に東アジアの存在感は急速に高まっている。リーマン・ショック以
来、輸出市場の急激な縮小により予期せぬ困難を体験した東アジア諸国は、足早に回復の
軌道にさしかかり、更に世界経済回復の牽引役を果たしている。
このような成長のエンジンになっているのは、地域を単位にした超国家的な産業集積と
国際分業ネットワークである。東アジアの国家と企業は、貿易と投資を媒介として生産ネ
ットワークを形成しながら成長のダイナミックスを創造してきた。とりわけ、日本と韓国
の多国籍企業は、域内に存在する立地特性と要素賦存を活用して、世界的に最もダイナミ
ックな製造業の競争力を蓄積してきた。国際競争を通じて東アジア経済のネットワーク化
はさらに進んでいる。
市場主導型で形成されたネットワークを維持、そしてさらに発展させるための制度化努
力として2国間、多国間の自由貿易協定(FTA)締結も活発に行われている。東アジア全
体を結び付ける多国間のFTA 構想も提案されてきた。しかし、東アジアのFTAネットワ
ークにおいて決定的に欠如しているのは、日韓中三国間の連結である。域内の三大経済大
国でもある三国間の制度的連携が欠落しているのは、相互の市場開放にともなう産業調整、
雇用調整(特に農業と一部製造業部門)のコストが大きく決断を下せないためであるが、
相互の信頼関係の不足や、域外国である米国との関係など政治的な要素が決断を阻害して
いる面も大きい。
しかしながら、日韓中はいずれも人口成長のボーナス期が終わり、今後は急速に少子高
齢化が進行するため、域内市場の安定的な拡大が戦略的な重要性を持つ。そのため、日本
と韓国は、地域の公共財としての性格を持つ域内経済ネットワークの制度化のために努力
すべきである。日韓両国は、学界専門家で構成される仮称「東アジア共生・繁栄ネットワ
ーク構築のための日韓研究会議」を組織し、体系的な共同研究を通じて新たな思考による
新戦略を導き出すことが期待される。
出発点は、東アジアにおける日本と韓国の役割を明確にすることである。日韓両国は、
24
国民経済中心の思考から抜け出し、多様なアクターを水平的かつ柔軟、複合的に繋いでい
く発想に基づき、互いが共有する理念と価値を提示する東アジアネットワークの建設者
(architect)の役割を担わなければならない。そこでの中心課題は、グローバルな普遍性と
地域的な特殊性が複合した資本主義のプラットフォームの創造である。それは、市場のダ
イナミックスを維持しながら分配の価値を尊重し、資源枯渇と環境破壊を防止する持続可
能な発展に基づいた共生と繁栄のネットワークである。このような資本主義に賛同する国
家によってネットワークは拡がるであろう。
これは、地域機構を作ってメンバーを決めた後、その制度が追求する価値と理念を探す
既存の東アジア共同体構想とは異なるものである。地域の範囲とメンバーをめぐり、国家
間の政治的摩擦が絶えない現実を考慮すれば、これから有効な戦略は、利益を共有する少
数の国家群を探してネットワークのプラットフォームを創った後、これに同意する国家群
を加えていくという方法である。したがって、地理的には域外国家であるが、東アジアネ
ットワークの繁栄に死活的な存在である米国も連結対象となる。
日韓両国は、このような努力を通じて危機以後のグローバル資本主義の未来像を見据え、
両国が共有する新資本主義の理念と価値を創り、これを制度化する戦略を準備して、日韓
から東アジア地域へのネットワーク拡散のロードマップなどに対する合意を引き出すであ
ろう。それによって、日韓両国は経済的により統合され、技術と生産のイノベーションを
進め、インフラおよび人的資本投資を通じて域内の発展不均衡を是正する新しい東アジア
の創造に知的に貢献することができる。
2.包括的な日韓自由貿易協定(FTA)の締結
日本と韓国はOECDのメンバーとして、両国関係の特殊性を反映すると同時に未来志
向的な観点から、貿易自由化を超えて東アジア繁栄のネットワークを指向する包括的FT
A協定を推進すべきである。特に、東アジアを単位とした生産ネットワークが組まれ、製
造業の工程間分業が精巧化していく中で、日韓の企業はその中心的役割を担っており、両
国の間には競争だけでなく緊密な分業と協力の関係も築かれている。このような点から、
日韓FTAは、両国の企業がより積極的に生産・貿易ネットワークを構築、深化させ、地
域と世界経済の発展を先導するイノベーションの発信地を造る、制度条件整備の装置とし
て認識される必要がある。その具体的な内容は次の通りである。
第一に、商品市場の開放は、両国共通の懸案である高齢化による内需市場縮小に備えて、
その外延を互いの市場に拡大することが狙いである。これは、グローバル経済危機をきっ
25
かけに明らかになった両国の高い域外市場依存度を引き下げ、東アジア地域全体へと市場
の外延を拡大する出発点に立つことを意味する。日韓FTAの締結可能性を高めて東アジ
ア地域統合の実現を加速化するためには、東アジアの特性である域内国間の格差を踏まえ
て、敏感部門の開放レベルを弾力的・漸進的に調整しつつも、先進国のレベルにふさわし
い、透明で完成度の高い自由化交渉を推進する必要がある。
第二に、サービス分野の協力である。日韓両国は高齢化による労動人口減少に直面する
一方、サービス業においては製造業に比べて労動生産性が劣るという共通点を持っている。
このため、人の移動の自由化(サービスモード 4の開放)を推進し、併せて資格要件の共
通化や移動に伴う制度を整備する必要がある。専門家や熟練労働者の労働市場統合はサー
ビス産業のイノベーションを推進し、労働生産性向上に資するだろう。これは長期的に、
労動力が豊富である東アジア域内国との労動市場統合へと発展させるという観点から推進
されるべきである。
第三に、日韓両国はFTAによって、競争政策、知的財産権、投資、相互認証など貿易
規範の分野で漸増している両国間の通商摩擦を合理的に調整する一方、製造業部門を中心
にした両国企業間の生産ネットワークの効率性を増大させて、域内の地位に見合うように
東アジアの通商ガバナンスを先導するよう努力すべきである。日韓両国は、東アジア標準
となる高いレベルの知的財産保護体制を確立し、知財の創造と共有との間の最適なバラン
スをとっていかねばならない。
第四に、日韓両国は、少子高齢化対策、財政健全化、所得配分の改善、労動市場の柔軟
性や社会セーフティネットの整備、農水産業およびサービス業の競争力向上、為替変動等
の外部変数に対する脆弱性、域外市場への依存軽減といった数多くの共通の懸案に直面し
ている。したがって、両国の共通課題を解決するための協議体を構成し、短期的には両国
に実益を与え、長期的には東アジア地域統合へ備えたガバナンス構築の土台とすべきであ
る。
最後に、仮称「日韓構造基金(Japan-Korea Structural Fund)」の設立を提案する。欧州連
合(EU)は、経済統合後、各国の経済規模に比例して基金を造成し、域内後進地域の開
発を支援するために構造基金(Structural Fund)を運用している。日韓構造基金はこのアイ
ディアを援用したものである。日韓両国によるFTAの締結時、競争法との調和を考慮し
ながら日韓構造基金を試験的に実施し、東アジア地域統合のための「東アジア構造基金(E
ASF)」へと拡大発展させる。日韓構造基金の設立は、対内的には地域経済の活性化に
寄与し、対外的には日韓FTAが域内地域格差の解消に寄与することを示すであろう。
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紀の日米同盟と韓米同盟は過去の同盟とは異なり、特定の敵国を想定せず、東アジア共同
の軍事および人間の安全保障の脅威に対処し地域秩序の不確実性に備える相互互恵的で協
力的なネットワークとして進化している。こうした安全保障関係においては政府を中心に
多様な主体が国防、地域安全保障、人間の安全保障、経済、社会文化交流などで多面的に
協力することが重要であることを認識する。
日韓両国は緊密な安保協力のために、2009年4月23日「日韓国防交流に関する意向書」に
より合意された高位国防関係者の交流を積極的に実施し、信頼醸成および協力拡大のため
に努力しなければならない。両国は1996年の「日米安保共同宣言」や2009年の「韓米同盟
のための未来ビジョン」などにより、各自の米国との同盟が継続して両国の平和と地域全
体の安定と協力のため貢献しているという点を認識している。日韓両国は東アジアにおい
て米国の軍事的存在が地域の安定的な効果をもつように、駐留米軍の役割や米国との二国
間同盟における日韓米の役割に対して認識を共有すべく意見を交換し、同盟の肯定的な役
割を強化するよう取り組んでいく。
日韓両国は、米国が東アジアの共生複合ネットワーク構築に積極的に関与し、地球的な
リーダーシップを発揮することができるよう、日韓米三カ国の緊密な協議と協力を強化し
なければならない。この協議と協力は、いかなる勢力も疎外せず中国、ロシア、北朝鮮、
ASEAN、オセアニア諸国などとの対話、多国間協力と両立するよう努める。
4.中国の浮上と新たな東アジア地域秩序構築のための協力
中国が経済的、軍事的に成長し、政治的な影響力を拡大している状況で、日韓両国は中
国の発展を歓迎すると同時に中国の浮上が国際政治においても肯定的な影響を与えるよう
意見交換していく。中国を含めた二国間、三国間関係を全般的に濃密にし、信頼醸成やリ
ーダー、公務員、専門家間の交流を更に進め、日韓中首脳会談を活性化させるべきである。
日韓両国は、中国の軍事的発展が地域の平和に貢献する事を期待し、中国と信頼醸成措
置や軍備管理対話のような安全保障会談・交流を積極的に推進する。日韓両国は中国が東
アジアの共生複合ネットワークに積極的に参加することが中国の持続的な発展に有益であ
る点を強調し、中国が東アジアひいては国際社会において責任ある大国として行動するこ
とに共に協力する。
日韓両国は、中国が両国との共通の認識に基づいて北朝鮮の核放棄、北朝鮮の開放・改
革政策の実現、平和的で安定的な朝鮮半島の統一、長期的には安定された北東アジアの国
19
際関係の構築などに積極的に貢献することを要望する。
日韓両国は東シナ海、南シナ海の海洋秩序に関し、中国との対話を深め、同時にASE
AN地域フォーラム(ARF)などの多国間安保機構を活用し平和的協力の環境を整えて
いく。例えば、インド洋やマラッカ海峡、東シナ海をつなげる海上運送路の安全確保のた
めの情報交換や海上安全のための協力を多国間レベルで推し進めていくことや、ARF主
催の災害対応訓練などを考える事ができる。
日韓は東アジアでの地域協力がエネルギー、地球環境問題、テロ、麻薬、国際犯罪、大
量破壊兵器の拡散、疾病、災害など人間の安全保障といったグローバルな安全保障課題へ
の解決と結びつくよう、特に非政府主体であるNGO、NPO等の地域における国際協力
を増進するため、東アジアNGOネットワークの構築を提起し、広く参加を呼びかける。
5.世界的な安全保障のための協力
日韓両国は、国際社会の共通の課題となっている予防外交、平和構築、大量破壊兵器の
拡散防止、テロ対策、大規模災害や感染症対策などの新しい安全保障分野において協力を
深める必要がある。
日本は1980年代から「総合安全保障」を提示しており、安全保障を非軍事的な側面まで
拡大して来た。ODAなどの多様な手段の効果的な活用を図ってきた経験を有している。
韓国は国連平和維持活動などにおいて積極的に活動してきた経験を有しており、新興援助
国として浮上している。両国は経験を共有し、幅広い協力を実現するために、日韓の安全
保障協力をより一層強化していくべきである。
具体的な協力項目として、紛争の懸念がある地域における紛争予防のための情報交換、
国連平和維持活動(PKO)などによる平和構築や紛争地域再建支援のための国防組織や
文民政府組織、また民間の優位性のある部門に関する情報交換、派遣任務に備えた普段か
らの共同訓練や装備・補給の共用などを検討すべきである。また、予防外交、平和構築、
人道支援等に取り組む人材を系統的に育成するために、人材育成プログラムを日韓政府及
びNGO、教育機関等で設立する。日韓両国は国連平和構築委員会など国連の安全保障機
能の強化に取り組み、また、アジアにおけるPKO部隊訓練協力センターの共同運営など
も検討に値する。
日韓両国は、人間の安全保障の分野で包括的な協力を検討する。対テロ、難民、環境、
20
災害緊急救助活動、疾病および感染症対応や海洋違法行為および海賊撲滅などの分野で日
韓両国は情報を交換し、協力の拡大をはからなければならない。日韓で基本方針について
の協定締結などの制度化を進め、関係官庁、民間団体等での情報交換、協力体制を整備す
べきである。
日韓両国は非核政策を採択すると同時に、世界的な非核化に向けた核軍縮と核拡散防止
に強い意志を持っていることを確認する。大量破壊兵器の開発及び拡散防止のための国際
的な機関であるNPT、IAEA、原子力供給国会議(NSG)、CWC、BWCなどの
機能強化のために日韓両国は協力を強化しなければならない。CTBTの発効に向け関係
国を動員し、ジュネーブ軍縮会議で推進されている武器用の核分裂物質の生産禁止条約の
成立に関しても協力する。大量破壊兵器拡散防止のための国際規範の強化、拡散防止構想
(PSI)の強化などに関しても意見交換を行い、協力をはかる。
6.エネルギー環境分野の日韓協力
日韓両国は海外の資源に依存しながら経済発展をはかってきた国家として、エネルギ
ー・資源の希少性、環境保護などの問題を解決するため、協調しながら解決策を提示して
いくべき立場にある。原子力については、両国原子力産業・技術開発の協力を進め、原子
力の平和利用を確保する技術を世界的に普及させるべきである。
一方、日韓両国の積極的な環境政策の実施にもかかわらず、両国の温室ガス排出量は増
加している。中国も急速な産業化の進行により世界最大の温室ガス排出国家となった。こ
のような状況から、日韓両国は、環境分野での日韓中三カ国協力に今まで以上に一致して
取り組む必要がある。
日韓両国は、1990年代以降進められてきた環境協力を持続的に進め、その制度化を目指
す。両国は、東アジアで深刻になっている大気汚染、砂漠化などの環境悪化に注意を傾け、
環境政策および技術に関する協力を追求しながら、ASEAN、APECなど関連の制度
を活用し、各国が適切な行動をとるべく国際協力の枠組を強化する。
日韓両国は、低炭素社会への移行のため、原子力や自然エネルギーなどの安全かつ効率
的な技術開発の促進と国際的普及のために協力する。また、太陽光発電、風力発電などの
利用促進を目標に2009年1月に創立した国際再生可能エネルギー機関(IRENA)などで
も協力を推進する。ハイブリッドカーや電気自動車、クリーン技術の開発などでも優位性
を持っており、強みを活かしていく努力が求められる。
21
エネルギー及び環境に配慮した経済成長のために21世紀のフロンティアとして注目され
るのが海洋及び宇宙の効果的な利用である。日韓は海洋資源の合理的な利用のため、海洋
資源探査、南極、北極海地域等での共同調査、宇宙探査ならびに衛星開発、打上等に関し
て協力の枠組みを検討することが望ましい。
日韓両国は、環境分野の協力を地球規模の環境ガバナンス構築へと拡げていくべきとの
点で認識をともにする。両国は2012年に期限を迎える京都議定書に代わる新たな協定の策
定のために協力し、ポスト京都議定書体制を確立する責務を果たすべく努力する。
7.グローバル・ガバナンスのための日韓協力
21世紀の国際政治において、世界的な規模の課題が複雑になるにしたがい、複合ネット
ワークの発展と多層的なグローバル・ガバナンスは必然的なものとなった。今日、グロー
バル・ガバナンスは米国を先頭にした主要国のリーダーシップ、既存のG8、新たに発展
しているG20、そして全ての国家が参加する国際連合など、多様な領域における多層的
なレベルで混在している形態で展開している。日韓両国は、このような多層的なガバナン
スの橋渡しの役割を果たせる立場にある。両国は、堅実な市場経済と民主主義を基礎に西
洋世界と非西洋世界、先進国と開発途上国の架け橋として両側の立場を理解する事ができ
る。今後日韓両国は、多国間会談や主要国との外交で多様な国家の利益を集約し、グロー
バル・ガバナンスの効果を増大させる役割を担わなければならない。
日韓両国は、国連機関やブレトンウッズ機関、G8やG20などの意思決定が効率的に
行われ、現在の世界を反映した場となるよう意見を交換して協力を進める。効果的なグロ
ーバル・ガバナンスの実現にむけて両国は次の事項に取り組む。第一に、日韓両国は、A
RF、ASEAN+3、EAS、APECなど地域レベルの協力枠組みと国連などの地球
規模の協力枠組みとの連携に積極的に取り組む。地域レベルとグローバル・レベルの協力
枠組みが互いに連携することで、地域内あるいは地球規模の問題はより迅速かつ効率的に
解決しうる。日韓は、アジア・太平洋、東アジア、北東アジアそれぞれの地域のすべての
協力枠組みで中心的役割を担っており、地域ガバナンスとグローバル・ガバナンスの調和
と統合を主導できる立場にある。
第二に、日韓両国は大量破壊兵器、テロ、海賊、疾病・保健、麻薬、災害、開発協力・
援助など人間の安全保障分野での多国間協力にさらに意欲的に参加し、これまで主に欧米
諸国が主導してきた議題の設定、規則の制定、規範の拡散といった役割を共に担うべく協
22
力する。
第三に、日韓両国は、これまで主に国内で活動してきた両国のNGOが、日韓間の相互
交流や他国のNGOとの連携を通じて地球規模の課題へと目を向けることを歓迎し、両国
のNGOが効果的かつ民主的なグローバル・ガバナンスの構築において建設的な役割を果
たせるよう支援していく。両国は高等教育機関などを通じて国際機構で活躍する人材の効
果的な育成のためのプログラム設立を検討する。
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の軍事および人間の安全保障の脅威に対処し地域秩序の不確実性に備える相互互恵的で協
力的なネットワークとして進化している。こうした安全保障関係においては政府を中心に
多様な主体が国防、地域安全保障、人間の安全保障、経済、社会文化交流などで多面的に
協力することが重要であることを認識する。
日韓両国は緊密な安保協力のために、2009年4月23日「日韓国防交流に関する意向書」に
より合意された高位国防関係者の交流を積極的に実施し、信頼醸成および協力拡大のため
に努力しなければならない。両国は1996年の「日米安保共同宣言」や2009年の「韓米同盟
のための未来ビジョン」などにより、各自の米国との同盟が継続して両国の平和と地域全
体の安定と協力のため貢献しているという点を認識している。日韓両国は東アジアにおい
て米国の軍事的存在が地域の安定的な効果をもつように、駐留米軍の役割や米国との二国
間同盟における日韓米の役割に対して認識を共有すべく意見を交換し、同盟の肯定的な役
割を強化するよう取り組んでいく。
日韓両国は、米国が東アジアの共生複合ネットワーク構築に積極的に関与し、地球的な
リーダーシップを発揮することができるよう、日韓米三カ国の緊密な協議と協力を強化し
なければならない。この協議と協力は、いかなる勢力も疎外せず中国、ロシア、北朝鮮、
ASEAN、オセアニア諸国などとの対話、多国間協力と両立するよう努める。
4.中国の浮上と新たな東アジア地域秩序構築のための協力
中国が経済的、軍事的に成長し、政治的な影響力を拡大している状況で、日韓両国は中
国の発展を歓迎すると同時に中国の浮上が国際政治においても肯定的な影響を与えるよう
意見交換していく。中国を含めた二国間、三国間関係を全般的に濃密にし、信頼醸成やリ
ーダー、公務員、専門家間の交流を更に進め、日韓中首脳会談を活性化させるべきである。
日韓両国は、中国の軍事的発展が地域の平和に貢献する事を期待し、中国と信頼醸成措
置や軍備管理対話のような安全保障会談・交流を積極的に推進する。日韓両国は中国が東
アジアの共生複合ネットワークに積極的に参加することが中国の持続的な発展に有益であ
る点を強調し、中国が東アジアひいては国際社会において責任ある大国として行動するこ
とに共に協力する。
日韓両国は、中国が両国との共通の認識に基づいて北朝鮮の核放棄、北朝鮮の開放・改
革政策の実現、平和的で安定的な朝鮮半島の統一、長期的には安定された北東アジアの国
19
際関係の構築などに積極的に貢献することを要望する。
日韓両国は東シナ海、南シナ海の海洋秩序に関し、中国との対話を深め、同時にASE
AN地域フォーラム(ARF)などの多国間安保機構を活用し平和的協力の環境を整えて
いく。例えば、インド洋やマラッカ海峡、東シナ海をつなげる海上運送路の安全確保のた
めの情報交換や海上安全のための協力を多国間レベルで推し進めていくことや、ARF主
催の災害対応訓練などを考える事ができる。
日韓は東アジアでの地域協力がエネルギー、地球環境問題、テロ、麻薬、国際犯罪、大
量破壊兵器の拡散、疾病、災害など人間の安全保障といったグローバルな安全保障課題へ
の解決と結びつくよう、特に非政府主体であるNGO、NPO等の地域における国際協力
を増進するため、東アジアNGOネットワークの構築を提起し、広く参加を呼びかける。
5.世界的な安全保障のための協力
日韓両国は、国際社会の共通の課題となっている予防外交、平和構築、大量破壊兵器の
拡散防止、テロ対策、大規模災害や感染症対策などの新しい安全保障分野において協力を
深める必要がある。
日本は1980年代から「総合安全保障」を提示しており、安全保障を非軍事的な側面まで
拡大して来た。ODAなどの多様な手段の効果的な活用を図ってきた経験を有している。
韓国は国連平和維持活動などにおいて積極的に活動してきた経験を有しており、新興援助
国として浮上している。両国は経験を共有し、幅広い協力を実現するために、日韓の安全
保障協力をより一層強化していくべきである。
具体的な協力項目として、紛争の懸念がある地域における紛争予防のための情報交換、
国連平和維持活動(PKO)などによる平和構築や紛争地域再建支援のための国防組織や
文民政府組織、また民間の優位性のある部門に関する情報交換、派遣任務に備えた普段か
らの共同訓練や装備・補給の共用などを検討すべきである。また、予防外交、平和構築、
人道支援等に取り組む人材を系統的に育成するために、人材育成プログラムを日韓政府及
びNGO、教育機関等で設立する。日韓両国は国連平和構築委員会など国連の安全保障機
能の強化に取り組み、また、アジアにおけるPKO部隊訓練協力センターの共同運営など
も検討に値する。
日韓両国は、人間の安全保障の分野で包括的な協力を検討する。対テロ、難民、環境、
20
災害緊急救助活動、疾病および感染症対応や海洋違法行為および海賊撲滅などの分野で日
韓両国は情報を交換し、協力の拡大をはからなければならない。日韓で基本方針について
の協定締結などの制度化を進め、関係官庁、民間団体等での情報交換、協力体制を整備す
べきである。
日韓両国は非核政策を採択すると同時に、世界的な非核化に向けた核軍縮と核拡散防止
に強い意志を持っていることを確認する。大量破壊兵器の開発及び拡散防止のための国際
的な機関であるNPT、IAEA、原子力供給国会議(NSG)、CWC、BWCなどの
機能強化のために日韓両国は協力を強化しなければならない。CTBTの発効に向け関係
国を動員し、ジュネーブ軍縮会議で推進されている武器用の核分裂物質の生産禁止条約の
成立に関しても協力する。大量破壊兵器拡散防止のための国際規範の強化、拡散防止構想
(PSI)の強化などに関しても意見交換を行い、協力をはかる。
6.エネルギー環境分野の日韓協力
日韓両国は海外の資源に依存しながら経済発展をはかってきた国家として、エネルギ
ー・資源の希少性、環境保護などの問題を解決するため、協調しながら解決策を提示して
いくべき立場にある。原子力については、両国原子力産業・技術開発の協力を進め、原子
力の平和利用を確保する技術を世界的に普及させるべきである。
一方、日韓両国の積極的な環境政策の実施にもかかわらず、両国の温室ガス排出量は増
加している。中国も急速な産業化の進行により世界最大の温室ガス排出国家となった。こ
のような状況から、日韓両国は、環境分野での日韓中三カ国協力に今まで以上に一致して
取り組む必要がある。
日韓両国は、1990年代以降進められてきた環境協力を持続的に進め、その制度化を目指
す。両国は、東アジアで深刻になっている大気汚染、砂漠化などの環境悪化に注意を傾け、
環境政策および技術に関する協力を追求しながら、ASEAN、APECなど関連の制度
を活用し、各国が適切な行動をとるべく国際協力の枠組を強化する。
日韓両国は、低炭素社会への移行のため、原子力や自然エネルギーなどの安全かつ効率
的な技術開発の促進と国際的普及のために協力する。また、太陽光発電、風力発電などの
利用促進を目標に2009年1月に創立した国際再生可能エネルギー機関(IRENA)などで
も協力を推進する。ハイブリッドカーや電気自動車、クリーン技術の開発などでも優位性
を持っており、強みを活かしていく努力が求められる。
21
エネルギー及び環境に配慮した経済成長のために21世紀のフロンティアとして注目され
るのが海洋及び宇宙の効果的な利用である。日韓は海洋資源の合理的な利用のため、海洋
資源探査、南極、北極海地域等での共同調査、宇宙探査ならびに衛星開発、打上等に関し
て協力の枠組みを検討することが望ましい。
日韓両国は、環境分野の協力を地球規模の環境ガバナンス構築へと拡げていくべきとの
点で認識をともにする。両国は2012年に期限を迎える京都議定書に代わる新たな協定の策
定のために協力し、ポスト京都議定書体制を確立する責務を果たすべく努力する。
7.グローバル・ガバナンスのための日韓協力
21世紀の国際政治において、世界的な規模の課題が複雑になるにしたがい、複合ネット
ワークの発展と多層的なグローバル・ガバナンスは必然的なものとなった。今日、グロー
バル・ガバナンスは米国を先頭にした主要国のリーダーシップ、既存のG8、新たに発展
しているG20、そして全ての国家が参加する国際連合など、多様な領域における多層的
なレベルで混在している形態で展開している。日韓両国は、このような多層的なガバナン
スの橋渡しの役割を果たせる立場にある。両国は、堅実な市場経済と民主主義を基礎に西
洋世界と非西洋世界、先進国と開発途上国の架け橋として両側の立場を理解する事ができ
る。今後日韓両国は、多国間会談や主要国との外交で多様な国家の利益を集約し、グロー
バル・ガバナンスの効果を増大させる役割を担わなければならない。
日韓両国は、国連機関やブレトンウッズ機関、G8やG20などの意思決定が効率的に
行われ、現在の世界を反映した場となるよう意見を交換して協力を進める。効果的なグロ
ーバル・ガバナンスの実現にむけて両国は次の事項に取り組む。第一に、日韓両国は、A
RF、ASEAN+3、EAS、APECなど地域レベルの協力枠組みと国連などの地球
規模の協力枠組みとの連携に積極的に取り組む。地域レベルとグローバル・レベルの協力
枠組みが互いに連携することで、地域内あるいは地球規模の問題はより迅速かつ効率的に
解決しうる。日韓は、アジア・太平洋、東アジア、北東アジアそれぞれの地域のすべての
協力枠組みで中心的役割を担っており、地域ガバナンスとグローバル・ガバナンスの調和
と統合を主導できる立場にある。
第二に、日韓両国は大量破壊兵器、テロ、海賊、疾病・保健、麻薬、災害、開発協力・
援助など人間の安全保障分野での多国間協力にさらに意欲的に参加し、これまで主に欧米
諸国が主導してきた議題の設定、規則の制定、規範の拡散といった役割を共に担うべく協
22
力する。
第三に、日韓両国は、これまで主に国内で活動してきた両国のNGOが、日韓間の相互
交流や他国のNGOとの連携を通じて地球規模の課題へと目を向けることを歓迎し、両国
のNGOが効果的かつ民主的なグローバル・ガバナンスの構築において建設的な役割を果
たせるよう支援していく。両国は高等教育機関などを通じて国際機構で活躍する人材の効
果的な育成のためのプログラム設立を検討する。
23
15
ベリア鉄道を経由しヨーロッパまで到達できる。
日韓海底トンネルに関して、かつては竹下登元首相が検討を指示した経緯がある。羽田
孜元首相も「日本再生プログラム」の一環としてこの構想に関し言及した。森喜朗元首相
は、2000年10月のASEM会議で、日本と韓国をつなぐトンネルを作りASEM鉄道とい
う名前を付けようと提案した。また、総理大臣に就任する前の菅直人議員は「日韓海底ト
ンネルにリニアモーターカーを走らせる」と構想に関し言明したことがある。韓国でも、
1990年に盧泰愚大統領が訪日時の国会演説において海底トンネルに言及し、海部首相に建
設を提議したことがあり、1999年9月には金大中大統領も「日韓トンネルが建設されれば、
北海道からヨーロッパまで結ばれるので、未来の夢として考えてみる問題」と、トンネル
建設を提唱した。2003年2月には、盧武鉉大統領が日韓首脳会談でトンネル建設を提案した
ことがある。
海底トンネルの建設は、巨額の金融支援と先進的なトンネル技術を必要とする長期的な
未来志向プロジェクトである。日韓両国政府のイニシアティブにより、トンネル建設のた
めの総合的な共同研究を組織して、経済的、技術的な妥当性はもちろん、東アジア安全保
障や地域統合に与える効果等を体系的に研究しなければならない。技術的な建設可能性・
ルート設定、旅客・コンテナ・自動車流通による物流輸送体制の変容、建設コスト・償還
計画などに関して検討することだけでも、このような分野で日韓の人的、経済的、技術的
交流が著しく活発化するはずである。このような共同研究を踏まえて、両国指導者は国民
の十分な同意を得る方法で、トンネル建設プロジェクトを推進することが望ましい。
16
II.国際政治
1.東アジア共生複合ネットワークの強化
日韓両国が役割を果たし、また両国の平和、安全、繁栄にとって前提となるのは東アジ
ア地域秩序の安定である。東アジアはめざましい成長と発展を遂げているダイナミックな
地域として、経済的な相互依存性が深まってきており、社会文化的交流も活発化している。
東アジアの国際政治は、米ソが軍事的、イデオロギー的に拮抗した冷戦の構図が終わりは
したが、依然として不安定な状況にある。米中両国は一方では強い相互依存関係を保ちな
がら、他方では複数の不確実性を抱えている。北朝鮮の核開発計画や、台湾海峡の武力紛
争の可能性も東アジアの潜在的な紛争要因となっている。
日韓両国は、米国が東アジアの持続的な平和と安定、繁栄と協力にとって中核的な役割
を果たすという認識を同じくする。また、隣国であり、長い交流の歴史をもつ中国の平和
的発展を歓迎し、東アジア地域の中核国家としての役割に期待する。日韓両国は米中との
協力関係を基軸としながら、両国の役割として、開かれた自由な国家として、東アジアの
多様な主体が平和と発展の機会を享受できるよう、政治、経済、社会、文化の多次元的か
つ多様な共生をめざす複合ネットワークを育成、強化し、長期的目標として開放的な東ア
ジア共同体の構築をめざす。
共生複合ネットワーク構築による東アジア地域協力は、グローバルな国際秩序の改善と
も密接に関連する。近年のグローバリゼーションは民主化の拡大や市場経済の普及をもた
らしたが、大量破壊兵器の拡散、テロ、大規模な自然災害などは国境を越えた新たな課題
を生んだ。また、新興国の台頭は国際政治および国際経済の秩序を変化させつつある。東
アジアにおける共生複合ネットワークの構築はグローバリゼーションの肯定的側面を地域
的に制度化し、先進国と新興国の間に協調的な関係をもたらすことでグローバルな課題へ
の対応に貢献する。
2.北朝鮮の核問題および北朝鮮の未来、朝鮮半島の平和
先軍政治を標榜して強盛大国建設を国家目標として掲げ、核実験、ミサイル発射実験を
17
繰り返す北朝鮮の姿勢は、日韓両国が目指す東アジア共生複合ネットワークの方向と逆行
している。それは、北東アジアの不安定要因であるのみならず核不拡散体制に対する挑戦
ともなっている。北朝鮮に核、ミサイルへの野心を放棄させるため日韓は情報交換をはじ
めるとする協力を土台に、あらゆるチャンネルを総動員して北朝鮮に対してそれを訴えて
いく必要がある。北朝鮮核放棄のプロセスはなによりも北朝鮮が国際社会の責任ある一員
となることを意味し、日韓両国は北朝鮮が東アジア共生複合ネットワークに参加して平和
と繁栄を享受するよう働きかけていく必要がある。
日本にとっては、拉致問題、中距離核ミサイルの脅威など、韓国にとっては、哨戒艦沈
没事件に象徴される北朝鮮による武力攻撃の可能性、拉北者・離散家族問題など、日韓両
国はそれぞれの懸案事項解決のために情報交換し、その解決のために協力する。また、両
国は、南北非核化共同宣言、日朝平壌宣言、日本の非核3原則などを含む北東アジア平和体
制などの可能性について検討する。
日韓両国は周辺諸国との協力を通して北朝鮮政策を調整する。とくに日韓協力を前提と
して日韓米三国の協力関係をいっそう活発化させ、それを利用して中国が北朝鮮問題で積
極的役割を担うよう働きかける。また六カ国協議では2005年9月の共同声明で確認された内
容の実現を目指し、六カ国協議を将来的には北東アジア多国間安保協議の場として発展さ
せるよう努める。
日韓両国は、北朝鮮が国際社会の責任ある一員になることが東アジアの利益に合致する
との認識を共有し、北朝鮮の核放棄を条件として、そのために必要な政治、経済、安全保
障面での支援を行い、北朝鮮を東アジア共生複合ネットワークに参加させるべく共に努力
する。
日韓両国は、北朝鮮が大量破壊兵器への野心を放棄し軍事的挑発をやめるなど、それま
での姿勢を改めるのであれば、北朝鮮との関係を改善し、経済協力を進める方針を共有す
る。韓国は日朝国交正常化を、日本は南北協力関係の拡大、最終的には統一を歓迎し、そ
れぞれのプロセスで日韓両国は緊密に連携して協力する。
3.日米・韓米同盟と日韓安全保障協力の強化と発展
日韓両国は各国の米国との同盟関係が自国の安全保障にとって肝要な役割を果たしてき
たと認識しており、米国との同盟が今後も東アジアの平和と安定のための役割を維持、強
化していくと同時に日韓米三カ国間の認識の共有、安全保障協力の拡大を推進する。21世
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ベリア鉄道を経由しヨーロッパまで到達できる。
日韓海底トンネルに関して、かつては竹下登元首相が検討を指示した経緯がある。羽田
孜元首相も「日本再生プログラム」の一環としてこの構想に関し言及した。森喜朗元首相
は、2000年10月のASEM会議で、日本と韓国をつなぐトンネルを作りASEM鉄道とい
う名前を付けようと提案した。また、総理大臣に就任する前の菅直人議員は「日韓海底ト
ンネルにリニアモーターカーを走らせる」と構想に関し言明したことがある。韓国でも、
1990年に盧泰愚大統領が訪日時の国会演説において海底トンネルに言及し、海部首相に建
設を提議したことがあり、1999年9月には金大中大統領も「日韓トンネルが建設されれば、
北海道からヨーロッパまで結ばれるので、未来の夢として考えてみる問題」と、トンネル
建設を提唱した。2003年2月には、盧武鉉大統領が日韓首脳会談でトンネル建設を提案した
ことがある。
海底トンネルの建設は、巨額の金融支援と先進的なトンネル技術を必要とする長期的な
未来志向プロジェクトである。日韓両国政府のイニシアティブにより、トンネル建設のた
めの総合的な共同研究を組織して、経済的、技術的な妥当性はもちろん、東アジア安全保
障や地域統合に与える効果等を体系的に研究しなければならない。技術的な建設可能性・
ルート設定、旅客・コンテナ・自動車流通による物流輸送体制の変容、建設コスト・償還
計画などに関して検討することだけでも、このような分野で日韓の人的、経済的、技術的
交流が著しく活発化するはずである。このような共同研究を踏まえて、両国指導者は国民
の十分な同意を得る方法で、トンネル建設プロジェクトを推進することが望ましい。
16
II.国際政治
1.東アジア共生複合ネットワークの強化
日韓両国が役割を果たし、また両国の平和、安全、繁栄にとって前提となるのは東アジ
ア地域秩序の安定である。東アジアはめざましい成長と発展を遂げているダイナミックな
地域として、経済的な相互依存性が深まってきており、社会文化的交流も活発化している。
東アジアの国際政治は、米ソが軍事的、イデオロギー的に拮抗した冷戦の構図が終わりは
したが、依然として不安定な状況にある。米中両国は一方では強い相互依存関係を保ちな
がら、他方では複数の不確実性を抱えている。北朝鮮の核開発計画や、台湾海峡の武力紛
争の可能性も東アジアの潜在的な紛争要因となっている。
日韓両国は、米国が東アジアの持続的な平和と安定、繁栄と協力にとって中核的な役割
を果たすという認識を同じくする。また、隣国であり、長い交流の歴史をもつ中国の平和
的発展を歓迎し、東アジア地域の中核国家としての役割に期待する。日韓両国は米中との
協力関係を基軸としながら、両国の役割として、開かれた自由な国家として、東アジアの
多様な主体が平和と発展の機会を享受できるよう、政治、経済、社会、文化の多次元的か
つ多様な共生をめざす複合ネットワークを育成、強化し、長期的目標として開放的な東ア
ジア共同体の構築をめざす。
共生複合ネットワーク構築による東アジア地域協力は、グローバルな国際秩序の改善と
も密接に関連する。近年のグローバリゼーションは民主化の拡大や市場経済の普及をもた
らしたが、大量破壊兵器の拡散、テロ、大規模な自然災害などは国境を越えた新たな課題
を生んだ。また、新興国の台頭は国際政治および国際経済の秩序を変化させつつある。東
アジアにおける共生複合ネットワークの構築はグローバリゼーションの肯定的側面を地域
的に制度化し、先進国と新興国の間に協調的な関係をもたらすことでグローバルな課題へ
の対応に貢献する。
2.北朝鮮の核問題および北朝鮮の未来、朝鮮半島の平和
先軍政治を標榜して強盛大国建設を国家目標として掲げ、核実験、ミサイル発射実験を
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繰り返す北朝鮮の姿勢は、日韓両国が目指す東アジア共生複合ネットワークの方向と逆行
している。それは、北東アジアの不安定要因であるのみならず核不拡散体制に対する挑戦
ともなっている。北朝鮮に核、ミサイルへの野心を放棄させるため日韓は情報交換をはじ
めるとする協力を土台に、あらゆるチャンネルを総動員して北朝鮮に対してそれを訴えて
いく必要がある。北朝鮮核放棄のプロセスはなによりも北朝鮮が国際社会の責任ある一員
となることを意味し、日韓両国は北朝鮮が東アジア共生複合ネットワークに参加して平和
と繁栄を享受するよう働きかけていく必要がある。
日本にとっては、拉致問題、中距離核ミサイルの脅威など、韓国にとっては、哨戒艦沈
没事件に象徴される北朝鮮による武力攻撃の可能性、拉北者・離散家族問題など、日韓両
国はそれぞれの懸案事項解決のために情報交換し、その解決のために協力する。また、両
国は、南北非核化共同宣言、日朝平壌宣言、日本の非核3原則などを含む北東アジア平和体
制などの可能性について検討する。
日韓両国は周辺諸国との協力を通して北朝鮮政策を調整する。とくに日韓協力を前提と
して日韓米三国の協力関係をいっそう活発化させ、それを利用して中国が北朝鮮問題で積
極的役割を担うよう働きかける。また六カ国協議では2005年9月の共同声明で確認された内
容の実現を目指し、六カ国協議を将来的には北東アジア多国間安保協議の場として発展さ
せるよう努める。
日韓両国は、北朝鮮が国際社会の責任ある一員になることが東アジアの利益に合致する
との認識を共有し、北朝鮮の核放棄を条件として、そのために必要な政治、経済、安全保
障面での支援を行い、北朝鮮を東アジア共生複合ネットワークに参加させるべく共に努力
する。
日韓両国は、北朝鮮が大量破壊兵器への野心を放棄し軍事的挑発をやめるなど、それま
での姿勢を改めるのであれば、北朝鮮との関係を改善し、経済協力を進める方針を共有す
る。韓国は日朝国交正常化を、日本は南北協力関係の拡大、最終的には統一を歓迎し、そ
れぞれのプロセスで日韓両国は緊密に連携して協力する。
3.日米・韓米同盟と日韓安全保障協力の強化と発展
日韓両国は各国の米国との同盟関係が自国の安全保障にとって肝要な役割を果たしてき
たと認識しており、米国との同盟が今後も東アジアの平和と安定のための役割を維持、強
化していくと同時に日韓米三カ国間の認識の共有、安全保障協力の拡大を推進する。21世
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4.「キャンパス・アジア」の実現
1998年の日韓共同宣言の合意を受け、両国間では留学生や青少年の交流プログラムが充
実、拡大してきた。今日、そのような交流を基に、相互理解と人的ネットワーク構築の試
みが両国の青少年層で進んでいることに注目し、未来を担う青少年の交流を今まで以上に
積極的に推進、支援していくべきである。東アジアにおける通信使や燕行使、遣随使と遣
唐使という歴史的な伝統を想起しつつ、日韓および日韓中の大学生および大学院生の交流
を促進するための制度整備、政府支援の拡充、公共基金の創設などが望まれる。
冷戦終結後、ヨーロッパ統合が比較的順調に進展した背景の一つとして、1980年代中盤
から稼働したエラスムス・プロジェクト、すなわちヨーロッパ各国の大学間で単位交換プ
ロジェクトが進展し、ヨーロッパ的な視野を持つ若年指導層の育成に成功したことが挙げ
られる。それらの若年知識層がヨーロッパの和解と統合の立役者となったのである。その
経験から学ぼうとするアジア人のイニシアティブは、2008年5月、日本の福田康夫首相がア
ジア太平洋地域を対象にするエラスムス・プロジェクト構想を明らかにしたことに始まる。
その後、2009年10月の日韓中首脳会談で「キャンパス・アジア」構想が議論され、本年春
には三カ国の大学、産業界および行政関係者が東京で会合し、相互交流の推進について協
議した。
ただし、三国間の学生交流は、現在、韓中間が最も盛んであり、次いで日中間である。
残念ながら、日韓間の交流は、韓中間の4分の1、日中間の5分の1の規模にすぎない。した
がって、単位交換などの微温的な交流によってその数字が飛躍的に拡大するかどうかは疑
問であり、より画期的な措置が必要である。長い交流の実績を持つ日韓両国が積極的に協
力して東アジア三カ国に実際に「キャンパス・アジア」を開設し、日韓中の言語だけでな
く、政治、経済、社会、科学技術などを学ぶコースを設置することを真剣に検討すべきで
ある。三カ国のキャンパス間でカリキュラムを調整し、単位交換よりも学生自体の大規模
な交換を実現するのである。もしキャンパスの造成が困難であれば、既存の大学がコンソ
ーシアムを組織してもよい。
大学生時代から日韓中のハイブリッド教育を受けた「キャンパス・アジア」の卒業生た
ちは、研究・教育、経済界、中央・地方行政機関、NGOなどの場で、アジア的な視野を
もって活躍するに違いない。しかし、何よりも重要なのは、彼らが東アジア三カ国につい
て学び、それぞれ多くの友人を持ち、相手の立場を理解できることである。彼らのコミュ
ニケーション能力が東アジア三国関係の将来に大きな肯定的影響を及ぼしていくに違いな
い。
13
5.東アジア知識銀行プロジェクト
思想と歴史に関する知識の共有は、政治、経済、社会領域の課題解決に資する認識共同
体(epistemic community)を形成していく前提条件ともいえる。日韓両国の協力増進を基に
東アジア共生ネットワークを構築していくためには、日韓間はもちろん東アジア各国の間
で、歴史をはじめ倫理、文化、思想などに関する知識の共有を図る必要がある。例えば、
2009 年10 月、日本、韓国、中国、台湾の出版人で構成される東アジア出版人会議は、東ア
ジアの現代の古典100 冊を発表し、相互に翻訳事業を推進することに合意した。一部の大
学と研究所は、東アジア関連書籍を相次いで発刊したり、東アジアで共有すべき外交史料
を集めたウェブサイトを開設したりして、国家を超えた認識共有のための作業をリードし
ている。
このような試みは、東アジアにおいて認識共同体を実現する重要な契機になると評価で
きる。日韓両国は、両国関係や東アジア地域協力などに関する各種資料をデータベース化
し、誰もが自由に資料にアクセスできるウェブサイトを立ち上げて運営することが望まし
い。我々はこのような取り組みを「東アジア知識銀行」(East Asian Knowledge Bank)プロジ
ェクトと命名し、日韓が共同でこのプロジェクトを推進することを提案する。
「東アジア知識銀行」は、日韓関係を含む東アジア地域の近現代史料、条約・宣言・演
説などの政治・外交文書のデータベース構築に加え、日韓および東アジア共生ネットワー
ク構築の基盤となる東洋の優れた思想書や歴史書の翻訳・紹介にも積極的に取り組むこと
で、日韓はじめ東アジア各国の国民が知識を共有しながら共通認識を育むことを支援する
ことができる。長い目でみれば、このプロジェクトは東アジア共同体へ向けた意味ある一
歩になるであろう。
6.マルチメディア協力の活発な推進と全面的な文化開放
ヨーロッパ共同体の形成過程で、独仏首脳の合意により設置された独仏共同のテレビ放
送、アルテ(ARTE)という文化・教養専門テレビチャンネルの役割を思い起こす必要
がある。我々は、日韓両国にも、公共放送が運営する文化・教養専門テレビチャンネルを
共同で設けることを提案する。同時に、日韓両国間の放送局や新聞社を中心としたマスメ
ディア協力ネットワークを構築し、ドキュメンタリー番組、特集記事、映画、ドラマ、音
楽などの共同制作を今まで以上に行いやすくするための環境整備を進めていくべきである。
文化交流は、相手国に対する理解を深めるだけではなく、自国の文化生活をより豊かに
14
する。韓国は、1998年以来、4回にわたり段階的に日本の大衆文化を開放してきた。また、
日本は、韓国のドラマなどの文化商品を積極的に受け入れている。その結果、日本では韓
流ブームが、また韓国では日本文化のすそ野がさらに広がってきている。日韓両国は、今
後も、日韓の文化交流の幅が広がるよう最善を尽くすべきである。このような努力の一環
として、韓国は、2004年の第4次文化開放措置に次いで、今後も日本の大衆文化の全面開放
を進めるよう提案する。
映画と大衆音楽は、相手国の文化をよりよく理解するのに役立つだけではなく、産業と
しての価値も大きい。この分野における作品制作、発信、広報での日韓協力をさらに進め
ることで、両国の文化を豊かにするとともに、産業規模を拡大させていくことが望ましい。
ヨーロッパの場合、EU 加盟国の多くが参加するユーロビジョン・ソング・コンテストなど
を持続的に開催することで、加盟国同士の相互理解が深まるとともに、音楽ビジネスの規
模も拡大している。日韓両国さらには日韓中三国の間でも、東アジア映画祭や歌謡祭など
を新たに設け、文化メディアを通じた相互理解を深めながら、同時に映画・音楽産業の規
模を拡大していく試みがあってもよい。
スポーツ競技は、競争の舞台でありナショナリズムを刺激する場合がある一方、参加国
同士の相互理解を深める祭典でもある。日本と韓国では、野球とサッカー、バスケットボ
ールとバレーボール、ゴルフと囲碁などのプロスポーツが活発に運営されている。囲碁や
ゴルフなどでは国際大会が創設され、互いの実力を競いながら友好を深める祭典となって
いる。こうした傾向を歓迎し、他の種目のプロスポーツにおいても、国内リーグが開催さ
れない期間を利用して、可能であれば中国を含む東アジア・リーグを創設し、各国の実力
を競いながら友好を深めていく場を広げていくことを提案する。
7.日韓海底トンネル構想の長期的推進
ドーバー海峡をつなぐ英仏海底トンネルは、英仏間の人的流れと物流の拡大は勿論のこ
と、島国である英国とヨーロッパ大陸全体をつなげる役割を果たしている。北九州地域と
釜山・馬山地域をつなげる日韓海底トンネルの建設は、日韓間の人的流れと物流の拡大に
貢献するのみならず、島国である日本とアジア大陸全体をつなげるプロジェクトとなるは
ずである。日韓の大衆交流の現象や日韓中の三カ国交流の展望からもこの計画がもつ経済
外的な「相互交流効果」を高く評価しなければならない。
また、日韓海底トンネルは日韓両国のみのものではない。それが北朝鮮を通過し、中国
東北地域の瀋陽までつながるのであれば、日韓中三カ国の北東アジア鉄道網がつながりシ
1998年の日韓共同宣言の合意を受け、両国間では留学生や青少年の交流プログラムが充
実、拡大してきた。今日、そのような交流を基に、相互理解と人的ネットワーク構築の試
みが両国の青少年層で進んでいることに注目し、未来を担う青少年の交流を今まで以上に
積極的に推進、支援していくべきである。東アジアにおける通信使や燕行使、遣随使と遣
唐使という歴史的な伝統を想起しつつ、日韓および日韓中の大学生および大学院生の交流
を促進するための制度整備、政府支援の拡充、公共基金の創設などが望まれる。
冷戦終結後、ヨーロッパ統合が比較的順調に進展した背景の一つとして、1980年代中盤
から稼働したエラスムス・プロジェクト、すなわちヨーロッパ各国の大学間で単位交換プ
ロジェクトが進展し、ヨーロッパ的な視野を持つ若年指導層の育成に成功したことが挙げ
られる。それらの若年知識層がヨーロッパの和解と統合の立役者となったのである。その
経験から学ぼうとするアジア人のイニシアティブは、2008年5月、日本の福田康夫首相がア
ジア太平洋地域を対象にするエラスムス・プロジェクト構想を明らかにしたことに始まる。
その後、2009年10月の日韓中首脳会談で「キャンパス・アジア」構想が議論され、本年春
には三カ国の大学、産業界および行政関係者が東京で会合し、相互交流の推進について協
議した。
ただし、三国間の学生交流は、現在、韓中間が最も盛んであり、次いで日中間である。
残念ながら、日韓間の交流は、韓中間の4分の1、日中間の5分の1の規模にすぎない。した
がって、単位交換などの微温的な交流によってその数字が飛躍的に拡大するかどうかは疑
問であり、より画期的な措置が必要である。長い交流の実績を持つ日韓両国が積極的に協
力して東アジア三カ国に実際に「キャンパス・アジア」を開設し、日韓中の言語だけでな
く、政治、経済、社会、科学技術などを学ぶコースを設置することを真剣に検討すべきで
ある。三カ国のキャンパス間でカリキュラムを調整し、単位交換よりも学生自体の大規模
な交換を実現するのである。もしキャンパスの造成が困難であれば、既存の大学がコンソ
ーシアムを組織してもよい。
大学生時代から日韓中のハイブリッド教育を受けた「キャンパス・アジア」の卒業生た
ちは、研究・教育、経済界、中央・地方行政機関、NGOなどの場で、アジア的な視野を
もって活躍するに違いない。しかし、何よりも重要なのは、彼らが東アジア三カ国につい
て学び、それぞれ多くの友人を持ち、相手の立場を理解できることである。彼らのコミュ
ニケーション能力が東アジア三国関係の将来に大きな肯定的影響を及ぼしていくに違いな
い。
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5.東アジア知識銀行プロジェクト
思想と歴史に関する知識の共有は、政治、経済、社会領域の課題解決に資する認識共同
体(epistemic community)を形成していく前提条件ともいえる。日韓両国の協力増進を基に
東アジア共生ネットワークを構築していくためには、日韓間はもちろん東アジア各国の間
で、歴史をはじめ倫理、文化、思想などに関する知識の共有を図る必要がある。例えば、
2009 年10 月、日本、韓国、中国、台湾の出版人で構成される東アジア出版人会議は、東ア
ジアの現代の古典100 冊を発表し、相互に翻訳事業を推進することに合意した。一部の大
学と研究所は、東アジア関連書籍を相次いで発刊したり、東アジアで共有すべき外交史料
を集めたウェブサイトを開設したりして、国家を超えた認識共有のための作業をリードし
ている。
このような試みは、東アジアにおいて認識共同体を実現する重要な契機になると評価で
きる。日韓両国は、両国関係や東アジア地域協力などに関する各種資料をデータベース化
し、誰もが自由に資料にアクセスできるウェブサイトを立ち上げて運営することが望まし
い。我々はこのような取り組みを「東アジア知識銀行」(East Asian Knowledge Bank)プロジ
ェクトと命名し、日韓が共同でこのプロジェクトを推進することを提案する。
「東アジア知識銀行」は、日韓関係を含む東アジア地域の近現代史料、条約・宣言・演
説などの政治・外交文書のデータベース構築に加え、日韓および東アジア共生ネットワー
ク構築の基盤となる東洋の優れた思想書や歴史書の翻訳・紹介にも積極的に取り組むこと
で、日韓はじめ東アジア各国の国民が知識を共有しながら共通認識を育むことを支援する
ことができる。長い目でみれば、このプロジェクトは東アジア共同体へ向けた意味ある一
歩になるであろう。
6.マルチメディア協力の活発な推進と全面的な文化開放
ヨーロッパ共同体の形成過程で、独仏首脳の合意により設置された独仏共同のテレビ放
送、アルテ(ARTE)という文化・教養専門テレビチャンネルの役割を思い起こす必要
がある。我々は、日韓両国にも、公共放送が運営する文化・教養専門テレビチャンネルを
共同で設けることを提案する。同時に、日韓両国間の放送局や新聞社を中心としたマスメ
ディア協力ネットワークを構築し、ドキュメンタリー番組、特集記事、映画、ドラマ、音
楽などの共同制作を今まで以上に行いやすくするための環境整備を進めていくべきである。
文化交流は、相手国に対する理解を深めるだけではなく、自国の文化生活をより豊かに
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する。韓国は、1998年以来、4回にわたり段階的に日本の大衆文化を開放してきた。また、
日本は、韓国のドラマなどの文化商品を積極的に受け入れている。その結果、日本では韓
流ブームが、また韓国では日本文化のすそ野がさらに広がってきている。日韓両国は、今
後も、日韓の文化交流の幅が広がるよう最善を尽くすべきである。このような努力の一環
として、韓国は、2004年の第4次文化開放措置に次いで、今後も日本の大衆文化の全面開放
を進めるよう提案する。
映画と大衆音楽は、相手国の文化をよりよく理解するのに役立つだけではなく、産業と
しての価値も大きい。この分野における作品制作、発信、広報での日韓協力をさらに進め
ることで、両国の文化を豊かにするとともに、産業規模を拡大させていくことが望ましい。
ヨーロッパの場合、EU 加盟国の多くが参加するユーロビジョン・ソング・コンテストなど
を持続的に開催することで、加盟国同士の相互理解が深まるとともに、音楽ビジネスの規
模も拡大している。日韓両国さらには日韓中三国の間でも、東アジア映画祭や歌謡祭など
を新たに設け、文化メディアを通じた相互理解を深めながら、同時に映画・音楽産業の規
模を拡大していく試みがあってもよい。
スポーツ競技は、競争の舞台でありナショナリズムを刺激する場合がある一方、参加国
同士の相互理解を深める祭典でもある。日本と韓国では、野球とサッカー、バスケットボ
ールとバレーボール、ゴルフと囲碁などのプロスポーツが活発に運営されている。囲碁や
ゴルフなどでは国際大会が創設され、互いの実力を競いながら友好を深める祭典となって
いる。こうした傾向を歓迎し、他の種目のプロスポーツにおいても、国内リーグが開催さ
れない期間を利用して、可能であれば中国を含む東アジア・リーグを創設し、各国の実力
を競いながら友好を深めていく場を広げていくことを提案する。
7.日韓海底トンネル構想の長期的推進
ドーバー海峡をつなぐ英仏海底トンネルは、英仏間の人的流れと物流の拡大は勿論のこ
と、島国である英国とヨーロッパ大陸全体をつなげる役割を果たしている。北九州地域と
釜山・馬山地域をつなげる日韓海底トンネルの建設は、日韓間の人的流れと物流の拡大に
貢献するのみならず、島国である日本とアジア大陸全体をつなげるプロジェクトとなるは
ずである。日韓の大衆交流の現象や日韓中の三カ国交流の展望からもこの計画がもつ経済
外的な「相互交流効果」を高く評価しなければならない。
また、日韓海底トンネルは日韓両国のみのものではない。それが北朝鮮を通過し、中国
東北地域の瀋陽までつながるのであれば、日韓中三カ国の北東アジア鉄道網がつながりシ
2.ハイ・レベル対話の活性化
2008年下半期以降の国際金融危機の発生や地球環境問題の深刻化、北朝鮮の核開発によ
り表面化した大量破壊兵器(WMD)の開発と拡散、そして東アジアの共生のための地域
秩序の構築といった課題は、グローバル国家として成長した日本と韓国に、より能動的な
共同対応を求めている。
日韓両国の間では、首脳によるシャトル外交をはじめ、外交、国防、経済、環境など領
域ごとの閣僚会議が定期的に実施されてきた。近年では、日韓間にとどまらず、日韓中三
国間でも首脳会談や領域別の閣僚会議、外務次官級戦略対話などが定例的に開催されるよ
うになっている。日韓中首脳会談が2008年から毎年開催されるようになったことは記憶に
新しい。
新時代の日韓関係は、このような領域ごとの協力を、政治・安全保障・経済・文化・情
報知識・科学技術・環境生態など領域横断的な協調と協力の緊密なネットワークへと深化
させていくべきである。複数の領域にわたる包括的イシューに共同対処していくために、
両国首脳や関連閣僚、主要政治家などが参加するハイ・レベル対話を必要に応じていつで
も開催することは、複合ネットワークの構築にとって不可欠の要請である。
このようなハイ・レベル対話の活性化により、日韓両国は、多様なイシューに対する協
力の推進状況を点検するとともに、協力を進めていくなかで明らかになった問題点を修正、
補完していくことができる。また、日韓協力の課題を持続的に発掘していくことも可能と
なる。日韓新時代のハイ・レベル対話は、二国間の争点のみならず、東アジアおよびグロ
ーバルな領域の協力分野にわたる争点を広範囲に議論する場になることを期待する。
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3.交流ネットワークの多層化
日韓間の対話チャンネルは重層化され、すそ野はより一層拡大されることが望ましい。
そのためには、各界の老・壮・青の広い世代がバランスよく参加できる配慮が必要である。
まず、政治分野のネットワーク構築のためには、超党派若手議員の定期交流、日韓首脳
のシャトル外交をフォローアップする民間主導の有識者(研究者、経済人、官界出身者等)
会議の設置などが考えられる。
地方自治体間の協力ネットワーク構築も重要である。すでに100を超える姉妹都市協定や
友好提携が結ばれているが、2006年に設立された「福岡−釜山フォーラム」のように、経済
的効果を期待する越境型の地域連携(地域FTAを含む)が促進されてもよい。また、両
国間で歴史認識問題や領土問題により政治・外交面が緊張したとしても、地方自治体主導
の交流行事等は、中止・延期・規模縮小に追い込まれるべきではない。
これまで、日韓両国の官と民、中央と地方が協力する文化交流行事の存在は、実質的に
も象徴的にも大きな意義を持ってきた。今後は、イベント型だけでなく、相手国の文化等
を知ろうとする活動があってもよい。
一方、草の根交流は基本的には民間主導により発展していくものである。但し、双方を
結びつけるチャンス、人材や言葉の壁をケアするお手伝い、的確な情報提供、誤解の生じ
やすい場面での調整、経済的助成など、政府、地方自治体、公的団体からの一定の支援は
依然として有効である。とりわけ、青少年交流は効果をあげており、若者が相手国を大量
に訪問できるプログラムをさらに充実させることが望ましい。急速に少子・高齢化社会に
なりつつある両国にとって、青少年交流ばかりでなく、両国の中高年交流、シルバー交流
に支援策や激励策があってもよい。
これまでも、少子・高齢化、年金、医療・介護、雇用、環境、ジェンダー、教育、障害
者、生涯教育など共通課題をテーマにした両国間の草の根交流が各地で行われてきた。類
似した社会構造の日韓間で議論することで、こうした課題への解決策が提示されることも
十分ありうる。今後も、このような共通課題を扱う学術共同研究や共同シンポジウム開催
を奨励していくべきである。
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2008年下半期以降の国際金融危機の発生や地球環境問題の深刻化、北朝鮮の核開発によ
り表面化した大量破壊兵器(WMD)の開発と拡散、そして東アジアの共生のための地域
秩序の構築といった課題は、グローバル国家として成長した日本と韓国に、より能動的な
共同対応を求めている。
日韓両国の間では、首脳によるシャトル外交をはじめ、外交、国防、経済、環境など領
域ごとの閣僚会議が定期的に実施されてきた。近年では、日韓間にとどまらず、日韓中三
国間でも首脳会談や領域別の閣僚会議、外務次官級戦略対話などが定例的に開催されるよ
うになっている。日韓中首脳会談が2008年から毎年開催されるようになったことは記憶に
新しい。
新時代の日韓関係は、このような領域ごとの協力を、政治・安全保障・経済・文化・情
報知識・科学技術・環境生態など領域横断的な協調と協力の緊密なネットワークへと深化
させていくべきである。複数の領域にわたる包括的イシューに共同対処していくために、
両国首脳や関連閣僚、主要政治家などが参加するハイ・レベル対話を必要に応じていつで
も開催することは、複合ネットワークの構築にとって不可欠の要請である。
このようなハイ・レベル対話の活性化により、日韓両国は、多様なイシューに対する協
力の推進状況を点検するとともに、協力を進めていくなかで明らかになった問題点を修正、
補完していくことができる。また、日韓協力の課題を持続的に発掘していくことも可能と
なる。日韓新時代のハイ・レベル対話は、二国間の争点のみならず、東アジアおよびグロ
ーバルな領域の協力分野にわたる争点を広範囲に議論する場になることを期待する。
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3.交流ネットワークの多層化
日韓間の対話チャンネルは重層化され、すそ野はより一層拡大されることが望ましい。
そのためには、各界の老・壮・青の広い世代がバランスよく参加できる配慮が必要である。
まず、政治分野のネットワーク構築のためには、超党派若手議員の定期交流、日韓首脳
のシャトル外交をフォローアップする民間主導の有識者(研究者、経済人、官界出身者等)
会議の設置などが考えられる。
地方自治体間の協力ネットワーク構築も重要である。すでに100を超える姉妹都市協定や
友好提携が結ばれているが、2006年に設立された「福岡−釜山フォーラム」のように、経済
的効果を期待する越境型の地域連携(地域FTAを含む)が促進されてもよい。また、両
国間で歴史認識問題や領土問題により政治・外交面が緊張したとしても、地方自治体主導
の交流行事等は、中止・延期・規模縮小に追い込まれるべきではない。
これまで、日韓両国の官と民、中央と地方が協力する文化交流行事の存在は、実質的に
も象徴的にも大きな意義を持ってきた。今後は、イベント型だけでなく、相手国の文化等
を知ろうとする活動があってもよい。
一方、草の根交流は基本的には民間主導により発展していくものである。但し、双方を
結びつけるチャンス、人材や言葉の壁をケアするお手伝い、的確な情報提供、誤解の生じ
やすい場面での調整、経済的助成など、政府、地方自治体、公的団体からの一定の支援は
依然として有効である。とりわけ、青少年交流は効果をあげており、若者が相手国を大量
に訪問できるプログラムをさらに充実させることが望ましい。急速に少子・高齢化社会に
なりつつある両国にとって、青少年交流ばかりでなく、両国の中高年交流、シルバー交流
に支援策や激励策があってもよい。
これまでも、少子・高齢化、年金、医療・介護、雇用、環境、ジェンダー、教育、障害
者、生涯教育など共通課題をテーマにした両国間の草の根交流が各地で行われてきた。類
似した社会構造の日韓間で議論することで、こうした課題への解決策が提示されることも
十分ありうる。今後も、このような共通課題を扱う学術共同研究や共同シンポジウム開催
を奨励していくべきである。
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