plainriver music: yuichi hirakawa, drummer in new york city

ニューヨークで暮らすドラマー、Yuichi Hirakawaのブログ

受け継がれるジャズという音楽

2007年02月27日 | 音楽
ここ数年、2~3週間に一度というペースで、グランド・セントラル駅にあるキャンベル・アパートメントというクラブで演奏している。

この記事中の画像は、ここを経営しているこちらの会社から頂きました。

先日のメンバーは、いつものギタリストの代役でやってきたマーヴィン・ホーンさんとベースのダン・ムーアさん。二人は旧知の仲らしいが、僕にとってはジャズギグでありがちの、「初めまして。・・・んでは演奏始めましょう。」というシチュエーションだった。二人とも60歳前後の貫禄あるジャズマン。いつもとは違った緊張感を持ってドラムセットの椅子に座った。

ギタリストのマーヴィンさんは、二人のジャズドラムの巨人、チコ・ハミルトンとエルヴィン・ジョーンズのバンドに3~4年ずつ在籍した方。セント・ルイス出身で、演奏活動の場をニューヨークに移して30年になるそうだ。

次から次へと澱み無く弾き始める彼のイントロは、数音聴いただけでどのアレンジだか判った。様々なアレンジで演奏されたスタンダードを、ジャズミュージシャンなら当然知るべきアレンジで演奏する。そうなると初対面だから上手くやれないなんて言い訳はできない。

この晩は、セロニアス・モンク作曲の「ラウンド・ミッドナイト」をマイルス・デイビスのアレンジで、ジョン・コルトレーン作曲の「サテライト」を原曲のアレンジで、即興のソロパートを交えながら演奏した。ジャズの名盤と言われるレコード通りのアレンジで、しかもその時代を代表する巨匠達と共演したミュージシャンと演奏するのは、うまく言葉にできないが、感慨深くまた非常に刺激になった。

またこういう経験が近いうちにできますように。


2007年 春 ライブ イン 東京!

2007年02月19日 | 音楽
今年の4月に、東京へ行きます。ライブやります。是非ご都合がつく限り、皆様お誘い合わせの上、お越し下さい!

"臼庭潤 Jazz Roots 2007" 臼庭潤ホームページ
4月3日(火) 高円寺 次郎吉
03-3339-2727

"平川雄一セッション"
4月7日(土) 千駄木 ジャンゴ
03-3823-7266

"臼庭潤カルテット"
4月9日(月) 西荻窪 アケタの店
03-3395-9507

"臼庭潤カルテット"
4月18日(水) 千駄木 ジャンゴ
03-3823-7266

"臼庭潤+平川雄一デュオ"
4月20日(金) 高田馬場 Hot House
03-3367-1233

マット・ウィルソンカルテット

2007年02月19日 | 音楽
まだ大雪になっていなかった先週の日曜日、27丁目のレキシントンアベニューとパークアベニューの間にあるジャズスタンダードというクラブへライブを聴きに。バンドリーダーはドラマーのマット・ウィルソン。そしてフリューゲルホーンも吹くトランペッター、オルガンも弾くピアニスト、クラリネットも吹くベーシストのカルテットだった。

さあ一曲目が始まるっていう、受付のお姉さん曰く「完璧なタイミング」で客席に着いてステージを見ると、あるか無いか分からないほどの細いストライプ入りのジャケットを着てピシっとネクタイをした銀髪のドラマーが、赤く輝くドラムの後ろに座っていた。

ドラムセットの内訳はジャズドラムの王道といえるもので、口径18インチのバス・ドラム(一番大きくてドラマーの前に横倒しになっている)、同14インチのフロア・タム(ドラマーにとっての右側にあり、脚が付いている深めのドラム)、同12インチのタム・タム(バス・ドラムの上にセットされている)、同14インチ深さ6インチ半のスネア・ドラム。

彼とドラムセットの見た目から容易に想像できそうな、モダンジャズ調は最初の一曲目だけで、次はサイケデリックロック調、そしてファンク調、最後がボサノバ調だった。終わりの挨拶後の客出しソングで3人の歌うお姉さんが加わり、リーダーのウィルソン氏はストラップを着けたスネア・ドラムを抱えてサンバらしきリズムを叩きながら、客席を練り歩いた。

この後僕は自分の仕事に向かわなかったため、彼とお姉さん方の練り歩きは殆ど見ずにあたふたと退出したが、ドラマーとしてもバンドリーダーとしても色々参考になった。

割合多かったドラムソロでの、ユニークな奏法から出る音色。その中で印象的だったのが、ドラムの打面を擦っても音が出るブラシを、まず静かに打面に置き、毛先だけ持ち上げ、一本ずつパラパラパラっと打ち付けていた。

リーダーとしては、バンドの楽器編成に相応くて、変化に富んだ選曲だったこと。ステージにはグランドピアノと本物のハモンドオルガンがあり、ピアニストは二つの大きな楽器を交互に弾き、ベーシストは最後の曲直前にサクッとクラリネットを組み立て、サラッと吹いていた。

次回は最後の練り歩き終了まで、腰を据えて聴きたいもんです。

ドラマーにとってのエコロジー

2007年02月12日 | 音楽
ある日友達から、「ドラマーって木製スティックやプラスティック製の張り皮を消費するから、環境保護団体から非難されたりしない?」と尋ねられた。今のところそんな話は聞いたことが無い。でも考える価値はあるだろう。上の画像にあるのは、ドラムの張り皮=ドラムヘッド。見た目と音色は1940年代までは主流だった動物の皮製ドラムヘッドにそっくりだけど、これは合成繊維製。動物の皮を使うよりはマシだと思う。

画像にあるタイプ、音量はプラスティックほど出ないが、繊細な反応と暖かみのある音色が出るため、オーケストラの打楽器やジャズドラムによく使われる。また素手で叩くコンガやジャンベなどのハンドパーカッションの皮にも合成樹脂製が出回ってきているが、スティックで叩くドラム用に比べると、まだ動物の皮製が多い。



金属でできたシンバルやらピンと張ったドラムの皮を叩くわけだから、スティックはいずれボコボコになる。特に先端の丸い部分=チップが欠けたら、音色と叩いた後の跳ね返り具合が変わる。たとえチップが長持ちしても、何十回も使っているうちに木が汗を吸い、重さのバランスが崩れ、振り心地が変わるから使いづらくなる。とはいえ、一人で練習するのには使えたりするので、そう簡単には捨てられない。



また大抵のスティックには滑り止めのラッカーが塗ってあり、それを落とすのには結構な手間がかかりそうな気がする。こういう木の切れ端を再利用するのがどれだけ有効なのか、正直よく分からない。

1980年代後半から90年代にかけて、アルミなどの軽金属の筒状の芯に合成樹脂を巻いたスティックが出回っている。僕もこれを1ペア買って使ったことがある。微妙な音のニュアンスよりも、とにかく爆音で長時間ブッ叩けるだけのタフなスティックが必要なら、これは結構いけると思う。中にはスティックの真ん中が関節のようになっていて、衝撃を和らげる造りにして売り出しているのもある。普段そこまで肉体的に激しい演奏をしない身としては、そうまでして激しく叩くのか?・・・と思うけれど。

これは自戒の念を込めて書くけれど、最も豊かな音色が出るようにチューニングしたドラムを、無理な力を抜いた叩き方で叩けば、それほどスティックやドラムヘッドを消耗することは無い。原始の頃から人間が、遠くに意思を込めた音が届くようにと作ったのがドラムなのだから。

アメフトの脅威 プチ失業2007冬

2007年02月05日 | 音楽
アメリカの国技、アメリカンフットボール。今晩はそのチャンピオンを決する、スーパーボールの日。おまけに今日の気温は零下5℃、おまけに強風。

そのせいだろう、グリニッチビレッジ辺りには人っ子ひとり歩いていないらしく、今日になって、毎週ギグをしているアーサーズタバーンから今晩のギグをドタキャンされた。まぁ初めからだ~れもいないと分かっているところで演奏してギャラをもらうのは気が引けるので、よいお休みと思う事にします。

極端な話し、今この国で、真冬のこんな寒い日曜日の晩に生演奏しているのは、スーパーボールのハーフタイムショーに出演するミュージシャンだけではないだろうか。今年の出演者はプリンスだそうです。

ラリー・コリエルトリオ

2007年02月02日 | 音楽
氷点下の夜だったけれど、かつて日本でドラムを教わった斉藤純さんに誘って頂き、ミッドタウンのイリディアムラリー・コリエルトリオを聴きに。

ベースにビクター・ベイリー、ドラムスにレニー・ホワイトのこのバンドは、非常に引き締まった、でも自由奔放な演奏を聴かせてくれた。

曲目は、最新アルバム"Traffic"から数曲、ジミ・ヘンドリックスの"Manic Depression"、レッド・ツェッペリンの"Black Dog"、レニーさんのかなり以前に作曲されたオリジナル(タイトル忘却)、ボサノヴァの名曲「黒いオルフェ」、そして最後はラリーさんのアコースティックギターのソロで彼自身のオリジナル"Lullaby for Jake". 

何しろ、ラリーさんといえば60年代後半からのジャズロックの草分けだし、ビクターさんは三大フュージョンバンドの一つ、ウェザーリポートの最後のベーシストだし、レニーさんはもう一つの三大フュージョンバンドの一つ、リターン・トゥ・フォーエバーのドラマーだから、凄くないわけはない。ロックだろうがなんだろうが、自分の持ち味を存分に発揮し、他の誰にも真似できない演奏にしていた。

この日ラリーさんはストラトキャスターを弾いていた。今までこのタイプのギターを弾いているのを見たことが無かったので少し驚いた。レニーさんのドラムはデトロイトのドラムメーカーのカスタムモデルだそうで、小さめの口径10インチのスネアドラムはずっしりと重かった。一般的なスネアドラムの口径は14インチだが、それより数倍重い。どうやら胴体の木が厚い造りをしていたようだった。