絵じゃないかおじさん

言いたい放題、自由きまま、気楽など・・・
ピカ輪世代です。
(傘;傘;)←かさかさ、しわしわ、よれよれまーくです。

あ@仮想はてな物語 ゆふかひストーリィ 3・4/4・後8

2022-02-18 07:14:36 | おぼけまみれ

            copyright (c)ち ふ


 白い文字で、まごころと書かれていた。
 正面で、サヤカから、チーコちゃんと共に降りる。
「こんにちわ、ごめんください」
「どなたでしょうか?」

 可愛い女性が出てきた。
 気品がにじみでていた。
 ピンク色のワンピースを着ていて、
 髪の毛は長く伸ばし、顔だちは細面だった。

 頭には、ちょこんと蓮の小花が咲いていて、
 髪かざりのようであった。
 背は、私とあまり変わらなかった。
 私は、あまり高くはないほうだが、
 女性だと大きい部類に属するのだろう。
 身体全体が、うっすらと、光り輝いていた。

「実は、この子のまごころがここにあると、
 聞いたものですから、返してもらいに
 やってきたのですが・・・」
「それは、ご苦労さまです。
 どうぞ、お入りになって探してください。
 日付と場所を、コンピュータにインプットすれば、
 該当するものが、流れてきますから」

「では、すみません」


 私たちは、倉庫の中に入った。
 ここには、オレンジ色の鬼たちが、
 その管理にあたっていた。


 コンピュータに向かって、アバウトの日付の範囲と
 日本と打ち込んだ。
 驚いたことに、該当するものが、万はこえていた。
 ここは、もうヤッタールに頼まねばなるまい。 
 次から次へと、ベルトコンベアーに乗って
 流れてくる、まごころに手鏡をあてた。


 チーコちゃんのまごころを探すのに、
 小1時間かかった。
 ヤッタールが居なければ、投げ出すところだろう。
 オレンジ鬼が、チェックをすると行って、
 そのまごころと、チーコちゃんを人型をした器械に入れた。


「よし、OK。ついでに、
 まごころも、セットしといてやろう」
「すみません」

 倉庫の外に出てから、念のため、
 ヤッタールに、再チェックをしてもらった。

「オッさん、やった。やった。
 元通りだ。よかったなあ」
「ヤッタール、チーコちゃん、よかったなあ」

「オッちゃん、ヤッタールさん、
 どうもありがとう。何か、すーっとしたみたいよ」

 私は、先程の天女に礼を言ってから帰ろうと思い、
 彼女を捜した。
 もう一度、あの姿を見たいとも思ったからだ。
 これは、助ベーオッさん丸出しの行動だった。
 さきほどの言動との落差、いったいどうなっているの?
 と、自問自答する。

 この矛盾だらけなのが、人間のいいところでもあるのだと、
 ひとり己を甘やかしている。

「今どき、何で、まごころなんか捜しに来るのかしら?
  物好きもいるものね」
「何の話、それ?」

「今ね、へんてこりんなオッさんと
 可愛い女の子が、まごころを探しにやってきているのよ」
「へぇー。珍しいね。何の魂胆かしら」

「あの子、小さい時から、自分の思い通りに
 育てたいんじゃない」
「親子?」

「バッカねえ、親子が、今どき、そんな事すると思う?」
「じゃ、何よ!」

「決まっているじゃない。誘拐したのよ」
「まっさかぁ!」

「そのまさかが、現実になる時代よ。
 あったって、おかしくはないわよ。
 まごころは、上手に操れば、自分の思い通りの
 人間が作れるからね。
 それにあのオッさん、今だに独身のはずよ。
 あの子を、どこかでさらってきて、育てているのよ、
 きっと」

「あなたも変わった考えしてるねぇ」
「わたしって、変わってる?」


 聞くともなしに、天女の内緒話が、耳に入ってきた。
 天女といえども、
 地上のゲス女と、何ら変わりないではないか!


 あの光り輝く気品は、単なる飾りにすぎなかったのか。


 話題をすぐに己の興味をひく世界に持ち込んで、
 その尺度で、すべてを捕らえようとしている。
 堕落は、天国まで汚染しているのか、
 と無性に、淋しくなった。


 チーコちゃんは可愛い。
 私は、そのチーコちゃんに幸せになってもらいたいだけだ。
 まごころや思いやりは、幸せを掴むための必需品だ。
 それを元通りに戻してやりたい。


 それ以上のものは、望んではいない。
 天女よ、
 その言の葉は、君の心の投影にすぎない。


 私とチーコちゃんとを、
 そんな関係でしか、捕らえられないのか?

 その内緒話を聞いてから、天女に対する見方が、
 変わってしまったのは、言うまでもない。
 外面だけで、他人を捕らえると、ひどい目に遭いそうだ。


 喜びと少しの絶望抱いて、
 皆の所に戻る事にした。
 天国の景色をもう少し見たいと思ったので、
 チーコちゃんに了解をもらい、ツーリングを兼ねて、
 山際を走って帰った。


 山に近づくと、桃の花が咲き、
 桜の木は莟をつけていた。

 ここでは、春と秋の2シーズンが繰り返されるという。
 極端な暑さ、寒さがないのは、暮らすにはいいのだろうが、
 雪やカンカン照りの夏がないのは、
 もの足りない気もする。

 長く続くのはかなわないが、
 適当に配置されるのは自然からの、
 贈り物として、似つかわしいように思う。

 山道の入口には、立ち入り禁止の立て札が、
 かかげてあった。

 変化に乏しいので、結局ツーリングの、
 醍醐味は味わえなかったが、
 天国にきた目的ではないのだから、
 致し方のないことだろう。


つづく

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